概要
設計リソース
設計/統合ファイル
- Schematic
- Bill of Materials
- Gerber Files
- Layout Files (PADs)
- Assembly Drawings
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- EVAL-AD2S1210SDZ ($130.93) AD2S1210 Evaluation Board
- EVAL-SDP-CB1Z ($116.52) Eval Control Board
デバイス・ドライバ
コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。
AD2S1210 IIO Resolver-to-Digital Converter for MATLAB/Simulink
AD2S1210 Resolver-to-Digital Converter Evaluation Software
機能と利点
- 10ビット~16ビット分解能のレゾルバ/デジタル・コンバータ
- 大電流のオペアンプ・ドライバ
参考資料
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CN0317: 10ビット~16ビット分解能のレゾルバ/デジタル・コンバータ用の集積化大電流ドライバ2014/12/01PDF425 K
回路機能とその特長
図1に示す回路は、高性能レゾルバ/デジタル・コンバータ(RDC)回路で、広い温度範囲において高い信頼性が要求される自動車、航空電子機器、要求の厳しい工業用アプリケーションなどで角度の位置と速度を高精度に測定します。大電流ドライバAD8397は32Ω負荷へ310mAを供給可能で、ディスクリートのプッシュプル・バッファ回路を必要としません。
RDCの一般的なアプリケーションは自動車や工業用の市場で、モーター・シャフトの位置や速度の帰還を行います。
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(簡略回路図:デカップリングおよび全接続の一部は省略されています)
回路説明
AD2S1210は全機能を内蔵した10ビット~16ビット分解能のトラッキングRDCで、レゾルバを励起するプログラム可能なサイン波発振器を内蔵しています。過酷な動作環境で使用されるため、AD2S1210(CグレードおよびDグレード)は−40℃~+125℃の拡張工業用温度範囲で仕様が規定されています。
図1に示す大電流ドライバは、レゾルバとのインターフェースを最適化するため、デュアル・オペアンプAD8397を使ってAD2S1210のリファレンス発振器の励起出力の増幅とレベル・シフトを行います。AD8397は低歪み大出力電流の出力ダイナミック・レンジが広いアンプで、レゾルバに最適です。AD8397の32Ω負荷に対する310mAの駆動能力で、従来のディスクリートのプッシュプル出力段を使用することなくレゾルバに必要な電力を供給することにより、ドライバ回路が簡略化され、従来のプッシュプル回路に必要な追加部品分の電力が節約されます。レゾルバの1次巻線を駆動するのに用いる完全差動信号を実現するため、相補励起出力に同じドライバ段が使用されています。AD8397は、細型8ピンSOICパッケージを採用し、-40℃~+85℃の工業用温度範囲にわたって仕様が規定されています。
RDCは正弦波信号を採用し、サイン波のリファレンス信号で励起されるレゾルバの角度の位置や速度を特定します。レゾルバの1次巻線の励起リファレンス信号は、2つの正弦波の差動出力信号(サインとコサイン)に変換されます。サイン信号とコサイン信号の振幅は、レゾルバの実際の位置、レゾルバの変換比、および励起信号の振幅に依存します。 デジタル化されたデータをデジタル・エンジン(タイプIIのトラッキング・ループと呼ばれる)に供給するため、RDCは両方の入力信号を同時にサンプリングします。タイプIIのトラッキング・ループは位置と速度の計算を行います。代表的なアプリケーション回路を図2に示します。
レゾルバの入力信号条件により、励起バッファは最大200mAのシングルエンド電流を供給する必要があります。図1に示すバッファ回路は電流駆動機能に加えて、AD2S1210の励起出力信号に対するゲインも提供します。
標準的なレゾルバの入力抵抗は100Ω~200Ωの範囲で、1次コイルは7V rmsで励起する必要があります。
コンバータは3.15V p-p±27%の範囲の入力信号に対応します。AD2S1210の周波数範囲は2kHz~20kHzに規定されています。タイプIIのトラッキング・ループを採用して入力をトラッキングし、サインとコサインの各入力情報を入力角と入力速度のデジタル信号に変換します。このデバイスの最大トラッキング・レートは3125rpsと規定されています。
16ビット分解能では、位置出力の最大精度誤差の仕様は±5.3分角です。
AD2S1210は5V電源で動作し、出力バッファ回路として機能するAD8397は、レゾルバに必要な差動信号振幅を供給する12V電源を必要とします。
AD2S1210と差動ドライバとして構成されたAD8397の回路図を図1に示します。AD8397の非常に魅力的な面は、その出力が32Ω負荷への最大310mAの重い負荷を駆動するときに、−80dBcのスプリアスフリー・ダイナミック・レンジ(SFDR)を維持しながら大きな直線的出力電流を供給できることです。AD8397は出力電流が大きいことから、ディスクリートのプッシュプル回路を必要とせずに、レゾルバに必要な電力を供給することができます。
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100Ω~200Ωの入力抵抗のレゾルバを駆動するのに必要な電流は200mAです。図3に示すディスクリートの回路はプッシュプル出力段を備えていて、これにより、ドライバ回路のコストが増えるだけでなく、信号がないときでも少量の静止時電力を消費します。
図1のバッファ段は、プッシュプル回路が持つ駆動能力を実現しながら、消費電力と部品数を低減します。
AD2S1210の励起出力は通常、EXC出力とEXC出力に3.6Vp-pの正弦波信号を供給し、これが、7.2V p-pの差動信号となります。
自動車用レゾルバの標準的な変換比は0.286です。したがって、ユニティ・ゲインのバッファをAD2S1210とともに使用すると、レゾルバ出力の振幅は差動で約2V p-pになります。このような信号の振幅ではAD2S1210の入力振幅仕様を満たすには不十分です。理想的には、サイン入力とコサイン入力の振幅は差動の3.15V p-pなので、AD8397は約1.5のゲインを提供する必要があります。
図1に示す励起バッファのゲインは抵抗R1とR2によって設定されます。回路テスト時の抵抗R1とR2はそれぞれ10kΩと15.4kΩで、1.54のゲインに相当します。
EVAL-AD2S1210SDZ評価ボードにはジャンパのオプションがあり、R2を8.66kΩに替えることで0.866のゲインに設定できます。このゲイン設定値により、変換比が0.5のレゾルバのサイン入力とコサイン入力に差動振幅が3.12V p-pの信号が供給されます。
抵抗R3とR4によってアンプの同相電圧がVCM (2) = 3.75Vに設定されます。励起出力の同相電圧はVCM (1) = 2.5V(電源電圧の中点)で、約VCM (OUT) = 5.7V(12V電源の約半分)のバッファの出力同相電圧に変換されます。
選択したトポロジーは単電源で動作可能なので、バッファとして選択したオペアンプも単電源レールで動作可能であることが必要です。AD8397は12Vの単電源で動作し、出力がレールtoレールなので、バッファに最適なデバイスです。
測定
EVAL-AD2S1210SDZ評価ボードはジャンパのオプションを備えており、図1に示す集積回路のドライバまたは図3のディスクリートのドライバのいずれかを使用することができます。
ディスクリートのプッシュプル回路とAD8397を使った集積回路のバッファの信号の特性を図4に示します。Rohde & SchwarzのRTO1024を使用し、高速フーリエ変換(FFT)で出力信号を解析して基本波と高調波の電力を測定します。励起周波数は10kHzに設定します。
AD8397のゲインを1.54に設定したとき、どちらの構成も5.54V p-pの出力信号を供給します。RTO1024の50Ωの標準入力インピーダンスへの基本波の電力は約18dBmです。
次に、信号の基本周波数と高調波の電力値から信号対ノイズおよび歪み(SINAD)と全高調波歪み(THD)を計算します。プッシュプル回路ではSINAD = 50.9615dB、THD = 25.66%で、AD8397バッファではSINAD = 54.8dB、THD = 25.51%です。この計算ではどちらの構成も同程度です。
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次のステップでは、AD8397の回路がその出力に大電流が流れていても、励起信号を供給し続けられることを実証します。図5に示すテスト・セットアップで出力の電流をシンクすることにより、AD8397の回路性能を判定します。
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AD8397は、32Ω負荷へ最大310mAの大きな直線的出力電流を供給することができます。レゾルバの入力抵抗は一般に100Ω~200Ωの範囲です。
AD8397出力に対して310mAの電流をシンクするときの励起信号を図6に示します。出力は信号の強度を維持し続けることができるので、標準的なレゾルバを駆動可能です。
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レゾルバに接続すると、AD8397からの励起信号がAD2S1210の入力範囲条件内のサイン信号とコサイン信号を生成できます。
推奨事項
抵抗R2と並列のコンデンサC1はローパス・フィルタを形成し、EXC出力とEXC出力に生じるノイズを除去します。このフィルタのカットオフ周波数を選択する際には、フィルタによって生じるキャリアの位相シフトがAD2S1210のフェーズロック範囲を超えないようにします。レゾルバがAD2S1210の励起出力から高周波数成分を除去することができるので、C1は必須ではありません。
回路の検証プロセスでは、レゾルバの出力はAD2S1210の入力に直接接続しました。多くの場合、ユーザーのアプリケーションでは追加の調整抵抗や受動RCフィルタが使用されます。デバイスAD2S1210の前に受動部品を追加することができますが、製品のデータシートに規定されたAD2S1210の最大フェーズロック範囲を超えないようにします。受動部品を外付けすることにより、チャンネル間に振幅不一致誤差が生じ、この誤差が位置誤差に直接変換される可能性があります。このため、信号経路には許容誤差が1%未満の抵抗と許容誤差が5%未満のコンデンサを使用することを推奨します。
AD2S1210とAD8397周辺部品の値は、アプリケーションやセンサーに固有の条件を満たすように変更することができます。たとえば、抵抗値を変更することにより、バッファ回路の出力のバイアス電圧、振幅、および最大駆動能力を調整することができます。
回路の評価とテスト
EVAL-AD2S1210SDZ評価ボードを使って、CN-0317回路でAD2S1210の評価とテストを行います。詳細な回路図、レイアウト、および部品表はCN-0317設計サポート・パッケージに掲載されています。
EVAL-AD2S1210SDZユーザー・ガイドには、評価用ボードのハードウェアとソフトウェアの使用に関する全ての指示が記載されています。
必要な装置
以下の装置が必要です。
- USBポート付きでWindows® 7以降を搭載のPC
- EVAL-AD2S1210SDZ評価ボード
- EVAL-SDP-CB1Z SDP-Bコントローラ・ボード
- EVAL-AD2S1210SDZ評価用ソフトウェア
- 9VのACアダプタ電源(EVAL-AD2S1210SDZ評価ボードに付属)
- レゾルバ(多摩川精機のTS2620N21E11など)
評価開始にあたって
以下の手順で回路評価のセットアップを行います。
- 付属の評価用ソフトウェアCDで供給される評価用ソフトウェアをインストールします。ソフトウェアのインストール時には、EVAL-SDP-CB1ZボードがPCのUSBポートから切断されていることを確認してください。インストール後にはPCの再起動が必要になる場合もあります。
- 各種のリンク・オプションがEVAL-AD2S1210SDZユーザー・ガイドの表2に示されているように設定されていることを確認してください。
- 図7に示すように、SDPボードを評価用ボードに接続します。
- キットに付属された9V電源アダプタを評価用ボードのコネクタJ702に接続します。
- SDPボードをUSBケーブルでPCに接続します。
- ProgramsメニューのAnalog Devicesサブフォルダから評価用ソフトウェアを起動します。
- 図7に示すように、レゾルバのEXC、EXC、SIN、SIN、COS、およびCOSの各ワイヤをコネクタJ5とコネクタJ6に接続します。
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テスト
USBによる通信が確立されると、EVAL-SDP-CB1ZはEVAL-AD2S1210SDZとの間のパラレル・データの送受信およびキャプチャを行うことができます。
回路を位置と速度の測定に使用したときの、評価用ソフトウェアのAcquisitionタブの出力表示画面を図8に示します。
EVAL-SDP-CB1Zボードに接続されたEVAL-AD2S1210SDZ評価ボードの写真を図9に示します。
テスト・セットアップとキャリブレーションについての情報と詳細、およびデータ・キャプチャ用評価ソフトウェアの使用方法については、EVAL-AD2S1210SDZ評価ボードのユーザー・ガイドを参照してください。
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