iButton®センサーと温度/湿度データロガーの概要

2006年11月01日
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要約

このアプリケーションノートでは、基本的なiButtonデータロガーの定義を行い、これらの製品が温度や湿度のデータを追跡しどのように変化したかをを示します。よく使用されているアプリケーションを紹介します。データロガーがどのように組み立てられ、テストされ、認定されて様々な安全性およびEMI関連の規格に合格するかを説明します。柔軟でプログラマブルな各iButtonデータロガーは、アプリケーションに必要なデータを収集するために、ユーザによる設定(「ミッショニング」と呼ばれるステップ)を行うように設計されています。ミッショニングのためのソフトウェアについて検討し、読者が入手できるようにします。データ表示のフォーマットを示します。

はじめに

企業は顧客に対して、自社の製品やサービスについて最高の品質と鮮度を保証する必要があります。これは多くの企業にとって、製品の寿命、サービスの期間、または製造と配達の各段階を通した、温度と湿度の追跡管理が極めて重要であることを意味します。こうした企業ニーズをサポートするため、マキシムはいくつかのディジタル温度計と温度/湿度データロガーを設計しました。

ディジタル温度計

DS1920 iButtonは、周囲の環境または自分が添付されている対象物の温度を読み取るディジタル温度計です。1-Wire®プローブをDS1920に触れさせるだけで、-55℃~+100℃の範囲で測定された周囲の温度が明らかになります。

温度データロガー

Thermochron®ファミリのiButtonは、温度の変動に弱い物品と一緒にどこにでもついて行く、グローバルにアドレス可能な専用の「トラッカー(追跡者)」です。小型で耐久性のあるThermochronは、時間と温度を監視し、データを格納します。データは簡単にアップロードして分析することができ、製品に熱的ダメージが生じる可能性を検出します。

いくつかのiButtonから選択することができます。 DS1921GDS1921H、およびDS1921Zは、標準型Thermochronです。DS1922LDS1922T、およびDS1922Eは、より多くのロギング用メモリを備え、精度と分解能が増大した大容量型Thermochronです。

Thermochronに組み込まれているコンピュータチップには、1-Wireトランスミッタ/レシーバ、グローバルに一意なアドレス、温度計、時計/カレンダー、熱履歴ログ、および出荷送り状、ミッション認証証明(アプリケーションノート1200 「White Paper 7: Thermochron Mission Authentication and Security」参照)などのユーザデータを格納するための512バイトの補助メモリが集積化されています。再利用可能なThermochronは、10年以上にわたってデータを記録します。内部バッテリ残量の確認を行う方法については、アプリケーションノート3761 「DS1922/DS1923バッテリガスゲージ」をご覧ください。

ディジタル湿度計

当社のHygrochron™ iButton (DS1923)には、Thermochronの温度ロギング機能に加えて、組込みの湿度センサが追加されています。Hygrochronの上蓋にある小さな開口部には特殊なフィルタが使用されており、水蒸気は通過して内部の湿度センサに到達しますが、液体相の水は弾かれます(図1)。Hygrochronは温度と湿度の両方のデータを収集し、相対湿度を時間の関数として記録します。

図1. Hygrochronデータロガーのイラスト。容器の小さなサイズと、外部フィルタを通して水蒸気がデバイス内部の湿度センサに到達する仕組みが示されている。

図1. Hygrochronデータロガーのイラスト。容器の小さなサイズと、外部フィルタを通して水蒸気がデバイス内部の湿度センサに到達する仕組みが示されている。

温度と湿度の両方が重要なアプリケーション(たとえば、食品、化学製品、粉末、空調システムなど)の場合、Hygrochronはこれまでに類のない性能を、信じられないほどコンパクトな可搬性の高いパッケージで提供します。

頑強なiButtonはほとんど何にでも取付け可能

16mmのiButton (ほぼ米国の10セント硬貨を5枚重ねた大きさ)は、壁面、瓶、荷物、箱、木枠、パレット、空輸コンテナ、冷蔵庫、セミトレーラ、鉄道貨車など、ほとんどどんな面にでも目立たないように取り付け可能です。iButtonのステンレススチールの装甲は、汚れ、湿気、手荒な扱いなどに良く耐えます。

EMC、安全性、および食品輸送の認定

当社のデータロギング用iButtonは、すべて独立研究機関による徹底したテストを受けており、FCCおよびCEの電磁適合性(EMC)試験に合格しています。DS1921G、DS1922H、DS1922T、およびDS1923は、UL#913規格に沿ったUL安全性適合認定を受けています。これらの製品は、危険な場所で使用しても本質的に安全な機器として認定されています。最後に、DS1921GとDS1922HはEN12830欧州規格への適合を認定されています。これには、チルド、冷凍、急速冷凍/瞬間冷凍の各食品およびアイスクリームの輸送、保存、および配達に関する能力と適性のテストが伴います。全iButtonデータロガーはNISTの追跡可能なリファレンスデバイスに対して較正/認定されており、マキシムはDS1922シリーズおよびDS1923データロガーの認定証を生成するウェブアプリケーションも提供しています。詳細についてはアプリケーションノート4629 「iButtonデータロガーの較正とNIST証明書に関するFAQ 」をご覧ください。

万能データストレージ:ログとヒストグラムの書式

ThermochronおよびHygrochron iButtonは、一定時間の間隔で起動して、温度や湿度の測定値をタイムスタンプ付きで取得し、オンボードの「データログ」メモリにデータをログ形式で格納します。標準型Thermochron (DS1921G/H/Z)は、1分~255分の間隔で2048回の測定が可能です。大容量型Thermochron/Hygrochronは、1秒~273時間の間隔で8192回の測定が可能です。さらに、Hygrochronは温度と湿度の同時ロギングが可能であり、選択可能な分解能の設定を提供します。

図2. 典型的なログのグラフは、時間軸に沿った温度の追跡結果を示している。監視のスケジュールと温度範囲はユーザが設定する。

図2. 典型的なログのグラフは、時間軸に沿った温度の追跡結果を示している。監視のスケジュールと温度範囲はユーザが設定する。

iButtonがどのようにデータをロギングするかは、ユーザが設定することができます。これをiButtonの「ミッショニング」と呼びます。典型的なミッショニングでは、いつ温度/湿度の読取りを開始するかを選択し、サンプリングレートを設定し、上限下限の閾値を設定します(図2)。また、データログメモリが一杯になったときどうするか、デバイスにデータの記録を続けさせ、最も古いデータレコードから上書きしていくか(「ロールオーバ」と呼びます)、それとも単にロギングを終了させるかも決定します。iButtonのミッショニングが終われば、監視する対象物に付着させることができます。重大な温度/湿度への露出が発生するとイベントが記録され、製品の品質にダメージがあった場合に説明責任の割当てが可能になります。

標準型のDS1921G、H、およびZの各Thermochronは、各温度サンプルを同時にヒストグラムにも格納します。ヒストグラムのメモリは、DS1921Gでは2℃ごとの63本、DS1921H/Zの各デバイスでは0.5℃ごとの64本で構成されます。各ビンには、65,500件の温度読み値を最大10年にわたって保存できます。ヒストグラム方式のデータストレージは、長期的な監視を必要とする代わりにあまり厳密な精度は要求されないというアプリケーションに最適です。より大容量のThermochronおよびHygrochronシリーズにはヒストグラム機能がありませんが、ほぼ4倍近いデータロギングメモリを備えています。

Thermochron製品ファミリ

標準型ThermochronのDS1921Gは、-40℃~+85℃という広い温度範囲にわたって温度のロギングを行います。DS1921HとDS1921Zは、このデバイスの高分解能版です。DS1921Hは人間の温度範囲向けに、一方のDS1921Zは0℃付近で高分解能を必要とするアプリケーション向けに設計されています。基本的なデータロガーの仕様については、表1をご覧ください。

DS1922L、DS1922T、およびDS1922Eは、大容量Thermochronです。DS1922Lは-40℃~+85℃の温度を記録します。8192バイトの温度ログを備え、-10℃~+65℃の範囲で精度を(ソフトウェアによって) ±0.5℃に修正可能です。また、選択可能な8ビット(0.5℃)または11ビット(0.0625℃)の分解能を備えています。温度ログの値は、8ビットまたは16ビットを選択可能です。DS1922Lに良く似たDS1922T Thermochronは、より高い温度ロギング範囲(0℃~+125℃)を持っており、滅菌を伴う製造プロセスで使用することができます。DS1922Tの精度は、+20℃~+75℃の範囲でソフトウェアによって±0.5℃に修正可能です。DS1922Eの温度ロギング範囲は+15℃~+140℃です。デバイスは、+110℃~+140℃で精度±1.5℃較正されます。(ソフトウェア修正は適用されません。)

表1. iButtonデータロガーの基本仕様
Part Temperature Range (°C) Humidity Range Temperature Accuracy* (°C) Temperature Resolution (°C) Humidity Resolution Data Log Memory (Bytes)
DS1921G -40 to +85 N/A ±1 0.5 N/A 2048
DS1921H-F5 +15 to +46 N/A ±1 0.125 N/A 2048
DS1921Z-F5 -5 to +26 N/A ±1 0.125 N/A 2048
DS1922L -40 to +85 N/A ±0.5, software correction (SC) 0.5 or 0.0625 N/A 8192
DS1922T 0 to +125 N/A ±0.5 (SC) 0.5 or 0.0625 N/A 8192
DS1922E +15 to +140 N/A ±1.5 0.5 or 0.0625 N/A 8192
DS1923 -20 to +85 0 to 100% RH ±0.5 (SC) 0.5 or 0.0625 8-Bit (0.6%RH) or 12-Bit (0.04%RH) 8192
*The temperature accuracy shown in this table is effective over most of the temperature range for the part. For full-range accuracy, please refer to each part's data sheet.
*この表で示した温度の精度は、その製品の温度範囲の大部分について有効です。全範囲の精度については、各製品のデータシートをご覧ください。

Thermochronのミッションニング

ThermochronまたはHygrochron iButtonのミッショニングは、PCまたはハンドヘルドコンピュータを使用して行います。iButtonをBlue Dot™レセプタ(低コストなリーダインタフェース)に接続し、さらにそれをコンピュータに装着した1-Wireアダプタに接続します。このWebサイトでは、開始時間、サンプリングレート、およびアラームスレッショルドを設定するための、フリーの評価ソフトウェアを提供しています(この後の「無料評価用ソフトウェアのダウンロード方法」参照)。

この低コストリーダインタフェースには、次のものが含まれています。

DS1402D-DR8 Blue Dotレセプタ
DS9097U-S09 1-Wire/RS-232アダプタ
または
DS9490R 1-Wire/USBアダプタ

無料評価用ソフトウェアのダウンロード方法

無料評価用ソフトウェアのダウンロードには、2つの段階があります。まず第1に、1-Wireドライバ、version 4.00以上をインストールしてください。 このドライバはここからダウンロード可能であり、OneWireViewerのダウンロードとインストールを行うためのリンクが含まれています。これは、iButtonデータロガーファミリ全体をサポートするJava™プログラムです。もちろんこのソフトウェアは、PCに適切なハードウェアがインストールされていることを要求します。それには、1-WireアダプタをPCに装着し、Blue Dotレセプタをそのアダプタに接続し、ThermochronまたはHygrochronをBlue Dotに装着します。次に、OneWireViewerを実行して、iButtonのシリアル番号をクリックします。するとプログラム/ミッションウィザードが起動して、温度/湿度ロギングミッションの設定を行うための手順を案内してくれます。

簡単にまとめると、次のような手順になります。

  1. クロックを設定する。
  2. 時間アラームを設定する。
  3. サンプルレートを設定する。
  4. 温度/湿度アラームを設定する。
  5. ミッション開始ディレイを設定する。
  6. ミッションがいつ終了するか確認する。データロールオーバの有無を設定する。
  7. 完了

ソフトウェアのダウンロード/インストール方法、およびプログラム/ミッションウィザードの操作方法についてはアプリケーションノート4373 「OneWireViewer およびiButtonクイックスタートガイド」およびアプリケーションノート3358 「OneWireViewerユーザガイド」に記載されています。

プログラマへの注:次の各キットに、Thermochron/Hygrochronのミッションニングとダウンロードを行うアプリケーション例が含まれています。

  • 1-Wire SDK for Windows (Visual Basic)には、標準型Thermochronのサポートが含まれています。1-Wire Driversパッケージには、大容量型ThermochronおよびHygrochron用の.NETサポートが含まれています。
  • 1-Wire API for JavaにはOneWireViewer のソースコードが含まれています。
  • 1-Wire Public Domain Kit (C)には、「humalog」プログラムとHygrochronおよび大容量型Thermochron用のソースコードが含まれています。また、標準型Thermochronをサポートするソースコード付きの「thermodl」プログラムも同梱されています。

スターターキットがご利用いただけます

短時間でThermochronを使える状態にしたい場合は、DS1921K Thermochron iButton Starter Kitをご利用ください。このキットには、Thermochron iButtonの設定を行い、結果データを参照するために必要な、すべてのハードウェアが含まれています。データを保存または他のアプリケーションにインポートすることも可能です。

このキットには、次のものが含まれています。

  • DS1921G Thermochron iButton
  • DS9093F iButtonキーリングフォブアタッチメント
  • DS9490R 1-Wire /USB変換アダプタ
  • DS1402D-DR8 RJ-11コネクタ付きのBlue Dotレセプタ
  • 取扱説明書

DS1921Kのスターターキットは、Maxim Directでご発注いただけます。

Thermochron のFAQ

Thermochron FAQのセクションをご覧ください。

Thermochron/Hygrochronソリューション

ThermochronおよびHygrochron製品を中心とするハードウェアおよびソフトウェアソリューションが、いくつかのパートナーによって開発されています。これには、PCとハンドヘルド両方のプラットフォームで動作するソフトウェア製品が含まれており、数千のThermochronに対して、ミッショニング、アップロード、およびデータ管理を行うことができます。ハードウェア製品は、Thermochronsのミッショニングを行いアラームステータスを読取るための小型の電子デバイスから、HACCPアプリケーション向けのデータ収集デバイスまで、多岐にわたります。



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