質問:
高性能A/Dコンバータ(ADC)で、 電源ピンが多数あるものがありますが、グラウンド・ピンは 数本しかないのはなぜですか?
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回答:
露出ダイ・パッド付きリード・フレーム・チップ・スケール・パッケージ(LFCSP)およびクワッド・フラット・パッケージ(QFP)は、部品からプリント基板(PCB)への熱伝導を効率的に行い、熱抵抗を下げます。(封入されていないで)露出しているダイ・パッドの底面は一体化したヒートシンクとしてPCBにハンダ付けする必要があります。PCB設計には、露出パッド用ランド・パッドを組み込むことをお勧めします。熱エネルギーの低インピーダンス経路を形成するために、ランド・パッドには、PCB内の複数のグラウンドプレーンに接続する一連のビアを取り入れる必要があります。
露出パッドにより、パッケージ内で「ダウンボンド」の使用が可能になるので、柔軟性が高まり、利点も増えます。これらのボンディング・ワイヤは、パッケージのピンとは別に、ダイのグラウンド・パッドからダイ・パッドに直接接続されます。外部のグラウンドに接続された露出パッドも、低インピーダンスの電気経路を形成します。経験豊富な設計者は、高性能ICの場合、通常、電源とグラウンドの接続を隣接するピンで行い、グラウンド・リターン電流のために密に結合して低インダクタンス・ループを形成することを知っています。電源電流と接地電流の極性が逆なので、相互インダクタンスが生じ、インピーダンスが小さくなります。ミックスド・シグナル回路では、デジタル回路のスイッチング、I/Oの動作、アナログ信号の揺れによって、電源およびグラウンドの接続点に過渡電流が発生します。これらの過渡電流は、電源ノイズを発生させたり、デバイス内の影響を受けやすいノードに結合して、アナログ回路の性能を悪くすることがあります。ダウンボンドは、パッケージ・ピンを使用しないで密に結合した電流ループを形成するのによく使用されます。これにより、ピンに余裕ができ、信号、機能、電源接続を追加できます。
一般的に、これらの内部ダウンボンドはユーザー向けの文書には記載されていません。このため、電源接続とグラウンド接続が同数でないのにどうしてADCやDACの高性能を実現できるのかといった疑問が生じてくるようです。デバイスによってはグラウンドに接続されているピンは全然なく、すべてのグラウンド接続を完全に外部パッドに依存するものもあります。
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画像提供:JTL Engineering B.V.