要約
本稿では、1-Wire®技術の概要とその用途について説明します。まずは同技術の基本的な概念や通信方法、ピン数の少ないパッケージがもたらすメリットなどを明らかにした上で、同技術に対応する各種製品の機能セットについて詳しく解説します。続いて、1-Wireに対応する製品の代表的なアプリケーションを紹介します。また、1-Wire製品の評価方法に関する実用的な情報も示します。その上で、1-Wire製品のカスタマイズ・オプションについて解説を加えます。更に、1-Wire技術をシステムに組み込む際に役立つリソースも紹介します。
1-Wire技術とは何なのか?
1-Wireは、シリアル通信用のプロトコルの一種です。その最大の特徴は、1本のデータ・ラインとグラウンド基準を使用するだけで通信を実現できる点にあります。1-Wireを使用する場合、1-Wireに対応するマスタ・デバイス、1-Wireに対応するスレーブ・デバイス、それらを接続するバスを使用することになります。本稿では、それぞれを単にマスタ、スレーブ、バスと表記することにします。マスタは、バス上に存在する1つ以上のスレーブとの通信を開始したり、制御したりする役割を担います(図1)。一方のスレーブは、64ビットのID(識別番号)を備えるICとして提供されます。そのIDは各スレーブに固有のものであり、出荷時に設定された後は変更できません。そして、このIDはバス上に存在する各スレーブのアドレスを表します。各スレーブの種類と機能は、8ビットのファミリ・コード(64ビットのIDのサブセット)によって識別されます。通常、スレーブは、以下のうちいずれかの電圧範囲で動作します。
- 1.71V(最小)~1.89V(最大)
- 1.71V(最小)~3.63V(最大)
- 2.97V(最小)~3.63V(最大)
- 2.8V(最小)~5.25V(最大)
ほとんどのスレーブは電源用のピンを備えていません。電力は、データをやり取りするバスから供給します(寄生電源)。
図1. マスタとスレーブの関係。 1本のデータ・ラインとグラウンド基準を使用します。
1-Wireの何が特別なのか?
1-Wireを利用する場合、電圧をベースとするデジタル・システムを構築することになります。そのシステムは、データ・ラインとグラウンドの2つの接点を使用して動作し、双方向の半二重通信が実現されます。シリアル通信用の技術としては、I2CやSPI(Serial Peripheral Interface)なども広く使われています。それらと比較すると、1-Wireに対応するデバイスは瞬間的に接続が行われる環境で使用できるよう設計されている点に特徴があります。スレーブは、バスから切り離されたり、接触が失われたりすると、あらかじめ定義されたリセット状態に移行します。電圧が復帰したら、スレーブはウェイクアップして自身の存在(プレゼンス)を示す信号を送出します。スレーブには、保護すべき接点は1つしかありません。そのため、各スレーブが備えるESD(Electrostatic Discharge)耐性は非常に高くなります。接点が2つしかないスレーブは、非電子的な物に電子的な機能を追加するための最も経済的な方法だと言えます。具体的には、識別/認証の処理、キャリブレーション用のデータや製造に関する情報の提供を実現できるようになります。
1-Wire対応のデバイスはどのようなパッケージで提供されるのか?
従来、ディスクリートのトランジスタではTO-92、ICではTSOC、TDFN、SOT23といったパッケージが使われていました。1-Wireに対応する製品もそれらと同じパッケージで提供されています。それだけでなく、2つの接点を備えるSFN1パッケージを採用している製品もあります。このパッケージは、接触アプリケーション(contact application)や取り付けが容易であることが求められるアプリケーションに対応できるように設計されています。このパッケージは、寄生電源型のスレーブで使われます(図2)。他には、iButton®というパッケージも存在します2。図3に示したように、このパッケージはステンレス製であり、直径は16mmです。過酷な環境に耐えられるので、屋外での使用にも適しています。1-Wireに対応する多くのデバイスは、バンプを備えるダイの形でも提供されています(図4)。
図2. 6.0mm×6.0mm×0.9mmのSFNパッケージ。 接触面積が広い点を特徴とします。
図3. iButtonのパッケージ。直径は16mmです。 ステンレス製なので、過酷な環境でも内部のICを保護することができます。
図4. 0.5mmピッチのバンプを備えるダイ(WLP)
どのような機能を利用できるのか、代表的なアプリケーションはどのようなものか?
1-Wireに対応する製品としては、様々なものが提供されています。品番が「DS19」で始まるものは、iButtonのパッケージを採用しています(以下、同パッケージを採用した製品をiButtonデバイスと呼ぶことにします)。「DS24」、「DS25」、「DS28」で始まる製品は、従来のプラスチック・パッケージを採用しています。SFNでも提供されている製品については、後ほど示す表の「備考」の欄にその旨を記載してあります。最新のパッケージの情報については、アナログ・デバイセズのウェブサイトで検索欄に品番を入力して確認してください。
1-Wireに対応するデバイスには、様々な種類があります。各製品は、提供する機能に応じて以下のようなカテゴリに分類することができます。
- 識別のみ
- 識別+制御
- 識別+温度
- 識別+時間
- 識別+NV SRAM
- 識別+OTP EPROM
- 識別+EEPROM
- 識別+SHA-256認証、セキュアEEPROM
- 識別+SHA-256/ECDSA認証、セキュア・メモリ
- 識別+SHA-3認証、セキュアEEPROM
- 識別+データ・ロギング
上記のとおり、各製品は識別の機能を備えており、それ以外の機能が追加された形で実現されています。追加の機能の組み合わせに応じて、各カテゴリの代表的なアプリケーション分野が決まります。上記のもの以外にも様々な種類の製品が存在しますが、本稿ではそれらについては触れません。以下では、上記のカテゴリに含まれる製品について説明します。
識別のみ
このカテゴリに含まれる製品は、低コストであることを特徴とします。そのため、提供できる保護機能のレベルは限られています。例えば、「DS2401」や「DS2411」はIP(Intellectual Property)の保護を目的として使用することができます。但し、その場合には、デバイスのカスタマイズについて検討する必要があります。詳細については、「デバイスのカスタマイズは可能か?」のセクションで説明します。以下の表は、このカテゴリに含まれる代表的な製品についてまとめたものです。
品番 | 備考 | 代表的なアプリケーション |
DS2401 | 電源VCCは不要。プリンタのカートリッジや医療分野で使われる消耗品(使い捨て品)の識別に適している |
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DS2411 | 電源VCCは1.5V以上 | |
DS1990A DS1990R |
DS1990Rは、リーダーとの接触時にプレゼンス・パルスを生成することを保証 |
I識別+制御
このカテゴリに含まれる製品の代表的なアプリケーションは、「識別のみ」のカテゴリに含まれる製品と同様です。但し、プログラマブルな入出力ピン(PIO:Programmable Input/Output)により、システムに制御機能やフィードバック機能を追加することができます。以下の表は、代表的な製品についてまとめたものです。
品番 | 備考 | 代表的なアプリケーション |
DS2413 | 28Vに対応する2つのPIO |
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DS2450 | ADCの5V対応の入力はデジタルPIOとしても 機能。この製品には電源VCCを供給できる |
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識別+温度
大型(ラック型)の電子機器で信頼性の高い動作を実現するためには、エア・フローや適切な冷却手段が不可欠となります。「DS28EA00」は、独自の手法によりこの問題を解決します。同ICは、バス上のデバイスの物理的な順序(位置)を検出するチェーン機能を備えています4。順序の検出を目的として配線/接続されている場合、2つのPIOのうち1つは制御機能のために使用できます。以下の表に、代表的な製品を示しました。
品番 | 備考 | 代表的なアプリケーション |
DS28EA00 | 順序の検出用に配線されているわけではない場合、PIOは2つとも制御機能のために使用可能 | ラック・カードの監視 |
DS1920 | スタンドアロン型のデバイス。リーダーが触れた ときなどに、コマンドに応じて温度を測定 | 接触時の温度データの収集 |
識別+時間
このカテゴリの製品を使えば、32ビットのバイナリ・カウンタによって秒単位で時間を測定することができます。0時間の基準点(UTCの1970年1月1日0時0分0秒)がわかっていれば、136年にわたって任意の時間(秒)を識別することが可能です。時間の間隔を測定したい場合には、秒のカウント機能は特に有用です。
品番 | 備考 | 代表的なアプリケーション |
DS2417 | WLP(ウェハレベル・パッケージ)でも提供されている。 周期的なタイマー割り込みには、32kHzの水晶振動子と 6pFのコンデンサが必要 | 民生用電子機器 |
DS1904 | スタンドアロン型のiButtonデバイス。バッテリと水晶振動子を内蔵。巡回警備システムや勤怠管理のアプリケーションに 適している |
識別+NV SRAM
このカテゴリの製品は、データを保存するための不揮発性メモリ(NV SRAM)を備えています。このNV SRAMは、10年以上のデータ保存期間を達成しています。以降の表では、「備考」の欄にメモリのサイズを記します。
品番 | 備考 | 代表的なアプリケーション |
DS1992 | 1Kbのメモリ |
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DS1993 | 4Kbのメモリ。(DS1995/DS1996と比べて)コストを 抑えられるので、プリント基板の識別/認証にも適している |
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DS1995 | 16Kbのメモリ | |
DS1996 | 64Kbのメモリ |
識別+OTP EPROM
このカテゴリの製品は、いずれも12Vを使用するEPROM技術を採用しています。各ビットの値は1から0に1度だけ変更できますが(OTP:One-Time Programmable(ワンタイム・プログラマブル))、パッケージには開口部がないので元に戻すことはできません。32バイトのページ全体を無効としてマークし、有効なデータの代替場所を示すために、各製品には各ページに1つずつリダイレクト・バイトが設けられています。この独自の機能により、変更履歴を維持したまま、データを変更することが可能です。個々のページは、書き込みに対する保護を不可逆的に適用することができます。このような保護機能を備えていることから、このカテゴリの製品は、OTP EPROMがほとんど変更されることがなく、少量のデータしか保存する必要がないアプリケーションに適しています。例えば、ネットワーク・アドレス7やプリント基板の識別などの用途に適しているということです8。
品番 | 備考 | 代表的なアプリケーション |
DS2502 | 1Kbのメモリ。パッケージがWLPやSFNの バージョンも提供 |
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DS2505 | 16Kbのメモリ | |
DS2502-E48 | 1Kbのメモリ。あらかじめイーサネット・アドレス(MAC-48/EUI-48)をプログラム済み |
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DS2502-E64 | 1Kbのメモリ。あらかじめノード・アドレス(IEEE® EUI-64)をプログラム済み | |
DS1982 | 1Kbのメモリ |
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DS1985 | 16Kbのメモリ |
識別+EEPROM
このカテゴリの製品は、OTP EPROMを内蔵する製品とは異なり、データを書き込むために12Vの電圧を使用する必要はありません。メモリ領域またはページに対して書き込み保護が適用されていなければ、データを書き換えられます。また、このカテゴリの製品のほとんどは、EPROMエミュレーション・モードを備えています。そのモードでは、EPROMと同様にビットを1から0に変更することだけが可能です。「DS1977」は容量が大きくセキュアな製品であり、ゲーム業界でよく使用されています。「DS28E80」は、ガンマ線に対する耐性を備えたメモリと回路を採用しているので、医療業界で広く使われています。
品番 | 備考 | 代表的なアプリケーション |
DS28E05 | 112バイトのユーザ・メモリ |
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DS28E07 | 1024ビットのメモリ |
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DS28E80 | 248バイトのユーザ・メモリ。ガンマ線への耐性 |
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DS2431 | 1Kbのメモリ、EPROMエミュレーション、 ページの書き込み保護。WLPやSFNなどの パッケージ・オプションを用意 |
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DS28EC20 | 20Kbのメモリ、EPROMエミュレーション、ブロック(4ページ)の書き込み保護 | |
DS24B33 | 4Kbのメモリ。WLPやSFNなどの パッケージ・オプションを用意 |
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DS28E04-100 | 4Kbのメモリ、5Vに対応する2つのPIO、 7つの1-Wireアドレス入力、EPROM エミュレーション、ページの書き込み保護 |
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DS1971 | 256ビットのメモリ |
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DS1972 | 1Kbのメモリ、EPROMエミュレーション、 ページの書き込み保護 |
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DS1973 | 4Kbのメモリ | |
DS1977 | 32Kbのメモリ、パスワードの保護 |
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識別+SHA-256認証、セキュアEEPROM
このカテゴリの製品は、いずれも対称鍵を用いるチャレンジ&レスポンスの認証モデルを採用しています9。そのため、デバイスの認証を行う場合と、適切な保護が有効になっているデバイスに対して書き込みを行う場合には、デバイスの秘密鍵を把握していることに加え、SHA-256 MACの計算を実行する能力が必要になります。秘密鍵以外のメモリ上のデータは制限なく読み出すことができます。このカテゴリの製品は、いずれもユーザ・メモリのページのEPROMエミュレーション、秘密鍵やメモリ・ページに対する様々な保護機能をサポートしています。事前プログラミングのサービスについては、「デバイスのカスタマイズは可能か?」のセクションをご覧ください。
品番 | 備考 | 代表的なアプリケーション |
DS28E15 DS28EL15 |
512ビットのメモリ、双方向認証。品番の 「EL」は低電圧対応(1.671V~1.89V)である ことを表す |
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DS28E22 DS28EL22 |
2048ビットのメモリ、双方向認証。品番の 「EL」は低電圧対応(1.671V~1.89V)である ことを表す |
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DS28E25 DS28EL25 |
4096ビットのメモリ、双方向認証。品番の 「EL」は低電圧対応(1.671V~1.89V)である ことを表す |
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DS1964S | 512ビットのメモリ、双方向認証、iButton デバイス |
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DS2465 | ホストとの通信用のI2Cインタフェースと 内蔵型の1-Wireマスタ |
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識別+SHA-256/ECDSA認証、セキュア・メモリ
このカテゴリの製品は、すべてECDSA(Elliptic Curve Digital Signature Algorithm)と非対称鍵を用いるセキュア認証モデルを採用しています。一部の製品は、SHA-256またはECDSAをベースとする認証に使用できます。「DS28E36/DS28E83/DS28E84」では、外部コンポーネント/センサーを制御するために、認証/非認証のGPIO(General Purpose Input/Output)ピンを使用可能です。これらの製品は、デクリメント専用のカウンタ機能も備えています。この機能を利用すれば、消耗品の使用量を監視できます。このカテゴリの2つの製品は、データを保護するために、Maxim Integrated(現在はアナログ・デバイセズの一部門)が開発したChipDNA™技術をベースとするPUF(Physically Unclonable Function)機能を搭載しています。また、DS28E83/DS28E84は放射線に対する高い耐性を備えています。そのため、医療分野の滅菌アプリケーションに最適です。なお、事前プログラミングのサービスについては、「デバイスのカスタマイズは可能か?」のセクションをご覧ください。
品番 | 備考 | 代表的なアプリケーション |
DS28E36 | 8Kbのメモリ、双方向のECDSA/SHA-256 認証、2つのGPIO、デクリメント・カウンタ、RNG(乱数発生器)、ECDH(楕円曲線 ディフィー・ヘルマン鍵交換) |
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DS28E38 | 2Kbのメモリ、単方向のECDSA認証、ChipDNA、デクリメント・カウンタ、RNG |
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DS28E39 | 2Kbのメモリ、双方向のECDSA認証、ChipDNA、デクリメント・カウンタ、RNG |
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DS28E83 | 10KbのOTPメモリ、双方向のECDSA/SHA-256認証、放射線に対する高い耐性、RNG、ECDH |
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DS28E84 | 15KbのFRAM、10KbのOTPメモリ、 双方向のECDSA/SHA-256認証、放射線に 対する高い耐性、RNG、ECDH | |
DS2476 | I2Cインタフェースによるホストとの通信。 データ、暗号鍵、認証用ストレージのための8Kbのメモリ |
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識別+SHA-3認証、セキュアEEPROM
このカテゴリの製品は、SHA-3と対称鍵を用いるチャレンジ&レスポンス方式のセキュア認証モデルを採用しています。各製品は、ChipDNA技術をベースとするPUFによってデータを保護します。また、セキュリティに関する攻撃から保護するための堅牢な対抗措置も備えています。事前プログラミング・サービスについては、「デバイスのカスタマイズは可能か?」のセクションをご覧ください。
品番 | 備考 | 代表的なアプリケーション |
DS28E50 | 2Kbのメモリ、双方向のSHA-3認証、ChipDNA、デクリメント・カウンタ、RNG |
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DS2477 | ホストとの通信用のI2Cインタフェースと内蔵型の1-Wireマスタ |
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DS28E16 | 256ビットのメモリ、単方向のSHA-3認証、 デクリメント・カウンタ、RNG。非常に低コスト |
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識別+データ・ロギング
このカテゴリの製品は、温度のデータを収集するための自己完結型のデータ・ロガーとして機能します(Thermochron®)。「DS1923」は湿度を記録する機能も備えています(Hygrochron™)。各製品の主な違いとしては、データ用のメモリのサイズとデータの保護のレベル(パスワード)が挙げられます。様々なアプリケーションの要件を満たすために、様々な温度範囲に対応する製品を提供しています10。
品番 | 備考 | 代表的なアプリケーション |
DS1921G | 2KBのメモリ、-40℃~85℃に対応する温度ロガー |
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DS1921H | 2KBのメモリ、15℃~46℃に対応する高分解能の温度ロガー | |
DS1921Z | 2KBのメモリ、-5℃~26℃に対応する高分解能の温度ロガー | |
DS1922E | 8KBのメモリ、15℃~140℃に対応する温度ロガー | |
DS1922L | 8KBのメモリ、-40℃~85℃に対応する温度ロガー | |
DS1922T | 8KBのメモリ、0℃~125℃に対応する温度ロガー | |
DS1923 | 8KBのメモリ、-20℃~85℃に対応する温度/湿度ロガー | |
DS1925 | 122KBのメモリ、-40℃~85℃に対応する温度ロガー |
1-Wire製品を試すにはどうすればよいのか?
続いて、1-Wire製品の評価方法について説明します。必要なものは、評価の対象とする1-Wire製品、1-Wireに対応するアダプタ、評価用ソフトウェア、配線用のケーブルです。それらに加え、USBポートに空きがあり、インターネットにアクセス可能なPCを用意します。製品の価格や在庫については、アナログ・デバイセズのウェブサイトをご覧ください。評価用のソフトウェア「OneWireViewer」11や関連するドライバは無料でダウンロードすることができます。
より経済的な方法は、評価用キット(EVキット)を1つ購入することです。各EVキットには、1-Wire対応のアダプタ、1-Wire製品(iButtonデバイスを含む)、必要なケーブル、アクセサリが含まれています。表1は、本稿の執筆時点で入手可能なEVキットについてまとめたものです。ただ、新しい製品がリリースされれば、EVキットの内容は変更される可能性があります。また、EVキットに含まれていない製品は別途購入しなければなりません。EVキットで使用するソフトウェアは、アナログ・デバイセズのウェブサイトから無料で入手可能です。製品のセキュリティ・レベルによっては、ご要望に応じる形で入手することもできます。なお、アプリケーションに対してどのEVキットが最適なのかは、パッケージの種類(プラスチックまたはiButton)によって決まります。
EVキットの品番 | 評価の対象 | 1-Wire対応アダプタの種類 | EVキットの内容 | 備考 |
DS9092K# | iButtonデバイス | USB、DS9490R |
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DS1921K# | iButtonデバイス | USB、DS9490R |
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DS1925EVKIT# | iButtonデバイス | USB、DS9490R |
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DS1922L、DS1922T、DS1922E、DS1923との互換性あり(これらのICはキットには含まれていない) |
DS1964SEVKIT# | DS1964S | USB、DS9400 |
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DS28EA00EVKIT# | DS28EA00 | USB、DS9490R |
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DS28E05EVKIT# | DS28E05 | USB、DS9481R-3C7 |
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このキットは、TSOCまたはTO-92で提供されている他の1-Wire製品の 評価にも使用できる |
DS28E80EVKIT# | DS28E80 | USB、DS9481R-3C7 |
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DS28E15EVKIT# | DS28E15 | USB、DS9400 |
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DS28E16EVKIT# | DS28E16 DS2477 |
USB、DS9481P-300# |
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DS28E22EVKIT# | DS28E22 | USB、DS9400 |
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DS28E25EVKIT# | DS28E25 | USB、DS9400 |
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DS28E36EVKIT# | DS28E36 DS2476 |
USB、DS9481P-300# |
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DS28E38EVKIT# | DS28E38 DS2476 |
USB、DS9481P-300# |
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DS28E39EVKIT# | DS28E39 DS2476 |
USB、DS9481P-300# |
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DS28E50EVKIT# | DS28E50 DS2477 |
USB、DS9481P-300# |
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DS28E83EVKIT# | DS28E83 DS2476 |
USB、DS9481P-300# |
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DS28E84EVKIT# | DS28E84 DS2476 |
USB、DS9481P-300# |
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アプリケーションを構築するために必要な次のステップは?
1-Wire製品を選択したら、マスタ(EVキット内の1-Wire対応アダプタに相当するもの)の種類を選択する必要があります。組み込みアプリケーションを構築する場合、利用可能なシステムのリソースに応じて多くの選択肢が存在することになります12。アプリケーションによっては、1-Wire対応デバイスの間でかなりの数のケーブル配線が必要になることがあるでしょう。そのような場合には、専用のマスタ製品が役に立ちます13。
1-Wire対応デバイスとの通信、データの書き込み/読み出し、制御機能の実行には、ハードウェアに加えてファームウェアが必要です。アナログ・デバイセズのウェブサイトでは、様々なプラットフォーム用の各種ソフトウェア・ドライバをダウンロードできます14。各製品固有のドライバ、API(Application Programming Interface)、ソフトウェアのサンプルについては1-Wire Software Resource Guide Device Description(1-Wireソフトウェア・リソース・ガイド デバイス解説)をご覧ください15。このガイドには、OWFS(1-Wire File Structure)に基づくAPI関数に関する説明も含まれています16。それらは、数百バイト以上のデータを扱う場合に特に役に立ちます。
デバイスのカスタマイズは可能か?
アナログ・デバイセズは、デバイスのカスタマイズについて2種類の選択肢を用意しています。カスタムROMは識別専用の製品で広く使われており、64ビットのID番号を備える製品すべてに適用できます。カスタムROMでは、単一のお客様に対して68.7×109(36ビットに相当)という膨大な数の番号が用意されます。カスタムROMの例については、アプリケーション・ノート178「1-Wire製品によるプリント回路基板の識別」をご覧ください8。なお、この種のカスタマイズは製品のパッケージングの前に行われます。そのため、リードタイムが長くなります。
もう1つの選択肢は、EEPROM/OTP/FRAMを搭載するSHA-256/ECDSA/SHA-3対応製品向けのものです。それらの製品については、データや秘密鍵をセキュアにインストールするための事前プログラミング・サービスを提供しています。これについては工場に技術サポートを依頼して詳細を確認してください。
まとめ
1-Wire技術はシリアル通信向けのプロトコルです。1本のデータ・ラインとグラウンド基準を使用するだけで、マスタとスレーブの間の通信を実現できます。1-Wireのスレーブは、プラスチック・パッケージ、バンプ付きのダイ、ステンレス製のiButtonの形で提供されています。また、スレーブは最小限の機能として64ビットのID番号を提供します。製品によっては、それ以外の様々な機能も備えています。具体的には、PIO、温度センサー、時間用のカウンタ、NV SRAM、OTP EPROM、EEPROM、SHA-256/SHA-3/ECDSA対応のエンジン、SHA-256/SHA-3/ECDSA対応のセキュアEEPROM、温度/湿度のロギング機能などがあります。1-Wire対応デバイスの代表的なアプリケーションとしては、消耗品、ラック・カード、プリント基板、コンピュータ機器のアクセサリの識別/認証や、IPの保護(複製防止など)が挙げられます。iButtonデバイスは、もっと複雑な用途でも活用できます。例えば、入退室管理、アセット管理、巡回警備システム、勤怠管理、電子マネーなどです。更には、食品や医薬品の安全性を確保するための温度の監視といった用途にも利用できます。1-Wire技術の採用を検討する際には、評価用のスタータ・キットやソフトウェア・ドライバを活用するとよいでしょう。
参考資料
1 アプリケーション・ノート 4132「電気機械式接点を実現する 1-Wire Contact Packageの取り付け方法」
2 アプリケーション・ノート 3808「iButtonデバイスとは」
3 アプリケーション・ノート4002「フリップチップとチップスケールパッケージの技術およびそのアプリケーションについて」
4 Application note 4037「Regain Location Information by Leveraging the 1-Wire Chain Function - A Simple Signaling and Protocol Method Determines Device Physical Location(1-Wireのチェーン機能を活用した位置情報の取得 - シンプルなシグナリングとプロトコルにより、デバイスの物理的な位置を特定)」
5 Application note 517「DS1371/DS1372/DS1374 32-Bit Binary Counter Time Conversion(DS1371/DS1372/DS1374の32ビット・バイナリ・カウンタによる時間変換)」
6 Application note 1820「White Paper 1: SHA Devices Used in Small Cash Systems(ホワイトペーパー1:小規模なキャッシュ・システムで使用されるSHAデバイス)」
7 アプリケーション・ノート186「1-Wireデバイスによるグローバル識別番号の作成」
8 アプリケーション・ノート 178「1-Wire製品によるプリント回路基板の識別」
9 アプリケーション・ノート 3675「セキュア認証によるR&D投資の保護」
10 アプリケーション・ノート 3892「iButtonセンサーと温度/湿度データロガーの概要」
11 Application note 3358「OneWireViewer User's Guide(OneWireViewerユーザ・ガイド 」
12 Application note 4206「Choosing the Right 1-WireR Master for Embedded Applications(組込みアプリケーション用の正しい1-Wireマスターの選択)」
13 アプリケーション・ノート 244「高度1-Wireネットワークドライバ」
14 Start page, Software Development Kits(スタート・ページ、ソフトウェア開発キット)
15 アプリケーション・ノート 155「1-Wireソフトウェアリソースガイド デバイス解説」
16 Application note 114「1-Wire File Structure(1-Wireファイル構造)」
この記事に関して
製品
1-Wire、デュアルチャネル、アドレス指定可能なスイッチ
DeepCoverセキュアSHA-3認証用IC、ChipDNA PUF保護内蔵
1-WireセキュアSHA-3認証用IC
iButtonスタータキット
SHA-256を備えたDeepCoverセキュア認証iButton
Thermochron iButtonデバイス
iButton Hygrochron温度/湿度ロガー 、8KBデータログメモリ内蔵
iButton高密度温度ロガー、122KBデータログメモリ内蔵
8KBデータログメモリ内蔵、iButton高温度ロガー
1-Wire EEPROM
1024ビット、1-Wire EEPROM
耐ガンマ線1-Wireメモリ
iButton 1024ビットEEPROM
iButton 16Kbアドオンリー
DeepCoverセキュア認証用IC
DeepCover耐放射線1-Wireセキュア認証用IC
DeepCoverセキュアSHA-3コプロセッサ、ChipDNA PUF保護内蔵
DeepCoverセキュアECDSA双方向認証用IC、ChipDNA PUF保護内蔵
DeepCover耐放射線、大容量、1-Wire認証用IC
資料
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