概要

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• Assembly Drawing 設計ファイルのダウンロード 2.37 M

評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • AD8368-EVALZ ($117.92) AD8368-EVALZ
  • ADL5801-EVALZ ($172.27) ADL5801-EVALZ
  • ADL5902-EVALZ ($123.29) ADL5902-EVALZ
  • EVAL-ADF4351EB1Z ($224.70) EVAL-ADF4351EB1Z
在庫確認と購入

デバイス・ドライバ

コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。

ADF4350 IIO Wideband Synthesizer GitHub Linux Driver Source Code

機能と利点

  • 周波数選択性RMS検出器
  • 35MHz~4.4GHz
  • 90dBのダイナミック・レンジ

回路機能とその特長

この回路は、35MHzから4.4GHzまで、90dBの検出範囲を持つ周波数選択性無線周波数(RF)検出器です。周波数スペクトル内の信号識別を行わない標準的な検出器と異なり、この回路は狭い周波数帯域に焦点を当てることができるので、指定された範囲内での性能が向上します。この検出器はRMS応答回路で、温度や周波数が変化しても安定しているため、周波数精度の高い選択性のRFパワー測定が求められるアプリケーションにとって魅力的なソリューションです。また、不要な妨害波に対する高い耐性も備えています。図1に簡略化した回路図を示します。

Frequency Selective RF Detector

図1. 周波数選択性RF検出器(簡略回路図:全接続の一部およびデカップリングは省略されています)

回路説明

検出器回路は、90dBの検出範囲と、周波数および温度の変化に対する優れた安定性を実現するために、RMS検出器、可変ゲイン・アンプ(VGA)、SAWフィルタ、ミキサ、および周波数シンセサイザを組み合わせて構成されています。入力電力を900MHzで掃引した時に得られる検出器回路の伝達関数を図2に示します。キャリブレーション・ポイントを+13dBm、-50dBm、-65dB、-75dBmに設定した4ポイント・キャリブレーションを使って、最適な直線性を達成することができます。2ポイント・キャリブレーションを使うこともできますが、入力電力範囲全体の直線性が低下します。

図2. 周波数選択性RF検出器の伝達関数と温度の関係

 

この回路に使われているADL5902検出器は、もともと50MHzから9GHzまで65dBの検出範囲を備えています。また、AD8368 VGAは電力範囲の上限と下限を拡大します。VGAと検出器の間に置かれた狭帯域SAWフィルタは、VGAとミキサからのノイズを除去することによって、下限感度を最大限に高めます。回路ノートCN-0340には、このダイナミック・レンジ拡大のメカニズムが詳しく説明されています。

しかし、このように範囲を拡大すると、動作がフィルタのパスバンド周波数範囲に制限されます。CN-0340の回路を広帯域周波数変換ネットワークと組み合わせることにより、複合回路は周波数選択性を備えたものとなります。図1に示す回路では、35MHz~4.4GHzの入力信号をSAWフィルタのパスバンド周波数である140MHzに変換するために、ADL5801ミキサとADF4351周波数シンセサイザが組み合わされています。回路ノートCN-0239は、この回路に使われている広帯域ミキサと局部発振器のグルーレスなインターフェースについて解説しています。

回路のダイナミック・レンジは、ADL5801ミキサのVSETピンを使用してミキサ・バイアス・レベルを最適化することにより、さらに拡大されています。通常、ADL5801ミキサは3.6VのVSETレベルで動作するため、ミキサ・バイアスが大きくなり、それに呼応してIP3の値も大きくなります。しかし、この動作点はノイズ指数を低下させることになり、入力感度が制限されます。2.0Vの最小VSETレベルでミキサを動作させるとミキサのノイズ指数は改善されますが、結果的にP1dBが損なわれ、ダイナミック・レンジの上端が制限されます。ミキサの適応型バイアス・メカニズムは、高低両側の電力レベルにおける回路の検出範囲を最適化するために使われます。VSETピンを、ミキサの内部電力検出器に配線されているDETOピンに接続することにより、デバイスのバイアス・レベルは、信号の状態に基づく適応型の設定となります。この機能は、RF信号が大きい場合はミキサの高い直線性と圧縮を実現し、RF信号が小さい場合は低ノイズ指数を実現することを可能にします。この機能を実装すれば、低入力電力レベルにおけるアプリケーション感度の改善と、高入力電力レベルにおけるダイナミック・レンジの維持を実現することができます。さまざまなミキサ・バイアス・レベルにおける検出器の伝達関数を図3に示します。

図3. さまざまなバイアス・レベルにおけるADL5801ミキサの性能比較

 

温度安定性

電力スペクトル内でのRF入力電力に対する検出器の温度安定性を図2に示します。温度に対する精度は、システムに生じる温度ドリフトを考慮するためのADL5902 RMS検出器の温度補正機能を使用して確保されます。VGAとミキサのゲインの温度変動は、回路の全体的ドリフト性能を1対1で低下させます(つまり、ミキサのゲインが温度に対して1dBドリフトすると、全体的な温度安定性も1dB低下します)。AD8368 VGAの場合、そのデータシートの図5によれば、温度に対するゲイン・ドリフトは約±0.7dBです。同様に、ADL5801のデータシートの図3によれば、温度に対するミキサのドリフトは±0.5dBです。ADL5902のTADJピンの電圧を調整することによって、検出器、VGA、およびミキサの合計温度ドリフトを補償することができます。TADJ電圧を0.6Vにすると、あらゆるRF入力周波数において最適な温度補償を実現できることが実験によって分かりました。


周波数安定性

回路の周波数平坦性を図4と図5に示します。この回路は、動作周波数範囲全体にわたって約1dBの平坦性を示します。ミキサは入力信号を140MHzにダウンコンバートするので、周波数平坦性は、ミキサによって生じるゲイン変動に支配されます。

図4. 入力電力に対する周波数別の出力平坦性

 

図5. 誤差の周波数特性(35MHzで校正後)

 

妨害波耐性 

960MHzに不要な妨害波信号が存在する場合の、900MHzにおける回路の性能を図6に示します。妨害波信号は搬送波信号から60MHz離れた位置にしました。これは、その周波数においてフィルタのパスバンド除去性能が低下し(図7参照)、回路にとって最も厳しいテスト条件となるためです。妨害波信号は、-10dBmを超える妨害波入力レベルにおいて、回路の下端感度を低下させますが、回路は、最大+5dBmの妨害波信号に対して65dBのダイナミック・レンジを維持します。

図6. 妨害波が960MHzの時の900MHzにおける入力伝達関数と出力の関係

 

図7. EPCOS B5249 SAWフィルタの伝達関数

 

バリエーション回路

回路の周波数範囲は、ADF4351周波数シンセサイザを、ADF4155ADF4156などのより広帯域のディスクリート・フェーズロック・ループ(PLL)と外部VCOに置き換えることによって、6GHzに拡大できます。回路の中間周波数、フィルタ帯域幅、および挿入損失は、SAWフィルタを変更することによって修正できます。フィルタの帯域幅と挿入損失が増加するとノイズ・レベルも増加し、その結果としてシステムのダイナミック・レンジが低下します。ミキサ、VGA、およびフィルタによる合計出力ノイズ・レベルは、RMS検出器の公称入力感度より6dB~10dB低くなければなりません。回路のフロントエンド(ミキサ、VGA、フィルタ)の合計ノイズの計算には、ADIsimRFを使用することができます。回路の出力電圧は、回路にAD7091AD7466などのA/Dコンバータ(ADC)を組み合わせることによってデジタル化できます。詳細については、回路ノートCN-0178をご覧ください。

回路の評価とテスト

回路は、ADL5902、AD8368、ADF4351、ADL5801用の標準評価ボード(それぞれADL5902-EVALZAD8368-EVALZEVAL-ADF4351EB1ZADL5801-EVALZ)と、EPCOS B5249 SAWフィルタを組み込んだフィルタ評価ボードを使用して実装しました。これらの評価ボードは全て50Ωのインターフェースを備えているので、SMA型バレルコネクタを使って直接接続しました。ADL5902検出器の出力からAD8368のゲイン制御入力への信号接続と、ADL5801の適合型バイアス制御を構成するためのVSETピンとCET0ピンの接続には、テスト・クリップを使用しました。ADL5902検出器の出力電圧をスケールダウンするのに必要な抵抗分圧器は、ADL5902評価用ボードのR1(3.83kΩ)パッドとR15(1.5kΩ)パッドに表面実装抵抗を配置することによって実装しました。140 MHzで回路の温度安定性を最適化するTADJ電圧(2.3Vのオンチップ電圧リファレンスから得られる)は、R9/R12抵抗分圧器により設定しました。TADJ電圧を推奨値の0.6 Vレベルに設定するには、R9を850kΩに変更します(R12は既存値の301Ωに保ちます)。

組み立てたアプリケーション回路を図8に、テスト・セットアップのブロック図を図9に示します。

図8. 組み立てたアプリケーション回路

 

図9. 回路評価用テスト・セットアップ

 

必要な装置

回路の評価には以下の装置を使用します。

  • USBポート付きのWindows® XP、Windows Vista (32ビット)、またはWindows 7 (32ビット)搭載PC
  • ADL5902-EVALZ、AD8368-EVALZ、EVAL-ADF4351EB1Z、およびADL5801-EVALZ評価ボード
  • EPCOS B5249評価ボード
  • RFシグナル・ジェネレータ
  • デジタル・マルチメータ
  • 電源

入力信号を140MHzの中間周波数にダウンコンバートするために必要なLO周波数のプログラムには、ADF4351制御ソフトウェアを使用しました。さらに、回路の伝達関数と誤差適合性を決定するため、回路のRMS出力電圧を増加入力電力レベルの関数として測定しました。

妨害波信号に対する回路の耐性をテストするため、妨害波をエミュレートするシグナル・ジェネレータと、対象チャンネルをエミュレートするプライマリ・シグナル・ジェネレータを組み合わせて回路を駆動しました。回路性能は、妨害波信号のレベルを増加させた場合の応答で評価しています。