概要
設計リソース
設計/統合ファイル
- Schematic
- Bill of Materials
- Gerber Files
- PADS Files
- Assembly Drawing
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- EVAL-CN0285-EB1Z ($274.24) Broadband Low Error Vector Magnitude EVM Direct Conversion Transmitter
デバイス・ドライバ
コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。
ADF4350 IIO Wideband Synthesizer GitHub Linux Driver Source Code
機能と利点
- 広帯域ダイレクト・コンバージョン・トランシーバ
- 500MHz ~ 4.4GHzRF
- 低位相ノイズ
- 低誤差ベクトル振幅(EVM)
製品カテゴリ
マーケット & テクノロジー
使用されている製品
参考資料
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UG-521: Evaluating the CN-0285 Wideband Tx Modulator Solution2013/03/07PDF240 kB
-
CN0285: 高帯域、低エラーベクトル振幅(EVM)、ダイレクト・コンバージョン送信器2013/03/06PDF604 kB
回路機能とその特長
この回路は高帯域ダイレクト・コンバージョン送信器(入 力:アナログ・ベースバンド、出力: RF)のアナログ部分の 完全な構成です。500 MHz ~ 4.4 GHzのRF周波数は高帯域の 内蔵電圧制御発信器(VCO)とフェーズ・ロック・ループ(PL L)を使用してサポートされています。PLLからの局部発信器 (LO)の高周波フィルタ処理により、優れた直交精度、側波帯 抑圧と低EVMが保証されています。


低ノイズ、低ドロップアウトのレギュレータ(LDOs)を使用しているので、パワーマネージメント回路は位相ノイズとEVMに悪影響を及ぼしません。このデバイスの組み合わせにより500 MHz ~ 4.4 GHzの周波数範囲にわたって業界最先端のダイレクト・コンバージョン送信器の性能を表します。
回路説明
図1.に示す回路では全機能内蔵のフラクショナル-N PLL IC ADF4351と高帯域送信変調器ADL5375を使用します。ADF4351は送信直交変調器ADL5375にLO信号を供給し、このLO信号はアナログI/QをRFにアップコンバートします。2つのデバイスは各々の長所が組み合わさり、高帯域、ベースバンドIQ to RF送信回路を提供します。LO位相ノイズ性能を最適にするために、ADF4351 の電源は超低ノイズ3.3 V レギュレータADP150で分けて駆動されます。ADL5375 は5V LDO ADP3334で分けて駆動されます。LDO ADP150の出力電圧ノイズはわずか9 μV rmsなので、VCOの位相ノイズを最適化し、VCO pushingの影響(電源除去と同等)を低減するのに役立っています。
ADL5375の直交発信器回路の誤差を最小にするために、ADF4351 RF出力には高調波レベルを減衰するためのフィルタ処理が必要です。測定とシミュレーションの結果より、直交誤差には偶数次高調波より奇数次高調波の方が影響しますが、もし−30 dBc以下に減衰すれば、サイドバンド除去比特性は−40 dBc以上になります。ADF4351の2次高調波(2H)と3次高調波(3H)のレベルはデータシートに記載されており、Table 1に示します。
−30 dBc以下の3次高調波を得るには約20dBの減衰が必要です。
Harmonic Content | Value (dBc) | Description |
Second | -19 | Fundamental VCO output |
Third | -13 | Fundamental VCO output |
Second | -20 | Divided VCO output |
Third | -10 | Divided VCO output |
この回路は4つの異なる帯域をカバーするために、4種類のフィルタ・オプションを提供します。フィルタは100 Ωの差動入力(ADF4351 RF出力と適切なマッチングがとれている)と50 Ωの差動出力(ADL5375の LOIN差動インピーダンス)で設計されました。通過帯域リップルが増えますが最適なフィルタのロールオフを得るためにチェビシェフ応答を採用しました。
フィルタ回路を図 3に示します。この回路構成は部品点数を最小限にする完全差動フィルタ、各出力に接続するシングル・エンド・フィルタ又はそれら2つの組み合わせ回路のいずれでも使用できます。高い周波数(>2 GHz) には2つのシングル・エンド・フィルタが最高性能を得られると判断しました。なぜなら直列インダクタの値は完全差動フィルタに比べ2倍の値になり、部品の寄生容量の影響が減少するからです。低い周波数(<2 GHz)には、完全差動フィルタで十分な結果が得られます。
ADF4351の出力マッチング回路はZBIAS ブルアップと、多少の 電源ノードのデカップリング・コンデンサで構成されます。 高帯域のマッチングを得るために、抵抗性負荷(ZBIAS = 50 Ω) を使用するか、あるいはZBIASとしてリアクタンス性負荷と抵 抗の並列回路を推奨します。後者は選択したインダクタの値 によって、わずかに高い出力電力が得られます。基板面積を 最小にするために、位置C1cに差動部品として並列の抵抗(す なわち100 Ω)を配置できる事に注意してください(表 2のフ ィルタ・タイプBをご覧ください)。
対象周波数の中の最も高い周波数の約1.2倍~1.5倍のカット オフ周波数でフィルタを設計してください。このカットオフ 周波数であれば設計に余裕が出来ますが、一般的にカットオ フは寄生容量により設計された数字よりも低くなってしまい ます。精度を向上するためにプリント回路基板(PCB)の寄生 容量の影響を電磁(EM)シミュレーション・ツールでシミュレ ーションする事ができます。

周波数範囲 (MHz) |
ZBIAS | L1 (nH) | L2 (nH) | C1a (pF) | C1c (pF) | C2a (pF) | C2c (pF) | C3a (pF) | C3c (pF) |
500 to 1300 (Filter Type A) |
27 nH||50Ω |
3.9 | 3.9 | DNI | 4.7 | DNI | 5.6 | DNI | 3.3 |
850 to 2450 (Filter Type B) |
19 nH||(100Ω in Position C1c) |
2.7 | 2.7 | 3.3 | 100Ω | 4.7 | DNI | 3.3 | DNI |
1250 to 2800 (Filter Type C) |
50Ω |
0Ω | 3.6 | DNI | DNI | 2.2 | DNI | 1.5 | DNI |
2800 to 4400 (Filter Type D) |
3.9 nH |
0Ω | 0Ω | DNI | DNI | DNI | DNI | DNI | DNI |
表 2からわかるように、1250 MHzより低い周波数では5次フィ ルタが必要です。1.25 GHz ~2.8 GHzの周波数には3次のフィ ルタ処理で十分です。2.8 GHz以上の高い周波数では高調波レ ベルが十分低く、サイドバンド除去比仕様を満たすのでフィ ルタ処理は必要ではありません。


図 4にフィルタ・タイプB(800 MHz ~ 2400 MHz)を使った 回路のサイドバン除去比 対 周波数のグラフを示します。こ のグラフのテスト条件を次に示します:
- ベースバンドI/Qの振幅=500mV (ADL5375-05) DCバイアス と直交する1 V p-p差動サイン波
- ベースバンド I/Qの周波数 (fBB) = 1 MHz
EVMはデジタル送信器あるいはデジタル受信器の性能の品質の レベルで、振幅の誤差と位相の誤差(図 5を参照)で表した 理論位置から実際のコンステレイン・ポイントの偏差です。
EVMの測定値を表 3に示しますが、フィルタ有りとフィルタ無 しの場合の結果を比較しています。この場合、ベースバンドI /Q信号を差動I/Qアナログ出力のあるRohde & Schwarz 社のAM IQ I/Q変調信号発生器を使用し、3GPPテストモード4で生成し ました。フィルタ・タイプBも使用しました。図 6にEVMのテ スト・セットアップの機能ブロック図を示します。比較する 目的でADF4350も測定します。 表 3に示すように、ADF4351は 帯域内PLLノイズが改善されているのでEVMがより低くなって いるのがわかります。EVMの改善に寄与している他の要素はAD F4351の位相周波数検出器(PFD)のスプリアス・レベルが低い 事です。
Frequency (MHz) |
ADF4350 Composite EVM No LO Filtering |
ADF4350 Composite EVM with LO Filtering, Filter B |
ADF4351 Composite EVM with LO Filtering, Filter B |
2140 |
3.27% |
1.31% |
1.02% |
1800 |
1.46% |
1.13% |
0.95% |
900 |
10.01% |
1.03% |
0.96% |

ADL5375の LO入力を差動に駆動する事は、サイドバンド除去と EVMの改善に加え、性能上の利点があります。この利点によっ てシングル・エンドのLO駆動に比べ変調出力IP2の性能は2 dB ~ 5 dB改善します。ほとんどの外付けVCOはシングル・エンド のみで出力するので、この場合外付けVCOすべてについてADF43 51の差動出力を使用するメリットがあります。
図7は850 MHz ~ 2450 MHz フィルタ (フィルタ・タイプ B) を使用したサイドバンド除去比の結果を示します。

この回路ノートのための完全な設計支援パッケージは http://www.analog.com/CN0285-DesignSupportに載っております。
回路の評価とテスト
EVAL-CN0285-EB1Z 評価用ボードにはCN-0285に記述されている 回路が含まれており、回路のセットアップと性能評価を迅速に行 えます。EVAL-CN0285-EB1Zのコントロール・ソフトウェアには 評価ボードに付いているCDに入っている標準のADF4351プログ ラミング・ソフトウェアを使用します。
必要な装置
下記の装置が必要です:
- Windows® XP, Windows Vista®(32ビット)又は Windows® 7 で動作しUSBポートを有する標準PC
- The EVAL-CN0285-EB1Z 回路評価用ボード
- ADF435xのプログラミング・ソフトウェア
- 電源電圧: 5.5 V
- I-Q信号源:Rohde & Schwarz 社AMIQなど
- スペクトラム・アナライザ :Rohde & Schwarz社 FSQ8な ど
さらに詳しい情報については UG-521 User Guide、 ADF4351 データシート、 ADL5375 データシートをご覧ください。
始めてみよう
ソフトウェアのインストールとテスト・セットアップはUG-521 User Guideを参照してください。ユーザーガイドにはブロック図、アプリケーション回路、部品表とさらにレイアウトとアセンブリの情報も含まれています。追加の情報についてはADF4351データシートとADL5375 データシートをご覧ください。
機能ブロック図
この資料の図1.と図 6そしてユーザーガイドUG-521もご覧ください。
セットアップとテスト
装置をセットアップした後、標準のRFテスト方法を使用して回路のサイドバンド除去比を測定してください。