高速コンバータのPCボード設計について その3:エクスポーズド・パッドの真相

質問:

高速コンバータを使用するとき、PCボードのレイアウトについて重要なルールはありますか?

RAQ:  Issue 69

回答:

 このRAQの「その1」では、設計においてやむを得ない事情がない限りAGNDとDGNDを分離す る必要がないことをご説明しました。「その2」では、給電システム(PDS)について説明し、電源プレーンとグラウンド・プレーンを別の層として重ね合わせることによって容量を増やす方法についても説明しました。「その3」では、PCボード設計から最高の性能を引き出すとともに、熱の大半を放出するために不可欠であるにもかかわらず、見落とされがちなもう1つの項目であるエクスポーズド・パッド(E-Pad)を取り上げます。

E-Pad(0番ピン)は、近年多くの高速ICパッケージの下部に見受けられるパドルのことです。これは、ダイからデバイス下方の中心点まで、すべての内部グラウンドを結び付ける重要な接続です。E-Padによって、多くのコンバータやアンプでのグラウンド・ピンが不要になります。ポイントは、このパッドをPCボードにハンダ付けして、堅牢な電気的/熱的接続をすることです。さもなければ、システムに大きな被害が生じることがあります。

高速コンバータのPCボード設計について E-Padに対して最善の電気的/熱的接続を達成するには、次の3つのステップが役立ちます。 最初に、可能ならば、PCボードの各層にE-Padを複製します。これによって、すべてのグラウンドに分厚い熱的接続が形成され、短時間での放熱が可能になります。このことは、ハイパワー(消費電力の大きな)部品では特に重要です。電気的には、これによって、すべてのグラウンド層に良好かつ均等な接続が与えられます。最下層のE-Padを利用すれば、デカップリング用のグラウンド・ポイント、およびヒート・シンクやサーマル・リリーフを接続するための場所として使用できます。

次に、E-Padを均等なセグメントに分割します。格子状のパターンは、最も効果的であり、シルクスクリーン・クロスハッチまたはハンダ・マスクによって実現できます。リフロー・アセンブリ・プロセスにおいてはハンダ・ペーストがどう流れてデバイスをPCボードに接続するか保証がないため、接続は存在していても、均一に配分されていなかったり、さらに悪いケースでは片隅でわずかに接続されているようなこともあります。E-Padを小さなパーティションに分割すれば、それぞれ別個の領域に接続ポイントが置かれ、デバイスとPCボードの間に堅牢で均一な接続が保証されます。

最後に、各パーティションにはグラウンドへのビア接続を持たせます。通常、パーティションには複数のビアを配置できるだけの十分な大きさがあります。組立ての前に、これらの各ビアがハンダ・ペーストまたはエポキシで満たされていることを確認してください。この重要なステップによって、E-Padのハンダ・ペーストがビア空隙にリフローしないことが確実となります。これを怠ると、適切な接続が得られる可能性が低下します。


著者

Rob Reeder

Rob Reeder

Rob Reeder は、1998年以降、米国ノースカロライナ州グリーンズボロにあるアナログ・デバイセズの高速コンバータ/RFグループで上級コンバータ・アプリケーション・エンジニアとして働いています。これまでに、さまざまなアプリケーションのためのコンバータ・インターフェイス、コンバータ・テスト、アナログ・シグナル・チェーン・デザインに関する多数の記事を執筆しています。また、航空宇宙および防衛グループのアプリケーション・エンジニアであり、5年間にわたってさまざまなレーダー、EW、および計装アプリケーションに注力していました。これまでには、高速コンバータ製品を9年間担当していました。それ以外にも、アナログ・デバイセズのMultichip Products グループのテスト開発とアナログ設計エンジニアリングも担当していました。そこでは、宇宙、軍事、および高信頼アプリケーションのアナログ信号チェーンモジュールを5年間設計しました。 イリノイ州デカルブの北イリノイ大学で1996年にBSEE(電気工学士)、1998 年にMSEE(電気工学修士)を取得しています。余暇には、音楽のミキシング、美術を楽しむほか、2人の息子とバスケットボールをしたりします。