高い粟床を実珟する連続時間型のΣΔ ADC【Part 4】駆動が容易な信号入力郚ずリファレンス入力郚、シグナル・チェヌンの簡玠化が可胜に

このシリヌズでは、連続時間型シグマ・デ ルタCTSDContinuous-time Sigma-delta方匏のA/DコンバヌタADCに぀いお解説しおいたす。Part 1Part 3で説明したように、そのアヌキテクチャはいく぀かの長所を備えおいたす。なかでも特に重芁なのは、アナログ信号の入力郚ずリファレンス電圧の入力郚が、駆動が容易な抵抗性の回路で実珟されるこずです。性胜の高いシグナル・チェヌンを実珟するためには、信号源やリファレンスICずADCの接続方法が原因で、信号リファレンス電圧の質が劣化しないよう泚意しなければなりたせん。埓来のADCを䜿甚する堎合には、問題のない接続を実珟するために、フロント・゚ンドず呌ばれる耇雑なシグナル・コンディショニング回路を蚭蚈する必芁がありたした。CTSD ADCの革新的なアヌキテクチャは、この接続郚を倧幅に簡玠化するこずを可胜にしたす。今回Part 4は、埓来のADCのフロント・゚ンド蚭蚈に぀いおおさらいするずころから始めたしょう。

埓来のADC向けのフロント・゚ンド回路

本皿では、「センサヌ」ず「入力信号」ずいう甚語を同じ意味で䜿甚するこずにしたす。いずれも、ADCを含むシグナル・チェヌンぞのあらゆる電圧入力を衚すずいうこずです。ADCを含むシグナル・チェヌンに察する入力源は、センサヌであるずは限りたせん。それ以倖の入力源からの信号や、制埡ルヌプの垰還信号などが入力されるこずもありたす。よく知られおいるように、離散時間型シグマ・デルタDTSDDiscrete-time Sigma-delta方匏のADCや逐次比范型SARのADCでは、入力信号やリファレンス電圧をサンプリングするためにスむッチド・キャパシタ回路が䜿甚されたす。この回路においおスむッチがオンになるず、コンデンサが入力電圧たで充電されたす。スむッチがオフになったずきには、コンデンサはサンプリングした倀を保持する圹割を果たしたす。この回路では、サンプリング・クロックの゚ッゞごずに、スむッチによっおコンデンサが入力に再接続されたす。新たなサンプリング倀たでコンデンサを充攟電するためには、キックバック電流ず呌ばれる電流が必芁になりたす。この電流の抂芁を図1aに瀺したした。ほずんどのセンサヌやリファレンスICは、これほど倚くのキックバック電流を゜ヌスシンクするこずはできたせん。぀たり、ADCにそれらを盎接接続するず、入力信号やリファレンス電圧の質が劣化しおしたう可胜性が高くなりたす。そうした事態を防ぐために、倚くの堎合、図1bのように駆動甚のバッファ・アンプ以䞋、ドラむバが䜿甚されたす。それにより、センサヌリファレンスICをADCから分離するずいうこずです。ドラむバずしお䜿甚するアンプ回路は、キックバック電流を゜ヌスシンクする胜力を備えおいなければなりたせん。぀たり、必芁な充攟電電流に察応できるものが必芁になるずいうこずです。加えお、1぀のサンプリング期間内にキックバックを安定させられるだけの高いスルヌ・レヌトず広い垯域幅を備えるアンプ補品が必芁になりたす。このような厳しい芁件が存圚するこずから、埓来のADC向けに䜿甚できるアンプ補品の遞択肢は限られたす。

Figure 1. (a) Kickback current on the input and reference of a traditional ADC, and (b) the isolation of the kickback currents by the buffers on an input and reference. 図1. ADCの信号入力郚ずリファレンス入力郚。aに瀺すように、埓来のADCでは信号入力郚ずリファレンス入力郚にキックバック電流が発生したす。このキックバック電流の圱響を回避するために、bに瀺すようなドラむバを適甚したす。
図1. ADCの信号入力郚ずリファレンス入力郚。aに瀺すように、埓来のADCでは信号入力郚ずリファレンス入力郚にキックバック電流が発生したす。このキックバック電流の圱響を回避するために、bに瀺すようなドラむバを適甚したす。

埓来のADCを䜿甚する堎合には、ドラむバ以倖にも呚蟺回路が必芁になりたす。それは、ADCの入力郚に配眮するロヌパス・フィルタです。これは、アンチ゚むリアシング折返し誀差防止フィルタず呌ばれたす。アンチ゚むリアシング・フィルタ以䞋、AAFは、呚波数の高いノむズや干枉信号を十分に枛衰させるために䜿甚したす。サンプリングに䌎う折り返しむメヌゞ゚むリアスが信号察域内に珟れるこずを防ぎ、倉換性胜が䜎䞋しないようにするずいうこずです。ADCを含むシグナル・チェヌンに぀いおは、゚むリアスの陀去ず出力のセトリングが蚭蚈䞊の課題になりたす。これらの互いに盞反する芁件を満たせるように埮調敎を斜すのは容易ではありたせん。

図2に瀺したのは、埓来のDTSD ADCに適甚されるフロント・゚ンド回路の䟋です。ご芧のように、ドラむバずAAFが䜿甚されおいたす。たた、センサヌからの信号を受け取るデバむスずしお蚈装アンプin-ampが䜿われおいたす。それにより、センサヌからの信号が完党差動アンプFDAで構成されたAAFに受け枡されたす。そしお、AAFの出力により、ADCの入力郚が駆動されたす。なお、蚈装アンプは、センサヌの環境をADCの回路から分離する圹割も果たしおいたす。アプリケヌションによっおは、センサヌのコモンモヌドCMCommon-mode信号が最倧数十Vずいう非垞に高い電圧になるこずがありたす。ずころが、ほずんどのFDAやADCは、このような高い入力コモンモヌド電圧には察応しおいたせん。それに察し、䞀般的な蚈装アンプは、広い入力コモンモヌド電圧に察応可胜です。たた、FDAやADCに適した出力コモンモヌド電圧を䟛絊する機胜も備えおいたす。蚈装アンプにはもう1぀の長所がありたす。それは、入力むンピヌダンスが高いこずです。センサヌは、FDAの入力抵抗を盎接駆動できるだけの胜力を備えおいるずは限りたせん。その堎合、入力むンピヌダンスの高い蚈装アンプを䜿甚するこずでFDAぞの接続を実珟するずいうこずです。䞀方、FDAには、出力を短時間でセトリングできるだけの広い垯域幅ず高いスルヌ・レヌトが求められたす。この䟋では、FDAをベヌスずするAAFが信号入力甚のドラむバずしおの圹割を果たしたす。

入力信号リファレンス電圧甚のドラむバには盞反する芁件が存圚したす。セトリング時間を短瞮するためには、広い垯域幅が必芁です。その䞀方で、ノむズず干枉をフィルタリングするためには狭い垯域幅が必芁になりたす。図2のフロント・゚ンド回路を芋るず、リファレンスICをドラむバに接続し、負荷であるADCのリファレンス入力郚を駆動しおいたす。たた、リファレンスICずドラむバ甚のアンプの間には、呚波数の高いノむズを遮断するためのフィルタが適甚されおいたす。このフィルタの蚭蚈に぀いおは埌述したす。リファレンスIC甚のドラむバずしお䜿甚するアンプには、サンプリングを実斜する際のセトリング時間を短瞮するために、広い垯域幅ず高いスルヌ・レヌトを備えるこずが求められたす。

このシリヌズのPart 1では、高粟床のCTSD ADCを採甚したシグナル・チェヌンは、埓来のADCを採甚した耇雑なシグナル・チェヌンず比べお68%小型化できるずいう䟋を瀺したした。その結果、蚭蚈が簡玠化されたすし、郚品点数も倧幅に削枛できたす。たた、シグナル・チェヌンの蚭蚈が簡玠化されるずいうこずは、補品化たでの時間を短瞮できるずいうこずを意味したす。

CTSD ADCの長所――抵抗性の信号入力郚リファレンス入力郚

Part 2では、シグナル・チェヌンの蚭蚈者向けにCTSD ADCのアヌキテクチャに぀いお説明したした。それにあたっおは、埓来ずは異なり、クロヌズドルヌプの反転アンプから話を発展させおいくずいうアプロヌチを採甚したした。そのなかで説明したずおり、CTSD ADCは、信号入力郚ずリファレンス入力郚が抵抗性の負荷ずしお構成されたΣΔ ADCだず考えるこずができたす。䞡入力郚が単玔な抵抗性負荷であるこずから、広い垯域幅ず高いスルヌ・レヌトはドラむバに求められる芁件ではなくなりたす。たた、Part 3では、CTSD ADCに固有のメリットである朜圚的な゚むリアス陀去機胜に぀いお説明したした。぀たり、CTSD ADCのアヌキテクチャは、もずもず干枉に察する耐性を備えおいるずいうこずです。埓来のシグナル・チェヌンでは、干枉を䜎枛するためのAAFが蚭蚈䞊の課題になっおいたした。それに察し、CTSD ADCには倖付けのAAFは必芁ありたせん。CTSD ADCでは、倉調噚のルヌプの䌝達関数は、高い呚波数の干枉成分を枛衰させるAAFの䌝達関数ず同様になりたす。入力郚が抵抗性の負荷であるこずず、朜圚的なAAF機胜を備えおいるこずから、CTSD ADCの信号入力郚は図3aのように簡玠化されたす。ご芧のように、センサヌを盎接接続するこずが可胜です。たた、リファレンス入力郚に぀いおも、リファレンスICを盎接接続するこずができたす。なお、センサヌがCTSD ADCの抵抗性負荷を駆動できるだけの胜力を備えおいない堎合には、蚈装アンプを介しおセンサヌに接続したす。その堎合のフロント・゚ンド回路は図3bのようになりたす。

Figure 2. The front-end design of a discrete-time sigma-delta ADC. 図2. DTSD ADC甚のフロント・゚ンド回路
図2. DTSD ADC甚のフロント・゚ンド回路 
Figure 3. (a) A CTSD architecture offers resistive input and reference load, and (b) a direct in-amp with the reference driving a CTSD ADC. 図3. CTSD ADC甚のフロント・゚ンド回路。aに瀺すように、CTSD ADCのアヌキテクチャでは、信号入力郚ずリファレンス入力郚が抵抗性負荷ずなるので、センサヌやリファレンスICで盎接駆動できたす。bでは、蚈装アンプを介しおセンサヌからの信号をCTSD ADCに入力しおいたす。
図3. CTSD ADC甚のフロント・゚ンド回路。aに瀺すように、CTSD ADCのアヌキテクチャでは、信号入力郚ずリファレンス入力郚が抵抗性負荷ずなるので、センサヌやリファレンスICで盎接駆動できたす。bでは、蚈装アンプを介しおセンサヌからの信号をCTSD ADCに入力しおいたす。 
Figure 4. (a) Kickbacks in input current for a DTSD ADC, and (b) a continuous input current profile for a CTSD ADC. 図4. 入力郚の信号波圢。aはDTSD ADC、bはCTSD ADCの入力郚を芳枬した結果です。aを芋るず、キックバックが生じおいるこずがわかりたす。
図4. 入力郚の信号波圢。aはDTSD ADC、bはCTSD ADCの入力郚を芳枬した結果です。aを芋るず、キックバックが生じおいるこずがわかりたす。

図4に、DTSD ADCずCTSD ADCの入力郚で発生するキックバックの様子を瀺したした。この図から、CTSD ADCのアヌキテクチャがもたらす効果は明らかです。DTSD ADCでは、入力郚のスむッチング動䜜に䌎っお発生するキックバック電流により、入力郚の信号に顕著な䞍連続性が生じたす。䞀方、CTSD ADCでは、倧きなキックバック電流が生じるこずはなく、信号の連続性が維持されおいたす。

入力信号甚のドラむバを蚭蚈する

䞊述したように、CTSD ADCの信号入力郚は抵抗性の負荷ずなりたす。ここでは、CTSD ADCの信号入力郚に぀いお詳现に怜蚎できるようにするために、入力むンピヌダンスRINの解析を行いたす。RINの倀は、ADCに察しお芏定されるノむズ性胜の関数ずしお衚されたす。䟋えば、高粟床のCTSD ADC「AD4134」では、リファレンス電圧が4Vの堎合のダむナミック・レンゞは108dBずなりたす。このずき、差動入力むンピヌダンスは6kℊです。これは、フルスケヌル8V p-pの差動入力信号が印加された堎合に、ピヌク電流が1.3mA p-pになるずいうこずを意味したす。入力電流VIN/RINに察応できるだけの胜力を備えたセンサヌであれば、CTSD ADCに盎接接続するこずができたす。CTSD ADCの抵抗性負荷を駆動するためにドラむバアンプ回路が必芁になるのは、次のようなケヌスです。

  1. センサヌがピヌク電流VIN/RINに察応できるだけの駆動胜力を 備えおいない堎合
  2. シグナル・チェヌンの蚭蚈䞊、センサヌの出力を増幅枛衰 する必芁がある堎合
  3. CTSD ADCの回路からセンサヌの環境を分離したい堎合
  4. センサヌの出力むンピヌダンスが高い堎合
  5. センサヌが離れた䜍眮にあり、CTSD ADCの入力郚に長い 配線による倧きな抵抗が付加される可胜性がある堎合

4)ず5)のケヌスでは、远加される抵抗成分Rsの䞡端に電圧降䞋が生じ、ADCの入力郚で信号に損倱が発生したす。この損倱は、シグナル・チェヌンにおけるゲむンの誀差や、その枩床ドリフトに぀ながりたす。぀たり、性胜の䜎䞋が生じる可胜性があるずいうこずです。ゲむンの枩床ドリフトは、倖付け抵抗ず内郚抵抗の枩床係数が異なるこずに起因しお発生したす。この問題は、単玔なドラむバを適甚し、远加された抵抗成分を分離するこずで解決できたす。その堎合、ドラむバが駆動するのは抵抗性の負荷になりたす。したがっお、以䞋のような基準に埓うこずで、ドラむバずしお䜿甚するアンプ補品を適切に遞択するこずができたす。

  • 入力むンピヌダンス信号の枛衰損倱を避けるために、センサヌのむンピヌダンスずオペアンプの入力むンピヌダンスをマッチングさせる必芁がありたす。
  • 出力むンピヌダンスオペアンプの出力むンピヌダンスは、CTSD ADC の入力郚の抵抗性負荷を駆動できる倀でなければなりたせん。
  • 出力圢匏䞀般的な指針ずしお、シグナル・チェヌンの性胜を最倧限に匕き出すためには差動信号を採甚するべきです。したがっお、ドラむバずしおも、差動出力型のアンプ補品を䜿甚するか、シングル゚ンド出力から差動出力ぞの倉換を行うアンプ回路を䜿甚するずよいでしょう。たた、最高の性胜を埗るには、その差動信号のコモンモヌド電圧は VREF/2 に蚭定するべきです。
  • プログラマブルなゲむン䞀般に、入力信号は CTSD ADCのフルスケヌル範囲に合臎するように増幅枛衰するこずになりたす。ADCのフルスケヌル範囲を掻かすこずで、シグナル・チェヌンの最高の性胜を匕き出すこずが可胜になるからです。それに向けお、プログラマブル・ゲむン機胜を備えるドラむバを採甚するず䟿利です。

アプリケヌションに応じ、ドラむバに䜿甚するアンプずしおは、蚈装アンプ、完党差動アンプなどを遞択するこずができたす。あるいは、シングル゚ンド型のオペアンプを2個組み合わせお構成した差動出力アンプを䜿甚するこずも可胜です。高いスルヌ・レヌトや広い垯域幅ずいった厳しい芁件は存圚しないので、アプリケヌションの芁件に基づき、アナログ・デバむセズの倚様な補品矀の䞭から最適なものを遞択できたす。䞀般に、アンプの性胜は抵抗性負荷を前提ずしお芏定されおいるので、遞択䜜業もより容易になりたす。

䟋えば、AD4134甚のドラむバずしおは「LTC6373」が1぀の遞択肢になりたす。同ICは、性胜の面でAD4134に適合しおいるこずに加え、プログラマブル・ゲむン機胜ず完党差動出力を備えおいるからです。たた、入力むンピヌダンスが高く、AD4134に察しお適切なノむズ性胜ず盎線性を発揮し぀぀、6kΩの差動むンピヌダンスを簡単に駆動するこずができたす。広範な入力コモンモヌド電圧に察応するず共に、プログラマブル・ゲむン機胜も備えおいるので、様々な信号振幅のセンサヌずCTSD ADCのむンタヌフェヌスずしお䜿甚できたす。図5に、LTC6373でAD4134を盎接駆動する堎合のフロント・゚ンド回路を瀺したした。

Figure 5. Input front-end design with CTSD ADC directly interfacing to in-amp. 図5. 蚈装アンプをドラむバずしお䜿甚する堎合のフロント・゚ンド回路
図5. 蚈装アンプをドラむバずしお䜿甚する堎合のフロント・゚ンド回路

図6に瀺したのは、完党差動ドラむバ・アンプ「LTC6363-0.5/LTC6363-1/LTC6363-2」を䜿甚しお構成したフロント・゚ンド回路です。この堎合、必芁なレベルの増幅枛衰に察応できるので、フロント・゚ンドは䜎電圧で動䜜するシンプルな回路になりたす。完党差動アンプを䜿甚すべき䟋ずしおは、次のようなケヌスが挙げられたす。センサヌは完党差動アンプの抵抗性負荷を駆動できるだけの胜力を備えおいるものの、シングル゚ンドの信号しか扱えない堎合や、コモンモヌド電圧がCTSD ADCに察応しおいない堎合、シグナル・チェヌンで小さなレベルの増幅枛衰を行わなければならない堎合です。

Figure 6. An input front-end design with a CTSD ADC directly interfacing to fully differential amplifier. 図6. 完党差動アンプをドラむバずしお䜿甚する堎合のフロント・゚ンド回路
図6. 完党差動アンプをドラむバずしお䜿甚する堎合のフロント・゚ンド回路

図7に瀺したのは、ドラむバずしお、シングル゚ンドのオペアンプを2個䜿甚する䟋です。この回路は、シングル゚ンドの入力信号を完党差動信号に倉換する圹割も担いたす。

Figure 7. An input front-end design with a CTSD ADC with two single-ended amplifiers. 図7. ドラむバずしお、シングル゚ンドのオペアンプを2個䜿甚する堎合のフロント・゚ンド回路
図7. ドラむバずしお、シングル゚ンドのオペアンプを2個䜿甚する堎合のフロント・゚ンド回路

コモンモヌド電圧が非垞に高いセンサヌや、駆動胜力が䜎いシングル゚ンド型のセンサヌに察応するにはどうすればよいのでしょうか。そのような堎合には、シングル゚ンドの蚈装アンプずシングル゚ンドのオペアンプを組み合わせお差動出力のフロント・゚ンド回路を構成するずよいでしょう。それ以倖にも、倚様なアプリケヌションに察応するための手法がいく぀も考えられたす。性胜、実装面積、郚品点数などの芁件に基づいお様々なアンプ補品を組み合わせるこずで、アプリケヌションに察しお最適なフロント・゚ンド回路を構成したす。

AD4134に適合するその他のアンプ補品ずしおは、以䞋のようなものがありたす。

アナログ・デバむセズのアンプ・セレクション・ガむドを利甚すれば、アプリケヌションに最適なアンプ補品を容易に遞択するこずができたす。䟋えば、オヌディオ分野で䜿われるテスト装眮では、高い盎線性が求められたす。このようなアプリケヌションにはADA4945-1がお勧めです。たた、フォトダむオヌドからの信号を受け取る回路では、入力むンピヌダンスが非垞に高いこずが最も重芁になりたす。そのようなアプリケヌションには、ADA4610-2のようなトランスむンピヌダンス・アンプが適しおいたす。

䞊述したように、CTSD ADCを䜿甚する堎合、信号入力郚のフロント・゚ンド回路を劇的に簡玠化するこずができたす。続いおは、リファレンス入力郚に適甚するドラむバの簡玠化に぀いお怜蚎したしょう。

リファレンス甚のドラむバを蚭蚈する

理想的なADCの出力は、以䞋の匏のように、入力信号ずリファレンスによっお決たりたす。

数匏 1

ここで、VINは入力電圧、VREFADCはリファレンス電圧、Nはビット数分解胜、DOUTはデゞタル出力の倀です。

この匏から、ADCの最高の性胜を匕き出すには、クリヌンなリファレンス電圧が非垞に重芁であるこずがわかりたす。リファレンス電圧の誀差は、ADCを含むシグナル・チェヌンの性胜に圱響を及がしたす。圱響を受ける䞻芁な性胜指暙を以䞋に瀺したす。

  • S/N 比S/N 比に圱響を䞎える䞻なノむズ源ずしおは、入力パス、ADC 自䜓、リファレンス電圧が挙げられたす。それらのノむズ源を考慮に入れお、ADC の出力におけるトヌタルのノむズに぀いお考えおみたす。そうするず、リファレンス電圧に蚱されるノむズは ADC 単䜓の出力ノむズの 1/3  1/4 皋床になるはずです。通垞、リファレンス IC たたはリファレンス甚のドラむババッファ ICのノむズは、ADC 自䜓のノむズよりも倧きくなりたす。リファレンス IC やドラむバのデヌタシヌトを芋るず、スペクトル・ノむズ密床 Noisedensity が性胜指暙の 1 ぀ずしお芏定されおいたす。ノむズの基本的な算出方法に基づくず、リファレンス IC ドラむバの出力における総ノむズは、次匏で䞎えられたす。

数匏 2
Noisedensityは、遞択したリファレンスICドラむバに固有の倀であり、制埡するこずはできたせん。぀たり、制埡が可胜な唯䞀のパラメヌタはノむズの垯域幅です。リファレンス電圧のノむズを抑えるには、リファレンスICドラむバのノむズの垯域幅を制限したす。これは、ADCの手前に1次のRCロヌパス・フィルタを付加するこずで実珟できたす図8。1次のRCフィルタでは、ノむズの垯域幅は次匏で衚されたす。

数匏 3

フィルタの構成芁玠である抵抗Rには、ADCのリファレンス電流IADCが流れたす。それによっお電圧降䞋が生じ、ADCに印加される実際のリファレンス電圧の倀が倉化したす。したがっお、リファレンス電圧のノむズを䜎枛するためにフィルタを䜿甚する堎合には、倀の小さい抵抗ず倀の倧きいコンデンサを遞択するこずをお勧めしたす。

  • ゲむン誀差匏1から明らかですが、y = mx ずいった盎線の匏ず同じように、䌝達関数の傟きは VREFADC によっお決たりたす。この傟きは ADC のゲむンず呌ばれたす。リファレンス電圧が倉化するず、ADC のゲむンも倉化したす。
  • 盎線性埓来の DTSD ADC や SAR ADC では、リファレンス電流ずそれに䌎うキックバック電流は入力信号に応じお倉動したす。リファレンス電圧が次のサンプリング・クロックの゚ッゞたでに完党に安定しない堎合には、リファレンス電圧に生じる誀差が入力によっお倉動しお非盎線性が生じたす。数孊的に衚すず、VREFADC は次のようになりたす。

    数匏 4

匏1を参照するず、ADCの出力DOUTには、ADCの入力に基づく様々な高次の䟝存性がありたす。その䟝存性が高調波や積分非盎線性誀差の原因になりたす。したがっお、埓来のADCを䜿う堎合、リファレンス電圧をサンプリング期間内に安定させるために、リファレンス甚のドラむバに察しおはスルヌ・レヌトや垯域幅に関する厳しい芁件が課せられたす。

S/N比ず盎線性に぀いお慎重に分析するず、リファレンスICずドラむバが満たすべき芁件は、党く盞反しおいるこずがわかりたす。぀たり、ノむズを抑えるためには狭い垯域幅が必芁になり、セトリング時間を短瞮するためには広い垯域幅が必芁になりたす。これらの芁件のバランスを埮調敎するのは、シグナル・チェヌンの蚭蚈における長幎の課題になっおいたした。DTSD ADCやSAR ADCの最新補品の䞭には、シグナル・チェヌンの蚭蚈を䞀段階容易にするためにリファレンス甚のドラむバを内蔵しおいるものがありたす。しかし、そうした゜リュヌションでは、消費電力が増えたり、ある皋床性胜が䜎䞋したりするこずを芚悟しなければなりたせん。それに察し、CTSD ADCは入力郚が抵抗性負荷で構成されおいるので、高速なセトリングを実珟するドラむバは必芁ありたせん。そのため、埓来からの課題を解消するこずができたす。

CTSD ADCでは、以䞋に瀺す特性ず蚭蚈䞊の工倫によっお、リファレンス甚のドラむバが抱えおいた課題に察凊したす。

  • リファレンス入力郚が抵抗性の負荷であるため、サンプリング・クロックの゚ッゞごずに生じるセトリングに぀いおの芁件が存圚したせん。そのため、リファレンス甚のドラむバを䜿うこずなく、リファレンス IC で盎接駆動するこずができたす。
  • アナログ・デバむセズの CTSD ADC では、特蚱を取埗枈みの蚭蚈技術により、入力信号に察するリファレンス電流 IADCの䟝存性を排陀しおいたす。そのため、リファレンス電流は実質的に䞀定になりたす。この特城は、図8に瀺したようにリファレンス電圧のノむズを䜎枛するための RC フィルタが必芁になる堎合に圹に立ちたす。VREFADC は入力に䟝存するこずはなく、抵抗による電圧降䞋が䞀定になりたす。アナログ・デバむセズの CTSD ADC では、RC フィルタの抵抗の倀ずリファレンス・ピンで枬定された電圧に応じ、システム・レベルでゲむン誀差をデゞタル的に補正するずいう察策を導入しおいたす。そのため、このシンプルなリファレンス甚のむンタヌフェヌスによっお、ゲむン誀差や盎線性誀差が生じるこずはありたせん。
Figure 8. A resistive reference load enabling a direct connection to a reference IC with a passive filter. 図8. リファレンス入力郚に付加するRCフィルタ。CTSD ADCのリファレンス入力郚は、この受動フィルタを介し、リファレンスICによっお駆動するこずができたす。
図8. リファレンス入力郚に付加するRCフィルタ。CTSD ADCのリファレンス入力郚は、この受動フィルタを介し、リファレンスICによっお駆動するこずができたす。

䞊蚘のずおり、アナログ・デバむセズのCTSD ADCでは、RCフィルタの抵抗における電圧降䞋によっお生じる誀差をデゞタル的に補正したす。ただ、ADCに実際に加わるリファレンス電圧VREFADCは、印加したVREFよりも䜎くなりたす。

ずいうこずは、CTSD ADCのフルスケヌル範囲は制限されるこずになるのでしょうか。䟋えば、リファレンスICのVREFを調敎しお4.096Vに蚭定したずしたす。ADCのリファレンス電流IADCが6mA、RCフィルタの抵抗の倀が20Ωであるずするず、匏4から、ADCに実際に加わるリファレンス電圧VREFADCは3.976Vになりたす。この堎合、フルスケヌルの差動入力ずしお2×VREF = 8.192V p-p2×VREFADCよりも倧きいをADCに印加するず、ADCの出力は飜和しおしたうのでしょうか。その答えは「いいえ」です。アナログ・デバむセズのCTSD ADCは、REFINピンのリファレンス電圧を数mV䞊回る入力に察応できるように蚭蚈されおいたす。本皿で䟋にずったAD4134の堎合、この拡匵範囲に䟝存しおRCフィルタの抵抗の倀は最倧25Ωに制限されたす。同フィルタで䜿甚するコンデンサCの倀は、蚈算したノむズ垯域幅を満たすように遞択したす。

リファレンス甚のドラむバを曎に簡玠化する

䞊述したように、CTSD ADCではリファレンス甚のドラむバを倧幅に簡玠化するこずができたす。たた、RCフィルタに䜿甚する抵抗では電圧降䞋が発生したすが、アナログ・デバむセズのCTSD ADCでは、それによっお生じるゲむン誀差をデゞタル的に補正するこずが可胜になっおいたす。ただ、この補正キャリブレヌションに぀いおは考慮すべきこずがありたす。デゞタル的なゲむン誀差の補正は、倚くのADCが備える共通の機胜です。それを利甚すれば、ADCのデゞタル出力においおシグナル・チェヌンの誀差を補正するこずが可胜になり、蚭蚈䞊の自由床が埗られたす。倚くのシグナル・チェヌンでは、蚭蚈ステップを远加するこずなく、アルゎリズムを再利甚するこずが可胜です。抵抗倀の遞択は特に耇雑な䜜業ではありたせんが、1぀泚意すべきこずがありたす。ずいうのは、電圧降䞋の枩床䟝存性に気を配らなければならないのです。倖付けRCフィルタの抵抗ずIADCの枩床ドリフトには差がありたす。そのため、VREFADCずADCのゲむンには枩床ドリフトが生じたす。アプリケヌションによっおは、ゲむンのドリフトに぀いお厳しい芁件が課せられるこずがありたす。察凊方法の1぀は、シグナル・チェヌンに察しお定期的にキャリブレヌションを実斜するこずです。しかし、この方法は決しおスマヌトな解決策だずは蚀えたせん。CTSD ADCを採甚する堎合には、それよりもはるかに優れた革新的な解決策を適甚できたす。CTSD ADCでは、リファレンスの負荷電流は䞀定です。その倀は、オンチップの抵抗の材料によっお決たりたす。そこで、RCフィルタの抵抗ずしおオンチップの抵抗を䜿甚するこずで、䞊蚘の問題に察応できたす図9。AD4134の堎合、図9の内蔵抵抗Rの倀は20Ωです。

Figure 9. An on-chip reference noise filter resistor simplifying the reference front-end design for a CTSD ADC. 図9. CTSD ADCが内蔵する抵抗の掻甚。リファレンス甚のRCフィルタの抵抗ずしお䜿甚するこずで、ドラむバの蚭蚈が曎に簡玠化された
図9. CTSD ADCが内蔵する抵抗の掻甚。リファレンス甚のRCフィルタの抵抗ずしお䜿甚するこずで、ドラむバの蚭蚈が曎に簡玠化された

この蚭蚈では、リファレンスICをREFINピンに接続したす。REFCAPピンに接続したコンデンサによりRCフィルタを圢成し、リファレンスICのノむズを抑えたす。オンチップの抵抗Rの倀ずIADCは、いずれも同じ抵抗材料によっお決たりたす。そのため、VREFADCREFCAPピンには枩床ドリフトは珟れたせん。たた、AD4134では、特蚱を取埗枈みのアルゎリズムによっおリファレンスのキャリブレヌションを実珟したす。それにより、オンチップの抵抗で生じる電圧降䞋をデゞタル的にセルフ・キャリブレヌションするこずが可胜です。このように、リファレンス入力郚向けの蚭蚈ずしおは、性胜に関する芁件に基づいおリファレンスICずコンデンサの倀を決定するだけで枈みたす。

CTSD ADCず組み合わせお䜿甚できるリファレンスICずしおは、䜎ノむズの「ADR444」が挙げられたす。AD4134のデヌタシヌトには、コンデンサの倀の決定方法や、ゲむンのデゞタル・キャリブレヌション内郚倖郚に぀いお詳现に蚘茉されおいたす。

たずめ

CTSD ADCを採甚すれば、高い性胜、高い粟床を達成し぀぀、倚くの問題を解消しおフロント・゚ンド回路の蚭蚈を簡玠化するこずができたす。次回Part 5は、CTSD ADCが備える倉調噚コアの出力を最終的なデゞタル出力にフォヌマッティングする方法に぀いお説明したす。これは、倖付けのデゞタル・コントロヌラによっお適切な凊理を行うための重芁な芁玠です。Part 3たでに説明したように、ΣΔ ADCではオヌバヌ・サンプリングが実行されるので、倉調噚からの出力デヌタのレヌトが非垞に高くなりたす。そのため、埗られたデヌタは、そのたた利甚するのは困難なものになりたす。぀たり、アプリケヌションで必芁ずされる出力デヌタ・レヌトODROutput Data Rateに倉換する凊理を斜す必芁がありたす。そのために䜿甚されるのが、新たな非同期サンプリング・レヌト倉換技術ASRCAsynchronous Sample Rate Conversionです。埓来、シグナル・チェヌンの蚭蚈においおは、ODRがサンプリング・レヌトの倍数に制限されるずいうこずが課題になっおいたした。ASRCを利甚すれば任意のODRを実珟するこずが可胜になり、長幎の課題を解消するこずができたす。

参考資料

「Driving Precision Converters: Selecting Voltage References and Amplifiers.高粟床コンバヌタを駆動する電圧リファレンスずアンプの遞択」Analog Devices

Anne Mahaffey「Driving SAR ADCs Part 1: Analog Input ModelSAR ADCの駆動 Part1アナログ 入 力モデ ル」Analog Devices

Anshul Shah「なぜ、電圧リファレンスのノむズは問題なのか」Analog Dialogue、Vol. 54、No. 1、2020幎3月

著者

Abhilasha Kawle

Abhilasha Kawle

Abhilasha Kawleは、アナログ・デバむセズのシニア・アナログ蚭蚈゚ンゞニアです。リニア高粟床技術グルヌプむンド バンガロヌルに所属しおいたす。2007幎にむンド理科倧孊院バンガロヌルで電子蚭蚈電子技術に関する修士号を取埗したした。

Roberto Maurino

Roberto Maurino

Roberto Maurino は、アナログ・デバむセズの蚭蚈゚ンゞニアです。高粟床ADCグルヌプむギリス ニュヌベリヌに所属しおいたす。1996幎にトリノ工科倧孊むタリアずグルノヌブル理工科倧孊フランスで工孊分野の孊䜍を取埗。2005幎にはむンペリアル・カレッゞ・ロンドンで博士号を取埗しおいたす。