電気機械式接点を実現する 1-Wire Contact Packageの取り付け方法

2007年11月26日
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概要

1-Wire® Contact Package は、アナログ・デバイセズが特許を取得済みの技術を採用したパッケージです。このパッケージは、電気機械的接点を実現することを可能にします。このアプリケーション・ノートでは、その詳細について説明します。そのなかでは、従来のパッケージ技術に対する1-WireContact Package の優位性について示すことにします。また、1-Wire Contact Package を採用したデバイスをアクセサリや消耗品に接続するために推奨される方法について解説します。更に、同パッケージの機械的な仕様、信頼性に関する試験の概要なども紹介することにします。

はじめに

非電子的な従来のペリフェラルや消耗品に、電子機能を追加できるようにすることが求められるケースが増えています。システムの観点から必要とされる標準的な機能としては、キャリブレーション・データや製造情報の保存機能、ペリフェラル/アクセサリ/消耗品の認証機能などがあります。このような電子的な要件に対応するには、適切なメモリとセキュリティ機能を選択する必要があります。それだけでなく、ホスト・システムとペリフェラルの間の電気的な接続を追加しなければなりません。

1-Wire Contact Package は、以前はSFN パッケージと呼ばれていたものです。これは、特に電気機械的接点を利用したいケースを対象として設計されています。このパッケージの標準的なアプリケーションとしては、メモリ・チップに保存されたデータを用いた物品の識別/認証や自動キャリブレーションなどが挙げられます。認証は、各種製品などの信頼性と品質を保証することに役立ちます。つまり、質の低い模倣品などによって信頼性と品質が損なわれる状況を回避できます。1-Wire ContactPackage は、例えばプリンタの消耗品、医療用のセンサー、試薬瓶などの認証を実現するために最適な技術です。

なお、1-Wire Contact Package は、接点によって接続を実現するアプリケーションを対象として設計されています。はんだ付けによる接続は行えません

1-Wire Contact Package の概要

1-Wire Contact Package は、電気機械的接点をアプリケーションに組み込みたい場合に最適なソリューションです。IC と接点パッドを1 つのパッケージで提供することにより、実装面積の削減と機械的信頼性の向上が実現されます。図1 に、1-Wire Contact Package の例を示しました。

図1. 1-Wire Contact Package の外観。サイズは6mm×6mm×0.9mm です(ゲージの目盛りの単位はcm)。

図1. 1-Wire Contact Package の外観。サイズは6mm×6mm×0.9mm です(ゲージの目盛りの単位はcm)。

パッケージの実現形態

1-Wire Contact Package のサイズには、3 つの選択肢があります(表1)。図2 に、それらの相対的な大きさの違いを示しました。

表1. パッケージと接点パッドの寸法
パッケージの寸法〔mm〕 I/O パッド〔mm〕 GND パッド〔mm〕 パッケージ・コード 外形図の番号
3.5 x 5 x 0.35 1.2 x 4.8 1.2 x 4.8 S23A5N+1 21-0661
6.5 x 3.5 x 0.7 2.7 x 2.7 2.7 x 2.7 T23A6N+1 21-0575
6 x 6 x 0.9 3.55 x 2.6 5.05 x 2.6 G266N+1 21-0390

図2. 3 種類の1-Wire Contact Package(底面図)

図2. 3 種類の1-Wire Contact Package(底面図)

リード・フレームの材料は銅合金(CDA194)です。パッドについては、1.02μm のニッケル、0.02μm のパラジウムの下地メッキの上に0.005μm の金メッキが施されています。モールド材料は「Sumitomo® G600/G770」またはそれに類似する製品です。その他の機械的データについては、表1 に示した外形図を参照してください。

取り付け方法

1-Wire Contact Package の取り付け方法として推奨されるのは、機械式クリップを使うというものです。アプリケーションごとに仕様が異なるため、機械式クリップについては、最終顧客がそれぞれの最終製品に対応するものを設計する必要があります。図3 に示したのは、カスタム・メイドの固定用クリップの設計例です。また、図4 には、認証の対象となる製品に組み込まれる商用機械式クリップの例を示しました。1-Wire Contact Package は、プラスチック製の物体に射出成形することも可能です。これについては、アプリケーション・ノート4717「コネクタまたは家電品へのIC の射出成形」をご覧ください。

図3. 固定用クリップに挿入する前の状態、挿入した後の状態

図3. 固定用クリップに挿入する前の状態、挿入した後の状態

図4. 最終製品にクリップで取り付けられた1-Wire Contact Package

図4. 最終製品にクリップで取り付けられた1-Wire Contact Package

クリップではなく、両面発砲テープや両面テープを使って取り付けを行うこともできます。例えば、3M®は、多様な環境で使用できるように設計された感圧接着剤を製造しています。

コネクタの選択

1-Wire Contact Package は、業界標準の低コストのコネクタと共に使用できるように設計されています。以下では、2 つの商用コネクタと1 つのカスタム・コネクタを例にとって解説を進めます。

【例1】Bourns のモジュラー・コンタクト
まずはBourns のモジュラー・コンタクト「70AB/Male」を取り上げます。図5 は、この1.27mmピッチのコネクタが備える接点のおおよその位置を示したものです。同コネクタの接点は、6.5mm×3.5mm または6.0mm×6.0mm の1-Wire Contact Package に適しています。これを使用する場合、挿入時に接点のワイピングを行います。

図5. 70AB/Male の接点の位置

図5. 70AB/Male の接点の位置

【例2】Mill-Max Mfg のスプリング装填コンタクト
続いて、Mill-Max Mfg のスプリング装填コンタクト「811/813 Series」の例を示します。図6 に、この2.54mm ピッチのピストン・コネクタが備える接点のおおよその位置を示しました。このコネクタの接点は、3 種類の1-Wire Contact Package のいずれにも適合します。

図6. 811/813 Series の接点の位置

図6. 811/813 Series の接点の位置

【例3】カスタム設計のコネクタに関するガイド
図7 に示したのは、スルー実装方式のカスタム・スプリング接点の構造に関する設計ガイドです。この設計には、挿入時にバネに対して1-Wire Contact Package をスライドさせることでワイピングできるというメリットがあります。

図7. カスタムの接点の設計例

図7. カスタムの接点の設計例

実施される信頼性試験

当然のことながら、1-Wire Contact Package については品質/信頼性を評価するための試験が行われています。-40℃~85℃の工業温度範囲で、従来のIC パッケージと同じレベルの信頼性が実現されていることが確認されています。具体的には、表2 に示した試験が実施されています。

表2. 1-Wire Contact Package の品質評価試験
試験A 動作寿命試験(125℃、5.5V、1000 時間)
機械的検証試験(X 線、寸法、マーク、リードの強度)
保管寿命試験(150℃、バイアスは非印加、1000 時間)
温度サイクル試験(-55℃~125℃、1000 サイクル)
温度湿度バイアス試験(85℃、85% R.H.、5.5V、1000 時間)
バイアス非印加の耐湿性試験(85℃、85% R.H.、1000 時間)
試験B 機械的寿命試験(200g の衝撃、30 サイクル)の後に、温度サイクル試験(-55℃~125℃、1000 サイクル)
機械的寿命試験(X/Y/Z 軸に10g/5Hz~2kHz の振動、30 時間)の後に、温度湿度バイアス試験(85℃、85% R.H.、5.5V、1000 時間)

1-Wire Contact Package の品質評価試験の結果は、こちらからダウンロードできます。

まとめ

従来、物品の識別/認証を行う手段としては、対象となるペリフェラルなどに、IC を実装したプリント基板モジュールを取り付けるという方法が使われていました。1-Wire Contact Package は、それに代わる費用対効果の高い手段です。その取り付けは、クリップ型の固定用器具を非電子式の製品に組み込んだり、両面接着テープを使用したりすることで実現できます。電気的接続には、モバイル・バッテリ用のものなど、安価なコネクタを使用することが可能です。しかも、1-Wire Contact Package は従来のIC パッケージと同等の信頼性を備えています。

1-Wire は、Analog Devices, Inc.の登録商標です。
3M は、3M Company の登録商標および登録役務商標です。
Sumitomo は、住友化学株式会社の登録商標です。


著者について

Aaron Arellano
Aaron has been a Staff Applications Engineer at Analog Devices for over ten years. He currently works as an intermediary between design, verification and customer applications. During this time he has developed several sof...

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