内と外―なぜコンデンサがあるのか?

質問:

集積回路では、なぜ個々のIC専用 のデカップリング・コンデンサを必要 とするのでしょうか?

RAQ:  Issue 76

回答:

いずれの集積回路(IC)でも、すべての電源端子をデバイスのグラウンドに接続するコンデンサが必要です。これには2つの重要な理由があります。ICの性能に影響を与える可能性のあるノイズに対してデバイスを保護するため、そしてほかの回路の性能に影響を与える可能性のあるノイズをデバイスから出ることを防止するためです。

アンテナの働きをする電力線は、高周波ノイズを拾うことがあり、それが電界、磁界、電磁界、システム内の別の場所からの直接の伝導によって結合することがあります。ほとんどの回路は、電源に高周波ノイズが存在すると性能が低下します。したがって、ICの電源に存在する高周波ノイズをグラウンドに短絡させる必要があります。導体ではDCが短絡し、ヒューズが飛んでしまうので、この目的には使えません。コンデンサ(通常、1 ~ 100nF)であれば、DCをブロックしつつ、高周波の短絡回路として機能します。

1cm長のワイヤまたはプリント回路基板のパターンには約8nHのインダクタンス(100MHzで5)がありますが、これではとうてい短絡回路になりません。高周波短絡回路となるコンデンサはインダクタンスが低いリード線とパターンにする必要があるため、電源コンデンサはデカップリングするICの2つの端子のできるだけ近くに配置しなければなりません。内部インダクタンスが低いコンデンサを選ぶことも重要であり、通常はセラミック・コンデンサが使われます。

多くのICには、電源上に高周波ノイズを発生させる回路が含まれています。このノイズも、システム内のほかの部品などに悪影響を与えないように、電源にコンデンサを配置して短絡する必要があります。この場合も、リード長と基板パターンの長さが重要になります。長いリード線はインダクタンス回路として働き、短絡を不完全にするだけではありません。長い導体はアンテナの役目をし、電界、磁界、電磁放射によってシステム内のほかの部品などに高周波ノイズが伝わります。

このようなわけで、インダクタンスが非常に低いコンデンサを使用して、どんなICでもすべての電源端子をグラウンド端子に接続することがとても大切なのです。(グラウンド端子が複数ある場合は、抵抗やインダクタンスの影響を受けないように低インダクタンスの太い基板パターンによってすべて結合し、低インピーダンス、同一電位の1個のスター・ポイントとして動作するようにしてください。)


著者

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James Bryant

James Bryantは、1982年から2009年に定年退職するまで、アナログ・デバイセズの欧州地区アプリケーション・マネージャを務めていました。現在も当社の顧問を務めると共に、様々な記事の執筆に携わっています。リーズ大学で物理学と哲学の学位を取得しただけでなく、C.Eng.、Eur.Eng.、MIEE、FBISの資格を有しています。エンジニアリングに情熱を傾けるかたわら、アマチュア無線家としても活動しています(コールサインはG4CLF)。