質問:
私のクロックの精度を1ppm にしたいのですが
どうすれば精度を上げられますか?
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回答:
位相ノイズまたはジッタを利用することです。AC信号のサンプリング・システムの性能は、ジッタが十分に低いサンプリング・クロックを使用できるかどうかにかかっています。
四半世紀前、私はCBラジオに関する議会の委員会で技術顧問をしていました。委員会はロンドンの国会議事堂の中のウェストミンスター・ホールで開かれました。ここはビッグベン時計台のほぼ真下になり、鐘の音が私たちの話し合いの節目を刻んでいました。クロックや発振器の機能の重要性を説明する時、私はよく例としてビッグベンを引き合いに出しました。
サンプリングが行われるデータ・システムでは、一定の間隔で変化する信号がサンプリングされ、このサンプルについて計算を実行することで信号処理が行われます。発振器にジッタがあると、クロック・エッジの発生がジッタのないクロックに比べて早過ぎたり遅過ぎたりします。周波数精度に影響はありませんが、個々の遷移のタイミングだけが変動します。
エッジが早過ぎると、サンプリングされた信号はまだ正しい値になっていません。エッジが遅過ぎると、信号は先に行き過ぎています。このため、サンプリングが行われるシステムで精度を上げるには、システム・クロックのジッタを十分に低くしなければなりません。実際、周波数精度はたいして重要でないことが多いのです。言うまでもなく、サンプル信号の変化が速いほど(高周波になるほど)、一定のジッタに対する誤差は大きくなります。クロック周波数は無関係です。重要なのは、サンプリングされるアナログ信号の周波数(ADCの場合)か、論理合成される信号の周波数(DACの場合)です。
それほど大きくない信号周波数でも、この問題が重要になることがあります(クロック発振器が適切でなかったために性能が台無しになったデジタル・オーディオ・システムがあったことを覚えています。1つは555タイマであり、もう1つは割込み方式のマイクロプロセッサでした)。数十または数百MHz の信号周波数でIFサンプリングを行う今日のデジタル無線では、これが大変重大な問題になります。たとえば、100MHzの信号で1ピコ秒(1E-12秒)rmsのジッタをもったクロックで動作させた場合、完璧なADC(いかなる欠陥もないもの)を使ったとしても、10ビットを超える分解能の性能を得ることは理論上無理となります。
下記Webサイトから、関連する式、低ノイズ・クロック回路、低クロックのジッタ信号が駆動する回路に至る前に劣化しないようにする回路技術に関する情報が得られます。クロック精度とクロック・ジッタの違いは、ビッグベンを考えるとすぐにわかります。ビッグベンの針がいつも正確な時間を指していても、鐘の音が最大5分の誤差でランダムに鳴るとしたらどうなるか考えてみてください。