概要
本稿では、ウィンドウ電圧監視ICの話題を取り上げます。その種のICは、システムの電源電圧が許容範囲内に収まっていることを確認するために使用されます。そのようにして低電圧や過電圧を検出できるようにすれば、システムの電源の安定性を高められます。その結果、システムや負荷の潜在的な誤動作、損傷を防ぐことが可能になります。ひと言でウィンドウ電圧監視ICと言っても、製品によって採用しているアーキテクチャは様々です。その違いにより、許容可能な範囲、低電圧/過電圧の閾値の設定方法、出力用の構成などに関するオプションが提供されています。したがって、個々のアプリケーションの条件に応じて最適な仕様の製品を選択することが重要です。本稿では、代表的なアーキテクチャを採用した製品の例を示し、それぞれの機能や特徴について詳しく説明します。
はじめに
車載、産業、家電などの分野では、様々な電気/電子機器が使われています。それらの機器の電源電圧が突然変動すると、深刻な問題が発生する可能性があります。そうしたシステムの電源の問題は、電圧スパイク、不十分/不安定な電流、落雷、フリッカなどに起因して発生します。
ウィンドウ電圧監視ICを使用すれば、上記の問題に起因するシステムの誤動作を防止することができます。この種のICは、監視の対象となる電圧が特定の範囲内にあるか否かを判定します。つまり、その範囲を上回った場合と下回った場合を検出し、それぞれの状態に対応する信号を出力します。この信号を利用すれば、保護用の回路を作動させられます。ウィンドウ電圧監視ICとしては、様々なアーキテクチャを採用したものが製品化されています。また、利用できる機能も多種多様です。したがって、システムに最適な製品を選択するためには、各アーキテクチャの特徴や提供される機能について理解しておく必要があります。製品を選択する際に検討すべきオプションは多岐にわたります。例えば、低電圧(UV)/過電圧(OV)のトリップ・ポイントについては、外付けの抵抗を使って設定するタイプの製品があります。一方で、UV/OVの閾値は、そのICを製造する工場で固定の値に調整済み(トリミング済み)のものもあります。それ以外にも、複数種の電圧を対象として監視を実行できるマルチチャンネルの製品が提供されています。更には、UV/OVに対応する単一の信号を出力する製品もあれば、UV/OVのそれぞれに対応して個別に信号を出力する製品も存在します。
ウィンドウ電圧監視ICの基本的な原理
ウィンドウ電圧監視ICは、従来のウィンドウ検出回路と同様の原理で動作します。図1に示したのは、従来のウィンドウ検出回路とその入出力波形の例です。この回路では、2個のコンパレータを使用しています。各コンパレータには共通の入力電圧が引き渡され、一方は上限に当たるリファレンス電圧(閾値)との比較を行い、他方は下限に当たるリファレンス電圧との比較を実行します。つまり、2つのリファレンス電圧によってウィンドウが形成されるということです。入力電圧が下限値を下回る場合にも、上限値を上回る場合にも、それぞれが異常として検出されます。図1の回路全体としての出力電圧は、入力電圧がウィンドウの範囲内に収まっているか否かを表します。
もう少し詳しく説明すると、図1の回路では、VINが下限値を上回ると、コンパレータU2の出力がローからハイに切り替わります。一方、コンパレータU1では、VINが上限値を上回ると、出力がハイからローに切り替わります。VINが下限値より高く上限値より低い場合、両コンパレータの出力はハイになります。その結果、後段のANDゲートの出力がハイになります。
ウィンドウ電圧監視ICでは、複数のコンパレータが1つのリファレンス電圧を共有します。また、電源電圧の許容範囲、閾値のヒステリシス、閾値の精度について、仕様で規定されたマージンを提供します。多くの場合、電源電圧の許容範囲はパーセンテージで表されます。その値は、UV/OVに対する閾値をベースとして、公称電圧に対応するウィンドウを定めるために使用されます。ヒステリシスは、信頼性の高いリセット動作を実現するためのものです。それにより、電源のノイズや不適切な信号が存在しても、リセット信号が誤って出力されることを回避できます。閾値の精度は、UV/OVの閾値の許容範囲を表します1。
外付けの抵抗で電圧の閾値を設定する
まずはウィンドウ電圧監視ICで使用される1つ目のアーキテクチャを紹介します。そのアーキテクチャでは、システムで使用する電源電圧の監視を実現するために3個の外付け抵抗を使用します。具体的には、UV/OVの監視に用いる閾値を設定するために、コンパレータの入力に抵抗分圧器を接続します(図2)。UV/OVに対応する閾値ベースのウィンドウの許容範囲はあらかじめ定められているわけではなく、ユーザがマニュアルで設定することになります。多くの場合、このタイプのウィンドウ電圧監視ICとしてはシングルチャンネル品とマルチチャンネル品が提供されています。また、それらの製品の場合、ICの電源ピンVCCは入力ピンや監視用のピンとは異なるものとして存在しています(VCCピンは監視の対象にはなりません)。
図2の回路は正の電圧を監視するためのものです。この回路は、複数のチャンネルを備えており、それぞれに専用のUV出力とOV出力が用意されています。各チャンネルの入力部には3個の外付け抵抗が接続されます。正の電源電圧VMを監視する際、この回路は次のように動作します。まず、抵抗分圧器によって得られる上側の電圧VHが内部のリファレンス電圧を下回ると、UVの条件が成立します。また、下側の電圧VLが内部のリファレンス電圧を上回るとOVの条件が成立します。このタイプの監視ICを使用する場合、ユーザはUV/OVの検出用に所望のトリップ・ポイントを設定できます。これが、この種のICを採用することで得られるメリットです。その際、抵抗R1はOV用のトリップ・ポイントを設定するために使用します。同様に、抵抗R2はUV用のトリップ・ポイントを設定するために使用します。抵抗R3については、設計を完成させるための値を選択します。各抵抗の値を決定する際には、以下に示す一連の式を使用します。
まず、監視の対象となる電圧VMと抵抗分圧器の公称電流IMの値から以下の式が成り立ちます。
続いて、R1の値を以下の式に基づいて設定します。
R2の値は以下の式によって得られます。
外付け抵抗を使用する際には注意すべきことがあります。それは、同抵抗を使用した回路によってシステムの消費電力が増加するというものです。また、システムの全体的な精度が低下する可能性もあります。値の大きい抵抗を使用すれば、消費電力を最小限に抑えることができます。ただ、値の小さい抵抗を使用する方が全体的な精度は維持しやすくなります。
上述したアーキテクチャを採用したウィンドウ電圧監視ICの例としては、「MAX16009」が挙げられます。同ICはクワッドチャンネルの製品であり、低電圧に対応できることと高い精度が得られることを特徴とします。複数のチャンネルを対象とし、UVとOVの閾値を0.4Vという低い値に設定できます。そのため、システムを設計する際に柔軟性が得られます。図3に示したのは、内視鏡のスコープ部でMAX16009を使用する例です。周知のとおり、内視鏡は腔内や臓器内を観察するために使用されます。その際には、照明とカメラを備える長いチューブを人体に挿入することになります。このシステムを動作させるには、複数種の低い電源電圧が必要です。この回路では、MAX16009によってFPGAのコア電源と入出力電源を監視します。それにより、電圧ハザードが発生しないことを確認します。このようにすることで、システムの信頼性と堅牢性を高められます。
上述したアーキテクチャを採用した製品をもう1つ紹介します。「ADM12914」は、正の電圧と負の電圧に対応可能なウィンドウ電圧監視ICです。±0.8%の精度を備えるクワッドチャンネル品であり、外付け抵抗によってUV/OVの閾値を設定します。また、このICは、チャンネル3、チャンネル4の入力の極性を設定するためのスリーステート・ピンを備えています。このピンによって、正の電圧を監視するのか、負の電圧を監視するのかという選択が行えます。計測器などのアプリケーションでは、高い精度で電圧を監視できることが重要です。具体的な例としてはインパルス巻線試験機が挙げられます。この試験機は、トランスやモータなど、コイルをベースとする製品の潜在的な欠陥を発見するために使用されます。特に、製造初期の段階では発見が困難な層間の絶縁性が低いユニットを検出できます。その試験では、巻線の端子間にインパルス電圧を印加します。そして、既知の正常な巻線に基づくリファレンスと試験によって得られた波形を比較することで欠陥を検出します2。より具体的に説明すると、高速なA/Dコンバータ(ADC)を使用して波形をサンプリング/表示し、検出に使用する標準的な波形と比較します。ADM12914では、高い精度で閾値を柔軟に設定できます。そのため、ADC用のドライバ、高速アンプ、マイクロプロセッサなど、試験機が備える様々な回路ブロックのバイアス電圧を高い精度で監視することが可能です。この種の試験機は、産業/車載/民生分野の製品の構成要素である高品質のコイルを製造する際、非常に重要な役割を果たします。ADM12914は、電圧の監視という面で、そのような試験機の実現に貢献するということです。
アナログ・デバイセズは、この1つ目のアーキテクチャを採用したウィンドウ電圧監視ICを数多く提供しています。表1は、それらの製品についてまとめたものです。すなわち、UV/OVの閾値を外付け抵抗で設定できる製品を取り上げています。
品番 | チャンネル数 | 各チャンネル専用のUV/OV出力 |
MAX6763 | 1 | あり |
MAX6764 | ||
MAX6459 | ||
LTC2912 | ||
LTC2913 | 2 | なし(全チャンネルに共通のUV/OV出力) |
LTC2914 | 4 | なし(全チャンネルに共通のUV/OV出力) |
ADM12914 | ||
ADM2914 | ||
MAX16008 | あり | |
MAX16009 | ||
MAX16063 |
工場で調整済みの閾値を使用したウィンドウを選択できる
続いて、ウィンドウ電圧監視ICの代表的なアーキテクチャをもう1つ紹介します。この2つ目のアーキテクチャを採用した製品では、UV/OVの閾値が工場で調整済み(トリミング済み)の状態になっています。製品を使用する際には、それらの閾値を組み合わせたウィンドウを選択して使用する形になります。この種の製品には、UV/OVに対応する出力を1つだけ備えているものと、それぞれに対応する出力を独立した形で備えているものがあります。
このアーキテクチャを採用した製品の例としては「MAX6762」が挙げられます。0.9V~5Vのシステム電圧を監視するための閾値が、工場で固定値として調整された状態で出荷されます。UV/OVに対応する定義済みの閾値の±5%、±10%、±15%のウィンドウを選択できるようになっています。このアーキテクチャでは、外付け部品を使用する必要がありません。そのため、それらの値の変動について考慮する必要もありません。ウィンドウは、SETピンによって選択できます。このことから、設計を最適化するための柔軟性が得られます。外付け抵抗を使用するタイプの製品とは異なり、このアーキテクチャを採用したICでは、そのICの電源電圧であるVCCが監視の対象になります。つまり、監視の対象とする電圧専用のピンは存在しません。図4は、MAX6762の機能ブロック図です。この図には、閾値をベースとするUV/OV用のウィンドウのオプションと出力の構成を示してあります。
ノイズの影響を受けやすいアプリケーションでは、電源電圧を厳密にレギュレートすることが求められます。MAX6762では、その場合に必要な許容範囲の狭い設定を簡単に選択できます。一方で、電源ノイズに対する耐性が高く、電源電圧を厳密にレギュレートする必要がないアプリケーションも存在します。その場合、許容範囲の広い設定を選択し、電源ウィンドウを最大化するとよいでしょう。そうすれば、電源電圧の変動に対して過剰に反応してしまったり、システムが発振したりといった事態を防ぐことができます。このアーキテクチャは、設計者がソリューションごとに柔軟性と複雑さのバランスを取ることを可能にします。また、工場で閾値を調整済みで外付け抵抗が不要であることから、ソリューションが簡素化されます。しかも、SETピンによって適切なウィンドウを選択できるという柔軟性が得られます。
図5は、ワイヤレス・トランシーバーの電源ツリーを簡略化して示したものです。このアプリケーションでは最良のノイズ性能が求められます。それだけでなく、電源電圧を厳密にレギュレートしなければなりません。多くの場合、上流のスイッチング・レギュレータから発せられるノイズやスイッチング周波数の高調波成分を抑制することが求められるでしょう。そのための手段として、LDO(低ドロップアウト)レギュレータなどのリニア・レギュレータがポスト・フィルタのような意味合いで使用されることがあります。その一方で、高性能のスイッチング・レギュレータを選択するだけで済むケースも少なくありません。いずれにせよ、ウィンドウ電圧監視ICを適用すれば全体的な信頼性を高められます。なぜなら、レギュレートに関する厳密な要件を満たしたアナログ電源とデジタル電源によって確実な動作が得られるようになるからです。この例において、各電源電圧はMAX6762によって監視されます。その際には、定義済みの閾値をベースとしたウィンドウを選択して適用することになります。最適なノイズ性能を備えるレギュレータを使用していれば、より狭い許容範囲を選択することが可能です。また、UVに対応する出力は、マイクロプロセッサをリセット・モードに移行させるために論理ORに構成されています。一方、OVに対応する出力は、マイクロプロセッサのノンマスカブル割り込み(NMI:Nonmaskable Interrupt)に対する入力として使用しています。
アナログ・デバイセズは、この2つ目のアーキテクチャを採用したウィンドウ電圧監視ICも数多く提供しています。表2は、それらの製品についてまとめたものです。この表では、工場で閾値を調整した上でウィンドウを選択できるように設計された製品をピックアップしています。ご覧のように、シングルチャンネル品とデュアルチャンネル品が用意されています。また、UV/OVに対応する単一出力を備える製品と、UVに対応する出力とOVに対応する出力が個別に用意されている製品があります。
品番 | チャンネル数 | UV/OVに対応する出力 |
MAX6754 | 1 | UV/OVに対応する単一出力 |
MAX6755 | ||
MAX6756 | ||
MAX6757 | UV用とOV用の独立した出力 | |
MAX6759 | ||
MAX6760 | 2 | |
MAX6762 |
工場で調整済みの閾値、UV/OV用の単一出力
最後に、3つ目のアーキテクチャを紹介します。このアーキテクチャを採用したICも、工場で調整済みの閾値をベースとするウィンドウによってUV/OVの問題を検出します。2つ目のアーキテクチャとの違いは、UV/OVの閾値の許容範囲も工場で調整される点にあります。また、このアーキテクチャを採用した監視ICは、通常は単一のリセット出力を提供します。加えて、単一のICで複数の電圧を監視できるマルチチャンネルのオプションも提供されます。様々な閾値に対応する製品が用意されており、様々な電源電圧と許容範囲に対応できるようになっています。
図6は、このタイプのウィンドウ電圧監視ICの内部ブロック図です。ご覧のように、コンパレータを使用することで、入力電圧INと入力電源電圧VDDを基に入力の状態を判断します。VDDのレベルは、UVLOのレベルを得るために監視されます。INピンに入力される電圧が監視の対象です。INピンの電圧については、OV、UVの状態にあるか否かが個別に監視されます。INの電圧が、あらかじめ設定されたUV/OVのウィンドウから外れた場合、リセット出力がアサートされます。また、この回路は電圧リファレンスを内蔵しています。それを利用して、工場で調整済みの様々な公称入力電圧と、閾値に関する精度の仕様の範囲内で入力の許容範囲が決定されます。その許容範囲により、設定された公称入力電圧に対するUV/OVの閾値のレベルが設定されます。このウィンドウ電圧監視ICは、ウィンドウの閾値に対するヒステリシスも備えています。これは、ノイズに起因する様々な障害の状態を回避するためのものです。
「MAX16193」は、0.3%の精度を達成するデュアルチャンネルのウィンドウ電圧監視ICです。この製品は、この3つ目のアーキテクチャを採用しています。ここでは、公称入力電圧VIN_NOMが0.9V、入力許容範囲のレベルTOLが4%であるとします。その場合、UV/OVの閾値であるUV_THとOV_THは、以下の式によって決まります。
また、電源範囲全体にわたる閾値の精度(ACC)が0.3%である場合、各閾値の最大値/最小値は以下のように算出されます。
これらの値について視覚化したものが図7です。この図中には、各パラメータの計算結果が示されています。各値は、「 Window Voltage Monitor Calculator」というツール(スプレッド・シート)を使用するだけで簡単に算出できます。このツールを使用すれば、監視ICの仕様が電源のウィンドウをはじめとする設計上の要件に適合しているか否かを確認できます。図7を見ると、公称電圧が0.9V、許容範囲が4%、閾値の精度が0.3%という条件でこの監視ICを使用した場合、電源のウィンドウが±3.7%になることがわかります。この設定は、コア電圧が低く、それを厳密にレギュレートする必要があるアプリケーションに適しています。
なお、上で紹介したWindow Voltage Monitor Calculatorは、「MAX16138」、「MAX16191」、MAX16193、「MAX16132」~「MAX16135」、「MAX16137」の製品ページからダウンロードできます。
MAX16132~MAX16135も、このアーキテクチャを採用している電圧監視ICです。これらの製品は、それぞれシングル、デュアル、トリプル、クワッドとチャンネル数が異なります。いずれも、低い電圧に対応可能な高精度の製品です。MAX16132/MAX16133/MAX16134は、チャンネルごとに個別のリセット出力を備えています。それに対し、MAX16135(クワッド入力品)が備えるリセット出力は2本です。これらの製品は、全温度範囲にわたり±1%という閾値の精度を達成しています。このような精度で、ウィンドウ電圧の監視を実施できます。このような特徴を備えていることから、これらのICは自動車で使用される先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)の用途に最適です。また、公称電圧についてもいくつかのオプションが用意されており、アプリケーションの要件に応じて選択できるようになっています。通常、ADASのソリューションには、カメラ、長距離レーダー、超音波センサー、LiDAR(Light Detection and Ranging)などの技術が適用されます。図8に示したのは、ADASのブロック図の例です。この回路において、ウィンドウ電圧監視ICは、パワー・マネージメント・システムの監視カテゴリに存在しています。図中のセンシング回路には、アンプ、ADC、レーダー・トランシーバー、マイクロコントローラなどのデバイスが使われます。この場合、それらで使用される1.8V~5V程度の様々な電源電圧を監視しなければなりません。仮に、システムの電源が十分な電圧を供給できなくなったとします。そうすると、システムが周囲の事象を感知する能力に悪影響が及びます。実際、センサーによって物体を正確に検出したり追跡したりすることが困難になり、誤報が生じたり、警告が欠落したりする可能性があります3。MAX16132~MAX16135には、オプションとしていくつかの調整済みの閾値が用意されています。その中からADASの要件に高い精度で対応できるものを選択することにより、電源電圧を厳密にレギュレートするという要件に対処することが可能になります。これらの製品は、工場で調整済みの公称入力電圧として1V~5Vに対応できます。また、±4%~±11%の入力許容範囲と、0.25%または0.5%のヒステリシスという多様なオプションも用意されています。
これらのウィンドウ電圧監視ICは、協働ロボットやコボットといった産業用のアプリケーションでもよく使用されます(図9)。コボットは、繰り返し作業や危険な作業を担当する自律型のロボットです。それらは、人間の作業者と同じスペースで作業を行うことになります。そのため、コボットには安全を確保するための機能を実現できるよう様々なセンサーを実装しなければなりません。例えば、近くにいる人間を検知したり、人間の作業者に接触したりすると、コボットは自動的に停止します。そして、人間の作業者がその場から離れたら作業を再開します。ロボットに必要なリアルタイム制御は、FPGAの高速な処理能力を活用することによって実現できます4。なかでも、モータ制御の微調整や安定したフィードバック・ループといった機能は非常に重要です。それらの機能を適切に動作させるには、電源電圧を高い精度で監視しなければなりません。MAX16134であれば、この要件を満たせます。
アナログ・デバイセズは、この3つ目のアーキテクチャを採用したウィンドウ電圧監視ICも数多く提供しています。表3は、それらの製品についてまとめたものです。この表では、工場で調整済みの閾値と許容範囲のオプションを備えた様々な汎用品を取り上げています。ご覧のように、様々なチャンネル数、様々な精度に対応する製品が用意されています。
品番 | チャンネル数 | 閾値 | 許容範囲 |
MAX16193 | 2 | IN1:0.6V~0.9V IN2:0.9V~3.3V |
±2%~±5% |
MAX16132 | 1 | 1.0V~5.0V | ±4%~±11% |
MAX16133 | 2 | ||
MAX16134 | 3 | ||
MAX16135 | 4 |
まとめ
ウィンドウ電圧監視ICを使用すれば、電源電圧を監視し、UV/OVを検出することができます。それにより、電源の障害が発生する可能性を下げることが可能になります。結果として、システムの信頼性と堅牢性が向上します。アナログ・デバイセズは、様々なアプリケーションに対応できるよう多種多様なウィンドウ電圧監視ICを提供しています。そのアーキテクチャにはいくつかの種類があり、閾値と許容範囲について異なるアプローチで設定が行えるようになっています。それらの製品を適切に選択することで、システムの最適な設計を実現することが可能になります。
参考資料
1 Noel Tenorio「電圧監視ICを使いこなす - 電源のノイズやグリッチの影響を回避するには?」Analog Dialogue、Vol. 57、2023年11月
2 Yuki Maita「High-Precision Winding Testing with a New Type of Impulse Winding Tester(新方式のインパルス巻線試験機による高精度の巻線試験)」EE Power、2019年12月
3 Bonnie Baker「Gatekeeping Soldiers Protect ADAS Power Supply Voltage Integrity(ADASの電源電圧の完全性を守る監視回路)」Analog Devices、2020年7月
4 R. Niranjana「FPGA-Based Robotics and Automation(FPGAベースのロボットとオートメーション・システム)」FPGA Insights、2023年8月