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AN-1398: ADM2795E を使用する過酷な工業環境における、絶縁型 RS-485通信インターフェースのシステム・レベル EMC ソリューション
はじめに
ADM2795E は、5 kV rms の信号絶縁型 RS-485 トランシーバーで、当社独自の iCoupler® 技術を RS-485 トランシーバーに組み込み、単一のパッケージで国際電気標準会議(IEC)の電磁両立性(EMC)保護を実現します。ADM2795E は、通信の中断や永続的な損傷につながる多数の脅威に直面する過酷な工業環境で使用するRS-485 通信インターフェース向けに設計されました。RS-485 インターフェースを使用する工業オートメーション用プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)の通信ポートは、大きなコモンモード・ノイズ、グラウンド電位差、誤配線による故障、静電放電(ESD)、電気的高速過渡(EFT)、雷サージなどの影響を受けることがあります。工業オートメーション用の IEC 61131-2 など、システム・レベルの IEC 規格では、IEC ESD、EFT、サージに対する各保護レベルの他、放射性、伝導、磁気干渉に対する耐性を指定しています。
認定済み IEC EMC 性能の概要
ADM2795E は、IEC 61000 サージ、EFT、ESD 規格に準拠する完全なシステム・レベルのソリューションだけでなく、工業環境で一般的に見られる伝導、放射、磁気干渉などに対する耐性を提供します。信頼性の高い絶縁と EMC 保護を統合することで、通信ポートインターフェースの重要なプリント回路基板(PCB)のスペースを大幅に節約できます。また、ADM2795E は、±42 V の高電圧に対する充実した障害保護機能も備えています。
このアプリケーション・ノートでは、リファレンス評価用ボードとサンプル・テストのセットアップについて説明します。この試験を実施することで、ADM2795E の認定済み IEC EMC 性能を実証できます。
- RS-485 A / B バス・ピンでレベル 4 の EMC 保護認定
- IEC 61000-4-5 サージ保護(±4 kV)
- IEC 61000-4-4 EFT 保護(±2 kV)
- IEC 61000-4-2 ESD 保護
- ±8 kV の接触放電
- ±15 kV の空気放電
- IEC 61000-4-6 伝導耐性(10 V/m rms)
- 絶縁バリア両端にまたがる IEC 61000 耐性が認定済み
- IEC 61000-4-2 ESD、IEC 61000-4-4 EFT、IEC 61000-4-5サージ、IEC 61000-4-6 RF 伝導耐性、IEC 61000-4-3 放射性耐性、IEC 61000-4-8 磁気耐性
IEC ESD、EFT、サージ保護
電気/電子装置は、システム・レベルの IEC 規格に適合するように設計する必要があります。システム・レベルの IEC 規格の例を以下に示します。
- プロセス制御とオートメーションIEC 61131-2
- モーター・コントロール:IEC 61800-3
- ビル・オートメーション:IEC 60730-1
データ通信ラインについて、これらのシステム・レベルの規格は次に示す 3 種類の高電圧トランジェントに対して、さまざまな保護レベルを指定しています。
- IEC 61000-4-2 ESD
- IEC 61000-4-4 EFT
- IEC 61000-4-5 サージ
これらの各仕様では、指定の現象に対する電子/電気装置の耐性を評価する試験方法が定義されています。次のセクションに、これらの各試験を示します。ADM2795E では、これらの IEC EMC仕様に従って完全な試験が実施され、IEC EMC に準拠することが認定されています。
静電放電
ESD は、近距離での接触によって発生するか、電解によって誘導される異なる電位をもつ物体間での急激な静電荷の移動です。短期間において高電流の特性を発揮します。動作中にシステム外部で発生する ESD 現象に対する耐性を判断することが、IEC61000-4-2 試験の主な目的です。IEC 61000-4-2 では、接触放電と空気ギャップ放電の 2 つのカップリング方法を使用した試験について説明しています。接触放電とは、放電ガンと試験対象の装置が直接接触することを意味します。空気放電の試験では、放電ガンの充電された電極を試験対象の装置に向けて、空気ギャップをまたいで円弧状に放電が発生するまで、電極を移動します。放電ガンは、試験対象の装置とは直接接触しません。湿度、温度、気圧、距離、試験対象の装置に近づく速度など、多数の要素が空気放電試験の結果と再現性に影響を与えます。空気ギャップ放電試験は、実際の ESD 現象を表現するのに適していますが、接触放電ほど再現性は高くありません。このため、接触放電の方が試験方法としては望ましいです。
試験中、データ・ポートは 10 回以上の正および負の単発放電の影響を受けます。パルス間の間隔は最低で 1 秒です。試験電圧の選択は、システムの環境によって決定します。
図 2 に、IEC 61000-4-2 規格に記載されている 8 kV の接触放電の波形を示します。主な波形のパラメータには、1 ns 未満の立上がり時間と約 60 ns のパルス幅があります。
図 3 は、ADM2795E の評価用ボードが接触放電と空気放電の両方で IEC 61000-4-2 ESD 規格に対して実施された試験のセットアップ例を示しています。
この試験は、ローカル・バス GND2 に接続された IEC ESD ガンで実施しました。GND2 の試験では、ADM2795E は IEC 61000-4-2規格に適合する信頼性を備え、この規格で最高のレベル 4 に合格しています。このレベルでは、±8 kV の接触放電電圧と ±15 kVの空気放電電圧が指定されています。
この試験は、ロジック側 GND1 に接続された IEC ESD ガンで実施しました。GND1 の試験では、ADM2795E 絶縁バリアへの耐性を実証します。この絶縁バリアは、接触で最大 ±9 kV、空気中で最大 ±8 kV の 61000-4-2 ESD 耐性を備えています。この試験は、2.5 Mbps の ADM2795E クロック・データを使用して通常のトランシーバー動作で実施しました。表 1 および 表 4 に、認定試験の結果を示します。
ESD Gun Connection | IEC 61000-4-2 Test Result | Certified Result | |
GND2 | ±15 kV (air), ±8 kV (contact), Level 4 protection | Yes | |
GND1 | Withstands ±8 kV (air), ±9 kV (contact) | Yes |
図 4 では、人体モデル(HBM) ESD 8 kV の波形と IEC 61000-4-2規格の 8 kV の接触放電電流の波形を比較しています。図 4 は、2つの規格の波形の形状とピーク電流が大幅に異なることを示しています。IEC 61000-4-2 の 8 kV パルスに関連するピーク電流は 30A で、HBM ESD に関連するピーク電流は 1/5 未満の 5.33 A です。その他の違いは、初期電圧スパイクの立上がり時間にあります。HBM ESD 波形の 10 ns と比較すると、IEC 61000-4-2 ESD では、立上がり時間が 1 ns と短くなります。IEC ESD 波形に関連付けられた電力量は、HBM ESD 波形の電力量よりも大きくなります。IEC 61000-4-2 の ESD 定格に対応する ADM2795E は、さまざまなレベルの HBM ESD 保護機能を備えた他の RS-485 トランシーバーよりも、過酷な環境での動作に適しています。
電気高速トランジェント(EFT)
EFT 試験では、多数の高速トランジェント・インパルスを信号ラインにカップリングすることで、トランジェントの外乱を導入します(この外乱は通信ポートへの容量結合を形成する外部スイッチング回路に関連付けられます)。これらの外乱には、誘導性負荷または容量性負荷のスイッチングで発生する、リレー/スイッチの接触バウンスやトランジェントが含まれます。これらの外乱は、工業環境で頻繁に発生します。IEC 61000-4-4 で定義される EFT試験では、これらの現象の結果として発生する干渉をシミュレートします。
図 5 に、EFT 50 Ω の負荷波形を示します。EFT 波形は、出力インピーダンス 50 Ω のジェネレータから発生するインピーダンス 50 Ωの電圧で説明されます。出力波形は、300 ms の間隔で繰り返される 5 kHz の高電圧トランジェントのバースト(周期: 15 ms)で構成されます。また、EFT 試験は、さらに高い 100 kHz の周波数で 750 μs のバーストでも実行されます。各パルスの立上がり時間は 5 ns で、パルスの持続期間は 50 ns です。持続期間は、波形の立上がりエッジの中間点から立下りエッジの中間点までの時間として測定されます。単一の EFT パルスの合計エネルギーは、ESD パルスの合計エネルギーと同等になります。
試験中、これらの EFT 高速バースト・トランジェントは、図 6 に示すように容量性クランプを使用して通信ラインに結合されます。EFT は、直接接触ではなく、クランプによって通信ラインに容量結合されます。また、このクランプは、EFT ジェネレータの低出力インピーダンスによって発生する負荷を軽減します。クランプとケーブル間の結合容量は、ケーブルの直径、シールド、ケーブルの絶縁によって異なります。EFT クランプのエッジは、試験対象の装置( EUT ) から 50 cm 離して配置します(EVAL-ADM2795EEBZ 評価用ボード)。EFT ジェネレータは、5 kHz または 100 kHz の反復性 EFT バーストに合わせてセットアップされます。EVAL-ADM2795EEBZ には、5 kHz と 100 kHz の両方の周波数で試験を実施しました。
GND2 に接続された EFT クランプを使用すると、EVAL-ADM2795EEBZは IEC 61000-4-4 EFT トランジェントに適合する信頼性を備え、この規格で最高のレベル 4 の保護性能を発揮します。レベル 4 の電圧レベルは ±2 kV と指定されています。GND1 に接続された IEC61000-4-4 EFT クランプを使用すると、EVAL-ADM2795EEBZ はIEC 61000-4-4 EFT トランジェントに適合する信頼性を発揮し、最大 ±2 kV の電圧に耐えます。この試験は、2.5 Mbps のEVAL-ADM2795EEBZ クロック・データを使用して通常のトランシーバー動作で実施しました。表 2 に示す結果は、GND2 へのRS-485 ケーブル・シールドの接続あり/なしのセットアップで有効です。EVAL-ADM2795EEBZ は、最大 ±2 kV の IEC 61000-4-4EFT に適合する耐性を発揮し、損傷しません。表 2 および 表 4 に、認定試験の結果を示します。
EFT Clamp Connection | IEC 61000-4-4 Test Result | Certified Result | |
GND2 | ±2 kV Level 4 protection | Yes | |
GND1 | Withstands ±2 kV | Yes |
サージ
サージ・トランジェントは、スイッチングまたは雷トランジェントからの過電圧によって発生します。スイッチング・トランジェントは、電源システムのスイッチング、配電システムでの負荷の変動、短絡など、さまざまなシステム故障が原因で発生します。雷トランジェントは、落雷によって回路に混入した大電流や高電圧から発生します。IEC 61000-4-5 では、これらの破壊的なサージに対する耐性を評価するため、波形、試験方法、試験レベルを定義しています。
波形は、オープン・サーキットや短絡による波形発生器の出力として仕様規定されています。RS-485 ポートでは、1.2 μs/50 μs の波形が優先的に使用されます。このセクションでは、これらの波形について説明します。波形発生器の実効出力インピーダンスは2 Ω です。そのため、サージ・トランジェントには、高電流が伴います。
図 7 に、1.2 μs と 50 μs のサージ・トランジェント波形を示します。ESD と EFT の立上がり時間、パルス幅、エネルギー・レベルはほぼ同じですが、サージ・パルスの立上がり時間は 1.25 μs、パルス幅は 50 μs です。
さらに、サージ・パルスのエネルギーは、ESD または EFT パルスのエネルギーよりも 3 ~ 4 桁大きくなります。このため、サージ・トランジェントは、最も深刻な EMC トランジェントであると考えられます。
IEC 61000-4-5 サージ試験では、カップリング/デカップリング・ネットワーク(CDN)を使用して、サージ・トランジェントを RS-485A および B のバス・ピンに結合します。半二重 RS-485 デバイスのカップリング・ネットワークは、A ラインと B ラインの両方の 80 Ω 抵抗とカップリング・デバイスで構成されます。並列抵抗の合計は 40 Ω です。試験対象機器を正常に機能させるため、カップリング・デバイスには、コンデンサ、ガス・アレスタ、クランプ・デバイス、またはあらゆる方法を使用できます。サージ試験中は、5 つの正のパルス、5 つの負のパルスがデータ・ポートに印加され、各パルス間の最大間隔は 1 分になります。この規格では、試験中に通常動作の条件でデバイスをセットアップする必要があると明記されています。図 8 に、サージ試験用のセットアップを示します。この試験は、トランシーバーの通常動作で、ADM2795E の 2.5 Mbps のクロック・データを使用して実施しました。
GND2 に接続された IEC サージ発生器を使用すると、ADM2795E はIEC 61000-4-5 に適合する信頼性を備え、この規格で最高のレベル 4 の保護性能を発揮します。レベル 4 のピーク電圧は ±4 kV と指定されています。
GND1 に接続された IEC サージ発生器を使用すると、ADM2795Eは IEC 61000-4-5 EFT に適合する信頼性を発揮し、最大 ±4.0 kV のサージ電圧に耐えます。ADM2795E は最大 ±4.0 kV の IEC61000-4-5 サージ電圧に耐え、損傷しません。この際、データ通信でビット・エラーは発生しません。GND1 の試験では、ADM2795E絶縁バリアへの耐性を実証します。表 3 および 表 4 に、認定試験の結果を示します。
Surge Generator Connection | IEC 61000-4-5 Test Result | Certified Result | |
GND2 | ±4 kV Level 4 protection | Yes | |
GND1 | Withstands ±4 kV | Yes |
表 4 には、ADM2795E で指定された IEC システム・レベルの EMC規格について、実現される性能と等級を示します。
次のように性能を分類します。
- クラス A: 通常動作
- クラス B: 一時的な性能の損失(ビット・エラー)
- クラス C: システムのリセットが必要
- クラス D: 永続的な機能の損失
Test | Ground Connection | Classification | Highest Pass Level |
IEC 61000-4-5 Surge | GND1 | Class A | ±4 kV |
GND2 | Class B | ±4 kV | |
IEC 61000-4-4 Electrical Fast Transient | GND1 | Class B | ±2 kV |
GND2 | Class B | ±2 kV | |
IEC 61000-4-2 Electrostatic Discharge | GND1 | Class B | ±8 kV (air), ±9 kV (contact) |
GND2 | Class B | ±15 kV (air), ±8 kV (contact) | |
IEC 61000-4-6 Conducted RF Immunity | GND1 | Class A | 10 V/m rms |
GND2 | Class A | 10 V/m rms | |
IEC 61000-4-3 Radiated RF Immunity | GND2 | Class A | 30 V/m |
IEC 61000-4-8 Magnetic Immunity | GND2 | Class A | 100 A/m |
IEC 伝導、放射、磁気耐性
IEC 61000-4-6 の RF 伝導耐性
IEC 61000-4-6 の伝導耐性試験は、RF 磁場が存在する環境で動作し、主電源や他のネットワークに接続する(信号ラインまたは制御ライン)製品に適用されます。伝導による外乱の原因は、RF トランスミッタから発生する電磁場で、取り付けた装置に接続するケーブルの全長にわたり作用することがあります。
IEC 61000-4-6 試験では、150 kHz ~ 80 MHz または 100 MHz に RF電圧をステップします。RF 電圧は 1 kHz のサイン波で変調される振幅の 80 % です。1 枚目の EVAL-ADM2795EEBZ 評価用ボードに対して、レベル 3 の試験を実施しています。これは 10 V で最高の試験レベルです。IEC 61000-4-6 試験では、表 5 に記載されたクランプを使用してストレス信号を印加します。このクランプは、2 台の ADM2795E トランシーバーの間にある通信ケーブルに配置されます。表 5 と 図 9 には、すべての試験で使用する、装置と試験対象機器のセットアップを記載しています。
表 6 には、試験対象機器が IEC 61000-4-6 レベル 3 に合格した試験結果を示しています。すべての試験で、IEC 61000-4-6 クランプが EVAL-ADM2795EEBZ 試験対象機器に配置され、ケーブルのシールドはフローティング回路またはグラウンドに接地します。2 枚目の EVAL-ADM2795EEBZ(補助装置)は、ネットワークに配置され、通信バスを終端処理します。IEC 61000-4-6 ジェネレータ・クランプは、EVAL-ADM2795EEBZ 試験対象機器の GND1 または GND2 のいずれかに接続され、IEC 61000-4-6 トランジェント電流のリターン電流経路を形成します。
ADM2795E 評価用ボードでは、10 V/m rms で IEC 61000-4-6 レベル 3 に準拠する RF 伝導耐性試験を実施し、認定を受けています。各設定は、表 6 に記載されています。
Parameter | Details |
IEC 61000-4-6 Clamp | Schaffner KEMZ 801, placed at 30 cm from the EUT |
IEC 61000-4-6 Test Level | Level 3, 0.15 MHz to 80 MHz, 10 V/m rms, 80% AM by a 1 kHz sinusoidal wave |
EUT | EVAL-ADM2795EEBZ |
EUT Data Rate | 2.5 Mbps |
EUT Power | 9 V battery at VDD1 and VDD2, regulated on EUT to 5 V |
Cable Between EUT | 5 m, Unitronic Profibus, 22 American wire gauge (AWG ) |
Cable Termination | 120 Ω resistor at both cable ends |
Pass/Fail Criteria | Pass: data at receiver with a pulse width distortion within 10% of mean |
Clamp Location from EUT (cm) | Cable Shield | Current Return Path | IEC 61000-4-6 Test Frequency (MHz) | Certified Result |
30 | Floating | GND1 | 0.15 to 80 | Pass |
30 | Earthed | GND1 | 0.15 to 80 | Pass |
30 | Floating | GND2 | 0.15 to 80 | Pass |
30 | Earthed | GND2 | 0.15 to 80 | Pass |
IEC 61000-4-3 RF 放射耐性
IEC 61000-4-3 に準拠する試験では、一般に発生する RF 放射磁場に対して電子装置が耐性を示すことを確認します。工業アプリケーションでよく見られる、意図しない RF を放射するデバイスには、電気モーターや溶接機があります。
IEC 61000-4-3 試験において、RF 放射磁場は、80 MHz ~ 2.7 GHzで掃引される補正済みの場を使用して、シールド付きの電波暗室にあるアンテナによって生成されます。RF 電圧の振幅は、1 kHzで 80 % 変調されます。試験対象機器の各面は、垂直偏波と水平偏波の影響を受けます。
図 10 に、EVAL-ADM2795EEBZ、EUT が電波暗室に配置され、2 台の 9 V バッテリで駆動されるセットアップを示します。EVAL-ADM2795EEBZ オンボード・レギュレータは、5.0 V で VDD1、5.0 V で VDD2 に電力を供給します。EVAL-ADM2795EEBZ には、試験中に 120 Ω の終端抵抗が搭載されます。パターン発生器は、ADM2795E の TxD ピンに 2.5 Mbps のデータ入力を提供します。ADM2795E のレシーバー出力(RxD)を監視するには、オシロスコープを使用します。
合格基準は、IEC 61000-4-3 の RF 放射磁場が存在する環境で、RxD 信号のビット幅の変化が 10 % 未満になることです。
EVAL-ADM2795EEBZ 評価用ボードでは、IEC 61000-4-3 レベル 4(30 V/m)に準拠する RF 放射耐性試験を実施し、認定を受けています。レベル 4 は、IEC 61000-4-3 規格の最高レベルです。
IEC 61000-4-8 磁気耐性
IEC 61000-4-8 に準拠する試験では、一般に発生する磁場に対して電子装置が耐性を示すことを確認します。一般的な工業用通信アプリケーションで磁場が発生する原因は、装置の付近にある電源ライン電流または 50 Hz/60 Hz のトランスにあります。
IEC 61000-4-8 試験では、大きなコイル(誘導コイル)と試験電流発生器を駆動して、強度を制御した磁場が生成されます。試験対象機器は、誘導コイルの中心に配置するので、磁場の影響を受けます。
図 11 に、EVAL-ADM2795EEBZ、EUT が電波暗室に配置され、2 台の 9 V バッテリで駆動されるセットアップを示します。EVAL-ADM2795EEBZ オンボード・レギュレータは、5.0 V で VDD1、5.0 V で VDD2 に電力を供給します。EVAL-ADM2795EEBZ には、試験中に 120 Ω の終端抵抗が搭載されます。パターン発生器は、ADM2795E の TxD ピンに 2.5 Mbps のデータ入力を提供します。ADM2795E のレシーバー出力(RxD)を監視するには、オシロスコープを使用します。合格基準は、IEC 61000-4-8 の磁場が存在する環境で、RxD 信号のビット幅の変化が 10 % 未満になることです。
EVAL-ADM2795EEBZ 評価用ボードでは、IEC 61000-4-8 レベル 5(100 A/m)に準拠する磁気耐性試験を実施し、認定を受けています。レベル 5 は、IEC 61000-4-8 規格で指定された最高レベルです。
過電圧故障の保護
ADM2795E は、3 V ~ 5.5 V VCC の動作範囲にわたり故障保護機能を備えた業界初の RS-485 トランシーバーです。RS-485 トランシーバーのロジック・ピンの状態(TxD 入力ピン、DE ピン、RE)を詳細に検査する必要はありません。コモンモードの拡張動作範囲 ±25 V に対応する故障保護機能も組み込まれています。
ADM2795E RS-485 のドライバ出力およびレシーバー入力は、–42 V~ +42 V ac/dc ピークの範囲内にある、あらゆる電圧に対して短絡から保護されます。故障した場合の電流の最大値は、±250 mAです。RS-485 ドライバには、トランシーバーの ±25 V コモンモード電圧範囲の上限を超える電圧で、ドライバ電流を低減するフォールドバック電流制限回路が搭載されています。フォールドバック機能により、この電流が低減され、消費電力と加熱の影響を適切に管理できるようになります。
±42 V 誤配線の保護
ADM2795E は、RS-485 の終端またはバス・バイアス抵抗が取り付けられていないバスで動作する場合、高電圧の誤配線から保護されます。通常、誤配線は、高電圧の 24 V ac/dc 電源が RS-485 バス・ピンに直接接続される場合に発生します。ADM2795E は、RS-485 バス・ピンで最大 ±42 V ピーク(GND2 を基準)の誤配線による故障に耐え、損傷を防ぎます。誤配線に対する保護は、ADM2795E RS-485 の A と B のバス・ピンで確保され、バス・ピンへのコネクタをホット・スワップする場合に確保されます。表 7および 表 8 に、ADM2795E が提供する高電圧誤配線に対する保護についてまとめています。ADM2795E は、±42 V dc および ±24 V ± 20 % rms、50 Hz または 60 Hz、ホット・プラグおよび DCランプ試験波形で試験済みです。この試験は、電源のオン時とオフ時の両方で、多様な状態にある RS-485 TxD 入力ピン、DEピン、RE イネーブル・ピンに対して実施されます。RS-485 バス・ピンは、ピン A からグラウンド、ピン B からグラウンド、ピン Aと ピン B 間の高電圧誤配線からも保護されます。
Letter | Description |
H | High level for logic pin |
L | Low level for logic pin |
X | On or off power supply state |
Supply | Inputs | Miswire Protection at RS-485 Outputs Pins1,2 | |||
VDD1 | VDD2 | DE | RE | TxD | |
X | X | H/L | H/L | H/L | −42 V dc ≤ VA ≤ +42 V dc |
X | X | H/L | H/L | H/L | −42 V dc ≤ VB ≤ +42 V dc |
X | X | H/L | H/L | H/L | −42 V ac ≤ VA ≤ +42 V ac |
X | X | H/L | H/L | H/L | −42 V ac ≤ VB ≤ +42 V ac |
1 これはピン A と GND2 間、ピン B と GND2 間、ピン A と B 間の AC/DC ピーク誤配線電圧です。
2 VA はピン A の電圧、VB はピン B の電圧です。
RS-485 ネットワーク・バイアスと終端
バイアスと終端抵抗が取り付けられた RS-485 A および B のバス・ピンの高電圧誤配線から保護するため、バイアス・ネットワークを経由する ADM2795E 電源 VDD2 ピンへの電流経路が用意されています。この状況で ADM2795E を保護するため、デバイスに VDD2 保護回路が内蔵されています。
ADM2795E は、電源ピンも保護する故障保護 RS-485 デバイスです。つまり、この故障保護では、R1 プルアップ抵抗を経由する電流経路は、VDD2 ピンに損傷を与えません。ただし、定格電力が正しくないと、プルアップ抵抗自体が損傷することがあります(図 12 を参照)。R1 プルアップ抵抗の定格電力は、誤配線電圧と抵抗の値によって決定されます。
定格電力が正しくないと、図 12 に示したバス・セットアップでピン A と B の間に誤配線が発生した場合、ADM2795E は保護されますが、RT バス終端抵抗は損傷する場合があります。RT 終端抵抗の定格電力は、誤配線電圧と抵抗の値によって決定されます。