鉱石ラジオとオペアンプ—どちらもRF信号の検出が可能

質問:

私の高精度アンプ回路に余計なノイズやDCオフセットが混入するのはどうしてでしょうか?

RAQ:  Issue 94

回答:

私が子どもだった頃、誕生日がくるたびに、父はプレゼントを選びに私をおもちゃ屋へ連れていってくれました。父はいつも玩具をあれこれと吟味し、「さて、お前はそれでいったい何をするつもりだい?」とか、「それはどれだけ長持ちすると思う?」といった質問をしてきました。ときどき、当時の父は私が何を選ぶのかも楽しもうとしていたのではなかったかと思います。父が質問するので、子どもの私でも自分の決断や選択について批判的に検討せざるを得ませんでした。

子ども時代に好きだった玩具にはプラモデルや「Radio Shack 101」の電子装置キットなどがありますが、私のエレクトロニクスへの興味に火をつけた最初のキットは鉱石ラジオでした。AMラジオ局に周波数を合わせると、まるでマジックみたいに放送電波から取り込むことができました…それも電池も電源もなしで! それはどれほど凄かったかって? そんなことがどうしてできたのでしょう? そして、それから40年以上もたって、私があの鉱石ラジオをオペアンプに関する「珍問/難問集」で使うなんて誰が考えたでしょうか? 実のところ、それほど難しいことではありませんでした。

鉱石ラジオはPN接合部を使用してRF信号のエンベロープを整流し、検出した電圧を生成します。同じことをするオペアンプがあることをご存知でしたでしょうか? すべてのオペアンプには何らかの差動ペア・フロントエンドがあります。差動ペアを流れる電流、あるいは不要なRF信号の周波数や強さにもよりますが、差動ペアは実際には高周波検出器として機能することが可能です。AMラジオを聴きたい場合は素晴らしいのですが、その信号が自分の高精度のアンプ回路に紛れ込むのは困ったものです。多くの高精度アプリケーションでは、信号は非常に小さな電圧です。これらの不要な信号がオペアンプ内で検出されると、広いスペクトルの信号と高調波、それにDC電圧も生成されます。このDC成分でバイアス・レベルがシフトして、システム誤差が生じることがあります。

では、どうしたらよいでしょうか?これらの現象を防ぐには、さまざまなシールディング技術、フィルタリング技術、レイアウト技術などがありますが、どれも回路を複雑にするばかりです。たぶん、一番良い解決方法は、EMIフィルタ機能を内蔵したアナログ・デバイセズの新しい高精度アンプを使用することです。AD8657AD8659AD8546AD8548、それに近くリリース予定の高精度オペアンプADA4661-2はEMIフィルタ機能を内蔵しています。このような機能が付加されていると、設計者の仕事は大幅に軽減し、回路が複雑でなくなり、基板面積が小さくなり、低価格化にもなります。
AMラジオを聴きたいときは、鉱石ラジオを手に入れてください。安心と静寂を求めたいときは、EMIフィルタ機能を内蔵した高精度アンプを選択してください。きっとご自分の選択に満足できることでしょう。

著者

John Ardizzoni

John Ardizzoni

John Ardizzoniは、アナログ・デバイセズの高速リニア・グループの上級アプリケーション・エンジニアです。 マサチューセッツ州ノースアンドーバーのメリマック・カレッジでBSEE(電子工学士)を取得し、2002年にアナログ・デバイセズに入社しました。エレクトロニクス業界で30年以上のキャリアがあります。