「高精度シグナル・チェーンµModuleソリューション」により、設計の簡素化/性能の向上/開発時間の短縮が可能に

概要

本稿では、アナログ・デバイセズの「高精度シグナル・チェーンμModule®ソリューション」を紹介します。これは、SiP(System in Package)技術を基盤とするIC製品であり、設計の簡素化、性能の向上、開発時間の短縮を可能にします。コンパクトであるだけでなく、柔軟にカスタマイズできることも特徴の1つです1。このソリューションを採用すれば、最高レベルの性能を備える製品を、従来よりも迅速に市場に投入できるという大きなメリットを得ることができます。

はじめに

VLSI(超大規模集積回路)技術は、引き続き急速な進化を続けています。それに伴い、様々な分野で信号処理のアプリケーションが活用されるようになりました。例えば、通信システムやオーディオ・システム、産業用オートメーション・システム、車載エレクトロニクスなどが例として挙げられます。ただ、従来は、各分野で必要になるアプリケーションを実現するためには多くの研究が必要でした。高い性能と精度を備えるディスクリートでリニアなシグナル・チェーンのブロックを開発しなければならなかったからです。アナログ・デバイセズは、市場のニーズに応えるために、SiP技術を基盤としてヘテロジニアスな統合を実現したソリューションを開発しました。それが高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションです。このソリューションは、コンパクトで柔軟にカスタマイズできる集積型のデバイスとして実現されています。これを採用すれば、設計の簡素化、性能の改善、開発時間の短縮という効果が得られます1。また、高度な性能を備える製品を、従来よりも迅速に市場に投入できるという大きなメリットがもたらされます2

高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションの基盤技術

高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションの基盤となるのはSiP技術です。特に、アナログ・デバイセズのSiP技術は、高いレベルの性能を維持しつつ、様々な回路の統合を実現できるという特徴を備えています。高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションでは、小型のフォーム・ファクタによって回路の密度を高めることを1つの目標としています(図1)1。この目標を達成するために、システムのコンポーネントをインテリジェントかつ効率的な方法で管理できるようにしつつ、最高の性能を備えるデバイス、iPassives®技術、2.5D/3Dの高度なアセンブリ技術を組み合わせています。それによって実現されたµModuleデバイスは、シグナル・チェーンを構成する信頼性の高いビルディング・ブロックとして機能します。これを採用すれば、シグナル・チェーンに付随する外部回路のデバッグや最適化を行う必要はありません。手頃なコストで、最終製品の統合レベルを高め、市場に投入するまでの時間を短縮し、速度性能を向上し、消費電力を削減することができます1

図1. SiP技術をベースとする高精度シグナル・チェーンµModuleソリューション
図1. SiP技術をベースとする高精度シグナル・チェーンµModuleソリューション

主な特徴、得られるメリット

上述したとおり、高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションを採用すれば様々な効果が得られます。以下では、同ソリューションの特徴と得られるメリットについて詳しく解説していきます。

統合度の高さがもたらすメリット

高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションは、複数のアナログ・コンポーネントとデジタル・コンポーネントを1つのモジュールとして統合したものです。これは、シグナル・チェーンの設計に著しい進化をもたらします。このµModuleデバイスの実現を支えているのは、アナログ・デバイセズのiPassives技術です。これを活用することにより、アナログ・デバイセズの卓越したシグナル・コンディショニング用ICと受動部品をSiP製品としてパッケージングしています。このµModuleデバイスを採用すれば、最高レベルの性能と堅牢性を備える製品を極めて短い開発時間で実現することができます2。ICに数多くのトランジスタが集積されるのと同様に、iPassives技術を活用すれば、品質の高い数多くの受動部品を非常に小さな面積に収めることができます。

特に重要なのは、従来はボード・レベルのソリューションとして実現されていたシステムを、単一のデバイスに収容できるようになることです。増幅、フィルタリング、A/D変換などの機能が統合されたµModuleデバイスを使用すれば、ディスクリート部品を使用して複雑なシグナル・チェーンを設計する必要がなくなります。また、相互接続に伴う寄生成分(インダクタンス、容量、抵抗)も大幅に低減されます。つまり、µModuleデバイス単体により、卓越した性能を発揮する完全なソリューションが得られるということです。このソリューションを採用すれば、実装面積を大幅に削減できるだけでなく、開発期間の短縮、コストの大幅な低減も実現できます2。このµModuleデバイスは、空間レベルの実装効率を高め、物理的なフットプリントを削減します。しかも、完全なソリューションが得られます。それだけでなく、シグナル・チェーンの性能と信頼性の面からも、最適化が実現された回路が得られることになります。集積型の受動部品の場合、各部品が同じ条件の下で同時に製造されることになります。そのため、優れたマッチング性能が得られる可能性が高くなります2

このソリューションは、部品の選定、最適化、レイアウトといった負荷から設計者を解放します。それらはデバイスのレベルで完結しているので、設計上の繰り返し作業が削減されます。アナログ・デバイセズは、柔軟にカスタマイズすることが可能な高精度のシグナル・コンディショニング製品を製造しています2。それらの製品は、自社で自由に使用できる独自の製造プロセスによって実現されているので、非常に高い性能が得られます。また、図2を見れば、高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションによって、どれだけフットプリントを削減できるのかをご理解いただけるでしょう。それだけでなく、システム・レベルで見て、総所有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)を大きく削減し、製品を市場に投入するまでの時間を大幅に短縮することが可能になります。

図2. フットプリントの削減効果
図2. フットプリントの削減効果

潜在的な性能を最大限に活かす

高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションは、フロントエンドのICの設計と製造技術の限界を克服することを目指して開発されました。それに向けて、エレクトロニクスに対するより高度な要求に応えられる卓越した性能を実現できるように設計されています3。具体的には、部品を慎重に選定し、高い精度を実現するアナログ設計手法を適用し、レイアウトを高いレベルで最適化しています。それにより、優れたシグナル・インテグリティ、高いノイズ性能、高精度の信号処理を実現しています。高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションは、あらゆる処理に対して品質の面で妥協することなく設計されています。そのため、信号処理の可能性を最大限に引き出せます。対象となる処理としては、センサーによるデータの取得、信号の増幅、A/D変換などが挙げられます。

アナログ・デバイセズのiPassives技術は、均質な機械的環境を保証します。それに向けて、配線パターンの抵抗やインダクタンスなど、相互接続に伴う寄生成分を最小限に抑えています。それだけでなく、残存するわずかな寄生成分の値を簡単に予測して確実に把握できるようにしています2。「ADAQ4003」は、高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションの一例です。この製品は、データ・アクイジションの用途に向けて設計されています。図3は、入力周波数とゲインに対する同製品の卓越した性能を表しています。

図3. 異なる入力周波数に対するADAQ4003の性能。ダイナミック・レンジおよびS/N比とオーバーサンプリング・レートの関係を表しています4。
図3. 異なる入力周波数に対するADAQ4003の性能。ダイナミック・レンジおよびS/N比とオーバーサンプリング・レートの関係を表しています4

カスタマイズ性と柔軟性

高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションは、統合度の高さに加えて、シグナル・チェーンの設計に関する柔軟性も提供します。つまり、要件に応じて柔軟にカスタマイズすることが可能です。図4に、同ソリューションを使用したソース・メジャー・ユニット(SMU)の構成例を示しました。すべての部品は最適にパーティショニングされており、特定のアプリケーションの要件に応じてシグナル・チェーンのパラメータと特性を調整できるようになっています。つまり、ゲイン、帯域幅、フィルタリング・オプションなどを調整することが可能です。様々な機能をカスタマイズできることから、このソリューションは設計上の多様な課題に対応できる汎用的なプラットフォームとなります。

図4. ソース・メジャー・ユニット(SMU)の構成例
図4. ソース・メジャー・ユニット(SMU)の構成例

TCOの削減

システムを運用する場合、その耐用期間にわたってサポートに関連する様々な間接コストが発生します1。ディスクリート・デバイスの性能は、その回路の動作温度の変化や使用期間の経過に伴って必ず劣化していきます。一方、高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションの場合、システムの性能と製造時の歩留まりに影響を与える受動部品がデバイス内に統合されています。このことから、同ソリューションを採用して構築されたシステムでは間接コストを抑えることが可能になります1。図5は、高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションを使用した場合に間接コストがどのように低減されるのかを示したものです。ご覧のとおり、ディスクリート構成のシグナル・チェーンを使用する場合と比較しています。

図5. 間接コストの比較
図5. 間接コストの比較

高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションの各製品のデータシートを見ると、様々な制限値が記載されています。それらの値にはシグナル・チェーン全体の性能が反映されています。そのため、一貫した性能に加え、高い製造歩留まりが得られます。歩留まりの問題を抑えられるということは、製造のスループットを最大限に高められるということを意味します。それだけでなく、技術サポートに関するコストを最小限に抑えられます1

受動部品は、すべての電子サブシステムに欠かせない要素です5。それらを基板上で統合すれば、性能が向上する可能性があります。例えば、温度に依存する誤差を抑えられるといった具合です。それだけでなく、製造時に、温度に対するシグナル・チェーンのキャリブレーションを行う必要もなくなります。周知のとおり、そうしたキャリブレーションには時間とコストがかかるので、その効果は大きいと言えます(図6)。基板上のディスクリート部品の数と相互接続の数を最小限に抑えるということは、ハンダによる接続数が減るということを意味します。そうすれば、システムの信頼性が向上します。このことは、フィールド・サポートにかかるコストの削減につながります1

図6. 高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションによるTCOの削減
図6. 高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションによるTCOの削減

ラピッド・プロトタイピングにも適した使いやすさ

高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションは、設計プロセスの簡素化と、開発時間の大幅な短縮を可能にします。開発時間を短縮できるのは、中核部分の設計、製造、特性評価、テストが完了している状態で提供されるからです。このソリューションは、構成(コンフィギュレーション)済みのシグナル・チェーン製品だけでなく、評価用ボードやソフトウェア開発キットといったサポート用の様々なリソースから成ります。そのため、設計の工程を簡素化しつつ優れた性能を得ることができます。図7は、高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションの評価用ボードの外観を示したものです。シグナル・チェーンの実装回路例や開発キットを使用することにより、その能力を迅速に確認することができます。

図7. 評価用ボード「ADSKPMB10-EV-FMCZ」の外観
図7. 評価用ボード「ADSKPMB10-EV-FMCZ」の外観.

アナログ・デバイセズのiPassives技術は、設計者の観点からは柔軟性の高い設計ツールだと見なすことができます。高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションは、極めて短い開発期間でシステム・ソリューション設計することを可能にします。iPassives技術は、そのソリューションを実現する重要な要素です2。この技術のおかげで、システム設計者は、回路レベルの複雑な実装に取り組むことなく、システム・レベルの設計や機能の実現に集中することができます。また、同ソリューションを利用すれば、ラピッド・プロトタイピングやシステムの検証も容易になります。そのため、革新的なアプリケーション向けのシステムの定義から部品の準備までのスケジュールを、アグレッシブに設定することができます。

アナログ・デバイセズは、特定の用途をターゲットとした数多くのコンバータICから成るポートフォリオを有しています。それにより、広範な分野を対象とし、市場の様々な需要に応えられるようにしています。詳細については、高精度シグナル・チェーンμModuleソリューションのページをご覧ください。

産業分野のアプリケーションへの対応

高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションは、様々な分野のアプリケーションで使用できます。以下では、産業分野での活用方法を紹介します。

通信分野のアプリケーション

ワイヤレス通信製品では、デジタル回路やアナログ回路、RF部品などを使用することで、信号をシームレスに送受信できるようにする必要があります。高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションを採用すれば、そうしたニーズに応えられます。それだけでなく、トランシーバー、基地局、ネットワーク・インフラの性能を高められます。同ソリューションでは、RF回路とデジタル回路が分離されます。それにより、デジタル回路から生じる電磁干渉がノイズに敏感なRF部品に及ぼす影響を効果的に緩和できます6

図8に示した「ADAQ8092」は、通信アプリケーションに適したデュアルチャンネルのµModuleデバイスです。この製品には、3つの一般的な信号処理ブロックやシグナル・コンディショニング・ブロックが統合されています。そのため、様々な復調器のアプリケーションやデータ・アクイジション(DAQ)のアプリケーションに対応することができます。この製品には、シグナル・チェーン全体を構成するすべての能動部品とiPassivesベースの受動部品が統合されています。フットプリントは、ディスクリートのソリューションと比べて1/6程度にまで縮小できます。また、電源用のデカップリング・コンデンサを内蔵していることから、優れた電源電圧変動除去比(PSRR)性能が得られます。そのため、堅牢なDAQソリューションを実現できます。アナログ電源電圧は3.3V~5V、デジタル電源電圧は1.8Vです。デジタル出力としては、CMOS出力、ダブル・データ・レートCMOS出力、ダブル・データ・レートLVDS(Low Voltage Differential Signal)出力のうちいずれかを使用できます。

図8. ADAQ8088のブロック図
図8. ADAQ8088のブロック図

産業用オートメーション

産業分野のアプリケーションに目を向けると、半導体技術の進化に伴って主に3つの方向で革新的なトレンドが進行していることがわかります7。電力密度/エネルギー効率、デジタル電源制御、安全性の3つです。高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションは、産業用のオートメーション・システムで必要になる高精度の信号処理を実現できます。それにより、正確な測定、制御、アクチュエーションが可能になります。

産業分野のネットワークは、機械や制御システムの間でリアルタイムの通信を実現する役割を担います。それにより、スマートかつ安全な製造環境の実現が促進されます。高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションは、新たな接続ソリューションと足並みをそろえたデジタル制御システムの開発を可能にします。それにより、任意の時点における人間の安全性を確保できるようになります7

システムの安全性は、人間の安全を確保したり、環境を保護したりする上で不可欠な要素です7。近年の半導体技術では、新たなプロセス・オプションを利用できるようになりました。それにより、安全性を監視するためのシステムが抱える課題の解消が進んでいます。つまり、通信速度が足りない、消費電力が多い、サイズが大きい、信頼性が低いといったことについて妥協する必要がなくなりつつあるのです。

統合レベルの高い高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションは、実装面積の縮小、消費電力の削減、信頼性の確保、通信速度の向上といった面でメリットを提供します。

一般に、産業用のオートメーション・システムは複数のセンサーを使用してデータの収集を行います。得られたデータは、解析を担う中央の状態監視システムに送信されます。予防保全の戦略の1つに状態基準保全(CBM: Conditional Based Maintenance)というものがあります。この手法では、様々な種類のセンサーを使用してアセットの状態を継続的に監視します。CBMを適用することにより、傾向の把握、障害の予測、アセットの耐用期間の計算、製造プラントの安全性の向上などを実現することができます8

図9は、CBMのアプリケーションでデータ・アクイジション・システム「ADAQ7768-1」を活用する例です。ご覧のように、同製品を使用すれば、IEPE(Integrated Electronics Piezo-Electric)センサー、抵抗ベースのブリッジ回路、電圧、電流などの多様な入力に対応できます。また、同製品は2つの構成方法をサポートしています。1つは、SPI(Serial Peripheral Interface)を介してレジスタの値を書き換えることで機能を構成するというものです。もう1つは、シンプルなハードウェア・ピン・ストラッピングによる構成方法です。後者の方法では、定義済みの様々なモードのうちいずれかで動作するようにデバイスを構成することができます1

図9. DAQシステムの構成例。チャンネルごとの絶縁を必要とするアプリケーションに対応しています。
図9. DAQシステムの構成例。チャンネルごとの絶縁を必要とするアプリケーションに対応しています。

自動車向けのテスト用ソリューション

高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションで実現されるイノベーションと最適化の手法は、自動車業界のニーズを満たすことにも役立ちます。なぜなら、堅牢な相互接続や機械的なサポートが得られ、信頼性に優れるコンパクトで費用対効果の高い製品を実現できるからです9。実際、同ソリューションは自動車の様々なアプリケーションで活用されています。具体的な例としては、インフォテインメント・システム、パワートレイン用の制御システム、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance Systems)などが挙げられます。つまり、安全性の強化、快適性の確保、自動車の性能向上に貢献しているということです。

一般に、技術が進歩すると複雑さが増大します。そのため、シミュレーションと検証を実施するための新たな手法が必要になります。例えば、実効性に乏しいシミュレーションを行わなければならない事態を回避するためにはデジタル・ツインが利用されています。デジタル・ツインというのは、実世界の物理システムを仮想的に表現する手法のことです1。これを利用すれば、コストの削減、開発時間の短縮、システム全体の最適化などを図ることができます。

車載システム分野で使われる代表的なデジタル・ツイン技術の例としては、HIL(Hardware-in-the-Loop)シミュレーションが挙げられます。この手法は、ECU(電子制御ユニット)、パワー・ステアリング・システム、サスペンション・システム、バッテリ管理(バッテリ・マネージメント)システムといった複雑なリアルタイム・システムや、任意の車載サブシステムのテストに用いられます。アナログ・デバイセズは、HILシミュレータ向けの最適化されたソリューションを実現するために、シグナル・コンディショニング、データ・アクイジション、信号生成、絶縁に対応する広範なポートフォリオを用意しています。その一例が、信号のスケーリング機能を備えるデータ・アクイジション・ソリューションである「ADAQ23878」です(図10)。この製品は、低ノイズで完全差動型のADC用ドライバ(FDA)、安定性に優れるリファレンス・バッファ、18ビット/15MSPSの逐次比較型A/Dコンバータ(SAR ADC)などを内蔵しています。そうした複数の信号処理ブロックやシグナル・コンディショニング・ブロックが1つのデバイスに統合されているので、システムで使用する部品点数を削減できます1

図10. ADAQ23878の評価用ボード(EVAL-ADAQ23878)
図10. ADAQ23878の評価用ボード(EVAL-ADAQ23878

まとめ

IC技術の新たな方向性の1つは、SiP技術を基盤とするヘテロジニアスな統合によって開発プロセスを合理化することです10。高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションは、シグナル・チェーンの設計に対するシステム設計者のアプローチに変化をもたらします。このソリューションは、卓越した信号処理機能を実現しつつ、高い統合レベル、高性能の機能、優れた柔軟性、使いやすさを提供します。更に技術が進歩していく中で、同ソリューションは、様々な分野の革新的なアプリケーションを実現する上で重要な役割を担うはずです。それにより、電子システムの発展に寄与していくことになるでしょう。

参考資料

1高精度シグナル・チェーンμModuleソリューション」Analog Devices

2 Mark Murphy、Pat McGuinness「SiPモジュールに集積型の受動部品を組み込む」Analog Dialogue、Vol. 52、No. 10、2018年10月

3 Man-Lung Sham、Y. C. Chen、L. W. Leung、Jyh-Rong Lin、Tom Chung「Challenges and Opportunities in System-in-Package (SiP) Business(システム・イン・パッケージ(SiP)事業の課題とチャンス)」2006 7th International Conference on Electronic Packaging Technology、2006年8月

4 Maithil Pachchigar「μModuleデータ・アクイジション・ソリューションは、広範な高精度アプリケーションに関する技術的課題の解決を容易にします」Analog Devices、2020年11月

5 Michael Scheffler、Gerhard Tröster「Assessing the Cost Effectiveness of Integrated Passives(集積型受動部品の費用対効果を評価する)」Proceedings of the Conference on Design, Automation and Test in Europe、2000年2月

6 King L. Tai「System-In-Package (SIP): Challenges and Opportunities(システム・イン・パッケージ(SIP) - 課題とチャンス)」Proceedings of the 2000 Asia and South Pacific Design Automation Conference、2000年1月

7 Domenico Arrigo、Claudio Adragna、Vincenzo Marano、Rachela Pozzi、Fulvio Pulicelli、Francesco Pulvirenti「The Next ‘Automation Age’: How Semiconductor Technologies Are Changing Industrial Systems and Applications(次なる「自動化時代」 - 半導体技術が産業用のシステムとアプリケーションにもたらす変化)」ESSCIRC 2022- IEEE 48th European Solid State Circuits Conference (ESSCIRC)、2022年9月

8状態基準保全」Analog Devices

9 Yangang Wang、Xiaoping Dai、Guoyou Liu、Daohui Li、Steve Jones「An Overview of Advanced Power Semiconductor Packaging for Automotive System」(車載システム用の高度なパワー半導体パッケージの概要)」CIPS 2016; 9th International Conference on Integrated Power Electronics Systems、2016年3月

10 K.M. Brown「System in Package: The Rebirth of SIP(システム・イン・パッケージ - SIPの再生)」Proceedings of the IEEE 2004 Custom Integrated Circuits Conference.

謝辞

技術の面から本稿を執筆してくれたStuart Servisに感謝します。

著者

Lloben Paculanan

Lloben Paculanan

Lloben Paculananは、アナログ・デバイセズ(フィリピン ゼネラル・トリアス)のプロダクト・アプリケーション・マネージャです。2000年に入社しました。テスト用の様々なハードウェアの開発やアプリケーション・エンジニアとしての業務に従事。高精度、高速のシグナル・チェーンを実現するµModule製品の開発にも取り組んできました。ザビエル大学アテネオ・デ・カガヤンで生産工学技術に関する学士号、エンベルガ大学でコンピュータ工学の学士号を取得しています。

Regine Garcia

Regine Garcia

Regine Garciaは、アナログ・デバイセズのプロダクト・アプリケーション・エンジニアです。2023年に入社しました。フィリピンのゼネラル・トリアスで高精度シグナル・チェーンµModuleソリューションの開発に携わっています。セント・ルイス大学(フィリピン バギオシティ)で、エレクトロニクス/通信工学の学士号を取得しました。