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デバイス・ドライバ

コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。

ADF4350 GitHub Linux Driver Source Code

ADF4153 GitHub no-OS Driver Source Code

ADF4350 GitHub no-OS Driver Source Code

ADF4153 FMC-SDP Interposer & Evaluation Board / Xilinx KC705 Reference Design (Wiki Link)

回路機能とその特長

図 1に示す回路は、スプリアスを最小にするために、PLLシンセサイザをVCOから分離したものです。VCO内蔵シンセサイザ ADF4350と、別置のPLLシンセサイザICを使用します。

PLLとVCOが集積されたデバイスでは、デジタルPLL回路からVCOへのフィードスルーがあります。PLL回路がVCOに接近しすぎる事で、スプリアスレベルが高くなる恐れがあります。

図 1に示す回路は 、フラクショナルN型 PLLとVCOが集積されたADF4350を、PLLシンセサイザICADF4153 と共に使用したものです。ADF4350は137.5 MHz ~4400 MHzの周波数を発生させることができます。

外部PLLを使用する利点として、スプリアス性能が向上することに加え、周波数分解能を向上できることがあります。たとえばADF4153の代わりにPLLシンセサイザIC ADF4157を選べば、0.7 Hz程度もの微細なPLL周波数分解能を実現できる可能性があります。

図 1. ADF4350にADF4153を接続(簡略化した回路。接続およびデカップリングのすべては示されていません)

 

回路説明

ADF4350は広帯域PLLと、それぞれ帯域の異なる3つのVCOで構成されたICです。各VCOは、VCO周波数間で多少のオーバーラップはありますが、それぞれ約700 MHzの帯域をカバーします。これにより2.2 GHz ~ 4.4 GHzの基本波によるVCO発振周波数範囲が可能になっています。2.2 GHz以下の周波数も、ADF4350の内蔵分周器で生成できます。

ほとんどのアプリケーションでは、VCOをロックするためにADF4350内蔵のPLL回路を使用します。この内蔵PLL回路はPLLをロックする事に加え、「内蔵VCOのバンドセレクト」という重要な動作を行っています。これは内蔵PLL回路の内部リファレンス(R)カウンタ値とフィードバック(N)カウンタ値を使用して、VCO出力周波数と基準周波数入力を比較するものです。

周波数生成のために内蔵PLL回路をイネーブルにし、目的の周波数をプログラムします。その後にVCOのバンドセレクト動作に十分な時間経過したら、内蔵PLL回路をディスエーブルにして、外部(ADF4153)のPLL回路をイネーブルにします。この外部PLL回路は基準周波数とVCO出力周波数を比較して、PLLをロックするための安定したDC電圧を生成します。

図 2は ADF4153のPLL回路をディスエーブルにして、ADF4350の内蔵PLL回路と内蔵VCOを使用して、RFOUTA+で測定した出力信号のスプリアスです。13 MHz と 26 MHzに位相比較周波数のスプリアスが見えます。

図 3はADF4350の内蔵PLL回路をディスエーブル、外部PLL のADF4153をイネーブルにして、RFOUTA+で測定したスプリアスです。ここではADF4153のチャージポンプ出力でループ・フィルタをドライブし、ループ・フィルタ出力がADF4350のVTUNE入力をドライブします。VTUNE入力でADF4350の VCO出力周波数を制御します。

図 2と 図 3を比較すると、 図 2で観測された13 MHz と 26 MHzの位相比較周波数によるスプリアスが、図 3ではノイズフロア以下になっていることがわかります。

バリエーション回路

異なるPLL ICを選ぶ事もできます。 ADF4350 と ADF4153のフラクショナルN型PLLは、PFD/4095が最小周波数分解能です(PFDは位相比較周波数)。より細かな分解能が必要な場合は、ADF4157を選択する事ができます。このPLLの分解能はPFD/225で、1 Hz以下の超高分解能を実現できます。

PLL ICの ADF4150はADF4350とソフトウェア互換です。簡単にソフトウェアでプログラムしたいアプリケーションには、ADF4150を使用すれば、ソフトウェア・プロブラミング・シーケンスが簡単になります。

 

図 2. ADF4350の位相比較周波数スプリアス(1.6 GHz)

 

図 3. ADF4153を使用した時のADF4350 の位相比較周波数スプリアス(1.6 GHz)

 

ソフトウェア

設計ツール

ADIsimPLL™

ADIsimPLLは、アナログ・デバイセズの新しい高性能PLL製品の迅速で信頼性の高い評価を可能にします。これは、現在利用できる最も包括的なPLLシンセサイザ設計およびシミュレーション・ツールです。実施されるシミュレーションには、PLL性能に影響を与える重要な非線形効果がすべて含まれます。ADIsimPLLは、設計プロセスから1回以上の反復作業を削除し、設計から市場投入までの時間を短縮します。

回路の評価とテスト

このCN-0232では回路評価にEVAL-ADF4350EB2Z評価用ボードを使用していますが、セットアップと評価を速やかに行うため多少修正しています。EVAL-ADF4350EB2Z評価用ボードは評価用ボード同梱のCDに入っている標準のADF4350プログラミング用ソフトウェアを使用します。EVAL-ADF4153評価用ボードにはPLLシンセサイザADF4153のソフトウェアが同梱されています。


必要な装置


  • プログラミング用ソフトウェア付きEVAL-ADF4350EB2Z
  • プログラミング用ソフトウェア付きEVAL-ADF4153
  • 5.5V電源
  • 信号発生器 R&S SMA100A 又は同等品
  • スペクトラム・アナライザ R&S FSUP26 又は同等品
  • PC 2台:Windows® XP、Windows Vista(32ビット)又は Windows 7(32ビット)対応で、1台はUSBポート、もう1台はプリンタポートがあるもの。プリンタポートが無ければ、代わりにUSBアダプタ キットEVAL-ADF4xxxX-USBが使用できます

SMA同軸ケーブルでEVAL-ADF4350EB2ZのRFOUTB+をEVAL-ADF4153のRFINに接続します。リファレンス周波数源を2つの評価用ボードで共用するため、簡単なSMAスプリッタも必要です。 ADF4153のループ・フィルタ出力をADF4350のVTUNE入力に接続するため、柔らかい細い同軸ケーブルが必要です。不必要な干渉ノイズを最小限に抑えるため、各ボードの適切なGNDポイントにケーブルの両側を接地します。


機能ブロック図


実験にはEVAL-ADF4153 と EVAL-ADF4350EB2Zを使用します。 EVAL-ADF4350EB2Zを選んだ理由は、図 4に示すように補助RFOUTB+出力段があるからです(SMAケーブルを介してEVAL-ADF4153に接続できる)。

2つのPLL ICは同じリファレンス入力(REFIN)周波数を使用します。SMAスプリッタで同じリファレンス周波数源を両方の評価用ボードに接続します。

余計なノイズやスプリアスがVTUNEピンに乗らないように、EVAL-ADF4153のループ・フィルタ出力は、シールドした同軸ケーブルを介してADF4350のVTUNEピンに接続します。2つのICは別々にプログラミングします。PCハードウェアのドライバ間が競合しないように、それぞれの評価用ボードに異なるPCを使用する必要があるかもしれません。


始めてみよう


EVAL-ADF4350EB2Z 評価ソフトウェアのインストールと使用方法の詳細は、ユーザー・ガイドUG-110に記載されています。UG-110には評価用ボードのセットアップの説明、評価用ボードの回路図、ボード・レイアウト、部品表も記載されています。

ユーザー・ガイド UG-167 は、EVAL-ADF4153の同様の情報が含まれています。この評価用ボードで必要な修正はVCO (Y1)を取り去る事です。この評価用ボードを信号入力用として再設定するため、抵抗R7を取り去り、R8 と R9を0 Ωに変更してください。

ADF4350評価用ボードのPLLループ・フィルタは使用しないので、取り去る必要があります。ADF4153のループ・フィルタ(T7)出力を ADF4350(T4)のVTUNE入力に細い同軸ケーブルで接続します。重要な事はこの同軸ケーブルの外側のシールドを2つの評価用ボードのグラウンドに接続する事です。

 

図 4. テスト・セットアップ機能ブロック図

 


初期化の手順


ADF4350は周波数を更新するごとにバンドセレクト動作を行っています。

  1. ADF4350を通常動作として初期化(R0, R1, R2, R3, R4, R5を設定)してください。 ADF4350のチャージポンプ は使用しないので、 R2の DB4は「1」(ICPをスリーステートにする)に設定してください。分周したVCO出力をRFOUTB+出力にするため、R4のDB9を「0」に設定してください。 RFOUTB+ (補助出力)をイネーブルにしてください。同軸ケーブルを通してこの信号がADF4153に印加されます
  2. さきのVCO出力をRF入力とするように(データシートに従い)ADF4153を初期化してください。なおADF4350のバンドセレクト用スイッチはIC内部にあります。そのためADF4350のVTUNE端子を切り離すための外部スイッチは不要です
  3. ADF4153 がロックしたら、ADF4350 のカウンタ・リセット機能を「1」(R2のDB3)にしてカウンタを停止する必要があります。カウンタを停止しておかないと、スプリアス特性が劣化します。テストモード・ビット( R5のDB10)を使えば、 ADF4350のPLLシンセサイザ回路全体をパワーダウンする事ができます

 

図 5. ADF4350 のソフトウェアの画面

 


周波数の更新


  1. ADF4350のPLLシンセサイザ回路を再起動するため、R5のDB10を「0」に設定してください
  2. ADF4350 のR2のDB3を「0」に設定して、カウンタ・リセット機能を解除してください。バンドセレクト動作のためにカウンタの機能が必要だからです
  3. ADF4350 とADF4153 のNカウンタ・レジスタを新しい周波数に設定してください
  4. ADF4153 がロックしたら、ADF4350のカウンタ・リセット機能(R2のDB3) を設定します。テストモード・ビット(R5のDB10)を使えば、ADF4350のPLLシンセサイザ回路全体をパワーダウンする事ができます.
  5. 周波数を更新するごとに、必要に応じてステップ1~ステップ4を繰り返してください

図 5と 図 6に示す画面は、 REFIN=26 MHz(ADF4350)、PFD=13 MHz(ADF4153)の状態を示しています。 セットアップ後、出力信号のスペクトル純度の測定には、一般的なRFテスト方法を使用してください。

 

図 6. ADF4153 のソフトウェアの画面