質問:
オーバーレンジが発生するとA/Dコンバータ(ADC)の出力データはどのようになるのでしょうか?

回答:
ときどき、たいていは年配のエンジニアの方からこれらのコンバータの出力データはオーバーレンジ・イベントになるとどうなるのですかというご質問を受けます。
はじめてその質問を耳にしたとき(もう何年も前のことです!)、愚かな質問だと思いました。そのあと、もう少し経験のある同僚が、初期の半導体ADCには一般にロールオーバーと呼ばれる現象があったことを教えてくれました。
現代の高速ADCの大部分にはオーバーレンジ(OR)フラグがあります。この出力ビットは、一般にコンバータの出力データと同期していて、アナログ入力サンプル値がコンバータのフルスケール入力レンジを越えたことを示します。オフセット・バイナリ・コーディングを使用したADCを考えてみましょう。入力信号がコンバータの正側のフルスケール・レンジを越えると、ADCは出力データをクリップし、出力データはすべて1(12ビットADCの場合は1111 1111 1111)になります。入力信号値が負側のフルスケール・レンジを下回ると、出力はすべて0(12ビットADCの場合は0000 0000 0000)になります。どちらの場合も、ORビットが設定されていて、サンプル中に入力がレンジを超過したことを示しています。
これに対して、ロールオーバーを動作をする旧コンバータの場合、入力値が正側のフルスケール+ 1 LSBの場合、12ビット・コンバータでは、出力が全ビット1ではなく0000 0000 0001となります。このOR出力から、ADCでオーバーレンジが発生し、このデータを無視しなければならないことを理解します。入力レンジが2倍の13ビット・コンバータだったら、これらのビットは正しい下位12ビットになるでしょう。しかし、12ビット・コンバータでは、入力が負側のフルスケールより1LSB上回っていたことを示す出力になります。これがシステムにどんな問題を起こすか、ご想像に難くないはずです。
アナログ・デバイセズの高速コンバータ製品を使用している方は、このような問題に対応する必要はないのでご安心ください。1980年代以来、私はこれらの製品を扱ってきましたが、一度としてそのような問題のある製品を発売したことはありません。当時、エンジニアの中にはこの問題でひどい目に遭った人たちがいたらしく、二度と同じ目に遭わないよう念には念を入れているのです。