質問:
高精度アナログ回路で最もありふれた問題は何でしょうか?

回答:
おそらく、グラウンディング誤差で しょう。ただ、それ以外にもよく見られる間違いがあります。大部分はうっかりミスです。技術者も完璧ではなく、ものを忘れることだってあるのです。
- データシートを読むことを忘れないこと(アプリケーショ ン・エンジニアは、問い合わせの電話を切った後、決まって 「RTFDS」1と叫びます)。デー タシートにはっきり記載され ている詳細だけでなく、行間に示唆されている情報を読み取ることも重要です。
- オームの法則を忘れないこと。 配線や基板パターンの抵抗はゼロではありませ ん。低電流を測定するときは「絶縁体」のリーク電流が問題になります。
- バイアス電流を忘れないこと。場合によっては、ベタベタした指の痕が付くだけでプロトタイプに電流パスができてしまい、クリーンな(前よりクリーンになった)最終バージョンでサプライズが起きることになります。
- 最終的な(ぎっしり詰った)基板には浮遊抵抗、 浮遊インダクタンス、浮遊容量があることを忘れないこと。ブレッドボード(またはSPICEモ デル)でうまくいっても、それで完成と思わな いでください。
- EMIとRFIはどこでも発生し得ることを忘れな いこと。電源や入力と出力のリード線にはフィ ルタを適用してください。
- 温度変化が部品に影響を与えることを忘れないこと(名目上は同一の部品でも温度係数が異な ることもあります)。
- 回路の電源(と信号)を任意の順序で(かつ任意 のdv/dt値で)印加してもかまわないのか、あるいは許容できない電源/信号シーケンスやレー トが生じないようにするべきか確認す ることを忘れないこと。
- スイッチング電源はバッテリのようにノイズフリーではな いことを忘れないこと。
- マイクロプロセッサとは異なり、アナログ回路は多くの場 合、電源投入時にリセットされません。必ず正しいスター トアップを確実に行うことを忘れないこと。
- “回路は瞬時に起動しな いこと”を忘れないこと。コ ンデンサは充電する必要があり、高精度回路は安定する必要があります。
- リアクタンス負荷を駆動するとき、回路によっては不安定になることを忘れないこと。広い範囲の抵抗性負荷を駆動する出力段は、ケーブルなどの容量によって発振することがあります。
- ノイズは、死や税金と同様、普遍的であることを忘れないこと。どのADCにも量子化ノイズがあり、どの抵抗にもジョンソン・ノイズがあります。これらのノイズを回避することはできません。
- IC設計者がユーザに優しいとは限らないことを忘れないこと。デバイスは、ユーザの思いどおりに機能しないかもしれません。だから、ここでも「RTFDS!」です。
これらの問題を含め、これまでこのコラムでさまざまな問題を説明してまいりました。それらをすべてお読みになるとともに、このリストを毎日読むことができるようどこかに貼っておいてください!
1 RTFDS=「Read The Friendly Data Sheet」(優しいデータシートを読んでくださいね)