概要
設計リソース
設計/統合ファイル
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• Assembly Drawing 設計ファイルのダウンロード 2.32 M
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- EVAL-CN0328-SDPZ ($347.22) Completely Isolated 4-Channel Multiplexed HART Analog Output Circuit
- EVAL-SDP-CB1Z ($116.52) Eval Control Board
デバイス・ドライバ
コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。
AD5755 IIO Multi-Channel DAC GitHub Linux Driver Source Code
機能と利点
- 4mA~20mAの電流または電圧出力用HART準拠のソリューション
- 完全絶縁型
- 4つの多重化出力
参考資料
-
CN0328: 完全絶縁型の4チャンネル多重化HARTアナログ出力回路2014/08/04PDF828 kB
回路機能とその特長
図1に示す回路は、AD5755-1(ダイナミック電力制御機能を備えた4チャンネルの電圧および電流出力DAC)とHARTモデム AD5700-1 を組み合わせて、完全絶縁型の多重化HART®1アナログ出力ソリューションを提供します。電力は、ボードに実装されたトランス絶縁型電源回路(出力が±13Vと+5.2Vで、負荷電流に依存)または端子ブロックに接続された外部電源から供給することができます。この回路は、ユニポーラまたはバイポーラの電圧出力とともに、4mA~20mAの複数のHART互換電流出力を必要とする、プラグラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)と分散制御システム(DCS)モジュールでの使用に適しています。過酷な工業環境に置かれるアプリケーションにとって重要な外部トランジェント保護回路も搭載しています。
AD5755-1 DACはソフトウェアにより設定可能なので、必要な出力範囲とダイナミック電力制御に使用するDC/DCコンバータの設定値を容易にプログラムできます。このデバイスはスルーレート・コントロール・レジスタを含む内部コントロール・レジスタの全てにアクセスが可能です。このことはHART通信を使用するアプリケーションにとって重要です。
AD5700-1は、消費電力とフットプリントが業界最小のHART準拠ICモデムです。このデバイスは、HART周波数シフト・キーイング(FSK)半二重モデムとして動作し、必要とされる信号検出、変調、復調、信号生成の機能全てを搭載しています。0.5%の高精度発振器を内蔵しているため、ボード面積の条件が緩和され、コストが低減されます。AD5700-1は標準的なUARTインターフェースを採用しています。
デジタル・アイソレーションは、アナログ・デバイセズのiCoupler®技術を用いた4チャンネルと2チャンネルのデジタル・アイソレータ・デバイスADuM3481とADuM3210を使用して行います。iCoupler技術を使用することにより、光アイソレータを用いたソリューションで通常必要となる外付け部品を追加する必要性が減少します。絶縁バリアをまたいで電力を転送するのに外付けトランスが使用されています。
ADG759は多重化機能を備えることで、4つのアナログ出力チャンネル間のHART通信を可能にします。ADG759は、2ビットのバイナリ・アドレス・ラインA0とA1の設定に従い、4本の差動入力を切り替えて1本の共通差動出力に出力します。。デバイスがディスエーブルされると、全てのチャンネルはスイッチ・オフされます。マルチプレクサを柔軟にバイパスするバイパス・リンクが組み込まれています。
1 HARTはHART通信協会の登録商標です。


(簡略回路図:全接続の一部およびデカップリングは省略されています)
回路説明
工業用制御モジュールに対する標準的なアナログ出力電圧と電流の範囲は、±5V、±10V、0V~+5V、0V~+10V、+4mA~+20mA、および0mA~+20mAです。AD5755-1は、高精度、全機能内蔵、低価格、シングル・チップのソリューションでこれらの電圧・電流範囲全てに対応しています。電圧出力範囲は20%のオーバーレンジ機能も利用可能です。各DACチャンネルにゲイン(M)レジスタとオフセット(C)レジスタがあるため、シグナル・チェーン全体のゲイン誤差とオフセット誤差を調整することができます。
電流出力と電圧出力は個々のピンに供給され、常に1本のピンだけがアクティブ状態のため、両方の出力ピンを結合して1本の端子に接続することができます。電流出力がイネーブルされると、電圧出力がスリーステート・モードになり、電圧出力がイネーブルされると、電流出力がスリーステート・モードになります。アナログ出力は短絡状態と開放状態に対して保護されています。
AD5755-1では、図3に示すように、電圧/電流変換回路用に内部または外部の高精度電流設定抵抗を使用することができます。全温度範囲での出力電流値の安定性は、RSETの値の安定性に依存します。全温度範囲で出力電流の安定性を向上させる方法として、内部抵抗の代わりに、15kΩの外付け低ドリフト抵抗をAD5755-1のRSET_Xピンに接続することができます。外付け抵抗はDACのコントロール・レジスタを介して選択されます。「回路の評価とテスト」のセクションで説明するように、精度の測定は内部抵抗を使った場合と外部抵抗を使った場合の両方で評価しました。

高精度電圧リファレンスの選択
AD5755-1には10ppm/℃(max)のリファレンスが内蔵されています。全温度範囲で性能を向上させるため、この設計では最大ドリフトが3ppm/℃のリファレンスADR02(Bグレード、SOICパッケージ)を使用します。リファレンス入力に加えられた電圧は、DACコアにバッファ付きリファレンスを与えるために使用されます。このため、電圧リファレンスに誤差があると出力に影響を与えます。
ADR02は、最大36Vの入力電圧を許容する5V高精度リファレンスです。最大精度誤差は0.06%、最大温度ドリフトは3ppm/℃です(Bグレード、SOICパッケージ)。このドリフトを含めた場合、工業用温度範囲での誤差は約0.02%になります。長期ドリフトは50ppm(typ)、0.1Hz~10Hzでのノイズ仕様は10μV p-p(typ)です。
ダイナミック電力制御
AD5755-1はDC/DC昇圧コンバータ回路を使ったダイナミック電力制御機能を内蔵しているので、電流出力モード時の消費電力を低減することができます。PLCの電流出力回路の大部分は、固定電圧源を使用することで負荷抵抗値の全範囲で出力電圧のコンプライアンス条件を満たしています。たとえば、750Ω負荷を使った4mA~20mAのループで20mAを駆動するときは15V以上のコンプライアンス電圧が必要です。しかし、50Ω負荷で20mAを駆動するときには1Vのコンプライアンス電圧しか必要としません。50Ω負荷を駆動しているときに15Vのコンプライアンス電圧を維持すると、20mA × 14V = 280mWの電力が消費されます。
AD5755-1の回路は、出力電圧を検出してコンプライアンス電圧を安定化することによってこの電力損失をなくし、負荷抵抗に関係なくヘッドルーム電圧を小さくすることができます。AD5755-1は1kΩ負荷で最大24mAを駆動することができます。
DC/DCコンバータの動作
AD5755-1は4個の独立したDC/DCコンバータを内蔵しています。これらを使って、各チャンネルに対するVBOOST_X電源電圧のダイナミック制御を行います(図3参照)。DC/DC回路に必要なディスクリート部品を図4に示します。
図4. DC/DC回路
CDCDCの後ろに10Ωの抵抗と100nFのローパスRCフィルタを接続することを推奨します。この回路は電力を少し消費しますが、VBOOST_X電源のリップルを低減します。
DC/DCコンバータでは、AD5755-1の出力チャンネルを駆動するために4.5V~5.5VのAVCC入力を昇圧する固定周波数のピーク電流モード制御方式を採用しています。これらは、デューティ・サイクルが標準90%未満の不連続導通モード(DCM)で動作するように設計されています。
チャンネルの電流出力がイネーブルされると、コンバータはVBOOST_X電源を7.4V(±5%)または(IOUT_X × RLOAD + ヘッドルーム)のどちらか高い方の電圧に安定化します。出力がディスエーブルされた電流出力モードでは、コンバータはVBOOST_X電源を7.4 V(±5%)に安定化します。出力がディスエーブルされた電圧出力モードでは、コンバータはVBOOST_X電源を+15V(±5%)に安定化します。DC/DCコンバータの動作の詳細については、AD5755-1のデータシートを参照してください。
HART結合
AD5755-1には、4つの出力チャンネルそれぞれに対応する4本のCHARTピンがあります。HART信号をこれらのピンに結合することが可能で、この信号は出力がイネーブルされたときに対応する電流出力に現れます。CHARTピンでのHART信号に対する推奨入力電圧を表1に示します。これらの電圧を使用すると、電流出力はHARTの振幅仕様を満たします。AD5755-1のHART入力へHART信号を減衰し結合するための推奨回路を図5に示します。
RSET | CHART Input Voltage | Current Output (HART) |
Internal RSET | 150 mV p-p | 1 mA p-p |
External RSET | 170 mV p-p | 1 mA p-p |
図5. HART信号の結合
1.2kHzと2.2kHzのHART周波数が出力で大幅に減衰しないようにするには、最小限のC1 + C2容量が必要です。推奨値はC1 = 22nFとC2 = 47nFです。HARTのアナログ変化率の条件を満たすには、出力のスルーレートをデジタル制御する必要があります。
デジタル・スルーレート制御
AD5755-1のスルーレート制御機能により、出力値が変化するレートを制御することができます。この機能は電流出力と電圧出力の両方で使用できます。スルーレート制御機能をディスエーブルすると、出力値は出力駆動回路と接続された負荷で制限されるレートで変化します。スルーレート・コントロール・レジスタのSRENビットを使ってスルーレート制御機能をイネーブルすると、スルーレート・コントロール・レジスタを使ってアクセス可能なSR_CLOCKパラメータとSR_STEPパラメータによって定義されるレートで、出力が2つのレベルの間で変化します。
次式は、スルーレートをステップ・サイズ、更新クロック周波数、LSBサイズの関数として示します。
ここで、
Slew Timeの単位は秒、
Output Changeの単位はIOUT_Xではアンペア、VOUT_Xではボルトです。
詳細については、AD5755-1のデータシートを参照してください。
過渡電圧保護
AD5755-1はESD保護ダイオードを内蔵しており、通常の取扱いでの損傷を防止します。ただし、工業用制御環境ではI/O回路がはるかに高いトランジェントに曝される可能性があります。過大な電圧トランジェントからAD5755-1を保護するため、図6に示すように、IOUTとVOUTの接続部に24Vの過渡電圧サプレッサ(TVS)を設置します。保護を強化するため、IOUT_X/VOUT_XピンからVBOOST_xピンとAVSS電源ピンにクランピング・ダイオードを接続します。VSENSE_X入力と直列に5kΩの電流制限抵抗も接続します。これは、トランジェントが生じているときに電流を許容レベルに制限するためのものです。HARTモデム AD5700 用に推奨する外付けバンドパス・フィルタには、固有の安全条件に適合するところまで電流を十分低いレベルに制限する150kΩ抵抗が含まれています。この場合、入力ではさらに高い過渡電圧保護がされているため、要求の非常に厳しい工業用環境でも保護回路を追加する必要はありません。

入力電源保護
安定化された24V DC電源を2線式または3線式のインターフェースを介してボードに接続します。この電源は、図7に示すように、フォルトや電磁干渉(EMI)に対して保護する必要があります。
図7. 入力電源の過渡電圧保護
VR1、VR2、VR3、およびVR4はピエゾ抵抗、F1は正温度係数抵抗です。この回路は、電源ポートに生じる可能性があるどのような干渉にも評価システムが耐えられるようにします。詳細については、アナログ・ダイアログ 43-04 April 2009 「PLC評価用ボードによる産業用プロセス制御システムの容易な設計」を参照してください。
24Vの入力電源はPWM昇圧コントローラADP1621を駆動します。このコントローラは、絶縁とAVDD(+15V)、AVSS(−15V)、AVCC(+5V)の生成を行う3タップ・トランスを駆動します。帰還はフォトカプラPS2801-1を使って行います。
ADP1621の電源入力電圧範囲は2.9V~5.5Vですが、小信号NPNパス・トランジスタや単独の抵抗を使用することにより、もっと高い入力電圧が可能です。スイッチング周波数は外付け抵抗によって100kHz~1.5MHzの範囲に設定します。
さまざまな負荷条件でのAVDD、AVSS、AVCCの各レール電圧を表2に示します。
Setup | AVDD (V) | AVSS (V) | AVCC (V) |
電源回路が無負荷(LK2~LK5を除去) | +14.7 | -15.3 | +5.2 |
LK2~LK5を挿入、AD5755 1の出力がディスエーブル | +12.5 | -12.6 | +5.2 |
LK2~LK5を挿入、AD5755 1がIOUTモード、4チャンネルに4mA(500Ω負荷) | +12.7 | -12.8 | +5.2 |
LK2~LK5を挿入、AD5755 1がIOUTモード、4チャンネルに24mA(1 kΩ負荷) | +14 | -15.2 | +5.2 |
LK2~LK5を挿入、AD5755 1がVOUTモード、4チャンネルに10V(1.2kΩ負荷) | +13 | -13 | +5.2 |
絶縁型スイッチング電源回路を使用する代わりに、J5とJ11の端子ブロックを使う方法もあります。これらの端子ブロックを使用する場合、LK2~LK4を除去します。
デジタル・アイソレーション
ADuM3481とADuM3482は、小型20ピンSSOPパッケージ(7.2mm × 7.8mm)に収められた、3.75kVの4チャンネル・デジタル・アイソレータです。アイソレータのコアは3.0V~5.5Vの範囲で動作し、I/O電源は1.8V~5.5Vの範囲が可能です。これらのデバイスを使って1.8Vロジックと直接インターフェースすることができます。この回路では、ADuM3481を使ってAD5755-1のSPI信号を絶縁し、ADuM3482を使ってHARTモデムAD5700-1のUART信号を絶縁します。2チャンネルのADuM3210を使って4チャンネル・マルチプレクサADG759のアドレス・ラインを絶縁します。
iCoupler製品の詳細については、www.analog.com/jp/icouplersをご覧ください。回路図、部品表、EVAL-CN0328-SDPZボードのPCBレイアウト・データについては、CN-0328設計サポート・パッケージ(http://www.analog.com/CN0328-DesignSupport)を参照してください。
バリエーション回路
電流出力のみを必要とするアプリケーションでは、AD5755-1の代わりにAD5757を使用することができます。16ビット以上の分解能を必要としない場合、12ビットのAD5737を使用することができます。
AD5700-1の代わりにAD5700モデムを使用することができます。ただし、AD5700-1に備わっている内部発振器のオプションがAD5700にないため、外付け水晶発振器またはCMOSクロックが必要になります。詳細については、AD5700のデータシートとAD5700-1のデータシートを参照してください。
1チャンネルのアプリケーションについては、回路ノートCN0321「Fully Isolated, Single Channel Voltage and 4 mA to 20 mA Output with HART Connectivity」を参照してください。
回路の評価とテスト
基本的なテスト・セットアップの機能図を図8に示します。
必要な装置
- EVAL-CN0328-SDPZ評価ボード
- CN0328評価用ソフトウェア
- EVAL-SDP-CB1Zシステム・デモンストレーション・プラットフォーム(SDP-B)
- PC(Windows® 32ビットまたは64ビット)
- 24V電源
- Agilent 3458Aなどの高精度電圧計
- デジタル・テスト・フィルタ(HART通信協会から入手可能なHCF_TOOL-31など)
- 4本の500Ωの高精度負荷抵抗
- オシロスコープ(Tektronix TDS2024Bまたは相当品)

リンク構成のセットアップ
デフォルトのリンク・オプションを表3に示します。ボードはトランス絶縁型電源から給電するようにデフォルト設定されています。AD5755-1のデフォルト・リファレンス・オプションは、ADR02から供給される外部リファレンスです(LK1がポジションB)。LK10とLK24のリンクはADG759をバイパスするため、デフォルトでは使用しません。IOUT_xとVOUT_xはデフォルトで相互に接続されます(LK20、LK22、LK23、およびLK26)。
Link No. | Default Position | Option | ||||||||||||||||||||
LK1 | B | このリンクでAD5755-1のリファレンス・ソースを選択します。 ポジションAにすると、AD5755-1の内部リファレンスを選択します。 ポジションBにすると、外部リファレンスADR02を選択します。 |
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LK2 | Inserted | このリンクでAVDDの電源オプションを選択します。 このリンクを挿入すると、+24V電源から供給される内蔵AVDDを選択します。この場合、J5-3には何も接続しないことが重要です。 このリンクを除去すると、AVDDはJ5-3を介して外部電源で駆動する必要があります。 |
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LK3 | Inserted | このリンクでAVSSの電源オプションを選択します。 このリンクを挿入すると、+24V電源から供給される内蔵AVSSを選択します。この場合、J5-1には何も接続しないことが重要です。 このリンクを除去すると、AVSSはJ5-1を介して外部電源で駆動する必要があります。 |
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LK4 | Inserted | このリンクでAVCCの電源オプションを選択します。 このリンクを挿入すると、+24V電源から供給される内蔵AVCCを選択します。この場合、J11には何も接続しないことが重要です。 このリンクを除去すると、AVCCはJ11-1を介して外部電源で駆動する必要があります。 |
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LK5 | Inserted | このリンクでDVDDの電源オプションを選択します。 このリンクを挿入すると、AVCCがDVDDに接続されます。この場合、J1には何も接続しないことが重要です。 このリンクを除去すると、DVDDはJ1-1を介して外部電源で駆動する必要があります。 |
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LK6 | B | このリンクでRESETのロジック・レベルを選択します。 ポジションAにすると、RESETがDGNDに接続されます。つまり、デバイスがリセット・モードになります。 ポジションBにすると、RESETがDVDDに接続されます。 |
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LK7 | A | このリンクでPOCのロジック・レベルを選択します。 ポジションAにすると、POCがDGNDに接続され、AD5755-1は電圧チャンネルと電流チャンネルがスリーステート・モード状態でパワーアップします。 ポジションBにすると、POCがDVDDに接続され、AD5755-1は、電圧出力チャンネルは30kΩのプルダウン抵抗でグラウンドに接続された状態、電流チャンネルはスリーステート・モードの状態でパワーアップします。 |
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LK11, LK21, LK25, LK8 | Inserted | これらのリンクで、チャンネルA、チャンネルB、チャンネルC、チャンネルDそれぞれに対して、+VSENSE入力がVOUT/IOUTに接続されます。このリンクを挿入すると、+VSENSE入力はVOUT/IOUTピンに直接接続されます。このリンクを除去すると、+VSENSE入力はフロート状態のままになるため、評価ボードの外付け負荷抵抗のハイサイドに接続する必要があります。 |
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LK9 | A | このリンクでADP1621への帰還ノードを選択します。ボードのパワーアップ時にはこのリンクを切り替えないでください。ポジションAにすると、フィルタ回路後ろのAVCCノードを選択します。ポジションBにすると、あらかじめフィルタされたAVCCノードを選択します。 | ||||||||||||||||||||
LK10, LK24 | Removed | これらのリンクで、ADG759をバイパスするチャンネルを選択します(ADG759を使用しないときのみ使用)。 ポジションAにすると、チャンネルAを選択します。 ポジションBにすると、チャンネルBを選択します。 ポジションCにすると、チャンネルCを選択します。 ポジションDにすると、チャンネルDを選択します。 |
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LK12 | Inserted | このリンクを挿入すると、AVDD電源がADR02電源に接続されることにより、5Vの内蔵リファレンスに給電されます。 | ||||||||||||||||||||
LK13, LK14 | A | これらのリンクでADG759のアドレスを選択します。
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LK15 | B | ADG759をイネーブル。 ポジションA = マルチプレクサをディスエーブル。 ポジションB = マルチプレクサをイネーブル。 |
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LK16, LK17 | A | これらのリンクで、ADG759のアドレス・ピンを制御するソースを選択します。 ポジションAにすると、SDP制御を選択します。 ポジションBにすると、LK13/LK14制御を選択します。 |
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LK18, LK19 | A | これらのリンクでAD5755-1のアドレス・ピンを制御します。
|
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LK20, LK22, LK23, LK26 | Inserted | これらのリンクを挿入すると、チャンネルA、チャンネルB、チャンネルC、チャンネルDそれぞれに対して、AD5755-1のVOUTとIOUT同士が短絡されます。 |
電源構成
ボードはトランス絶縁型電源から給電するようにデフォルト設定されているため、リンクLK2~LK5を挿入します。端子ブロックを使って回路に電力を供給する場合、以下の電源を供給する必要があります。
- コネクタJ5のAVDD/AVSSに±15V。この電源はAD5755-1とリファレンスADR02の両方に供給します。
- コネクタJ11のAVCCにAD5755-1のAVCC電源用の4.5V~5.5V。
- LK5を挿入した状態では、EXT_AVCC電源はDVDDにも供給します。DVDDはAD5755 1のデジタル電源の駆動に使用され、HARTモデムAD5700-1、マルチプレクサADG759、アイソレータ・デバイスの2次側に電力を供給します。あるいは、DVDD(2.7V~5.5V)をJ1に接続された外部電源から供給することもできます。
ソフトウェアのインストール
評価用キットには自己インストール型ソフトウェアのCDが含まれています。このソフトウェアは、Windows XP(SP2)、Windows Vista(32ビットおよび64ビット)、Windows 7(32ビットおよび64ビット)上で実行できます。セットアップ・ファイルが自動で起動しない場合には、CDからsetup.exeファイルを実行してください。
PCに接続したときに評価システムが正しく認識されるように、評価用ソフトウェアをインストールしてから評価用ボードとSDPボードをPCのUSBポートに接続してください。
- 付属のケーブルを使用し、PCのUSBポートを介してEVAL-SDP-CB1Zを接続してください。
- EVAL-CN0328-SDPZ評価ボードをコネクタAに接続してください。コネクタBを使用すると、EVAL-SDP-CB1ZのUARTが正しく機能しません。
- J9コネクタに24Vを供給することによってEVAL-CN0328-SDPZをパワーアップしてください。
- EVAL-CN0328-SDPZソフトウェアを起動して、順次表示されるダイアログ・ボックスに従って最後まで進みます。これでインストールが完了します。
ソフトウェア
メイン・ソフトウェア・ウィンドウを図10に示します。最初にセットアップ・タブを使ってAD5755-1を推奨する方法でセットアップします。まずDC/DC制御の設定値、次にDAC制御の設定値をセットアップし、次いでデータ・レジスタに必要なコードをロードし、最後に出力をイネーブルします(図9参照)。セットアップ・タブには、AD5755-1の適切なプログラミングに役立つクイック・セットアップ機能が備わっています。HART通信を行うためには、電流出力範囲をイネーブルするようにします。次に、メイン・タブを使ってHARTコマンドを発行するか、またはAD5755 1の出力コードを更新することができます。



積分非直線性(INL)性能
AD5755-1のINLは、リニア電源とトランス絶縁型スイッチング電源の両方を使ってテストしました。図12と図13に示すように、スイッチング電源の場合でもリニア電源の場合でもシステム精度に顕著な性能低下はありません。AD5755-1のデータシートでは、内部のRSETを使用するか外部のRSETを使用するかに関係なく、IOUTとVOUTの両方に対して全温度範囲でのINLを±0.006% FSRと規定しています。これらのプロットは、測定結果が十分に仕様の範囲内にあることを示しています。


絶対精度性能
内部のRSETを使ったAD5755-1の電流出力モードでの総合未調整誤差(TUE)の仕様は、25℃で±0.11% FSR(max)です。リファレンスADR02(Bグレード)の総合誤差は25℃で0.06%(max)です。
内部のRSETを使った500Ω負荷時に、チャンネルAの回路で測定した4mA~20mAの範囲の電流出力の誤差を表4に示します。図14は、4チャンネル全てにおいて、内部のRSETを使った測定と外部のRSETを使った測定の結果をまとめたものです。全ての測定結果は予想値以内にあります。
Code (Hex) | IOUT (mA) | Error (% FSR) |
0000 | 4.0002 | +0.0013 |
4000 | 7.9994 | -0.0038 |
8000 | 11.9988 | -0.0075 |
C000 | 15.9982 | -0.0112 |
FFFF | 19.9990 | -0.0063 |

(内部のRSETと外部のRSET)
電圧出力モードに対して同様の測定を行いました。ここで、AD5755-1の総合未調整誤差の仕様は25℃で±0.03% FSR(max)です。チャンネルAでの測定結果を表5に示します。残りの3つのチャンネルでも同様の結果になりました。
Code (Hex) | VOUT (V) | Error (% FSR) |
0000 | -10.0032 | -0.0160 |
4000 | -5.0017 | -0.0085 |
8000 | 0.000326 | 0.0016 |
C000 | 5.0007 | 0.0035 |
FFFF | 10.0015 | 0.0075 |
HARTに準拠

500Ωの負荷抵抗の両端で測定したIOUT_Aの1200Hzと2200HzのFSK周波数を図15に示します。チャンネル1はAD5755-1の出力(4mAに設定)に結合され変調されたHART信号を示し、チャンネル2はAD5700-1のTXD信号を示しています。
図2の回路がHARTに準拠するには、HARTの物理層の仕様を満たす必要があります。HARTの仕様書には、さまざまな物理層の仕様が含まれています。ハードウェアの性能を評価するため、サイレンス時の出力ノイズとアナログ変化率の2つの仕様について検討しました。
サイレンス時の出力ノイズのテスト
HARTデバイスが送信を行っていない(サイレント)ときは、HARTの拡張周波数帯域でネットワークにノイズが混入しないようにする必要があります。過大なノイズがあると、デバイス自体またはネットワーク上の他のデバイスによるHART信号の受信に影響を与えることがあります。
500Ω負荷の両端で測定した電圧ノイズは、HARTの拡張周波数帯域内での広帯域ノイズと相関ノイズの合計が2.2mV rms以下でなければなりません。さらに、この拡張周波数帯域外でも138mV rmsを超えないようにする必要があります。
このノイズは500Ω負荷の両端にHCF_TOOL-31フィルタ(HART通信協会から入手可能)を接続し、さらにフィルタの出力を実効値タイプ(true rms)のメーターに接続して測定しました。出力波形を確認するためにオシロスコープを使用しました。
前述の直線性のテストと同様に、このテストもリニア電源と絶縁型スイッチング電源の両方を使って行いました。リニア電源を使って得られたノイズの方が絶縁型スイッチング電源を使って得られたノイズよりもはるかに小さい値で、両方とも要求されるHARTの仕様範囲内でした。
Output Noise | Inside Extended HART Frequency Range (<2.2 mV Limit) (mV rms) | Outside Extended HART Frequency Range (<138 mV Limit) (mV rms) |
Linear Power Supplies | 0.06 | 0.5 |
Switched Power Supplies | 0.3 | 2.7 |

アナログ変化率
この仕様は、デバイスが電流を調節する際、アナログ電流の最大変化率がHART通信に干渉しないことを保証するものです。電流がステップ状に変化すると、HART信号に影響を及ぼします。ワーストケースのアナログ出力電流の変化が、HARTの拡張周波数帯域において500Ω負荷の両端で測定したときに、ピークが15mVを超える外乱を生ないようにする必要があります。この要件を満たせば、アナログ信号の最大帯域幅がDC~25Hzの規定周波数帯域内であることが保証されます。
このテストの場合も、サイレンス時のノイズテストと同様に500Ω負荷の両端にHCF_TOOL-31を接続し、その出力にオシロスコープを接続しました。この場合には、AD5755-1の出力を固定出力電流に設定するのではなく、AD5755-1を4mAと20mAの間で切り替わる周期的な波形を出力するようにプログラムしました。要求されるシステム仕様を満たすため、AD5755-1のデジタル・スルーレート制御機能により出力電流の変化を制限しました。この機能は、「デジタル・スルーレート制御」のセクションとAD5755-1のデータシートで詳細に解説しています。このテストではSR_CLOCKとSR_STEPをそれぞれ64kHzと16LSBに設定し、64msのスルー時間が得られました。このテストの結果を図17に示します。チャンネル1に、4mAと20mAの間でステップする AD5755-1のIOUT_A信号を示します。この信号は500Ω負荷の両端で検出され、バンドパス・フィルタの入力に接続されます。フィルタの出力(ゲイン係数が10)がチャンネル2に示されています。ピーク値は前述の150mVのピーク制限値の範囲内です。
