概要

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評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • EVAL-ADAS3022EDZ ($116.52) Complete 5 V, Single-Supply, 8-Channel Multiplexed Data Acquisition System with PGIA for Industrial Signal Levels
  • EVAL-CED1Z ($337.04) Eval Control Board
在庫確認と購入

機能と利点

  • フル機能のシングル・チップ8チャンネル16ビットDAS
  • 工業用信号レベルが最大±10V
  • 単電源

回路機能とその特長

図1に示す回路は、高集積化された柔軟な16ビット、1MSPS、8チャンネル・マルチプレクス・データ・アクイジション・システム(DAS)で、工業用信号レベルの全範囲に対応可能なプログラマブル・ゲイン計装アンプ(PGIA)を内蔵しています。

図1. PGIAを内蔵したフル機能の5V単電源、8チャンネル・データ・アクイジション・ソリューション
(簡略回路図:全接続の一部およびデカップリングは省略されています)

 

+5V単電源が回路に電力を供給し、高効率で低リップルの昇圧コンバータが±15Vを生成します。この±15Vにより、INLが±2LSB(max)、DNLが±0.5LSB(typ)で最大±24.576Vの差動入力信号を処理することができます。高精度アプリケーション向けに、この小型で費用対効果の優れた回路は高精度と低ノイズの両方を提供します。

逐次比較レジスタ(SAR)ベースのデータ・アクイジション・システムは、真の高インピーダンス差動入力バッファを備えているため、一般に容量性D/Aコンバータ(DAC)をベースとするSAR A/Dコンバータ(ADC)でキックバックを低減するのに必要なバッファを追加する必要がありません。さらに、この回路は同相除去機能を備えているため、同相信号が生じるアプリケーションで通常必要な外部計装アンプが不要です。

ADAS3022はフル機能の16ビット、1MSPSデータ・アクイジション・システムで、低リークの8チャンネル・マルチプレクサ、高同相除去比のプログラマブル・ゲイン計装アンプ段、低ドリフトの高精度4.096Vリファレンス、遅延のない高性能16ビットSAR ADCを内蔵しています。ADAS3022は各変換サイクルの終了時に電力を低減します。したがって、動作時の電流と電力がスループットに比例して変化するので、このデバイスは低サンプリング・レートのバッテリ駆動アプリケーションに最適です。

ADAS3022は8つの入力とCOM入力を備えており、8つのシングルエンド・チャンネル、共通リファレンスを使った8つのチャンネル、4つの差動チャンネル、またはシングルエンド・チャンネルと差動チャンネルのさまざまな組合わせとして構成することができます。

図1に示す回路では、オペアンプ AD8031でバッファされた低ノイズ・リファレンスADR434からリファレンスを供給します。AD8031は動的負荷を短い回復時間で駆動する能力があるため、リファレンス・バッファに最適です。

ADP1613はパワー・スイッチを内蔵したDC/DC昇圧コンバータで、ADAS3022の性能に影響を与えることなく、内蔵の入力マルチプレクサとプログラマブル・ゲイン計装アンプに必要な±15Vの高電圧源をADAS3022に供給します。

この回路は高精度と低ノイズの両方を実現します。これは、ADAS3022、ADP1613、ADR434、AD8031の高精度デバイスの組合わせによって可能になります。

回路説明

ADAS3022はシングル・チップに全機能を内蔵した初のDASで、最大1MSPSでの変換と最大±24.576Vの差動アナログ入力信号の入力が可能です。ADAS3022は、高電圧バイポーラ電源±15V(VDDHとVSSH)、+5V(AVDDとDVDD)、+1.8V~+5V(VIO)を必要とします。

ADAS3022は、標準的なソリューションで必要とされる信号バッファ、レベル・シフト、増幅、ノイズ除去などのアナログ・シグナル・コンディショニングを不要にするので、高精度の16ビット1MSPS DASを構築する設計上の課題が簡素化されます。さらに、高データレートでの最適なタイミングとノイズ性能、小型化、市場投入時間の短縮、低価格化を実現します。

ADAS3022は、0.16、0.2、0.4、0.8、1.6、3.2、6.4のゲインに設定可能なPGIAを内蔵しているので、±24.576V、±20.48V、±10.24V、±5.12V、±2.56V、±1.28V、±0.64Vの各完全差動入力範囲に対応可能です。入力範囲は4.096Vの内部リファレンス電圧を基準にしています。

入力電圧をCOMピンの電圧を基準にして測定する場合、擬似差動、ユニポーラ、およびバイポーラの入力範囲にも対応可能です。

図1に示す回路では、4.096VのADR434が外部リファレンス電圧を供給します。ADR434は、高精度、低消費電力(800µAの動作電流)、低ノイズ、±0.12%の最大初期誤差、優れた温度安定性を特長とします。低消費電力のオペアンプAD8032を使った外部リファレンスのバッファは、広い帯域幅を必要とするバッテリ駆動システムから、高実装密度のために低消費電力が求められる高速システムまでの、幅広いアプリケーションに最適です。

ADAS3022のデジタル・インターフェースは、非同期入力(CNV、RESET、PD、BUSY)と、変換結果の読出しと設定レジスタのプログラミングのためのSPI、FPGA、DSPなどと互換性のある4線シリアル・インターフェース(CS、SDO、SCK、DIN)から構成されています。


ADP1613の電源設計

ADP1613は、シングルエンドの1次側インダクタンス(SEPIC)Cukコンバータとして使用されており、外部の5V電源からADAS3022に必要な±15Vの高電圧(20mA)と低出力リップル(最大3mV)の電源を供給するのに最適です。このアプリケーションでのADP1613のスイッチング周波数は1.3MHzです。ADP1613は、最小の外付け部品を使ってADAS3022の仕様条件を満たし、図2に示すように、86%以上の効率になります。このトポロジーに低価格のADP1613を使用する主な利点は、汎用の結合インダクタを使って±15Vを生成しながら、2つの電源レール間のトラッキングが優れていることです。さらに、ADIsimPower設計ツールを使って、短時間で容易に設計し、製作することができます。

図2. ADP1613の出力電流(IOUT)対効率(POUT/PIN

 

図1に示す回路は、ADIsimPowerで利用可能なADP161x SEPIC-Cuk Downloadable Design Tool内で以下の入力を使って設計されています。

  • VINMIN = 4.75 V
  • VINMAX = 4.99 V
  • VOUT = 15 V
  • VRIPPLE = 0.02%
  • 周囲温度= 55°C
  • 最小コストのための最適化
  • 外付けフィルタのオプション

ADP1613のSWピンの最大電圧はVIN + VOUT = 20 Vに等しく、21Vの絶対最大電圧規格未満であることに注意してください。入力電圧が5V以上の場合、設計ツールではSWピンで駆動されるNチャンネルMOSFETのカスコード接続を追加することを推奨しています。最大5.25Vの入力電圧で15Vを出力する回路には1Vの安全マージンがあるため、このFETは不要です。したがって、設計ツールで使用される入力電圧は4.99Vに設定されています。ADP1613 SEPIC-Cuk コンバータの設計結果はCN0201-Design Supportパッケージ内にあります。


動的性能

AC信号が入力されたADAS3022の代表的な動的性能を図3に示します。実験は、ADAS3022を±15Vのリニアなベンチ電源で駆動した状態と、ADP1613評価用ボードの±15V出力で駆動した状態で行いました。AC性能にもDC性能にも差は見られませんでした。

バリエーション回路

ADAS3022には、ADR444ADR4540のようなその他の4.096V外部リファレンスを使用することができます。必要であれば、外部リファレンスのバッファとしてオペアンプAD8031またはAD8605を使用することができます。

内部または外部のリファレンスとリファレンス・バッファの使用に関する推奨事項の詳細については、ADAS3022のデータシートを参照してください。

ADP1612/ADP1613/ADP1614はパワー・スイッチ内蔵の昇圧DC/DCコンバータで、最大20Vの出力電圧を供給できます。SEPIC-Cukコンバータとして使用する場合、ADP1613は最大60mAの電流を供給することができます。ADP1614は最大120mAを供給します。ADIsimPower設計ツールを使用すると、設計をカスタマイズすることができ、低コストのSEPIC-Cukトポロジーを使って1つのコントローラから堅牢な2本のレールを短時間で形成することができます。

回路の評価とテスト

図4に示すように、この回路はアナログ・デバイセズのADP1613評価用ボード、EVAL-ADAS3022EDZ評価ボード、およびEVAL-CED1Zコンバータ評価開発ボードを接続してテストしました。7VのACアダプタをEVAL-CED1Zに接続し、5Vの外部電源をADP1613評価用ボードに接続しました。

EVAL-ADAS3022EDZは、フル機能の16ビット DAS ADAS3022の性能と機能を単独で容易にテストするための評価ボードです。ADP1613評価用ボードは、ADIsimPowerで利用できるダウンロード可能な設計ツールADP161x SEPIC-Cukを使って開発したものです。

 

図3. EVAL-CED1Z評価ボードとソフトウェアを使用したADAS3022のFFT出力

 

EVAL-CED1Zボードは、アナログ・デバイセズの高精度コンバータを用いるシステムの評価、デモ、開発に使用するためのプラットフォームです。このボードは、コンバータとPC間の必要な通信機能、デバイスのプログラミングや制御機能、USBリンクを介したデータの送受信機能を提供します。


必要な装置


以下の装置が必要です。

  • ADASの回路評価用ボードおよびソフトウェア(EVAL-ADAS3022EDZ)
  • コンバータ評価用および開発用ボード(EVAL-CED1Z)
  • ADIsimPowerによるADP1613評価用ボード
  • Audio PrecisionのSYS-2702
  • PC/ラップトップ(Windows 32ビットまたは64ビット)
  • USBインターフェース・ケーブル(1本)およびAPケーブル(1本)
  • EVAL-CED1Zボード用の7V/2A ACアダプタ電源
  • ADP1613評価用ボード用の5V/100mA DC電源


機能ブロック図


図4にテスト・セットアップの機能ブロック図を示します。ADP1613評価用ボードは+5Vの外部電源で駆動され、ADAS3022ボードが必要とする±15Vを生成します。7V DC用ACアダプタはEVAL-CED1Zボードに電源を供給します。ADAS3022ボードが必要とする5Vは、EVAL-CED1Zボードのレギュレータから供給されます。ACテストを行うときには、Audio PrecisionのSYS-2702 を使って低歪みの入力信号を生成します。


ソフトウェアのインストール


ADAS3022評価用キットのCDには自己インストール型ソフトウェアが含まれています。このソフトウェアはWindows XPとWindows 7(32ビットと64ビット)で使用できます。セットアップ・ファイルが自動的に起動しない場合には、CDからsetup.exeファイルを実行してください。

以下の手順に従ってソフトウェアをインストールしてください。

  1. PCに接続したときに評価システムが正しく認識されるように、ADAS3022評価用ボードとEVAL-CED1ZボードをPCのUSBポートに接続する前に評価用ソフトウェアをインストールしてください。
  2. CDからのインストールが完了したら、UG-484の「電源」のセクションに記載されているように、EVAL-CED1Z ボードをADAS3022評価用ボードに接続してEVAL-CED1Zをパワーアップし、付属のケーブルを使ってPCのUSBポートに接続します。
  3. 評価用システムが検出されたら、順次表示されるダイアログボックスに従って最後まで進みます。これで インストールが完了します。

このソフトウェアを使用することにより、図3に示したようなFFTデータの収集と処理を実行できます。テスト・セットアップの詳細についてはUG-484ユーザー・ガイドを参照してください。

信号対ノイズ比(SNR)、全高調波歪み(THD)、信号対ノイズおよび歪み比(SINAD)の定義と計算方法の詳細については、ADAS3022データシートの「用語」のセクションとData Conversion Handbook, "Testing Data Converters," Chapter 5, Analog Devicesを参照してください。

 

図4. テスト・セットアップの機能ブロック図