DN-448: オペアンプまたは外部高精度リファレンスに接続するための双方向REFピンを備えたTSOT-23の12ビットDAC

はじめに

LTC®2630は12ビットDACと低ドリフトの内蔵リファレンスを組み合わせて小型SC-70パッケージに収めているので、様々なアプリケーションに広く使われています。2つの新しいDAC(LTC2631LTC2640)はこの勝利の方程式を採用し、双方向REFピンとオプションのI2Rインタフェースを小型TSOT-23に追加してさらに守備範囲を広げています。

先行製品と同様、これらの製品は1ビットのINLとDNLを特長にしており、10mAまでの負荷をドライブする優れた負荷レギュレーションを与え、レール・トゥ・レールで動作可能です。オプションについては表1のリストを参照してください。

表1. ファミリーの特性。各デバイスは双方向REFピンを備えており、12、10、および8ビットの精度のものが供給されている。
製品番号 タイプ フルスケール パワーオン・リセット・コード ピン8の機能
LTC2631-LM I2C 2.5V ミッドスケール デフォルトのREFを選択
LTC2631-LZ I2C 2.5V ゼロ 追加の6アドレス
LTC2631-HM I2C 4.096V ミッドスケール デフォルトのREFを選択
LTC2631-HZ I2C 4.096V ゼロ 追加の6アドレス
LTC2640-LM SPI 2.5V ミッドスケール デフォルトのREFを選択
LTC2640-LZ SPI 2.5V ゼロ DACをクリア
LTC2640-HM SPI 4.096V ミッドスケール デフォルトのREFを選択
LTC2640-HZ SPI 4.096V ゼロ DACをクリア

REFピンを使ったアプリケーション

双方向REFピンは出力として使うことができ(この場合、アプリケーションの他の回路で高精度の10ppm/℃リファレンスを利用可能)、または外部リファレンスの入力として使うことができます。

REFを出力として構成設定するには、単にREF_SELピンを“H”に接続します。REFピンを出力として使うと、DACをオペアンプと簡単に対にすることができます。たとえば、0Vを中心にした出力範囲を実現するには、REFをマイナス入力に接続して、オペアンプのプラス入力をドライブします。REFにDC電流負荷を与えないようにします。代わりに、その500Ω出力をLTC2054のような高精度オペアンプでバッファします。

LT1991高精度オペアンプは精密外部抵抗を必要としないので、DAC出力を増幅または減衰させて望みの出力範囲を達成するのに最適です。その内蔵精密抵抗は0.04%まで整合しているので、単にピンをストラッピングするだけで利得を設定することができます(多様な利得オプションについては、データシートを参照)。図1は4の差動利得の構成設定を示しており、±5Vの出力が得られ、I2Cの制御により12ビットでプログラム可能です。図2に示されている積分非直線性は1LSBより優れています。

図1. プログラム可能な±5V出力

図1. プログラム可能な±5V出力

図2. プログラム可能な±5V出力の積分非直線性

図2. プログラム可能な±5V出力の積分非直線性

同様のセットアップを使った負出力システムを図3に示します。この場合はLT1991は利得が-0.25の反転アンプとして構成設定されています。REFに接続された0.1μFコンデンサにより、既に低いDACのノイズが最大20%減少します。

図3. 負出力(0V~-1.024V)

図3. 負出力(0V~-1.024V)

フルスケールでもっと精度が必要なアプリケーションでは、LTC2631とLTC2640は外部ソースを基準にすることができます。0.05%の精度があるLT1790低損失リファレンスを使った方法を図4に示します。REF_SELを“L”に接続するとREFピンはリファレンス入力として構成設定されます。ゼロへのリセットが必要ならば、LTC2640-LZ12で置き換えることができます。(そのオプションの場合、ピン8はCLRピンとして指定変更され、起動時に、コードがゼロから変化する前にソフトウェアのコマンドによって「外部リファレンス」モードを選択する必要があります。)

図4. 外部リファレンスから得られる0V~2.048V出力

図4. 外部リファレンスから得られる0V~2.048V出力

REFピンはLTC2631とLTC2640をイネーブルし、図5に示されているように、それらのフルスケール・レンジを別のデバイスと共有します。16ビットのLTC2453 ADCとLTC2631 DACは同じ5Vフルスケールを基準にしています。この回路は、コンピュータ制御により様々な伝達関数を入力に与えることを可能にします。2乗や2乗根などの関数、または積分や比例積分-微分(PID)制御などの時間依存関数をこの方法で簡単に実現できますので、純粋なアナログ回路に比べてはるかにシンプルで安定した回路が得られます。

図5. 電子式伝達関数発生器

図5. 電子式伝達関数発生器

まとめ

LTC2631とLTC2640は、リファレンスを内蔵した、12、10および8ビットのLTCのDACファミリーにI2Cの機能と双方向REFピンを追加しました。出力範囲を変更する必要があるアプリケーションには、精密抵抗を内蔵したLT1991オペアンプが、組み合わせるデバイスとして理想的です。

著者

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Mark Thoren

Mark Thoren joined Linear Technology (now part of Analog Devices) in 2001 as an applications engineer supporting precision data converters. He’s since held various roles in mixed-signal applications including developing evaluation systems, training, technical publications, and customer support. Mark is now a systems engineer in ADI’s System Development Group, where he works on reference designs and the ADI University Program. Mark has a B.S. in agricultural mechanical engineering and an M.S. in electrical engineering, both from University of Maine, Orono.

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Troy Seman

Troy Seman was a senior design engineer in the Mixed Signal group at Linear Technology from 2002 until 2006. After earning a B.S.E.E. degree from Ohio State University, he also worked as an IC designer at Texas Instruments and IBM Microelectronics.

Kevin Wrenner

Kevin Wrenner

Kevin Wrenner has worked as an IC designer at ADI and Linear Technology since 2002. He earned B.S.E.E. and M.Eng. degrees from Cornell University. Kevin especially enjoys Nixie tubes and making stuff work.