概要

設計リソース

設計/統合ファイル

  • Schematic
  • Bill of Materials
  • Gerber Files
  • PADS Files
  • Assembly Drawing
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評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • EVAL-ADICUP3029 ($52.97) ADuCM3029 Arduino Form Factor Compatible Development System
  • EVAL-CN0418-ARDZ ($153.01) PLC Output Module with HART
在庫確認と購入

デバイス・ドライバ

コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。

AD5755 IIO Multi-Channel DAC GitHub Linux Driver Source Code

AD5755 GitHub no-OS Driver Source Code

機能と利点

  • 4チャンネル
  • +/- 10V、4~20mA出力
  • HART互換
  • ダイナミック消費電力制御
  • スルー・レートのデジタル制限

回路機能とその特長

図1 に示す回路は、HART 接続による±5V または±10V の電圧出力および4mA~20mA の電流出力を必要とする、産業用グレードのプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)、分散制御システム(DCS)やその他の産業用プロセス制御アプリケーションに最適なフル機能、完全絶縁型、高い柔軟性の4チャンネル・アナログ出力システムを提供します。

全ての4 チャンネル出力と電力入力はトランジェント過電圧および過電流から保護されるため、苛酷な産業環境に最適です。

CN0418 パワー・エントリ回路はオンボードのフィルタリングと保護機能を内蔵し、多くのPLC/DCS アプリケーションによく使用される標準24V 電源を含むDC12V~DC36V の電源電圧に対応します。

HART 互換性を備えたこのモジュールは、使いやすさ、低価格、低消費電力、高信頼性を特長とする全機能内蔵型のフィールド通信ソリューションを提供します。

オンチップのダイナミック消費電力制御により、電流出力モードでのパッケージの消費電力が最小限に抑えられ、複数の回路を使用する多チャンネル、高密度アプリケーションにおける温度管理の問題が軽減されます。

アドレス選択ロジックにより最大4 個の回路をスタックすることができ、4 つの出力で構成されるバンク間の絶縁を維持しながら、1 つのノードで最大16 チャンネルを提供します。内蔵の電気的に消去可能なプログラマブル読出し専用メモリ(EEPROM)にキャリブレーション・データと識別データを格納できます。

4-Channel Multiplexed HART Analog Output Circuit
図1. トランス絶縁型パワー・ソリューションを内蔵する、マルチプレクサを使用した4 チャンネルHART アナログ出力回路
(簡略化した回路図:全接続の一部およびデカップリングは省略されています)

回路説明

産業用制御モジュールには、通常は±5V、±10V、0V~5V、0V~10V、4mA~20mA、0mA~20mA などの標準的な電圧範囲と電流範囲が使用されます。AD5755-1 は、これらの全ての範囲を16 ビット分解能で提供する、低価格の完全統合型シングルチップ・ソリューションです。電圧出力範囲には、20%のオーバーレンジ機能も利用可能です。各DAC チャンネルはゲイン・レジスタとオフセット・レジスタを備えており、これらを使ってシグナル・チェーン全体のゲイン誤差とオフセット誤差を調整することができます。

電流出力と電圧出力は別々のピンで提供されますが、一度にアクティブになるのはいずれかの出力タイプのみであるため、両方の出力ピンを一緒に接続して、1 つの端子に接続することができます。電流出力がイネーブルされると、電圧出力はトライステート・モードになります。電圧出力がイネーブルされると、電流出力はトライステート・モードになります。アナログ出力は短絡とオープン・サーキットに対して保護されます。

AD5755-1 には、図2 に示すように、電圧電流変換回路用に内蔵または外付けの高精度電流設定抵抗を使用できます。温度に対する出力電流の安定性は、電流設定抵抗RSET の値の安定性に依存します。温度に対して出力電流を安定させる方法の1 つとして、AD5755-1 のRSET_x ピンに低ドリフトの15kΩ 外付け抵抗を接続して、内蔵抵抗の代わりにできます。外付け抵抗は、DACコントロール・レジスタを使って選択することができます。回路の評価とテストのセクションで説明するように、両方のオプションを使って精度の高い測定を行いました。

Voltage to Current Conversion Circuitry
図2. 電圧電流変換回路

 

高精度リファレンス電圧の選択

AD5755-1 は10 ppm/°C(最大)のオンチップ・リファレンスを搭載しています。温度範囲全体に対して性能を高めるために、この設計では、最大ドリフト3ppm/°C のADR02 リファレンス(B グレード、SOIC パッケージ)を使用します。リファレンス入力に加えられる電圧は、DAC コアにバッファ付きリファレンスを供給します。このため、電圧リファレンスの誤差は出力に影響を与えます。

ADR02 は、最大36V の入力電圧を許容する高精度5Vリファレンスです。ADR02 の精度は最大誤差0.06%で、温度ドリフトは最大3ppm/°C です(B グレード、SOIC パッケージ)。このドリフトは、−40°C~+100°Cの工業用温度範囲全体では約0.02%の誤差に相当します

ADR02 の長期ドリフトは50ppm(代表値)で、0.1Hz~10Hz のノイズ仕様は10µVp-p(代表値)です。


ダイナミック消費電力制御

AD5755-1 はDC/DC 昇圧コンバータ回路を使用したダイナミック消費電力制御機能を内蔵しており、電流出力モードでの消費電力を削減できます。ほとんどのPLC 電流出力回路は、負荷抵抗値の全範囲にわたって出力電圧のコンプライアンス要件を満たす固定電圧源を使用します。例えば、4mA~20mA ループが20mA を750Ω の負荷に供給する場合は、少なくとも15V のコンプライアンス電圧が必要です。しかし、20mA を50Ωの負荷に供給する場合は、必要なコンプライアンス電圧はわずか1V です。50Ω負荷の駆動時にも15V のコンプライアンス電圧を維持すると、20mA × 14V = 280mWの電力が損失として消費されます。

AD5755-1 の回路は、出力電圧を検出してコンプライアンス電圧を調整し、負荷抵抗に関係なく小さいヘッドルーム電圧だけを許容することにより、この電力損失を大幅に軽減します。AD5755-1 は1kΩの負荷に最大24mA を供給することができます。


DC/DC コンバータの動作

AD5755-1 は4 個の独立なDC/DC コンバータを内蔵しています。これらのコンバータは、各チャンネルについてVBOOST_x 電源電圧のダイナミック制御を行います。図3 に、各チャンネルに関連するAD5755-1 の外付けディスクリート部品を示します。

DC-to-DC Circuit

図3. DC/DC 回路


10Ω、100nF のローパスRC フィルタをCDCDC の後に配置することを推奨します。このフィルタは小さい電力を消費しますが、VBOOST_x電源のリップルを削減します。

DC/DC コンバータは、AD5755-1 の出力チャンネルを駆動する4.5V~5.5V のAVCC 入力を昇圧する固定周波数のピーク電流モード制御方式を採用しています。これらのコンバータは、デューティ・サイクルが90%未満(代表値)の不連続導通モード(DCM)で動作するように設計されています。

チャンネルが電流出力範囲に設定されている場合、コンバータはVBOOST_x 電源を7.4V(±5%)または(IOUT_x × RLOAD + ヘッドルーム)の大きい方にレギュレーションします。電流出力モードで出力をディスエーブルすると、コンバータはVBOOST_x電源を7.4V(±5%)にレギュレーションします。電圧出力モードで出力をディスエーブルすると、コンバータはVBOOST_x 電源を15V(±5%)にレギュレーションします。DC/DC コンバータの動作の詳細については、AD5755-1 データシートを参照してください。


スルー・レートのデジタル制御

AD5755-1 のスルー・レート制御機能により、出力値の変化レートを制御することができます。この機能は電流出力と電圧出力の両方で使用することができ、次の2つの重要な役割を果たします。第1 に、出力が小さな値から大きな値へ変化するときにAVCC から流れる過渡電流を低減します。第2に、HART通信の乱れを低減します。

スルー・レート制御機能を無効にすると、出力値は、出力駆動回路と接続された負荷で制限されるレートで変化します。スルー・レート制御レジスタのSREN ビットを使ってスルー・レート制御機能をイネーブルすると、出力は、スルー・レート制御レジスタを使ってアクセスできるSR_CLOCK およびSR_STEP パラメータで定義されたレートで、2 つのレベルの間を変化します。

次式は、スルー・レートをステップ・サイズ、更新クロック周波数、LSB サイズの関数として表します。

Equation 1

ここで、
Slew Time の単位は秒です。
Output Change の単位は、IOUT_x ではアンペア、VOUT_x ではボルトです。

詳細については、AD5755-1 のデータシートを参照してください。


過渡電圧保護

AD5755-1 は、通常の取り扱いによる損傷を防止するESD 保護ダイオードを内蔵しています。しかし、産業用制御環境では、はるかに高い過渡電圧が入出力(I/O)回路にかかることがあります。AD5755-1 を非常に高い過渡電圧から保護するために、IOUT_x/VOUT_x の接続上に24V 過渡電圧サプレッサ(TVS)を配置します(図4 を参照)。

Output Transient Voltage Protection
図4. 出力過渡電圧保護

 

更に保護を強化するために、IOUT_x ピンおよびVOUT_x ピンとVBOOST_x ピンおよびAVSS 電源ピンの間にクランプ・ダイオードを接続します。また、+VSENSE_x 入力に直列に5kΩ の電流制限抵抗を配置します。この抵抗は、トランジェント発生時に電流を許容できるレベルに制限します。AD5700 HART モデム用の推奨外付けバンドパス・フィルタは、電流を十分に低いレベルに制限する150kΩ抵抗を内蔵しているため、非常に要求の厳しい産業環境でも他の保護回路を追加する必要はありません。


入力電源の保護

EVAL-CN0418-ARDZ ボードには、DC12V またはDC24V 電源などの産業用安定化標準電源が2 線式または3 線式インターフェースを介して接続されます。この電源は故障と電磁干渉(EMI)から保護する必要があります(図5 を参照)。

Input Power Transient Voltage Protection

図5. 過渡電圧に対する入力電源の保護


VR1、VR2、VR3、VR4 は金属酸化物バリスタ・サージ・サプレッサです。F1 は1A のリセット可能ポリヒューズです。この回路により、リファレンス設計システムは、電源ポートに発生する可能性のある干渉とトランジェントに耐えることができます。詳細については、PLC Evaluation Board Simplifies Design ofIndustrial Process Control Systems, Analog Dialogue 43-04, April2009 を参照してください。


電源回路

EVAL-CN0418-ARDZ ボードは、12V~36V のDC 電源から電力を供給され、オンボードのスイッチング・レギュレータを使用してプラットフォーム・ボードに7.5V 電源を供給します(図6と図7 を参照)。このテスト・セットアップでは、この7.5V でEVAL-ADICUP3029 ボードに電力を供給します。EVALADICUP3029ボードは、レギュレーションされた3.3V をIO_VREF ピンの電圧用に供給し(図7 を参照)、5V をその他の回路に供給します。

36V 降圧DC/DC レギュレータADP2441 は、業界標準の24V 電源に対応し、入力電圧に対して広い許容度を持っています。ADP2441 は、この入力電圧を、プラットフォーム・ボード用には1A で7.5V に降圧します。また、Arduino(アルドゥイーノ)互換プラットフォームに通常備わっている5V レギュレータを使用して、EVAL-CN0418-ARDZ のその他の部分向けには5V 電源に降圧します。回路には、24V 電源端子でのフィルタリングと保護も含まれています。

ADP2441 はスイッチング周波数が高いため、小さいインダクタを使用した場合でも出力電圧のリップルを最小限に抑えることができます。インダクタのサイズを選択する場合は、効率と過渡応答の間のトレードオフを考慮する必要があります。インダクタが小さいとインダクタ電流のリップルが大きくなり、過渡応答は改善されますが、効率は低下します。ADP2441 はスイッチング周波数が高いため、コアの損失が小さくEMI も小さい、シールドされたフェライト・コア・インダクタを使用することを推奨します。

図6 の回路では、162kΩ の抵抗が外付けされ、スイッチング周波数は約550kHz となります。33μH というインダクタの値はADP2441 のデータシートから選択されています。回路は、ネジ端子を使って12V~36V のフィールド用電源に接続します。EARTH 端子は、外部アースに接続するか、または外部アース接続を使用しない場合はGND 端子に接続することができます。パワー・インダクタ、バリスタ、パワー・ダイオード、1.1A のヒューズにより、高電圧トランジェントが発生した場合の入力保護を強化します。

絶縁された電力は、フォトカプラ不要のLT8301 絶縁型フライバック・コンバータによって生成されます。4 タップの2 次巻線を持つトランスが絶縁を提供し、+16V、−16V、および+5V 電源を生成します。出力電圧は1 次側のフライバック波形をサンプリングすることによってレギュレーションされるため、光アイソレータ、補助検出巻線やその他の絶縁されたフィードバック手法は不要です。

LT8301 は、マルチ出力回路内で負荷が最も重い出力のレギュレーションに使用される傾向があります。AD5755-1 は、+16V、−16V、+5V の電源レールに対する各種の負荷条件を提供します。表1 に、AD5755-1 の条件を満たす各種の負荷条件下での電源電圧を示します。

Power Supply Circuit
図6. 電源回路(簡略化した回路図:接続の一部は省略されています)

 

Power Tree and Configurations for EVAL-CN0418-ARDZ Board
図7. EVAL-CN0418-ARDZ ボードのパワー・ツリーと構成

 

表1. トランスで絶縁された電源レールの電圧
Setup +16 V Supply (V) −16 V Supply (V) +5 V Supply (V)
Power Circuit Unloaded, AD5755-1 Outputs Disabled 16.15 −16.15 4.8750
AD5755-1 in Current Output Mode

20 mA on Four Channels (1 kΩ Load)

18.55 −20.93 4.8936

24 mA on Four Channels (1 kΩ Load)

19.64 −22.11 4.8622
AD5755-1 in Voltage Output Mode, 10 V on Four Channels (500 Ω Load) 17.11 −17.11 4.9476

 

AD5755-1 は電源電圧に対する広い許容度を持っていますが、お客様のシステムに統合する際には回路を徹底的に評価する必要があります。全ての通常の負荷条件、障害条件、および予想される入力電源電圧の全範囲で、LT8301 により、絶縁された電源のレギュレーションがAD5755-1 データシートに記載された許容範囲内に保たれることを確認してください。


HART 信号の結合

AD5755-1 には4 つの出力チャンネルのそれぞれに1 本、合計4本のCHARTx ピンがあります。HART 信号はこれらのピンに結合することができ、対応する電流出力に現れます(その出力がイネーブルされている場合)。表2 に、CHARTx ピン上のHART 信号に対する推奨入力電圧を示します。これらの電圧を使用する場合、電流出力はHART 振幅仕様を満たす必要があります。図8 に、HART 信号を減衰させてAD5755-1 のHART 入力に結合させるための推奨回路を示します。

表2. HART 出力電流に対するCHARTx 入力電圧
RSET CHARTx Input Voltage (mV p-p) HART Current Output (mA p-p)
Internal RSET 150 1
External RSET 170 1

 

Coupling HART Signal
図8. HART 信号の結合

 

1.2kHz と2.2kHz のHART 周波数が出力で大幅に減衰させられないようにするためには、最小容量C1 + C2 が必要とされます。推奨値は、C1 = 22nF、C2 = 47nF です。HART のアナログ変化レートの条件を満たすには、出力スルー・レートをデジタル制御する必要があります。


デジタル・アイソレーション

ADuM3151 ADuM3482 は、小型の20 ピンSSOP パッケージ(7.2mm × 7.8mm)に収容される3.75kV 4 チャンネル・デジタル・アイソレータです。アイソレータ・コアは3.0V~5.5V の電圧範囲で動作しますが、I/O 電源の電圧範囲は1.8V~5.5V です。これらのデバイスを使用して、1.8V ロジックと直接インターフェースできます。この設計のADuM3151 は、AD5755-1 用のSPI 信号と、ADG759 4 チャンネル・マルチプレクサのアドレス・ラインを制御するGPIO 制御信号を分離します。一方、ADUM3482 は、AD5700-1 HART モデム用のUART 信号を分離します。スティッチング容量は、内部プレーンを重ね合わせることでプリント回路基板(PCB)それ自体に実装されます。その結果、EMI 放射と基板ノイズを低減できます。EMI 軽減手法の詳細については、AN-0971 アプリケーション・ノートisoPower デバイスでのEMI 放射制御についての推奨事項を参照してください。


INL およびDNL 性能

AD5755-1 の積分非直線性(INL)を、トランスで絶縁されたスイッチド電源を使ってテストしました(図9 を参照)。AD5755-1 のデータシートは、内部RSET と外付けRSET のどちらを使用するかに関係なく、電流出力と電圧出力の両方について、全温度範囲にわたって±0.006% FSR のINL を仕様規定しています。図9 と図10 は、測定結果がこの仕様の範囲内に収まることを示しています。

Measured Voltage Output INL/DNL, Channel A
図9. 電圧出力のINL/DNL の測定結果、チャンネルA

 

Measured Current Output INL/DNL, Channel A
図10. 電流出力のINL/DNL の測定結果、チャンネルA

 

絶対精度性能

電流出力モードで内部RSET を使用する場合、AD5755-1 の総合未調整誤差(TUE)の仕様は、25°C で最大±0.11% FSR です。ADR02 リファレンス(B グレード)の全誤差は、25°Cで最大0.06%です。

表3 に、内部RSET と500Ωの負荷を使って、4mA~20mA の範囲でチャンネルA について回路の電流出力誤差を測定した結果を示します。表3 は内部RSET 使用時のチャンネルA の結果をまとめたものですが、4 チャンネル全ての指標となります。全ての結果は予想された値の範囲内です。

表3. IOUT_A の誤差の測定値(4mA~20mA の範囲)
Code IOUT (mA) Error (% FSR)
0x0000 4.0002 +0.0013
0x4000 7.9994 −0.0038
0x8000 11.9988 −0.0075
0xC000 15.9982 −0.0112
0xFFFF 19.9990 −0.0063

 

電圧出力モードについても同様の測定を行いました。この場合のAD5755-1 のTUE 仕様は、25°Cで最大±0.03% FSR です。表4 に、チャンネルA の結果を示します。その他の3 チャンネルも同様の結果を示しました。 

表4. VOUT_A の誤差の測定値(±10V の範囲)
Code VOUT (V) Error (% FSR)
0x0000 −9.996915 −0.000226
0x4000 −8.776362 −0.000179
0x8000 −7.555827 −0.000467
0xC000 5.001719 0.000766
0xFFFF 10.001078 0.001526

 

HART 準拠

FSK Waveform Measured Across 500 Ω Load
図11. 500Ω 負荷の両端で測定したFSK 波形

 

図11 に、IOUT_A に接続された500Ω 負荷抵抗の両端で測定した1200Hz および2200Hz 周波数シフト・キーイング(FSK)周波数を示します。チャンネル1 は(4mA に設定された)AD5755-1の出力に結合される変調済みHART 信号を示し、チャンネル2はAD5700-1 のTXD 信号を示します。

HART 仕様に準拠する回路は、HART 物理層の仕様を満たす必要があります。HART 仕様には、物理層に関する多くの仕様が含まれています。ハードウェアの性能を評価する場合、この回路ノートで検討される2 つの仕様は、サイレント状態の出力ノイズとアナログ電流の変化レートです。


サイレント状態の出力ノイズのテスト

HART デバイスは、送信していないときは(サイレント)、HART 拡張周波数帯域のネットワークにノイズを結合しません。ノイズが多すぎると、HART デバイスそれ自体またはネットワーク上の他のデバイスがHART 信号の受信を妨害することがあります。

500Ω負荷の両端で測定される電圧ノイズに含まれる、HART 拡張周波数帯域内の広帯域ノイズと相関ノイズは、合計で2.2mVrms 以内でなければなりません。更に、この周波数帯の外側では、このノイズが138mVrms を超えてはなりません。

このノイズを測定するには、HCF_TOOL-31 フィルタ(HART Communication Foundation から入手可能)を500Ω負荷の両端に接続し、次にフィルタの出力を差動入力の+側のRMS メータに接続します。オシロスコープを使用して出力波形を調べます。

Output Noise During Silence Waveform at Input to HCF_TOOL-31
図12. HCF_TOOL-31 への入力におけるサイレント状態の出力ノイズ波形

 

アナログ電流の変化レート

この仕様は、デバイスが電流をレギュレーションするとき、アナログ電流の最大変化レートがHART 通信に干渉することを防ぎます。電流のステップ変化はHART 信号を混乱させます。最も厳しい条件でのアナログ出力電流の変化が、ピーク時に15mV(HART 拡張周波数帯域内で500Ω負荷の両端で測定)を超える変動を発生させてはなりません。この条件を満たしていれば、アナログ信号の最大帯域幅が、仕様規定されているDC~25Hz 周波数帯の範囲を超えることはありません。

サイレント状態のノイズ・テストと同様に、このテストでもHCF_TOOL-31 を500Ω負荷の両端に接続し、オシロスコープをHCF_TOOL-31 の出力に接続しています。ただし、一定の電流を出力するようにAD5755-1 を設定するのではなく、4mA から20mA にスイッチングする周期波形を出力するようにAD5755-1を設定しています。要求されているシステム仕様を満たすために、AD5755-1 のスルー・レートのデジタル制御機能により、出力電流の変化を制限しています。この機能の詳細については、AD5755-1 のデータシートで説明しています。このテストでは、SR_CLOCK を64kHz、SR_STEP を16LSB に設定し、スルー・タイムが64ms になるようにしました。結果を図13 に示します。チャンネル1 は、4mA と20mA の間で変化するAD5755-1 のIOUT_A 信号を示しています。この信号は500Ω 負荷の両端で検出され、バンドパス・フィルタの入力に接続されます。(ゲイン係数が10 の)フィルタの出力は、チャンネル2 に示されています。ピーク値は、既に説明した150mV のピーク制限の範囲内です。

Analog Rate of Change Waveform, IOUT_A
図13. アナログ電流の変化レート波形(IOUT_A

バリエーション回路

電流出力のみを必要とするアプリケーションには、AD5755-1 の代わりにAD5757 を使用することができます。必要な分解能が16 ビット未満の場合は、12 ビットのAD5737 を使用することができます。

AD5755-1 の最大電流またはそれに近い電流で動作するアプリケーションには、より大きな出力パワーを供給する(LT8302 をベースとする)DC2906A のデモ・マニュアルに示すパワー・ソリューションを使用してください。

AD5700-1 の代わりにAD5700 モデムを使用することができます。ただし、AD5700-1 と違ってAD5700 には内部発振器がないため、外付けの水晶振動子クロックまたはCMOS クロックが必要になります。詳細については、AD5700 のデータシートとAD5700-1のデータシートを参照してください。

シングル・チャンネル・アプリケーションについては、回路ノートCN0321、HART 接続機能を備えた完全絶縁型シングル・チャンネル電圧および4mA~20mA 出力を参照してください。

回路の評価とテスト

提供されているソフトウェアは、EVAL-ADICUP3029 プラットフォームを対象としていますが、他のマイクロコントローラ・プラットフォームにも容易に移植可能です。他のプラットフォームに移植する場合、必ず、電圧レベルと機能を含めたハードウェア互換性を詳細に確認してください。

EVAL-CN0418-ARDZ board
図14. EVAL-CN0418-ARDZ ボード

 

必要な装置

動作には以下の装置類が必要になります。

  • EVAL-CN0418-ARDZ リファレンス設計ボード
  • シリアル端末プログラム(Tera Term、PuTTY など)
  • EVAL-ADICUP3029 開発ボード
  • PC(Windows® 32 ビットまたは64 ビット)
  • Agilent E3631A などの24V 電源
  • Agilent 3458A などの高精度電圧/電流計
  • 4 個の高精度500Ω 負荷抵抗
  • オシロスコープ(Tektronix TDS2024B または同等品)
  • USB Type A/micro USB Type B
  • CN0418 ソフトウェア 


設計の開始にあたって

セットアップの詳細については、CN0418 ユーザ・ガイドを参照してください。


ソフトウェアのインストール

以下の手順に従ってソフトウェアをインストールします。

  1. EVAL-CN0418-ARDZ をEVAL-ADICUP3029 ボードに接続します。
  2. 付属のケーブルを使ってEVAL-ADICUP3029 ボードをPCのUSB ポートに接続します。
  3. 端子ブロックP1 のコネクタに24V を印加してEVALCN0418-ARDZ に電源を投入します。
  4. EVAL-ADICUP3029 にファームウェアをアップロードします。 


機能ブロック図

図15 にテスト・セットアップの機能ブロック図を示します。

Test Setup Functional Diagram
図15. テスト・セットアップの機能図

 

以下の基本手順に従ってセットアップを実行します。

1. EVAL-CN0418-ARDZ をEVAL-ADICUP3029 に接続します(図16 を参照)。

EVAL-CN0418-ARDZ Board Attached to EVAL-ADICUP3029
図16. EVAL-ADICUP3029 に接続されたEVAL-CN0418-ARDZ ボード

 

2. ジャンパがマウントされていない場合、図17 と同じ位置のボックスにジャンパをマウントします。

Default Shunt Jumper Position of P9 and P10; Dual Inline Package (DIP) Switch in the On Position
図17. P9 とP10 のシャント、ジャンパのデフォルトの位置。デュアル・インライン・パッケージ(DIP)スイッチはオンの位置

 

3. EVAL-CN0418-ARDZ のP17 ジャンパにDC24V を印加します。
4. EVAL-ADICUP3029 からPC にmicro USB ケーブルを接続します。
5. Putty、Telnet、Tera Term などのコマンド・ライン・インターラプタ・プログラムを使用するシリアル端末ウィンドウを開きます。

コンピュータとインターフェースするためのハードウェアとソフトウェアのセットアップの詳細については、CN0418 ユーザ・ガイドを参照してください。