切り替わる出力のデータビット

質問:

ADCの入力に信号がないのに、出力 のデータビットが切り替わります。 なぜでしょうか?

raq-issue-81

回答:

高速A/D コンバータ(ADC) に慣れていない人は、アナログ 入力が静的であったらコンバー タのデジタル出力は一定になる と思うかもしれません。これ は、入力信号がないオペアン プの出力に単純なDC オフセッ ト誤差を予想するようなもので す。アンプ回路の入力信号を取り除 き、デジタル電圧計(DVM)で出力電 圧を測定すれば、アンプのオフセットが表示され ます。しかし、DVM は表示された結果を平均処 理しているので(しかもADC を使って!)、アン プの出力におけるノイズは不明です。ノイズの測 定には、オッシロスコープまたはスペクトル・ア ナライザが必要です。

シグナル・チェーン内のほかの部品と同様、ADC も自身の熱ノイズを発生します。したがって、 ADC が入力信号なしで予想どおりに動作してい るか確認したければ、DVM がアンプ回路で行う のと同様に、データを1 ブロック取得し、平均処 理する必要があります。高速ADC は一般的にそ のミッドスケール・コードに固有のオフセットが 加算されたり減算されたりした値にフローティン グするため、平均出力コードはADC のオフセッ ト仕様の範囲内に収まります。取得したデータブ ロックを解析するときに、ADC のノイズ性能を 簡単に検証できます。データシートの仕様は入力 換算ノイズであり、LSB rms で規定されています。 この測定はグラウンド入力ヒストグラム・テスト と呼ばれますが、この名前は両電源動作でグラウ ンドを中心とするバイポーラ入力レンジだった初 期のコンバータに由来しており、入力をグラウン ドに短絡させることは入力信号がないことと同義 でした。最新の高速コンバータは一般に単電源で 動作するため、その入力同相電圧はグラウンドではなくフロントエンド・アナログ電源のミッドポ イントです。幸い、ヒストグラム・テストは入力 信号なしでデータのブロックを取得して行われま す。これは、もう行いましたね。しかし、今度は 取得した出力データを平均処理するのではなく、 ヒストグラムを作成します。典型的な高速ADC は入力ノイズを1 LSB rms と規定していますか ら、オフセット±3 コードのガウス分布が得られ るでしょう。入力換算ノイズは、取得したデータ の標準偏差として計算します。

そこで最初のご質問に戻りますが、たとえ入力信 号がなくても、ADC に由来する広帯域ノイズに よって出力データが切り替わります。それでは、 残りのデバッグ作業、がんばってください。

著者

David Buchanan

David Buchanan

David Buchananは、1987年にヴァージニア大学でBSEE(電気工学士)を取得しました。 アナログ・デバイセズ、Adaptec、STMicroelectronics社においてマーケティングとアプリケーション・エンジニアリングを担当。 さまざまな高性能アナログ半導体製品を扱いました。現在は、ノースキャロライナ州グリーンズボロにあるアナログ・デバイセズの高速コンバータ製品ラインの上級アプリケーション・エンジニアです。