概要
設計リソース
設計/統合ファイル
- Schematics
- Bill of Materials
- Gerber Files
- PADS Files
- Assembly Drawing
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- EVAL-CN0321-SDPZ ($176.55) Fully Isolated, Single Channel Voltage and 4 mA to 20 mA Output with HART
- EVAL-SDP-CB1Z ($116.52) Eval Control Board
機能と利点
- 電流出力 標準4mA~20mA
- 完全絶縁型
- HART®1互換
製品カテゴリ
マーケット & テクノロジー
使用されている製品
参考資料
-
CN-0321: HART 接続機能を備えた完全絶縁型シングル・チャンネル電圧および 4mA~20mA 出力2013/08/13PDF575K
回路機能とその特長
この回路は、標準4mA~20mAのHART®1互換の電流出力とユニポーラまたはバイポーラ出力電圧範囲を必要とするプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)や分散型制御システム(DCS)のモジュールに適した完全絶縁型アナログ出力チャンネルです。完全絶縁型アナログ出力を必要とするチャンネル間絶縁型PLC/DCS出力モジュールなどの工業用アプリケーション向けに、柔軟なビルディング・ブロックを提供します。この回路にはアナログ出力端子の外付け保護回路も含まれています。
AD5422 16ビットD/Aコンバータ(DAC)はソフトウェアで設定可能であり、必要な全ての電流と電圧の出力を供給します。
電力とフットプリントが業界最小のHART準拠ICモデムであるAD5700-1をAD5422とともに使うことで、HART互換の4mA~20mAのソリューションを構成します。AD5700-1は高精度の内部発振器を備えており、特にチャンネル間絶縁型アプリケーションでさらなる省スペースを実現します。
PLC/DCSソリューションは、グランド・ループに対する保護を行い、外部事象に対する堅牢性を確保するため、ローカルのシステム・コントローラから絶縁する必要があります。従来型のソリューションでは、電源とデジタルの両方の絶縁に別個のICを使用しています。マルチチンャネルの絶縁が必要な場合、個別にディスクリートで電源を実装するコストとスペースが大きな欠点になります。フォトカプラによる絶縁は、一般に適度な出力レギュレーションを備えていますが、外付け部品を追加する必要があるので基板面積が増加します。電源モジュールが大きくなることも稀ではなく、出力レギュレーションが不十分になる可能性があります。図1の回路では、アイソレータのADuM347xファミリーと、関連する絶縁されたフィードバックを備えた電源レギュレーション回路が使用されています。絶縁バリアをまたいで電力を転送するのに外付けトランスが使用されています。
ADuM3482はAD5700-1に対してUART信号を絶縁します。
ADP2441 36V降圧DC/DCレギュレータは、工業用の24V標準電源を受け入れ、広い範囲の入力電圧を許容します。この電源を5Vに降圧し、コントローラ側の全ての回路に電力を供給します。この回路は、24V電源端子の標準的な外部保護機能、ならびにDCの+36Vまでの過電圧と−28Vまでの低電圧に対する保護機能も備えています。
1 HARTはHART通信協会の登録商標です。

回路説明
アナログ出力
工業用制御モジュールに対する標準的なアナログ出力電圧と電流の範囲は、±5V、±10V、0V~+5V、0V~+10V、+4mA~+20mA、および0mA~+20mAです。AD5422は、プログラム可能な電流源と電圧出力を提供する高精度かつ高度に集積化された16ビットDACであり、工業用プロセス制御アプリケーションの要件を満たすように設計されています。
AD5422は前述の全ての出力範囲を備え、電流出力範囲と電圧出力範囲は別個のピンで利用可能です。10%のオーバーレンジ機能は全ての電圧範囲で利用可能です。0mA~20mAのオーバーレンジは電流出力で利用可能です。アナログ出力は短絡状態と開放状態に対して保護されています。
AD5422には10ppm/℃のリファレンスが内蔵されています。全温度範囲での性能を向上させるため、この設計ではADR02リファレンスを使用しています。ADR02は、最大36Vの入力電圧を許容する5V高精度リファレンスです。最大精度誤差は0.05%、最大温度ドリフトは3ppm/℃です。このドリフトにより、工業用温度範囲で約0.02%の誤差を生じます。
AD5422では、電流出力回路用に内部または外部の高精度電流設定抵抗を使用することができます。この設計では内部の電流検出抵抗を使用していますが、15kΩの外付け高精度抵抗を使用することにより、さらに高い精度を達成することができます。
AD5422のDVCC SELECTピンをフロート状態に保つことにより、4.5Vの内部電源がDVCCピンに接続され、AD5700-1とアイソレータのフィールド側のデジタル電源として使用されます。代わりに、ADuM3471の5V出力低ドロップアウト(LDO)レギュレータを使用することもできます。このLDOは、さらに厳密に安定化された5V電源レールを供給しますが、ADuM3471のレギュレータ入力ピンの絶対最大定格のため、20Vを超えるDC過電圧は許容しません。
EVAL-CN0321-SDPZハードウェアの出力コネクタの構成を表1に示します。
端子名 | 出力タイプ |
OUT2 |
電圧出力範囲 |
GND |
グラウンド |
OUT1 |
電流出力範囲 |
HART 互換性
AD5700-1は、AD5422と併用することでHARTと完全互換の4mA~20mAのソリューションを構成します。AD5700-1の精度0.5%の内部発振器は、従来であればチャンネルごとにクロック用水晶発振器を必要とするチャンネル間絶縁型アプリケーションにおいて、大幅な省スペースを実現します。この水晶発振器は一般にAD5700-1自体よりも大きいので、発振器を内蔵することによって大幅な省スペースが実現されます。
HARTモデムの出力は、C1とC2によって減衰され、CAP2ピンを介してAD5422とAC結合されます。詳細についてはアプリケーションノートAN-1065を参照してください。より大きな電源除去を実現するRSETピンを使用した別のHART結合方法が回路ノートCN-0278に記載されていますが、この方法は外付けの高精度電流設定抵抗を必要とします。
絶縁型電源
AD5422は最大0.8Vの電圧出力のヘッドルームと最大2.5Vの電流出力のヘッドルームを必要とします。したがって、出力が500Ω負荷に20mAの電流を流すには、12.5Vより高い電源電圧が必要です。この設計では、最小電源電圧(過熱時)は13.5V以上であり、ある程度のヘッドルームを追加することができます。
ADuM347xデバイスは、パルス幅変調(PWM)コントローラと低インピーダンスのトランス・ドライバ(X1とX2)を内蔵する4チャンネル・デジタル・アイソレータです。絶縁型DC/DCコンバータに必要な追加部品は、トランスとシンプルな全波ダイオード整流器だけです。これらのデバイスは、5.0Vまたは3.3V入力から給電される場合に最大2Wの安定化された絶縁型電源を供給できるので、別個の絶縁型DC/DCコンバータが不要になります。
iCoupler®チップスケール・トランス技術を使ってロジック信号を絶縁し、絶縁型2次側制御機能を備えた内蔵トランス・ドライバにより、絶縁型DC/DCコンバータの高い効率を提供します。内部発振周波数は200kHz~1MHzの範囲で調整可能であり、ROCの値によって決まります。ROC = 100kΩの場合、スイッチング周波数は500kHzになります。
ADuM3471のレギュレーションは15Vの正電源によって行われます。レギュレーションのための帰還は抵抗分割器(R1とR2)によって行われます。抵抗は、出力電圧が15Vのときに帰還電圧が1.25Vになるように選択します。帰還電圧は、ADuM3471の1.25Vの内部帰還セットポイント電圧と比較されます。レギュレーションは、外部トランスを駆動するPWM信号のデューティサイクルを変化させることによって行われます。
負電源は大まかに安定化されるので、無負荷の場合には最小−26.4Vになる可能性があります。このため、25Vのツェナー・ダイオードが負電源に接続されています。このダイオードは、電源の負荷が軽いときに電源から小電流を流しますが、約25Vに確実にクランプします。
もう1つの方法は巻数比が4:1の絶縁トランスを使用することで、無負荷の場合に負電源レールはそれほど低くなりません。高いコンプライアンス電圧や非常に低い消費電力を必要とするアプリケーションでは、異なる電源設計を検討する必要があります。
入力電源
図1の回路は24V電源によって駆動されます。ADP2441を使って24Vを5Vに降圧し、コントローラ側の全ての回路に電力を供給します。
ADP2441は入力電源電圧の許容範囲が広いので、24Vの工業用電源を受け入れるのに最適です。ADP2441は最大36Vを受け入れ可能なため、電源入力の信頼性を高める過渡保護も容易に実現できます。
また、ADP2441は、低電圧ロックアウト(UVLO)、高精度イネーブル機能、パワーグッド・ピン、過電流制限保護など他の多くの安全性と信頼性のための機能も備えています。24Vの入力と5Vの出力に対して最大90%の効率を達成できます。
絶縁
ADuM3471の絶縁回路は、絶縁定格が2.5kVの4つの完全絶縁型電圧チャンネルを備えています。これら4つのチャンネルを使って、AD5422の4本のデータライン(SCLK、LATCH、SDIN、SDO)を絶縁します。回路動作にSDOラインの絶縁は必須ではありませんが、絶縁すると、診断やフォルト機能へのアクセス、ならびにレジスタの読出しを行うことができます。
ADuM3482は、小型20ピンSSOPパッケージ(7.2mm × 7.8mm)に収められた、3.75kVの4チャンネル・デジタル・アイソレータです。ADuM3482のコアは3.0V~5.5Vの範囲で動作し、I/O電源は1.8V~5.5Vの範囲が可能です。これらのデバイスを使って1.8Vロジックと直接インターフェースすることができます。このアイソレータを使ってAD5700-1HARTモデムのUART信号を絶縁します。
iCoupler製品の詳細については、www.analog.com/jp/icouplerをご覧ください。
DC過電圧保護
図1の回路により、+36Vと−28Vの連続的なDC過電圧保護が可能になります。つまり、DC電源ラインが偶発的に出力に接続された場合に回路が保護されます。
過電圧状態の間、電源は外付け保護ダイオードを介してプルアップまたはプルダウンされます。これらのダイオードと出力端子の間の抵抗によってピーク電流が制限されます。
出力端子の最大/最小電圧は、出力または電源に接続された回路のブレークダウン電圧によって制限されます。AD5422の電流出力と電圧出力は、+48V~−28Vの範囲の電圧に耐えることができます。AVSS入力は−28V、AVDDは+48Vの電圧に耐えることができます。リファレンスADR02は、その電源電圧の36Vに耐えることができます。AD5700-1のADC_IPピンは、電流を制限する150kΩの抵抗によって保護され、さらに300pFのコンデンサによってDC電流がブロックされます。DC過電圧状態の間、他のICを高電圧に曝さないでください。
過渡電圧保護
AD5422はESD保護ダイオードを内蔵しており、通常の取扱いによる損傷を防止します。ただし、工業用制御環境では、I/O回路が非常に大きなトランジェントに曝されることがあります。AD5422を過大な高電圧トランジェントから保護するため、図1に示されているように、外付けのパワー・ダイオードとサージ電流制限抵抗が必要になる場合があります。
電流出力経路の抵抗値には(図1では18Ωと表示)、通常動作時に、IOUTの出力レベルをそのコンプライアンス電圧リミットのAVDD − 2.5V以内に保たなければならないという制約があり、2個の保護ダイオードと抵抗を適切な電力定格にする必要があります。4mA~20mAの出力で18Ωの場合、端子でのコンプライアンス・リミットはV = IMAX × R = 0.36Vだけ減少します。
電圧出力経路の抵抗値には(図1では100Ωと表示)、出力電圧に対して0.8Vのヘッドルームを与えなければならないという制約があります。この抵抗の影響は、+VSENSE入力を使用することによって最小限に抑えることができます。図1の+VSENSE入力は22Ωの抵抗によって保護されています。−VSENSEの経路にも同様に22Ωの抵抗があります。これら2本の22Ω抵抗により絶対ゲイン誤差が生じ、室温での補正が必要になる可能性があります。この誤差は、AD5422の内部帰還回路に約70kΩのインピーダンスしかないため生じます。AD5422のVOUTピンではなく出力で電圧を検出する利点は、VOUTピンの保護抵抗を流れる電流による電圧変化を補正できることです。端子で検出を行うと、この誤差源による変化が補正されません。
過渡電圧サプレッサ(TVS)やトランゾーブを使って保護を強化することができます。これらは、単方向と双方向のサプレッサの両方が、広範囲のスタンドオフ電圧およびブレークダウン電圧の定格で提供されています。電流出力の動作範囲で導通しない限りできるだけ低いブレークダウン電圧のTVSを選択します。前述のように、遠く離れて接続されている全てのノードを保護することを推奨します。
バリエーション回路
この回路は、示されている部品の値を使用することにより、安定して高精度で動作することが実証済みです。アプリケーションが4mA~20mAの電流出力のみを必要とする場合、単電源の回路を使用することができます。この場合、例えば、AD5422の正側のAVDD電源を24Vにすることが可能で、出力コンプライアンスは24V − 2.5V = 21.5Vです。出力電流が20mAの場合、最大1kΩの負荷抵抗が可能です。
16ビット分解能を必要としないアプリケーションでは、12ビットのAD5412が利用可能です。電流出力のみを必要とするアプリケーションでは、AD5420(16ビット)とAD5410(12ビット)が利用可能です。
同じ端子で電圧出力と電流出力を必要とするアプリケーションの技術的詳細については、回路ノートCN-0278を参照してください。
過電圧保護が不要な場合、ADR4550やADR445などの最大電源電圧が低いリファレンスを使用することができます。
アイソレータADuM347x(ADuM3470、ADuM3471、ADuM3472、ADuM3473、ADuM3474)は、さまざまな入力/出力チャンネル構成の4つの独立した絶縁チャンネルを備えています。また、これらのデバイスには最大データレートが1MbpsのAグレードと25MbpsのCグレードがあります。
AD5700-1の代わりにAD5700モデムを使用することができますが、外付け水晶発振器またはCMOSクロックが必要です。
回路の評価とテスト
必要な装置
以下の装置が必要です。
- EVAL-SDP-CB1Zシステム・デモンストレーション・プラットフォーム(SDP-B)
- EVAL-CN0321-SDPZ評価ボードとソフトウェア
- PC(Windows®32ビットまたは64ビット)
- 24V電源
- Agilent 34410Aなどの高精度電圧計
- デジタル・テスト・フィルタ(HART通信協会から入手可能なHCF_TOOL-31など)
- 500Ωの高精度負荷抵抗
- オシロスコープ(Tektronix DS1012Bまたは相当品)

テスト・セットアップの機能図
テスト・セットアップを図2に示します。
ソフトウェアのインストール
評価用キットにはCDに自己インストール型ソフトウェアが含まれています。このソフトウェアは、Windows XP(SP2)、Windows Vista(32ビットおよび64ビット)、Windows 7(32ビットおよび64ビット)で使えます。セットアップ・ファイルが自動的に起動しない場合には、CDからsetup.exeファイルを実行してください。
PCに接続したときに評価システムが正しく認識されるように、評価ボードとSDPボードをPCのUSBポートに接続する前に評価用ソフトウェアをインストールしてください。
- 付属のケーブルを使用し、PCのUSBポートを介してEVAL-SDP-CB1Zを接続してください。
- EVAL-CN0321-SDPZ評価ボードをコネクタAに接続してください。コネクタBを使用すると、EVAL-SDP-CB1ZのUARTが正しく機能しません。
- J1コネクタに24Vを供給することによってEVAL-CN0321-SDPZをパワーアップしてください。
- EVAL-CN0321-SDPZソフトウェアを起動して、順次表示されるダイアログ・ボックスに従って最後まで進みます。これでインストールが完了します。
ソフトウェア
メイン・ソフトウェア・ウィンドウを図3に示します。AD5422を設定するオプションの詳細についてはAdvancedをクリックしてください。

HART通信を行うには、電流出力範囲がイネーブルされていることを確認してからHARTタブを選択します。HARTタブから、データをCommandボックスに入力して4mA~20mAのループにデータを送ることが可能であり、ソフトウェアは4mA~20mAのループのデータをポーリングするように設定できます。代わりに、HART Queryタブを選択することにより、接続されたHART互換アクチュエータのデバイス・アドレスとデバイス・タイプを問い合わせることができます。
絶対精度性能
内部のRSETを使ったAD5422の電流出力モードの総合未調整誤差(TUE)の仕様は、25℃で0.08% FSR(typ)です。
リファレンスADR02(Bグレード)の総合誤差は25℃で0.06%(最大)です。
4mA~20mAの範囲で測定した回路の電流出力誤差を表2に示します。
コード (16 進数) | 出力の電流(mA) | 誤差(%FSR) |
0000 |
3.992 |
-0.049 |
4000 |
7.995 |
-0.034 |
8000 |
11.997 |
-0.018 |
B000 |
16.000 |
+0.001 |
FFFF |
20.003 |
+0.020 |
測定結果は予想値以内にあります。
同様に、電圧出力モードでは、AD5422のTUEは25℃で0.01% FSR(typ)です。
リファレンスADR02の誤差(Bグレード)は25℃で0.06%(最大)です。
±10Vの出力範囲で測定した回路の電圧出力誤差を表3に示します。
コード (16 進数) | 出力の電圧(V) | 誤差(%FSR) |
0000 |
-10.010 |
-0.050 |
4000 |
-5.005 |
-0.023 |
8000 |
+0.001 |
+0.003 |
B000 |
+5.006 |
+0.031 |
FFFF |
+10.011 |
+0.057 |
表3に示されている電圧出力には、AD5422の+VSENSE入力と−VSENSE入力に接続された22Ωの保護抵抗の回路の誤差も含まれています。+VSENSE入力と−VSENSE入力は、約70kΩの帰還抵抗に内部で接続されています。22Ωの外付け抵抗により、約22kΩ/70kΩ(0.031%)のゲイン誤差が加わります。キャリブレーションを行うことにより、初期誤差を除去することができます。
積分非直線性(INL)性能
スイッチング電源に起因するシステム精度の低下が生じないことを確認するため、リニア電源と絶縁型DC/DCスイッチング電源の両方を使ってAD5422のINLをテストしました。リニア電源とスイッチング電源の両方でのINLを図4に示します。リニア電源を使用した場合に比べて、スイッチング電源を使用した場合の顕著な性能低下はありません。

また、図5に示すように、リニア電源とスイッチング電源を使用したときの平均出力ノイズを経時的にテストし、比較しました。経時的に測定された出力ノイズにわずかなオフセットがあることに注意してください。このオフセットは、1LSBを大幅に超えることはなく、測定装置のわずかな違い、または2回の測定の間のリファレンスのドリフトによって生じる可能性があります。

HARTに準拠
図1の回路をHARTに準拠させるには、HARTの物理層の仕様を満たす必要があります。HARTの仕様書には多数の物理層の仕様が含まれています。ハードウェアの性能を評価するため、サイレンス時の出力ノイズのテストとアナログ変化率のテストを行いました。
サイレンス時の出力ノイズのテスト
HARTデバイスが送信中でない場合(サイレンス)、デバイスがネットワークにノイズを結合してはなりません。過大なノイズがあると、デバイス自体またはネットワーク上の他のデバイスによるHART信号の受信に影響を与えることがあります。
ループ内の500Ω負荷の両端で測定した電圧ノイズに含まれる広帯域ノイズと相関ノイズの合計は、HART拡張周波数帯域において2.2mV RMSを超えてはなりません。さらに、HARTの拡張周波数帯域外でも138mV RMSを超えないようにする必要があります。
このノイズは500Ω負荷の両端に接続した真のRMSメーターで測定しました。このノイズは、帯域外ノイズについては直接測定し、帯域内ノイズについてはHCF_TOOL-31フィルタを通して測定しました。また、ノイズ波形を確認するためにオシロスコープも使用しました。
測定したノイズ波形を図6に、結果の概要を表4に示します。

出力ノイズ | 測定値(mV) | |
拡張周波数帯域外 |
0.6 |
<138 |
拡張周波数帯域内 |
0.126 |
<2.2 |
Analog Rate of Change(アナログ変化率)
アナログ変化率のテストにより、デバイスがアナログ出力電流を調整するときに、アナログ電流の最大変化率がHART通信に干渉しないことを確認します。電流のステップ変化はHART信号に影響を与えます。
ワーストケースのアナログ出力電流の変化は、HARTの拡張周波数帯域において500Ω負荷の両端で測定したときに、ピークが15mVを超える外乱を生じてはなりません。
AD5422 DACと出力ドライバは比較的高速です。したがって、要求されるシステム仕様を満たすため、AD5422のCAP1ピンとCAP2ピンのコンデンサを使ったハードウェアのスルーレート制限とAD5422のデジタル・スルーレート制御機能により、出力電流変化を制限します。これについては、アプリケーションノートAN-1065で詳細に説明されています。
このテストは、HCF_TOOL-31フィルタを介して500Ω負荷に接続したオシロスコープを使って行いました。
結果を図7に示します。4mA~20mAの出力ライン(図7の青線)は、500Ω負荷の両端で直接検出された4mAと20mAの間の周期的なステップを示しています。フィルタの出力を10倍にしたライン(図7の赤線)は、HCF_TOOL-31フィルタ出力で測定して10倍に増幅した信号で、ピーク値150mVの制限値以内です。
