古いタイプのロジック素子のメリット

質問:

アナログ回路の設計でロジック 素子を使う場合、主にどのようなタイ プのロジック回路を使ったらよいで しょうか?

RAQ:  Issue 73

回答:

もちろん、古いタイプのロジックです!マイクロプロセッサや最新の高速ロジック・ タイプではなく、古くて遅い4000シリーズのCMOSです。ストーンヘンジ(Stonehenge)1ほど古くはありませんが、4000シリーズには多くの価値のある半導体ICが含まれています。

アナログ回路は、しばしばちょっとしたロジック、つまり簡単な発振器やタイマなどを必要としますが、ロジック用の電源を特別に用意しない場合がほとんどです。それに、高速ロジックはスイッチング・ノイズを生成します。

4000シリーズのCMOSは、40年を超える年代物であるにもかかわらず、まだ広く市販されており2、このようなアプリケーションには最適です。3V ~15V(場合によっては18V)の電源で動作し、消費電流が小さく、スイッチング時に瞬時であっても大きい電流パルスを引き込むことはありません。また、低速であるがゆえに低ノイズです。

4000シリーズの一部(例えば4093クワッドNANDゲートや40106ヘキサ・インバータなど)にはシュミット・トリガ入力があり、僅かの部品を追加することで、低速のアナログ入力から矩形波を作成することができます。これらのデバイスは、簡単な発振器、タイマ、パルス発生器などにも使用できます。

4000シリーズの入力電流は低く、このようなアプリケーションでは通常それほど速度は問題ではないため、必要に応じて、入力にダイオード/抵抗あるいはANDまたはORロジックを追加してもっと複雑なロジックにすることができます。5pF ~ 7pFの入力容量を高い値の直列入力抵抗と組み合わせて数マイクロ秒の遅延を生成することもできます。

4000シリーズには4046フェーズ・ロックド・ループ(PLL)回路があります。これは、実用的な位相比較器と、便利で、それほど性能の高くない電圧制御発振器(VCO)3を備えています。このファミリーには、そのほかにも役に立つ小~中規模のロジック回路が数多くあります。4

もちろん、不利な点もあります。4000シリーズを使ったタイマや発振器は温度と電源電圧に対する感度がお粗末で、発振器では位相ノイズ性能が劣っています。MSI機能を持ったICは入手しにくいため、複雑なロジックを作るにはいくつかのデバイスが必要です。しかも、これらのデバイスにはDILパッケージとSOICパッケージしかありません。

とはいうものの、この4000シリーズは、アナログが中心の回路でロジック機能やタイミング機能を提供するには最適です。広い電源電圧範囲に亘りスイッチング・ノイズと消費電力が低いため、このような機能が必要な場合、4000シリーズは常に検討するに値します。

1 4000年以上の歴史を持つストーンヘンジのほうが、40年の歴史 の4000シリーズよりもやや上回っていますけれど。
2 4000シリーズは広く市販されていますが、アナログ・デバイセズで は扱っていません。
3 もっと性能の高いVCOが必要であれば、4046位相比較器との相性 がよく、5V ~ 36Vの電源電圧で動作するAD654があります。
4 http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_4000_series_integrated_circuits


 

著者

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James Bryant

James Bryantは、1982年から2009年に定年退職するまで、アナログ・デバイセズの欧州地区アプリケーション・マネージャを務めていました。現在も当社の顧問を務めると共に、様々な記事の執筆に携わっています。リーズ大学で物理学と哲学の学位を取得しただけでなく、C.Eng.、Eur.Eng.、MIEE、FBISの資格を有しています。エンジニアリングに情熱を傾けるかたわら、アマチュア無線家としても活動しています(コールサインはG4CLF)。