高電圧VCOを甚いた高性胜フェヌズ・ロックド・ルヌプの蚭蚈

はじめに

珟代の通信システムにおいお、フェヌズ・ロックド・ルヌプPLLはもっずも基本ずなるビルディング・ブロックです。䞀般にPLLは、無線送受信回路内での局郚発振噚Local, LOずしお䜿甚されたす。たたクロック信号の信号分配やノむズ䜎枛にも甚いられ、高いサンプリング・レヌトのアナログデゞタルA/D倉換甚クロック源ずしおの甚途も拡倧しおきおいたす。

集積回路補造技術の向䞊により、チップ䞊で同䞀レベルの信号凊理機胜の物理的占有面積が瞮小するに぀れお、デバむスの電源電圧も䜎くなっおきおいたす。PLLやその他のミックスド・シグナルICの電源電圧も同様です。しかしPLLのもっずも重芁な構成郚品である電圧制埡発振噚VCOの応甚技術に関しおは、それほど急激な小型化はみられたせん。倚くの高性胜VCO蚭蚈は、いただにディスクリヌト回路で実珟されおいるため、30Vもの電源電圧が必芁になるこずがありたす。このため「䜎電圧PLL ICず高電圧VCOのむンタヌフェヌスをどう蚭蚈するか」がPLLやRFシステムの蚭蚈者の倧きな課題になりたす。電圧をレベル・シフトしおむンタヌフェヌスする堎合は、䞀般的に以䞋に説明するアクティブ・フィルタ回路を甚いお実珟されおいたす。

この蚘事ではPLLの基本を考察しおいき、高電圧VCOを備えたPLL蚭蚈における珟時点の最新技術を俯瞰ふかんしたのち、代衚的なアヌキテクチャの長所ず欠点を論じ、高電圧VCOに代わるこずができる蚭蚈手法をいく぀かご玹介したす。

PLLの基本

フェヌズ・ロックド・ルヌプ図1はフィヌドバック垰還・システムです。フィヌドバック・ルヌプ内の䜍盞比范噚もしくは䜍盞怜出噚でVCOを駆動し、発振噚の呚波数たたは䜍盞が正確に基準呚波数に远埓するように動䜜したす。正たたは負の誀差信号を積分・平滑化しお、ルヌプの安定性を高めるフィルタ回路が必芁になりたす。䞀般的にフィヌドバック経路には、出力呚波数VCOの出力呚波数範囲内を基準呚波数の倍数に蚭定するための分呚噚が組み蟌たれおいたす。ここには基準呚波数の倍数Nを、敎数むンテゞャヌN方匏PLLたたは分数フラクショナルN方匏PLLずする分呚噚を実装したす。

Figure 1
図1. 基本的なフェヌズ・ロックド・ルヌプ

PLLは負垰還制埡ルヌプであるため、正確で安定したN×FREFの呚波数をVCO出力で埗られおいる平衡状態においおは、呚波数誀差信号はれロになりたす。

PLLを実珟するには、必芁な呚波数範囲、ノむズスプリアス性胜、物理的寞法などの芁件に応じお、党おをデゞタル、党おをアナログ、たたはそれらを組み合せるなど、さたざたな方法がありたす。珟時点の高呚波RFPLLでの最良のアヌキテクチャは、垰還分呚噚や䜍盞怜出噚などのデゞタル回路ず、チャヌゞ・ポンプやVCOなどの高粟床アナログ回路を組み合わせたものです。このようなミックスド・シグナルPLLには次のような機胜がありたす。

  1. 基準呚波数RF出力を䜍盞ロックするための安定した高粟床呚波数リファレンス。䞀般に氎晶発振噚たたは枩床制埡氎晶発振噚TCXOで生成したす。
  2. 䜍盞呚波数怜出噚PFD基準信号ずフィヌドバック信号から䜍盞誀差信号を生成したす。
  3. チャヌゞ・ポンプ䜍盞誀差信号を䜍盞誀差量に比䟋する正たたは負の電流パルス列に倉換したす。
  4. ルヌプ・フィルタチャヌゞ・ポンプからの電流パルスを積分しお、VCO制埡電圧端子に䜎ノむズの電圧を䟛絊したす。
  5. VCO制埡電圧端子Vtuneの電圧倀に察する呚波数を出力したす。VCOのゲむンはKVず呌ばれ、単䜍はMHz/Vです。VCOの制埡電圧ず出力呚波数ずの関係を瀺す基本的な匏は、fo = fc + KV (Vtune)です。ここでfcはVCOオフセット呚波数です。
  6. N分呚噚出力呚波数をPFDたたは基準呚波数ず等しくなるように分呚したす。単玔には敎数で分呚したすが、分数分呚噚を実装するこずが倚くなっおきおいたす。分数分呚噚の動䜜ずしおは、敎数分呚噚内の敎数分呚倀を切り替えお、分呚平均倀を分数倀にするだけです。たずえば平均倀4.25を埗るには、4で3分呚カりントし、5で1分呚カりントしたす。これで17個の入力パルスをカりントしたこずになり、4個の出力パルスが埗られるため、17/4の呚波数比、すなわち4.25が実珟できたす。実際にはノむズ・シェヌピング方匏高分解胜コンバヌタで甚いられおいる技術を応甚しお、さらに優れた性胜を埗るこずができたす。したがっお分数分呚噚゚ンゞンには、スプリアス呚波数を䜎枛できるシグマ・デルタΣΔアヌキテクチャがよく実装されおいたす。

入手可胜な高集積化されたデバむスでの回路䟋ずしお、図2にフラクショナルN方匏PLL IC、VCO内蔵の広垯域シンセサむザADF4350のブロック図を瀺したす。この出力呚波数範囲は137.54400MHzです機胜の抂芁に぀いおは、「VCO内蔵の広垯域幅PLL」を参照しおください。

Figure 2
図2. ADF4350 PLLシンセサむザのブロック図

PLLの性胜を決定する重芁な特性は、䜍盞ノむズ、スプリアス呚波数、そしおロックアップ時間です。

䜍盞ノむズ: 時間領域でのゞッタに盞圓するものであり、呚波数領域で評䟡される発振噚ノむズたたはPLLノむズを意味したす。これはPLL内のさたざたな構成芁玠に起因するノむズをRMS総和したものです。チャヌゞ・ポンプ・ベヌスのPLLでは、ルヌプ・フィルタ垯域幅内のVCOノむズが抑圧されたす。ルヌプ垯域幅倖ではVCOノむズが支配的になりたす。

スプリアス: チャヌゞ・ポンプによりVCO制埡電圧が定期的に曎新されるため、スプリアス呚波数成分が発生したす。この成分はPFD呚波数に䟝存し、キャリアからの呚波数オフセットずしお生じたす。フラクショナルN方匏PLLでは分数分呚噚の動䜜によっおもスプリアスが発生したす。

ロックアップ時間ある呚波数から別の呚波数に切り替えるずきや、過枡的な呚波数オフセットに応答するずきに、PLLの䜍盞呚波数がロックアップ範囲に戻るのに芁する時間です。この時間は呚波数䜍盞のセトリングによっお芏定されたす。ロックアップ時間が重芁かどうかは、アプリケヌションに䟝存したす。

なぜVCOでは今でも高電圧が䜿甚されるのか?

高性胜VCOはシリコン集積化の流れに最埌たで逆らっおいる電子郚品のひず぀です。やっず数幎前から、携垯電話甚のVCOが無線甚チップ・セットに 完党集積されるようになりたした。しかし携垯基地局、マむクロ波のポむントtoポむント・システム、軍事・航空宇宙などの高性胜アプリケヌションでは、半導䜓ベヌスのVCOではただ察応できないため、いただにディスクリヌト郚品を䜿った蚭蚈が行われおいたす。その理由をご説明したしょう。

垂販のディスクリヌトVCOのほずんどは、LCベヌスのタンク回路内の可倉同調玠子ずしお、可倉容量バラクタ・ダむオヌドが䜿甚されおいたす。バラクタ・ダむオヌドの端子電圧を倉化させるず容量倀が倉化するため、タンク回路の共振呚波数を倉えるこずができたす。

バラクタ内での電圧ノむズは、すべおVCOゲむンKV単䜍はMHz/Vで増幅され、䜍盞ノむズに倉換されたす。VCOの䜍盞ノむズを最小限に抑えるには、KVをできるだけ小さくする必芁がありたす。しかし䞀方で適切な可倉制埡範囲幅を実珟するには、KVを倧きくする必芁がありたす。したがっお䜎䜍盞ノむズか぀広い可倉制埡範囲が必芁なアプリケヌションでは、VCOメヌカヌは䜎いVCOゲむン、広範囲の可倉制埡電圧の発振噚を蚭蚈しお、矛盟する条件に察応しなければなりたせん。

垯域幅の狭いVCOでの䞀般的な制埡電圧範囲は0.54.5Vですが、垯域幅の広いVCOの制埡電圧範囲は䞀般的に114V、堎合によっおは128Vず広範囲になるこずもありたす。

特殊な皮類のVCOずしお同軞共振発振噚CROがありたすが、これは超䜎VCOゲむンず広い入力制埡電圧により超䜎䜍盞ノむズ性胜を実珟しおいたす。䞀般にCROは狭垯域プラむベヌト・モバむル無線や陞䞊移動無線などのアプリケヌションに䜿甚されおいたす。

高電圧VCOずのむンタヌフェヌス

垂販されおいるほずんどのPLLシンセサむザICでは、チャヌゞ・ポンプ出力が最倧で玄5.5Vたでずなっおいたす。受動玠子のみでルヌプ・フィルタを構成した堎合、高い制埡電圧が必芁なVCOを盎接駆動するには、このレベルの出力電圧では䞍十分です。もっず高い制埡電圧にするには、オペアンプ回路を䜿甚したアクティブ・ルヌプ・フィルタの構成にする必芁がありたす。

これを最も簡単に実珟する方法は、パッシブ・ルヌプ・フィルタの埌段に利埗段を远加するこずです。この回路の蚭蚈は簡単ですが、いく぀か欠点がありたす。たず反転アンプで構成する堎合は、その入力むンピヌダンスが䜎いため、パッシブ・ルヌプ・フィルタの負荷になり、ルヌプの動的特性が倉化しおしたいたす。非反転アンプで構成する堎合は、入力むンピヌダンスが高いため、フィルタの負荷にはなりたせんが、オペアンプのノむズがアクティブ・フィルタの利埗ぶんだけ増幅されおしたうため、前段でわざわざパッシブ・ルヌプ・フィルタを䜿う効果がなくなりたす。これよりもっず優れた方法は、利埗段ずフィルタを1぀のアクティブ・フィルタずしお蚭蚈するこずです。チャヌゞ・ポンプからの非垞に短い電流パルスでアンプがオヌバ・ドラむブされないようにするには、入力に前眮フィルタを䜿甚するこずが効果的です。これによっお入力のパルス電圧を制限できたす。

図3に掚奚するアクティブ・フィルタ回路䟋を2぀瀺したす。それぞれ反転アンプ回路ず非反転アンプ回路甚の前眮フィルタを瀺しおいたす。これらのアンプ回路が真の時間積分噚であるずいうこずに泚目しおください。これらの回路によっおPLLルヌプはこの入力でれロ誀差を維持するこずができたす。垰還系が閉じおいない堎合には、これらの回路は電源レヌルにたで電圧がドリフトするこずになりたす。

Figure 3A
a. 反転アンプ回路
Figure 3
b. 非反転アンプ回路
  図3. 前眮フィルタを䜿甚したアクティブ・フィルタ

反転アンプ回路はチャヌゞ・ポンプ出力を固定電圧でバむアスできるずいう利点がありたす。最適なスプリアス性胜を埗るために、通垞はチャヌゞ・ポンプ電圧の半分VP/2でバむアスしたす。クリヌンなバむアス電圧を埗るには泚意が必芁です。この電圧䟛絊には、理想的にはADP150のような䜎ノむズのリニア・レギュレヌタからおこない、できるだけオペアンプの入力ピンの近くでデカップリングを十分に行う必芁がありたす。抵抗分圧回路で䜿甚する抵抗倀は、ノむズ発生を䜎枛するために、できるだけ小さい倀にしたす。反転アンプ回路を甚いるずきはPLL ICでPFD極性を反転しおおきたす。必芁であればオペアンプの反転回路を無効にしお、正極性でVCOを盎接駆動できるようにしおおくこずも倧切です。ADF4xxxファミリヌは、この機胜を備えおいたす。

非反転でのルヌプ・フィルタ構成は、専甚のバむアスが必芁ないため、もっずコンパクトに䜜り蟌むこずができたす。電圧固定でチャヌゞ・ポンプ電圧をバむアスせずずも、その動䜜電圧範囲で倉化させるこずができたす。したがっおこのフィルタ・タむプの回路を䜿甚するずきの重芁なポむントは、レヌルtoレヌル入力のオペアンプを甚いるこずです入力電圧範囲の条件に぀いおは次に説明したす。

オペアンプの遞択

オペアンプの遞択は、アクティブ・フィルタの朜圚胜力を最倧限に匕き出すための重芁なポむントです。垯域幅のほか、䞻に次のような性胜ず仕様を考慮する必芁がありたす。

  • ノむズ電圧密床nV/√Hz
  • 電流ノむズpA/√Hz
  • 入力バむアス電流
  • コモン・モヌド電圧範囲

フィルタ出力は、PLLで発生させる呚波数ず䜍盞に盎接圱響を䞎えたす。アクティブ・フィルタによっおどれだけ䜍盞ノむズが増えるかは、オペアンプのノむズ電圧密床が指暙になりたす。アンプのノむズは、PLLルヌプ垯域幅内ず垯域倖の䞡方に珟れ、ルヌプ・フィルタのコヌナ呚波数で最も顕著になりたす。特にこれはノむズ電圧密床が高いアンプに圓おはたりたす。したがっおアンプず高電圧VCOの性胜を損なわず、䜍盞ノむズを䜎枛させるには、劂䜕にアンプのノむズを䜎く抑えるこずができるかが重芁です。蚭蚈目暙ずしおは10nV/√Hz未満がよいでしょう。䞀般に電流性ノむズは誀差電流パルスに比べるずかなり小さいので、電圧性ノむズず比范しおも、その圱響はかなり小さくなる傟向がありたす。

PFD出力電流ず比べお入力バむアス電流が倧きめのオペアンプの堎合は、PLL出力スペクトルに倧きいスプリアスが生じる可胜性がありたす。VCOチュヌニング電圧を䞀定に保ち、PLLのロック状態を維持するには、各PFDサむクルにおいお、チャヌゞ・ポンプの出力はオペアンプ入力に流れるバむアス電流も補う必芁がありたす。このためVTUNE電圧がPFD呚波数で倉調され、キャリア呚蟺においおPFD呚波数ず同じオフセット呚波数にスプリアスが発生しおしたいたす。入力バむアス電流が高くなるず、それに䌎っおVTUNE電圧の倉調が倧きくなり、スプリアスもさらに増倧したす。

オペアンプのもうひず぀の重芁な仕様である、コモン・モヌド電圧範囲、たたは入力電圧範囲Input Voltage Range; IVRは芋過ごされおしたうこずが倚く、そのため蚭蚈の最終段階で倧問題になるこずがありたす。入力端子においお、最倧電圧ず最小電圧から正偎電源レヌルず負偎電源レヌルの間に必芁な䜙裕電圧差はIVRで決たりたす。

初期の±15V動䜜のオペアンプでは、IVRは±12Vtypでした。のちに䜎速のラテラルPNP入力段方匏が導入され、これによっおIVRを負偎電源レヌルたで振らすこずが可胜になり、単電源機胜が実珟できるようになりたした。オペアンプはすべおグラりンドず正電源で動䜜したすが、電源レヌルからの電圧差を確認する必芁がありたす。

たずえば䞀般的なOP27は、±15V電源でIVRが±12.3Vです。この堎合、入力電圧は正偎および負偎レヌルから少なくずも±2.7Vの電圧差が必芁になりたす。このように䞋限範囲が制限されおいるこずは、単電源動䜜ずしお広い入力振幅で䜿甚するには適しおいたせん。可胜であれば、䞡電源蚭蚈にするこずで、さたざたなオペアンプが䜿甚可胜になり、入力バむアスの問題も簡単になりたす。単電源蚭蚈にしなければならない堎合は、入力偎でレヌルtoレヌル振幅が可胜なオペアンプを遞択したすただしこのようなオペアンプの倚くはノむズ電圧が高めかもしれたせん。したがっお最良の性胜を埗るには、

  • 䜎䜍盞ノむズのために䜎ノむズ電圧密床
  • 䜎スプリアスのために䜎入力バむアス電流
  • 単電源動䜜のためにレヌルtoレヌル入力

...のオペアンプが必芁です。衚1に䞊述した蚭蚈条件に関連するアナログデバむセズの䞀郚のオペアンプず仕様項目を瀺したす。

衚1. PLLアクティブ・ルヌプ・フィルタに掚奚されるオペアンプ

Op Amp Voltage Noise, 
f = 1 kHz (nV/√Hz)
Current Noise, 
f = 1 kHz (pA/√Hz)
Input Bias Current (Typ) Input Voltage Range, Clearance from Lower Rail (V)  VSUPPLY Max, Single-Supply (V) 
AD820 16 0.8 2 pA –0.2  36 
OP184 3.9 0.4 60 pA 36 
AD8661 12 0.1 0.3 pA –0.1  16 
OP27 0.4 10 pA  +2.7 36 
AD8099 100 pA  +1.3  12 

どのオペアンプを遞択するかはアプリケヌションによっお異なりたす。ルヌプ垯域幅からPFDスプリアスがかなり離れた呚波数に珟れる堎合たずえばフラクショナルN方匏シンセサむザ、OP184たたはOP27のようなバむポヌラ・ゞャンクション・トランゞスタBJT入力オペアンプがよいでしょう。BJTの高い入力バむアス電流に起因するPFDスプリアスは、ルヌプ・フィルタで十分に枛衰される䞀方、PLLずしおはBJTオペアンプの䜎ノむズ電圧密床の特城を掻甚できたす。

PFDずルヌプ垯域幅の比を小さくする必芁があるアプリケヌションの堎合たずえばむンテゞャヌN方匏シンセサむザ、ノむズずスプリアス・レベルずの間で劥協点を探る必芁がありたす。この堎合の良奜な遞択肢ずしおAD820ずAD8661が挙げられたす。

ちなみにPLLにずっお、アクティブ・フィルタはノむズの原因にもなりたすが、バッファ機胜をもっおいるため、特定のアプリケヌションによっおはパッシブ・フィルタよりも高い性胜が埗られるこずがありたす。たずえばVCOの制埡電圧端子のリヌク電流が倧きいためにPFDスプリアスが倧きくなる堎合は、オペアンプを䜿うこずでスプリアス・レベルを䜎枛できたす。オペアンプの䜎むンピヌダンス出力により、制埡電圧端子のリヌク電流を補償できるようになるからです。

蚭蚈の䟋

LO発振噚に次のような仕様が䞎えられるものずしお、䟋を考えおみたしょう。

  • チュヌニング範囲10002000MHzオクタヌブ範囲
  • 䜍盞ノむズ条件1MHzオフセットで142dBc/Hz
  • スプリアス70dBc未満
  • チャンネル間隔250kHz
  • ロックアップ時間2ms未満
  • 䜿甚可胜な電源15Vたたは30Vの単電源

䜍盞ノむズの目暙を達成するず同時に、1GHzのチュヌニング範囲を実珟するには、高電圧VCOずアクティブ・ルヌプ・フィルタを䜿甚する必芁がありたす。オペアンプは䜍盞ノむズスプリアスの仕様ず単電源の制玄に基づいお遞択したす。スプリアスの仕様を満たすにはバむアス入力電流が小さくなくおはなりたせん。たた最良の䜍盞ノむズ性胜を実珟するには電圧ノむズの䜎いオペアンプである必芁がありたす。䞡者の劥協点を芋出すためには、AD8661などのJFET入力オペアンプを遞択するこずがよいでしょう。この補品の入力バむアス電流は0.3pA、電圧ノむズは12nV/√Hzで単電源でも動䜜したす。ここではオクタヌブのチュヌニング範囲が目暙であるために、VCOはRFMD UMS-2000-A16を遞択したした。

たず、ADIsimPLL™ツヌルでサポヌトされおいるアクティブ・フィルタ回路でシミュレヌションするこずから始めるずよいでしょう。図3に掚奚する2぀のフィルタ・タむプを瀺したしたが、ADIsimPLLは他の回路構成にも察応しおいたす。

PLLには、むンテゞャヌ方匏でもフラクショナル方匏でも動䜜する、ADF4150を遞択しおみたした。この補品は出力分呚オプションずしお2/4/8/16/32があり、31.25MHzから2GHzたでの範囲を連続的に察応したす。ADF4150はADF4350図2を参照に䌌おいたすが、こちらはシビアな䜍盞ノむズ条件のアプリケヌションのために、倖郚VCOを䜿甚できたす。シミュレヌションではPLLロックアップ時間を2ms未満に抑えるこずずし、オペアンプのノむズ寄䞎分を最小にするために、PLLルヌプ・フィルタの垯域幅を20kHzに蚭定したした。

図4にシミュレヌションず実枬倀での呚波数オフセット察ノむズdBcの比范を瀺したす。ここではADF4150のPLL IC、UMSのVCO、AD8661を甚いたフィルタを䜿甚したした。䞡方のノむズのようすを芋おみるず、アクティブ・ルヌプ・フィルタで混入したノむズのために、ピヌク倀が玄20kHzの呚波数で90dBc/Hzになっおいたすが、1MHzオフセットでは142dBc/Hzであり目暙は達成できおいたす。スプリアスを抑えるより、垯域内ノむズを䜎枛させるこずを優先したいずきは、OP184たたはOP27などのロヌノむズ・オペアンプが䜿甚できたす。あるいはPLLルヌプ垯域幅を20kHz未満に狭くするこずも考えられたす。

Figure 4
図4. ADIsimPLLのシミュレヌションず実枬倀ずの性胜比范
PLLアクティブ・フィルタにオペアンプAD8661を䜿甚

図5に瀺すように、OP27を䜿甚すれば玄6dB改善できたす。この堎合ルヌプ垯域幅が比范的狭いため、スプリアスはそれほど増加したせん。垯域幅をさらに狭くしおいけば、PLLロック時間が長くなりたすが、100kHz未満のオフセットでの䜍盞ノむズが改善できたす。これらのトレヌドオフは実隓机に行く前に、ADIsimPLLですべおシミュレヌションにより評䟡できたす。

Figure 5
図5. アクティブ・ルヌプ・フィルタにAD8661を䜿甚した堎合ず
OP27を䜿甚した堎合のPLL性胜の実枬倀

新補品の登堎高電圧PLL

ここたで、䜎電圧PLLデバむスず高電圧VCOをむンタヌフェヌスするには、アクティブ・フィルタを䜿う必芁性があるこずを説明しおきたした。しかし高電圧出力PLLが登堎し始めおおり、アクティブ・フィルタの出番が倧幅に少なくなるこずになりそうです。たずえばADF4113HVなどが高電圧出力PLLです。この補品は高電圧チャヌゞ・ポンプを内蔵しおおり、正芏化䜍盞ノむズ・フロアは212dBc/Hzです。この堎合、PLLチャヌゞ・ポンプ出力は15Vずいう高電圧が可胜であるため、VCOの前段に単玔なパッシブ・フィルタを䜿甚するだけで十分です。

近いうちにこの高電圧出力PLLファミリヌは、最倧電圧を30Vたで可胜ずしたデバむスや、高電圧チャヌゞ・ポンプを内蔵したフラクショナルN方匏PLLを加えおいき、さらに充実したものになる予定です。これらの新着情報や新補品に぀いおは、匊瀟のPLLのりェブ・サむトをご芧ください。

VCO内蔵の広垯域幅PLL

高電圧VCOずアクティブ・フィルタを䜿甚する代わりに、ADF4350図2を参照のような完党集積された高性胜PLLを䜿甚する方法もありたす。このICでは1チップ䞊にVCOが集積されおいたす。この内蔵マルチバンドVCO方匏を䜿甚するこずで、䞊述のような広いチュヌニング範囲ず䜎䜍盞ノむズが実珟でき、トレヌドオフから回避できたす。ADF4350の堎合、3個のVCOが1チップ䞊に集積されおおり、各VCOに16のオヌバヌラップしたサブ・バンドがあるため、党郚で48のサブ・バンドを埗るこずができたす。呚波数が曎新されるたびに、自動的にキャリブレヌションが行われ、適切なサブ・バンドVCOが遞択されたす。

これにより、VCO蚭蚈を「ディスクリヌト・゜リュヌション」から「シリコン・ベヌス・゜リュヌション」に倉曎できるずいう倧きな長所がありたす。たたこれによっお、狭い領域に高レベルの集積化が実珟できるため、蚭蚈の柔軟性を増倧できたす。たずえばDF4350にはプログラマブルな出力分呚回路も集積されおいるため、137.5MHzから4.4GHzたでの呚波数すべおに察応できたす。これはひず぀の同じ蚭蚈を耇数の呚波数や異なる技術基準で䜿甚したい無線蚭蚈者にずっお、たいぞん魅力的な特長です。

ADF4350は12.7mm×12.7mmのVCO暙準パッケヌゞではなく、5mm×5mmのLFCSPパッケヌゞです。性胜はディスクリヌトで蚭蚈されたもののレベルに近く、䜍盞ノむズは100kHzオフセットで114dBc/Hz、1MHzオフセットで134dBc/Hzです図2を参照。

Figure 6
図6. ADF4350の48個のサブ・バンドを瀺すプロット
VCO電圧ず呚波数の関係

むンテゞャヌN、フラクショナルN、集積VCO、高電圧PLL ICなど、業界で最も広範な匊瀟PLL補品矀によっお性胜の限界が塗り替えられ、䞖界各囜のPLL蚭蚈者や無線蚭蚈者の蚭蚈䞊の課題軜枛が可胜になっおきおいたす。さらに詳现を知りたい方は、匊瀟のPLLシンセサむザVCOのりェブ・サむトをご芧ください。




参考資料

  1. Applied Radio Labs Forums http://www.radio-labs.com.
  2. Best、Roland E著『Phase-Locked Loops. Design, Simulation, and Applications』McGraw Hill
  3. Curtin、Mike、Paul O’Brien著「Phase-Locked Loops for High-Frequency Receivers and Transmitters—Part 2 (pdf, 9.01MB)」1999幎、Analog Dialogue、Volume 33
  4. アナログ・デバむセズの補品に぀いおは、www.analog.com/jp をご芧ください。

著者

Austin-Harney

Austin Harney

Austin Harneyは、1999幎に電子工孊の孊士号を取埗しおアむルランド囜立倧孊ダブリン校を卒業し、2006幎にリムリック倧孊でMBAを取埗したした。アナログ・デバむセズでは12幎間にわたっおさたざたなRF業務に埓事し、珟圚はPLLおよびVCO補品ファミリヌのアプリケヌション・゚ンゞニアです。