概要

設計リソース

設計/統合ファイル

  • Schematic
  • Bill of Materials
  • Gerber Files
  • PAD Files
  • Assembly Drawing
設計ファイルのダウンロード 2303 kB

評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • EVAL-CFTL-6V-PWRZ ($20.01) Wall Power Supply for Eval Board
  • EVAL-CN0178-SDPZ ($58.85) Software-Calibrated, 50 MHz to 9 GHz, RF Power Measurement System
  • EVAL-SDP-CB1Z ($116.52) Controller board needed to evaluate the this circuit. Please see "Circuit Evaluation & Test" section for connection information.
在庫確認と購入

デバイス・ドライバ

コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。

AD5790 - Microcontroller No-OS Driver

AD74xx GitHub no-OS Driver Source Code

IIO Single Channel Serial ADC Linux Driver

機能と利点

  • Wideband frequency range from 50MHz to 9GHz
  • 65 dB dynamic range
  • Calculates crest factor, RMS, and peak signal levels

回路機能とその特長

この回路はADL5902TruPwr™ 検出器を使って、さまざまなクレスト・ファクタ(ピーク対平均比)のRF信号のRMS信号強度を、約65 dBのダイナミック・レンジで計測できます。50 MHzから9 GHzまでの周波数で動作します。

計測結果は12ビットADC(AD7466)の出力で、シリアル・データとして得られます。室温での簡単な4点補正によるシステム・キャリブレーションを、デジタル領域で行っています。

RF検出器とADC間のインターフェースはシンプルで、2個の信号スケーリング(分圧)抵抗で構成され、能動素子はありません。またADL5902の2.3 V内蔵リファレンス電圧により、マイクロパワーADCに対して、電源電圧とリファレンス電圧を供給しています。AD7466はパイプライン遅延がなく、読出し専用のSAR ADCとして動作します。

回路全体で約±0.5 dBの温度安定性を実現しています。

2つのデバイスが−40°C~+85°Cの温度範囲で動作するようすが、データとして以降で示されています。

図 1. ソフトウェア・キャリブレーション方式のRF電力計測システム

 

回路説明

計測対象のRF信号を、デシベル・リニア応答RMS検出器ADL5902に入力します。60.4 Ωの外付け抵抗R3と、ADL5902の比較的高い入力インピーダンスにより、RF入力は広帯域で50 Ωにマッチングしています。ADL5902は「計測モード」と呼ばれるモードで動作させ、VSETピンとVOUTピンを相互に接続します。このモードでは、出力電圧は入力RMS値の対数に比例します。すなわち読取り値は直接デシベルで表示され、1.06 V/ディケード、つまり53 mV/dBになります。

12ビットADC AD7466の電源とリファレンス電圧は、ADL5902の2.3 V内蔵リファレンスから供給します。AD7466の消費電流は非常に小さいので(10 kSPS時で16 µA)、ADL5902のリファレンス電圧出力を、R9、R10、R11、R12で構成される温度補償回路およびRMS精度スケーリング回路だけではなく、ADCにも供給することができます。

ADCのフルスケール電圧は2.3 Vです。RF検出器の最大出力電圧(リニアな入力動作範囲で動作しているとき)は約3.5 Vであるため(ADL5902のデータシートの図6、7、8、12、13、14を参照)、AD7466に入力する前に0.657倍で分圧する必要があります。この分圧はR10、R11(1.21 kΩ、2.0 kΩ)による簡単な抵抗分割でおこないます。これらの抵抗値で得られる実際のスケーリング係数は0.623で、これによって抵抗の許容誤差にも、ある程度の余裕ができることになり、RF検出器ADL5902がADCをオーバドライブすることはありません。

検出器の入力電力と出力電圧の関係を図 2に示します(出力スケーリングなし)。

図 2. ADL5902 RMS検出器、入力電力 対 出力電圧(@ 900 MHz)

 

検出器の伝達関数は、次式で概算します。

VOUT = SLOPE_DETECTOR × (PIN − INTERCEPT)

ここで、SLOPE_DETECTORはmV/dB; INTERCEPT はdBmの単位でのX軸におけるインターセプト、PINはdBmの単位での入力電力です。

VOUTはADCのAD変換出力値として得られます。次のように式を書き変えることができます。

CODE = SLOPE × (PIN − INTERCEPT)

ここでSLOPEは、検出器、スケーリング抵抗およびADCを含んだ全体の傾斜量であり、単位はカウント/dBです。PININTERCEPTはdBmの単位です。

図 3は、検出器へ700 MHzの信号を入力し、入力レベルを変化させたときの、入力電力対ADC出力値の代表例です。

図 3. RF入力電力 対 ADC出力値と誤差(@ 700 MHz)

 

システム全体のSLOPEおよびINTERCEPTは、セットごとに異なります。これはADC、スケーリング抵抗およびRF検出器の伝達関数が個体ごとに異なるからです。そのためシステム全体のSLOPEINTERCEPTを決めるため、システム・キャリブレーションが必要です。この応用例では、4点補正によるキャリブレーションで、RF検出器の伝達関数の非直線性(特に低電圧のほう)を補正しています。この4点補正キャリブレーションで、3つのSLOPEおよび3つのINTERCEPTキャリブレーション係数が得られます。これらの係数は、キャリブレーション完了後に不揮発性RAM(NVM)に保存しておく必要があります。

キャリブレーションを行う場合は、既知の4つの信号レベルをADL5902に入力し、ADCから得られるAD変換値を取得します。キャリブレーションを行うポイントは、デバイスがリニアに動作する範囲内とします。この例では、0 dBm、−20 dBm、−45 dBm、−58 dBmの4ポイントを使用しました。

キャリブレーション係数SLOPEINTERCEPTは次式で計算します。

SLOPE1 = ( CODE _1 – CODE_2)/(PIN_1 − PIN_2)
INTERCEPT1= CODE_1/(SLOPE_ADC × PIN_1)

CODE_2/CODE_3CODE_3/CODE_4を使って、この計算を繰り返して行い、SLOPE2/INTERCEPT2SLOPE3/INTERCEPT3をそれぞれ算出します。その後、CODE_1CODE_2CODE_3CODE_4と共に6個のキャリブレーション係数を不揮発性RAMに保存します。

実際に回路を使用するとき、これらのキャリブレーション係数を用いて、未知の入力電力レベルPINを求めます。PINは次式で計算します。

PIN = (CODE/SLOPE) + INTERCEPT

回路動作中に、どのキャリブレーション係数をSLOPEINTERCEPT に適用するかは、ADCで得られたCODECODE_1CODE_4と比較する必要があります。たとえばADCからのCODECODE_1CODE_2の間にあれば、SLOPE1INTERCEPT1を使用します。この手順は、アンダーレンジまたはオーバーレンジの警告を出す際にも利用できます。たとえば、ADCからのCODECODE_1より大きいか、CODE_4より小さい場合、測定された電力がキャリブレーション範囲外であることがわかります。

図 3では上記の直線式と、実際の回路の伝達関数のずれとの関係を示しています。誤差は伝達関数の先端部の折れ曲がり、リニア動作範囲内の小さなリップル、温度ドリフトによって生じています。誤差は次式を使ってdB単位で求めます。

Error (dB) = Calculated RF Power − True Input Power
= (CODE/SLOPE) + INTERCEPT – PIN_TRUE

図 3には誤差の温度特性も示してあります。ここでは+85°Cや−40°Cなどで得られたAD変換値を、室温での直線式と比較しています。これはシステム・キャリブレーションを室温でしか行わない、現実の一般的なシステムを想定しています。

図 4と 図 5に1 GHzと2.2 GHzの性能をそれぞれ示します。

図 4. RF入力電力 対 ADC出力値と誤差(@ 1 GHz)

 

図 5. RF入力電力 対 ADC出力値と誤差(@ 2.2 GHz)

 

この回路など、高速な回路の性能は、プリント基板のレイアウトに大きく左右されます。これは電源バイパス、パターンのインピーダンス・コントロール・ライン(必要な場合)、部品の配置、信号の配線、電源プレーン、グラウンド・プレーンなどがポイントです。(プリント基板のレイアウトの詳細については、MT-031 チュートリアルMT-101チュートリアル(英語)と記事「高速プリント回路基板 レイアウトの実務ガイド」を参照してください。)この回路ノートの設計支援パッケージについては、www.analog.com/CN0178-DesignSupportをご覧ください。

バリエーション回路

RF電力の検出レンジが狭くてもよい場合は、RMS検出器 AD8363が使用できます。AD8363は検出レンジが50 dBあり、6 GHzまでの周波数で動作します。RMS検出でなくてもよい用途の場合は、AD8317/AD8318/AD8319またはADL5513が使用できます。これらのデバイスにはそれぞれの検出レンジがあり、10 GHzまでのさまざまな入力周波数範囲に対応しています(詳細はCN0150を参照)。

AD7466は、SPIインターフェースを備えたシングル・チャンネル12ビットADCです。実際の用途でマルチチャンネルADCが必要な場合は、デュアル12ビットAD7887が使用できます。さらに複数のADCとDACを必要とするマルチチャンネル・アプリケーションでは、AD7294が使用できます。このチップは4チャンネルの12ビットDAC出力を持っているほか、汎用かつ多目的なADCを4チャンネル、ハイサイド電流センスを2入力、3個の温度センサーも内蔵されています。電流と温度の計測値もデジタル変換され、I2C互換インターフェースを介して読み出すことができます。

回路の評価とテスト

この回路では、EVAL-CN0178-SDPZ回路ボードとEVAL-SDP-CB1Zシステム・デモ用プラットフォーム(SDP)評価用ボードを使用します。この2つの基板は120ピンの嵌合(かんごう)コネクタを備えており、セットアップと回路の性能評価を簡単に行うことができます。EVAL-CN0178-SDPZボードは、このノートで説明したような評価ができる回路を備えています。SDP評価用ボードはCN0178評価用ソフトウェアと共に使用し、EVAL-CN0178-SDPZ回路ボードからデータを取り込みます。


必要な装置


  • USBポートとWindows® XP、Windows Vista®(32ビット)、またはWindows® 7(32ビット)を搭載したPC
  • EVAL-CN0178-SDPZ回路評価用ボード
  • EVAL-SDP-CB1Z SDP 評価用ボード
  • CN0178 評価用ソフトウェア
  • 電源:+6 V、または+6 V ACアダプタ
  • 環境評価用恒温槽
  • RF信号源
  • 同軸RFケーブル、SMAコネクタ付き


測定の準備


CN0178評価用ソフトウェア・ディスクをPCのCDドライブに挿入し評価用ソフトウェアをインストールします。「マイコンピュータ」から評価用ソフトウェア・ディスクのあるドライブを探し、Readmeファイルを開きます。Readmeファイルの指示に従って、評価用ソフトウェアをインストールして使用してください。


機能ブロック図


回路の機能ブロック図は図 1を参照し、回路図はEVAL-CN0178- SDPZ-SCH-Rev0.pdfファイルを参照してください。このファイルはCN0178設計支援パッケージに含まれています。


セットアップ


EVAL-CN0178-SDPZ回路ボードの120 ピン・コネクタをEVAL-SDP-CB1Z評価用(SDP)ボードの「CON A」コネクタに接続します。ナイロン製の固定用部品を使って2つの基板をしっかりと固定します。120ピン・コネクタの端部に固定用の穴があります。所定のRFケーブルを使って、EVAL-CN0178-SDPZボードのSMA RF入力コネクタにRF信号源を接続します。電源スイッチをオフにして、基板上に「+6V」と記されたピンと「GND」と記されたピンに、+6V電源を接続します。+6 VのACアダプタがある場合は、それを基板上のACアダプタ用ジャックに接続して、+6 V電源の代わりに使用することができます。SDPボードに付属しているUSBケーブルをPCのUSBポートに接続します。この時点では、USBケーブルはSDPボードのミニUSBコネクタに、まだ接続しないでください。


テスト


EVAL-CN0178-SDPZ回路ボードに接続された+6 V電源(またはACアダプタ)をオンにします。評価用ソフトウェアを起動し、PCとSDPボードのUSBミニ・コネクタ間をUSBケーブルで接続します。

USB通信が確立すれば、SDPボードを使ってEVAL-CN0178- SDPZボードとシリアル・データで送信、受信、取込みを行うことができます。

この回路ノート内のデータは、Rohde & Schwarz SMT-03 RF信号源とAgilent E3631A電源を使って測定しました。グラフに示す周波数に信号源を設定し、入力電力を段階的に上げていき、1 dB単位でデータを取得しました。

温度テストでは、Test Equity Model 107環境評価用恒温槽を使用しました。CN0178-SDPZ評価用ボードは、恒温槽のドアのスロットから中に入れ、SDP評価用ボードは外側に出たままの状態にしました。

評価用ソフトウェアを使用してデータを取り込む方法については、CN0178評価用ソフトウェアのreadmeファイルを参照してください。

SDPボードについては、SDPユーザー・ガイド(英語)を参照してください。