概要
設計リソース
設計/統合ファイル
- Schematic
- Bill of Materials
- Gerber Files
- PADS Files
- Assembly Drawing
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- EVAL-CN0225-SDPZ ($76.51) High Impedance, High CMR, ±10 V Analog Front End Signal Conditioner for Industrial Process Control and Automation
- EVAL-SDP-CB1Z ($116.52) Eval Control Board
デバイス・ドライバ
コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。
機能と利点
- ±10Vの信号をデジタル化するためのフル機能アナログ・フロントエンド
- 大きな同相除去
- 16ビット高解像度
- 基板面積の縮小
製品カテゴリ
マーケット & テクノロジー
使用されている製品
参考資料
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MT-101: Decoupling Techniques2015/02/14PDF954 kB
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MT-031: データ・コンバータのグラウンディングと、「AGND」および「DGND」に関する疑問の解消2009/03/20PDF144 kB
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CN-0225: 工業用プロセス制御およびオートメーション用高インピーダンス、高 CMR、 ±10V アナログ・フロントエンド・シグナル・コンディショナ2012/06/13PDF586 K
回路機能とその特長
図1に示す回路は、16ビット差動入力PulSAR® ADCを使って±10Vの工業用レベルの信号をデジタル化するためのフル機能アナログ・フロントエンドです。この回路は、2個のアナログ部品を使用するだけで、高CMRで、レベル・シフト、減衰、および差動変換機能を備えた高インピーダンス計装アンプの入力を実現します。高レベルの集積化により、この回路はプリント回路基板を省スペース化し、一般的な工業用アプリケーション用に費用対効果の優れたソリューションを提供します。
プロセス制御や工業用オートメーションのシステムでは、最大±10Vの信号レベルが標準的です。熱電対やロードセルなどのセンサーからの小さな信号入力では、大きな同相電圧が生じることも少なくありません。このため、大きな同相除去で大小両方の差動信号を処理する高インピーダンス入力の柔軟なアナログ入力が必要になります。

最近の低電圧ADCで工業用レベルの信号を処理するには、信号を予め減衰し、レベル・シフトしておく必要があります。さらに、完全差動入力ADCには、優れた同相除去、2次歪みの低減、簡略化DC調整アルゴリズムなどの利点があります。したがって、工業用の信号は、差動入力ADCと適切にインターフェースするために更に処理を必要とします。
図1の回路は、フル機能で高度に集積されたアナログ・フロントエンドの工業用レベル・シグナル・コンディショナで、わずか2個の能動部品を使って16ビット差動入力PulSAR ADC AD7687を駆動します。2個の部品は、高精度計装アンプAD8295(2個の補助オペアンプを内蔵)とレベル変換/ADCドライバAD8275です。ADCの電圧リファレンスには低ノイズ2.5V XFET®リファレンスADR431が使われています。
AD8295は、2個の汎用信号処理アンプと2本の正確に整合した20kΩ抵抗を小型の4mm × 4mmパッケージに内蔵した高精度計装アンプです。
AD8275は、±10Vの工業用信号を減衰するのに使用できるG = 0.2のディファレンス・アンプで、減衰された信号は低電圧の単電源ADCと容易にインターフェース可能です。AD8275は回路内で減衰とレベル・シフトを行い、外付け部品を必要とせずに十分なCMRを維持します。
AD7687は16ビット逐次比較ADCで、2.3V~5.5Vの単電源で動作します。CMRを良くするための差動入力を備えるとともに、SAR ADCを使いやすくします。
回路説明
この回路は、アナログ・フロントエンド回路としてのAD8295とAD8275、リファレンスADR431と併用したAD7687 ADC、デカップリング用のわずかな他の外付け部品などで構成されます。
計装アンプ(AD8295に内蔵)
AD8295に内蔵された計装アンプ(IA)は、動作条件がゲイン1に設定されています。高いゲインが必要なアプリケーションでは、適切な外付けゲイン抵抗を追加することができます。AD8295の電源は±15Vなので、最大±10Vの工業用入力信号レベルが使えます。計装アンプのリファレンス・ピンがグラウンドに接続されているので、AD8295の出力はグラウンドを基準にしています。
ディファレンス・アンプ/アッテネータ(AD8275)
AD8295の計装アンプの出力信号は、最大振幅が±10Vのシングルエンドです。AD7687 ADCを駆動するため、この信号を減衰して適切なレベルにシフトする必要があります。AD8295の出力にシンプルな抵抗性レベル・アッテネータ段を直接接続しても、ADCを駆動する差動出力は得られません。レベル変換器AD8275(G = 0.2)は、レーザー・トリムによる整合した高精度薄膜抵抗を内蔵したディファレンス・アンプで、小さなゲイン誤差、低いゲイン・ドリフト(最大1 ppm/℃)、および高い同相除去比(80 dB)を実現します。AD8275は、電源電圧範囲が+3.3V~+15Vと広く、+5V単電源動作では−12.3V~+12Vの大きな入力電圧範囲になります。
差動入力ADCの駆動
図1の回路は、AD8275(U2)と、AD8295の汎用オペアンプの1つ(U1-C)で構成される平衡型ディファレンス・アンプを使用しています。オペアンプ(U1-C)を使ってAD8275の正側出力を反転(したがって、負側の相補出力を供給)し、AD8275のREF1ピンとREF2ピンを駆動します。差動出力の出力同相電圧(VCOM = 1.25V)は2.5Vリファレンスに接続された10kΩの外付け抵抗分割器で生成され、U1-Cの非反転入力に印加されます。回路動作を表す式は以下のとおりです。
VOUTP + VOUTN = 2 × VCOM
VOUTP = VOUTN + 0.2 × VIN
VOUTP = VCOM + 0.1 × VIN
VOUTN = VCOM − 0.1 × VIN
これらの式から、±10Vの入力電圧の場合、ADCの電圧(VOPTPおよびVOUTN)は、同相電圧が1.25Vのときにそれぞれ0.25Vと2.25Vの間を振幅し、互いに180°位相がずれます。したがって、差動信号はADCの利用可能な5Vの差動入力範囲から4Vを利用します。
ADR431は、低ノイズ、高精度、および低温度ドリフト性能を備えたXFET電圧リファレンス・ファミリーの2.5Vリファレンスです。ADR431は、抵抗分割器とAD7687 ADCのリファレンス入力を駆動します。ADR431の出力は、AD8295の2つ目の汎用オペアンプ(U1-B)によってバッファされ、AD7687の電源(VDD)を駆動します。2本の33Ω抵抗と1.5nFのコンデンサで構成されるシングル・ポールRCフィルタが、AD7687に対してカットオフが3MHzのアンチエイリアシング・フィルタとノイズ低減フィルタとして機能します。
レイアウトに関する検討事項
この回路や他の全ての高速または高分解能の回路の性能は、適切なPCBレイアウトに大きく依存します。これには、限定はされませんが、電源バイパス、信号配線、適切な電源プレーンおよびグラウンド・プレーンが含まれます。PCBレイアウトの詳細についてはチュートリアル MT-031、 チュートリアル MT-101および技術記事「高速プリント回路基板レイアウトの実務ガイド」を参照してください。

システム性能
AC性能は、AD7687のサンプリングが250kSPSのシステム・レベルでテストしました。20kHzの5Vp-p入力時のFFTテストの結果を図2に示します。10V DC入力時のADC出力のヒストグラムを図3に示します。
評価ソフトウェアから得られた結果は以下のとおりです。
- SNR = 85.531 dBFS (高周波を含む)
- SINAD = 81.432 dBFS.
- SFDR = 77.403 dBFS.
- THD = –76.479 dBFS

バリエーション回路
回路の評価とテスト
ADC用のリファレンスは2.048Vのこの回路は、EVAL-CN0225-SDPZ 回路基板とシステム・デモンストレーション・プラットフォーム(SDP)評価用ボードEVAL-SDP-CB1Z を使用します。2つのボードには120ピン・コネクタが備わっているので、回路のセットアップと回路性能の評価を短時間で行うことができます。EVAL-CN0225-SDPZボードには、この回路ノートで説明したように、評価対象の回路が含まれています。SDP評価用ボードは、EVAL-CN0225-SDPZ 回路基板からデータをキャプチャするためにCN0225評価用ソフトウェアと併用します。
必要な装置
- USBポート付きWindows XP、Windows Vista(32ビット)、またはWindows 7(32ビット)搭載PC
- 回路評価用ボードEVAL-CN0225-EB1Z
- 評価用ボードEVAL- SDP-CB1Z
- DC電源:+15V、–15V、および+6V
- Agilentの81150AやAudio PrecisionのSystem Two 2322のような低歪
評価開始にあたって
CN0225評価用ソフトウェア・ディスクをPCのCDドライブにセットして評価用ソフトウェアをロードします。次いで、評価用ソフトウェア・ディスクのあるドライブを探し、Readmeファイルを開きます。Readmeファイルの指示に従って、評価用ソフトウェアをインストールして使用してください。
機能ブロック図
テスト装置の機能ブロック図を図4に示します。PDFファイルEVAL-CN0225-SDPZ-SCHに、CN0225評価用ボードの詳細な回路図があります。このファイルは、CN0225設計支援パッケージ(www.analog.com/CN0225-DesignSupport)に含まれています。

セットアップ
回路基板EVAL-CN0225-SDPZの120ピン・コネクタをEVAL-SDP-CB1Z 評価用(SDP)ボードの「CONA」と表示されたコネクタに接続します。120ピン・コネクタの両端にある穴を利用して2枚の基板をしっかり固定するために、ナイロン製ハードウェアを使用する必要があります。DC出力電源を+15V、–15V、+6Vの出力に設定してから、電源をオフにしてください。
電源をオフにして、+15V電源を「+15VA」と表示されたJ3のピンに、−15V電源を「−15VA」と表示されたJ3のピンに、さらにGNDを「AGND」と表示されたJ3のピンに接続します。同様に、+6VをJ2に接続します。電源をオンにしてから、SDPボードのUSBケーブルをPCのUSBポートに接続します。注意:EVAL-CN0225-SDPZのDC電源をオンにするまでは、USBケーブルをSDPボードのミニUSBコネクタに接続しないでください。
テスト
電源を設定してEVAL-CN0225-SDPZ回路基板に接続したら、評価用ソフトウェアを起動し、PCからのUSBケーブルをSDPボードのミニUSBコネクタに接続します。アナログ・デバイセズのシステム開発プラットフォーム・ドライバがデバイスマネージャに表示されていれば、ソフトウェアはSDPボードと通信することができます。
USBによる通信が確立されると、SDPボードを使ってEVAL-CN0225-SDPZ ボードとの間のシリアル・データの送受信およびキャプチャを行うことができます。
この回路ノートのデータは、Agilentの81150A差動信号ソースを使って生成しました。
SDPボードについては、www.analog.com/SDPを参照してください。