イゴール、私に電源シーケンサを渡してくれ!

質問:

先月、絶対最大定格には集積回路(IC)の他のピンの値に 依存する場合があると言われました。 パワーアップ時にそのような絶対最大定格を超えないようにするにはどうしたらよいのでしょうか?

RAQ:  Issue 20

回答:

ビクター・フランケンシュタイン博士が気がついたように、不注意に電源を印加すると予想外の結果を引き起こすことがあります。古いアナログICに比べると、今日の大部分のアナログICは電源シーケンシングがそれほど問題になりません。多くの場合は単電源で動作し、そうでないものも電源シーケンスによる損傷を受けないようになっています。それでも、複数の電源を間違った順序でターンオンすることで損傷するデバイスも依然として存在します。それに、マルチデバイス・システムは一般にこの問題に弱いのです。

システムに複数の電源がある場合、システムのどの部分についても、電源のあらゆるターンオン順序の中で最悪の場合の影響を解析しておくことが大切です。損傷を与える順序があれば、システムのパワーアップ/パワーダウンが安全に行われるように電源を設計する必要があります。

正しい順序で電源をターンオンするには、いくつかの方法があります。一番簡単な方法は、ダイオードで電源を相互に接続することによって最低電圧が正しい値になるまですべて一緒に立ち上がるようにし、その後、次の電圧が正しいレベルに達するまで残りの電源が一緒に立ち上がるというようにし、全部をターンオンします。これは簡単で、しかもターンオフも確実に正しい順序で行われることになりますが、すべての電源が同じ極性でなければならず、順番は電源電圧の昇順になる(これはきわめて一般的なケースです)ことになります。

フィルタ・コンデンサのサイズを等級分けすることによってターンオン遅延を設定することも簡単ですが、システムのターンオフ時や電源グリッチがある場合にタイミングの問題が発生することもあります。

一番良い方法は、タイマを使用し、システム内のさまざまな電源を適切な遅延をつけて正しい順序でターンオンすることです。以前は555タイマを使用しましたが、現在では電源シーケンシング用の専用デバイスがいろいろあります。中には、多数(最大12)のシーケンサを1個のチップに内蔵し、12個の電源がすべて正しい限界内にあるか監視するデバイスもあります。また、非常に簡単なデバイスで、電源ごとに1つカスケード接続し、必要な数の電源を制御できるものもあります。

電源シーケンシングを用いる場合でも、ショットキー・ダイオード・クランプを使用して、ICを流れて別の電源レールから戻った電流によって電源の極性が反転することがないようにするべきでしょう。




 

著者

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James Bryant

James Bryantは、1982年から2009年に定年退職するまで、アナログ・デバイセズの欧州地区アプリケーション・マネージャを務めていました。現在も当社の顧問を務めると共に、様々な記事の執筆に携わっています。リーズ大学で物理学と哲学の学位を取得しただけでなく、C.Eng.、Eur.Eng.、MIEE、FBISの資格を有しています。エンジニアリングに情熱を傾けるかたわら、アマチュア無線家としても活動しています(コールサインはG4CLF)。