質問:
入力信号は、計装アンプの仕 様入力電圧の範囲内なのですが、 出力が飽和しているようです。何が 起こっているのでしょうか?アンプ が壊れているのでしょうか?

回答:
2013年2月18日、わずか5分間のうちにダイヤモンドが強奪されるという驚くべき事件が発生しました。ブリュッセル発チューリヒ行きの飛行機に貨物を積み込む間のことでした。推定価格3億5千万ドルのダイヤモンドの強奪は、これまでで最大級の事件です。この巧妙なプロットは、腕章に至るまで見事に警察官に成りすました強盗たちにより、まるでハリウッド映画のように迅速かつ高精度に実行されました。乗客は飛行機を降りるまで誰ひとり強盗に気づきませんでした。犯人は強盗罪で国際手配されることになりました。
エレクトロニクスを扱うエンジニアは、同じダイヤモンド・プロットでも別のプロット、つまりグラフに注意する必要があります。計装アンプを使用する場合、設計者はよく奇妙な挙動に遭遇します。問題は「出力が飽和している」などと正確に説明できることもありますが、多くの場合は「ゲイン誤差が大きすぎる」、「アンプがあまりにも非直線的だ」、あるいは単に「思い通りに動かない」など不可解な内容です。このような問題を解決するためのフローチャートはありませんが、ひとつ言えることがあります。まず「アンプの電源が入っているか確認すること」ですが、次には「ダイヤモンド・プロットを確認すること」です。
ここでいう「ダイヤモンド・プロット」とは、多くの場合データシートの中にあり、計装アンプの「出力電圧範囲対入力コモン・モード電圧」のグラフを意味します。動作条件がこのグラフの範囲内に入っていればそのデバイスは正しく動作しますが、それ以外の場合は内部ノードが飽和して出力が無効になります。
計装アンプにあまり慣れていない方のために説明すると、これらのリニア・デバイスは、電源電圧を基準とした入力電圧に関係なく、2つの入力間の電圧差を増幅します。アンプは、2つの入力電圧の平均である入力コモン・モード電圧が除去されます。低電源電圧や単電源のアプリケーションでは、問題はもっと難しくなります。ダイヤモンド・プロットがずっと小さくなり、動作範囲がさらに制限されるからです。AD8226、AD8227、AD8420、AD8422などの最新の計装アンプは、ダイヤモンド・プロットをできるだけ拡大することをめざしています。たとえば低電圧設計を容易にするために、AD8237のダイヤモンド・プロットは図1に示すように電源を上回っています。
次回計装アンプの設計をするときは、ダイヤモンド・プロットを検討することを忘れないでください。このプロットを使用したとしても、インターポールがあなたの部屋のドアをノックして、盗まれた石を取り戻そうとすることはありませんからご心配なく。
図1. 出力電圧対入力コモン・モード電圧