オペアンプのノイズにも耳をつんざくようなものがある

質問:

前回、オペアンプのノイズを外部抵抗のせいにされました。 いつもそうとは限らないと思うのですが、いかがでしょうか?

RAQ:  Issue 26

回答:

おっしゃるとおりです。抵抗ノイズはよくある問題で、しかもよく見過ごされます。ただし、オペアンプそのもののノイズが大きいこともあります。

オペアンプには3つのノイズ源があります。入力の両端間の電圧ノイズ(Vn)と各入力端子に直列な電流ノイズ(In)です。

バイポーラ接合トランジスタ(BJT)入力のオペアンプでは、Vnは900pV/√Hzより低くすることができます。JFET入力のアンプでは約2nV/√Hzになることがありますが、その場合は入力容量が大きく(約20pF)なります。デジタルCMOSはノイズが多いため、初期のCMOSオペアンプはノイズに関して評判がよくありませんでした。しかし、最近のアナログCMOSプロセスによって、ノイズが6nV/√Hzのオペアンプも作れるようになりました。

しかし、JFETとCMOSのオペアンプはInが非常に低くなります。電位計用のタイプでは0.1fA/√Hzのものもありますが、一般には10~50fA/√Hzというレベルがふつうです。バイポーラ・オペアンプでは電流ノイズがずっと高くなり、広帯域タイプで最大で数pA/√Hzにもなります。

低インピーダンス回路では、Inは問題ではありません。一方、高インピーダンス回路では、小さなInでも大きなノイズ電圧が発生します。したがって、高インピーダンス・アプリケーションのためには、低いInのオペアンプを選択する必要があります。ただし、超低ノイズが必要な場合は、低いVnのオペアンプを選択し、低いインピーダンスを使用しなければなりません。中程度のインピーダンス範囲では、前回述べたように抵抗の熱ノイズのほうが支配的になります。

オペアンプには、周波数範囲の大部分でホワイト(一定のスペクトル密度)ノイズがあります。しかし、低周波数では「1/fコーナー周波数」から3dB/オクターブの割合でノイズが上昇します。したがって、低周波数で低ノイズが必要な場合は、VnやInだけでなく1/fコーナーも考慮する必要があります。そのためには、動作周波数に適した値を選択しなければなりません。

オペアンプが新しかったころ、「ポップコーン・ノイズ」が深刻な問題になりました。これによって、数十ミリ秒の間にランダムな離散的オフセット・シフトが発生し、拡声器に入るとポップコーンを調理するときのようなノイズが出ました。デバイスによってはあまりに影響が大きかったので、この問題を抱えたあるエンジニアが「カエルの足とストップウォッチがあれば測定できるよ」と言ったそうです[1]。現在でもポップコーン・ノイズが製造時に発生することがたまにありますが、この現象については十分に理解されているため、問題のあるデバイスは試験のときに発見され、廃棄処分されます。

この問題は、短いRAQで説明するには複雑すぎます。詳細については、下記「その他の関連情報」をご覧ください。


[1] これは、「ボルト」という名前の由来となったアレッサンドロ・ボルタのことを言っています。ボルタは、1791年、死んだばかりのカエルの足に電流を流すとぴくぴく動くことを発見しました。この現象から電気を発見したのです。



 


著者

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James Bryant

James Bryantは、1982年から2009年に定年退職するまで、アナログ・デバイセズの欧州地区アプリケーション・マネージャを務めていました。現在も当社の顧問を務めると共に、様々な記事の執筆に携わっています。リーズ大学で物理学と哲学の学位を取得しただけでなく、C.Eng.、Eur.Eng.、MIEE、FBISの資格を有しています。エンジニアリングに情熱を傾けるかたわら、アマチュア無線家としても活動しています(コールサインはG4CLF)。