AN-1040: ワイヤレス・トランスミッタの性能を改善する RF 電力キャリブレーション

はじめに

ワイヤレス・トランスミッタをデザインする際には、RF 電力の測定と制御は重要事項です。ハイパワーRF アンプ(PA)はオープン・ループ・モードで動作することはほとんどありません。すなわち、アンテナに供給される電力がモニタされることはありません。送信電力、ネットワークの堅牢性、他の無線ネットワークとの共存性についての規制条件などの外部要因から送信電力の厳しい管理が必要とされます。これらの外部条件の他にも、RF 電力を正確に制御すると、スペクトル性能が向上するため、トランスミッタのパワー・アンプでコストとエネルギを節約することができます。

送信電力を調節するためには、PA 出力電力の何らかのキャリブレーションが必要になります。キャリブレーション・アルゴリズムは、複雑さと有効性の面から大幅に変わります。このアプリケーション・ノートでは、一般的なRF 電力制御方式の実現方法について説明し、種々の出荷時キャリブレーション・アルゴリズムの有効性と効率を比較します。

電力制御機能を内蔵する代表的なワイヤレス・トランスミッタ

図1 に、送信電力の計測機能と制御機能を持つ代表的なワイヤレス・トランスミッタのブロック図を示します。方向性カプラーを使って、PAからの信号の小さい部分を分岐してRFディテクタに入力します。この場合、カプラーはデュプレクサとアイソレータの後ろのアンテナの近くに配置します。これらに対応する電力損失は、キャリブレーション時に考慮されます。

図 1.送信電力制御機能を内蔵する代表的なRF パワー・アンプ(内蔵RF パワー・ディテクタが送信電力について電流レベルの連続帰還を提供し、外部RF 電力計とRF パワー・ディテクタとの組み合わせを使ってトランスミッタをキャリブレーションします)

図 1.送信電力制御機能を内蔵する代表的なRF パワー・アンプ(内蔵RF パワー・ディテクタが送信電力について電流レベルの連続帰還を提供し、外部RF 電力計とRF パワー・ディテクタとの組み合わせを使ってトランスミッタをキャリブレーションします)

方向性カプラーは一般に20 dB~30 dB の結合係数を持つため、カプラーから出力される信号は、アンテナへ行く信号より20dB~30 dB 低くなります。この方法で電力を分岐すると、送信パスで電力損失が発生します。この方向性カプラーの挿入損失は、通常、数十分の1 デシベルです。

最大送信電力範囲30 dBm~50 dBm (1 W~100 W)のワイヤレス・インフラストラクチャ・アプリケーションでは、方向性カプラーからの信号はそれでも測定するRF ディテクタにとって大き過ぎます。このため、カプラーとRF ディテクタの間に減衰量の追加が必要です。

現代のrms および非rms 応答のRF ディテクタは、30 dB~100 dBの電力検出範囲を持ち、温度と周波数に対して安定な出力を提供します。大部分のアプリケーションでは、ディテクタ出力がA/D コンバータ(ADC) に入力されます。不揮発性メモリ(EEPROM)に格納されているキャリブレーション係数を使って、ADC 出力コードが送信電力測定値に変換されます。この電力測定値は、セットポイントの電力レベルと比較されます。セットポイントと電力測定値が一致しない場合、電力の調整が行われます。この電力調整は、シグナル・チェーン内にある多数のポイントの内のいずれかのポイントで行うことができます。無線を駆動するベースバンド・データの振幅、可変ゲイン・アンプ(IFまたはRF)、またはPA のゲインを調節することができます。この方法では、ゲイン制御ループ自体が制御して、送信電力を所望の範囲内に維持します。VVA とPA のゲイン制御伝達関数は非直線性を持つことが多いことに注意することは重要です。このため、ゲイン調整から発生する実際のゲイン変化に不確定性が生じます。このため、生じた変化を帰還してその後の操作にガイダンスを提供する制御ループが必要になります。

出荷時キャリブレーションの必要性

前述の代表的なワイヤレス・トランスミッタ・システムでは、非常に優れた絶対ゲイン精度仕様を提供する部品はほとんどありません。±1 dB の送信電力誤差目標について考えます。PA、可変電圧減衰器(VVA)、RF ゲイン・ブロック、シグナル・チェーン内のその他の部品のようなデバイスの絶対ゲインはデバイスごとに変わるため、出力電力の不確定性が±1 dB 以上になることがあります。さらに、シグナル・チェーンのゲインは温度と周波数の変化に対して変わります。このため、送信電力を連続的にモニタ/制御することが必要です。

出力電力キャリブレーションは、外部リファレンスの高精度を被キャリブレーション・システムに移転することと定義することができます。キャリブレーション手順には、図1 に示すように、アンテナを切り離してRF電力計のような外部測定リファレンスで置き換えることが含まれます。この方法では、高精度外部電力計の精度がトランスミッタの内蔵パワー・ディテクタに移転されます。キャリブレーション手順には、電力レベルの設定、電力計値とRFディテクタ電圧の取得、これらすべての情報の不揮発性メモリ(EEPROM)への格納が含まれます。次に、電力計を取り外してアンテナを再接続すると、トランスミッタ出力電力が正確に制御されるようになります。アンプ・ゲインの温度特性、送信周波数、所望出力電力レベルのようなパラメータが変化すると、キャリブレーションされた内蔵RFディテクタが、絶対精度を持つ内蔵電力計のように動作します。この内蔵電力計は、トランスミッタが常に既定の偏差内で所望電力を放射できるようにします。

出荷時キャリブレーション手順は、RF電力制御ループのキャリブレーションのセクションで説明します。まず、代表的なRFパワー・ディテクタの特性を調べる必要があります。システムのRFディテクタの、温度と周波数に対する直線性と安定性が、キャリブレーション作業の複雑さと実現可能なポストキャリブレーション精度に大きな影響を与えます。

RFディテクタの伝達関数

図2 に、対数応答RFディテクタ(ログアンプ)の温度特性の伝達関数を示します(説明のために誇張してあります)。ログアンプの伝達関数は、直線動作範囲内でシンプルな1 次式を使ってモデル化することができます。+25°C、+85°C、−40°Cでの出力電圧対入力電力の3 本のカーブを示します。25°Cでのディテクタ出力電圧は、入力電力−60 dBmで約1.8 Vから0 dBmで0.4 Vまでの範囲になります。伝達関数は、上書きしてある理想直線に良く一致しています。伝達関数は両端でこの直線から乖離していますが、−10 dBm~−5 dBmの電力レベルで非直線性の傾向がみられることにも注意してください。

図 2.対数応答RF パワー・ディテクタの伝達関数(VOUT 対PIN)、説明のために温度ドリフトを誇張

図 2.対数応答RF パワー・ディテクタの伝達関数(VOUT 対PIN)、説明のために温度ドリフトを誇張.

簡単な計算で、このディテクタは約−25 mV/dB のスロープを持っていることが分かります。すなわち、入力電力が1 dB 変化すると、出力電圧が25 mV 変化します。このスロープは、ダイナミック・レンジの直線部分で一定です。このため、非直線性が少し低下しますが (約−10 dBm)、25°C での伝達関数を次式を使ってモデル化することができます。

equation1

ここで、インターセプトは外挿した直線がx軸と交わるポイントです(図2 参照)。したがって、ディテクタの伝達関数はこのシンプルな1 次式を使ってモデル化することができます。キャリブレーション手順では、2 点だけの電力レベルを測定して、この式を使うことによりディテクタの伝達関数を得ることができるため、キャリブレーションでこの式は便利です。

したがって、ディテクタの伝達関数はこのシンプルな1 次式を使ってモデル化することができます。キャリブレーション手順では、2 点だけの電力レベルを測定して、この式を使うことによりディテクタの伝達関数を得ることができるため、キャリブレーションでこの式は便利です。

次に、この理想ディテクタの温度に対する動作を検討します。入力電力–10 dBm では、出力電圧が周囲温度から−40°C または+85°C までに対して約100 mV 変化することに注意してください。スロープの前述の計算(−25 mV/dB)から、これは±4 dB の電力測定値の変化に対応します。これは大部分の実際のシステムでは許容できない値です。実用的には、温度ドリフトが小さい伝達関数を持つディテクタが必要です。これにより、周囲温度で実行されるキャリブレーション手順が温度に対しても有効になり、トランスミッタの周囲温度での出荷時キャリブレーションが可能になるため、高温と低温での、費用と時間を要するキャリブレーション・サイクルを回避することができます

トランスミッタが周波数に即応し、一定の周波数帯域内で複数の周波数を送信する必要がある場合、ディテクタの周波数特性に注意する必要があります。理想的には、一定の周波数帯域内で応答が大きく変化しないRF ディテクタを使う必要があります。これにより、1 つの周波数(一般に帯域中心)でのトランスミッタのキャリブレーションが可能になるため、周波数が変化した際の精度の低下が無視できるようになります。.

表1 に、アナログ・デバイセズが提供する種々のrmsおよび非rms応答ディテクタの検出範囲と温度安定性を示します。

表1.RMS および非RMS 応答RF パワー・ディテクタ
Device Max Input Frequency (GHz) Dynamic Range (dB) Temperature Drift (dB) Package Comments
AD8317 10 55 ±0.5 2 mm × 3 mm 8-lead LFCSP Non-rms log detector
AD8318 8 70 ±0.5 4 mm × 4 mm 16-lead LFCSP Non-rms log detector
AD8319 10 45 ±0.5 2 mm × 3 mm 8-lead LFCSP Non-rms log detector
ADL5513 4 80 ±0.5 3 mm × 3 mm 16-lead LFCSP Non-rms log detector
ADL5519 10 62 ±0.5 5 mm × 5 mm 32-lead LFCSP Dual non-rms log detector
AD8361 2.5 30 ±0.25 6-lead SOT-23, 8-lead MSOP Linear in V/V rms detector
ADL5501 6 30 ±0.1 2.1 mm × 2 mm 6-lead SC-70 Linear in V/V rms detector
AD8362 3.8 65 ±1.0 6.4 mm × 5 mm 16-lead TSSOP RMS log detector
AD8363 6 50 ±0.5 4 mm × 4 mm 16-lead LFCSP RMS log detector
AD8364 2.7 60 ±0.5 5 mm × 5 mm 32-lead LFCSP Dual rms log detector

RF電力制御ループのキャリブレーション

図3 に、図1 に示したようなトランスミッタのキャリブレーションに使用できるフローチャートを示します。このシンプルで迅速な2 ポイント・キャリブレーションは、高精度な電力レベルの設定を必要としない場合(ただし測定は高精度)に有効です。このキャリブレーションを有効にするためには、内蔵RFディテクタは温度と周波数に対して安定であり、かつシンプルな式でモデル化できる予測可能な応答を持つ必要があります。

図 3.ログ・ディテクタ内蔵のトランスミッタをキャリブレーションするシンプルな2 ポイント・キャリブレーション手順

図 3.ログ・ディテクタ内蔵のトランスミッタをキャリブレーションするシンプルな2 ポイント・キャリブレーション手順

トランスミッタの動作電力範囲をRF ディテクタの直線動作範囲に対応させます。始めに、アンテナを切り離し、電力計をアンテナ・コネクタに接続します。次に、出力電力レベルを最大電力の近くに設定します。電力計でアンテナ・コネクタでの電力を測定して、トランスミッタの内蔵マイクロコントローラまたはデジタル信号プロセッサ(DSP)に送信します。同時に、RF ディテクタADC でサンプルし、読み出し値をトランスミッタのプロセッサへ入力します。

次に、トランスミッタの出力電力を最小電力に近いレベルに減少させて、手順(アンテナ・コネクタでの電力測定とRF ディテクタADC でのサンプル)を繰り返します。

これらの4 個の読み出し値(低電力レベルと高電力レベル、小さいADCコード値と大きいADCコード値)を使って、スロープとインターセプトを計算して(図3 参照)、不揮発性メモリへ格納することができます。

RF電力制御ループのフィールドでの動作

図4 に、キャリブレーション後にトランスミッタで電力を正確に設定する際に使用できるフローチャートを示します。この例では、送信電力誤差を±0.5 dB以下にすることが目標です。最初に、出力電力レベルを最適な推測値に設定します。次に、ディテクタADCでサンプルします。スロープとインターセプトをメモリから取得して、送信する出力電力レベルを計算します。

図 4.キャリブレーション後のトランスミッタの動作

図 4.キャリブレーション後のトランスミッタの動作

出力電力がPSET の±0.5 dB に収まらない場合は、出力電力を可変電圧減衰器(VVA)を使って約0.5 dB だけインクリメントまたはデクリメントします。この"約"という用語は、VVA の伝達関数が非直線になることがあるために使っています。送信電力を再度測定し、送信電力誤差が±0.5 dB より小さくなるまでさらに電力をインクリメントします。

電力レベルが偏差内に収まったとき、連続的にモニタし、必要に応じて調節します。例えば、シグナル・チェーン内の部品のゲインが温度変化により変動する場合、電力測定値が±0.5 dB のセットポイント範囲を超えたときループが動作を開始します。

このアルゴリズムには他の変動も存在します。例えば、出力電力をできるだけ小さくして、セットポイントから0.5 dB 以上超えないようにする場合は、別の手法を使う必要があります。この場合、最初に電力設定値を所望電力レベルより小さいレベルに設定します(偏差の外側)。次にループにより電力を測定しますが、セットポイントのインクリメントは小さくなります(たとえば+0.1 dB)。この方法では、出力電力は常にセットポイントより小さい値からセットポイントに近づきます。 −0.5 dB 範囲に入ると、直ちに電力のインクリメントが停止します。これにより、実際のレベルは必ずセットポイント・レベルより低くなり、かつ偏差以内に収まることが保証されます。

ポストキャリブレーション誤差

図5 ~ 図8 に、異なる選択とキャリブレーション・ポイント数を使用した場合の、同じRFディテクタのデータを示します。 図5 に、 8 GHzまで動作する広いダイナミック・レンジを持つRFログ・ディテクタAD8318 の2.2 GHzでのディテクタ伝達関数を示します。このケースでは、ディテクタは2 ポイント・キャリブレーション(−12 dBmと−52 dBmで)を使ってキャリブレーションされています。キャリブレーションが完了したとき、残留測定誤差をプロットすることができます。キャリブレーションを実行した周囲温度においても、誤差がゼロでないことに注意してください。これは、ログアンプが動作領域内でも理想的なVOUT対PINの式 (VOUT =スロープ× (PIN −インターセプト))に完全に従わないことによります。ただし、−12 dBmと−52 dBmのキャリブレーション・ポイントでの誤差は定義によりゼロになります。

図5.キャリブレーション・ポイントをディテクタの直線動作範囲内に設定し、優れた全体性能を提供する2 ポイント・キャリブレーション

図5.キャリブレーション・ポイントをディテクタの直線動作範囲内に設定し、優れた全体性能を提供する2 ポイント・キャリブレーション

図6.キャリブレーション・ポイントを互いに離して直線性の良くない動作範囲に移動すると、動作範囲は広くなりますが精度は低下します

図6.キャリブレーション・ポイントを互いに離して直線性の良くない動作範囲に移動すると、動作範囲は広くなりますが精度は低下します

図7.キャリブレーション・ポイントを互いに接近させた2 ポイント・キャリブレーションでは狭い範囲で精度が向上します

図7.キャリブレーション・ポイントを互いに接近させた2 ポイント・キャリブレーションでは狭い範囲で精度が向上します

図 8.マルチポイント・キャリブレーションでは、ディテクタ範囲が広くなり、直線性を改善できますが、キャリブレーション手順が複雑になります

図 8.マルチポイント・キャリブレーションでは、ディテクタ範囲が広くなり、直線性を改善できますが、キャリブレーション手順が複雑になります

図5 には、−40°Cと+85°Cでの出力電圧の誤差プロットも示します。これらの誤差プロットは、25°Cでのスロープとインターセプト・キャリブレーション係数を使って計算したものです。温度に基づくキャリブレーション・ルーチンを使用しない限り、小さい残留温度ドリフトを持つ25°Cキャリブレーション係数を使う必要があります。

多くのアプリケーションでは、最大電力でPA が送信するとき高精度であることが望まれます。これは多くの点から意味あることです。1 つ目は、最大電力または定格電力でこの高いレベルの精度を要求する規制条件が存在する可能性がありますが、システム・デザインの点からも、定格電力での高精度化に価値があります。45 dBm (約30 W)を送信するようにデザインされたトランスミッタについて考えます。キャリブレーションで±2 dB の最大精度を提供できる場合、PA 回路(パワー・トランジスタとヒート・シンク)は、47 dBm すなわち50 W もの大きい電力を安全に送信できるようにデザインする必要があります。これは費用とスペースの浪費になります。代わりに、45.5 dBm すなわち約36 W を安全に送信するだけのためにPA サイズを大きくするように、ポストキャリブレーション精度±0.5 dB のシステムをデザインすることができます。

キャリブレーションを行うポイントを変えることにより、実現可能な精度は場合によって大きな影響を受けることがあります。図7 に、異なるキャリブレーション・ポイントを使用した、図5 と同じ測定データを示します。図7 の−10 dBm~−30 dBmで、精度が非常に高い(約±0.25 dB)ことに注目してください。ただし、キャリブレーション・ポイントから離れた低い電力レベルで精度が低下します。

図6 に、直線性を犠牲にしてダイナミック・レンジを広くするためにキャリブレーション・ポイントを移動する方法を示します。この場合、キャリブレーション・ポイントは−4 dBmと−60 dBmです。これらのポイントはデバイス直線範囲の端です。この場合も、25°Cでのキャリブレーション・ポイントで誤差が0 dBとなり、AD8318 が±1 dB以下の誤差を維持する範囲は25°Cで60dBに、温度に対して58 dBに広がります。この方法の欠点は、全体の測定誤差が、このケースでは特にディテクタの範囲の上限で大きくなることです。

図8 に、さらに複雑なマルチポイント・アルゴリズムを使ったポストキャリブレーション誤差を示します。このケースでは、複数の出力電力レベル(この例では6 dB間隔)をトランスミッタに使用して、各電力レベルでディテクタの出力電圧を測定します。これらの測定値を使って、伝達関数を各セグメントが固有のスロープとインターセプトを持つ複数のセグメントに分割します。このアルゴリズムはディテクタの非直線性による誤差を大幅に小さくする傾向を持つため、温度ドリフトが主な誤差原因になります。この方法の欠点は、キャリブレーション手順に時間がかかり、複数のスロープとインターセプト・キャリブレーション係数を格納するメモリが増えることです。

図8 に、パワー・ディテクタのダイナミック・レンジの下限と上限での動作の興味深い違いを示します。マルチポイント・キャリブレーションはダイナミック・レンジの上限まで広がりますが、この範囲の拡張は、温度ドリフトが大きくなるため、あまり役立ちません。周囲温度、高温、低温でのカーブが−10dBmを超えて広がることに注意してください。低い電力レベルでは、この結果は役立ちます。この場合も、マルチポイント・キャリブレーションはダイナミック・レンジの下限を広げるのに役立ちますが、このケースでは、高温と低温のカーブが周囲温度でのカーブが非直線になったとしてもこれに密接に追従します。したがって、この非直線性がマルチポイント・キャリブレーションを使って除去されても、このキャリブレーションは温度に対して非常に良く動作します。これにより、AD8318 の伝達関数の下限が−65 dBmまで有効に広げられます。

結論

正確なRF 電力送信が必要とされるアプリケーションでは、何らかのシステム・キャリブレーションが必要です。現代のIC を採用したRF パワー・ディテクタは直線の応答を持ち、温度と周波数に対して安定しています。これによりシステム・キャリブレーションが大幅に簡素化され、±0.5 dB より優れたシステム精度を提供することができます。キャリブレーション・ポイントの配置と数は、実現可能なポストキャリブレーション精度に大きな影響を与えることがあります。

著者

Eamon Nash

Eamon Nash

Eamon Nashは、アナログ・デバイセズのプロダクト・アプリケーション・ディレクタです。様々な現場や工場で、ミックスド・シグナル製品、高精度製品、RF製品に関する業務に携わってきました。現在は、衛星通信/レーダーなどで使用されるRFアンプやビームフォーマ製品に注力しています。アイルランドのリムリック大学で電子工学の学士号を取得。5件の特許を保有しています。