インピーダンス計測チップはさまざまなアプリケーションにおいてほとんど抵抗なく使うことができます

質問:

最近の記事でアナログ・デバイセズの インピーダンス計測チップ(IMC) というものを知りました。 興味があります。どのように機能し、 どんな用途があるのでしょうか?

RAQ:  Issue 43

回答:

ご質問のインピーダンス計測チップは、きわめて多彩な機能をもつデバイスで、実用的な応用例は無数にあります。

100Ω~10MΩの複素インピーダンスを0.5%の精度で計測できるIMC は、集積性、エレガンス、実用性を見事に備えたデバイスです。IMC はダイレクト・デジタル・シンセシス(DDS)周波数ジェネレータ、12 ビットA/D コンバータ(ADC)デジタル・シグナル・プロセッシング(DSP)エンジンで構成されています。

周波数ジェネレータが1kHz~100kHzの周波数で被試験デバイス(DUT)に電圧刺激を与え、ADCは発生した電流をサンプリングします。さらに、DSPがデジタル化された信号に離散フーリエ変換(DFT)を行い、各周波数で実数(R)と虚数(I)のデータ・ワードを生成します。この情報から、周波数掃引の任意の点における振幅と位相を計算することができます。

IMCの用途はアイデア次第で無限にありますが、ウイルス検出、血液凝固モニタリング、電気インピーダンス分光法、スピーカの最適化などが考えられます。

ウイルスは、株が異なれば、血中の化学反応も異なります。これらの反応を周波数に対するインピーダンスとして計測して特性化すれば、さまざまなウイルス株をそのインピーダンス特性によって特定することができます。

血液が凝固するときのインピーダンスを計測すれば、凝固時間を求めることができます。心臓バイパス手術の際には、血液凝固のモニタリングによって医師は出血と凝固のバランスを図ることができます。これは、患者の回復にとってきわめて重要なことです。

電気インピーダンス分光法は、インピーダンスを使用してインフラ設備、自動車、航空機、船舶のアルミニウムや鋼の腐食を計測します。これによって、早期に故障を防ぎ、不要な修繕をなくすことができます。インピーダンス計測チップは、その場所まで行くのが困難であるような遠隔地に置くこともできます。この常時の「構造監視」が、腐食や早期磨耗の最初の兆候を保守要員に知らせます。

オーディオ周波数範囲の全域でスピーカのインピーダンスを計測すれば、設計者は、スピーカのインピーダンスをオーディオ・ドライバに能動的に合わせることができ、最適な性能と電力伝送を実現できます。


ここニューイングランドでは、もうそろそろメープルシロップのシーズンになります。ひょっとしたら、IMC でシロップの糖度を計測できるかも…う~む、ちょっと調べてみなければ。




 

著者

John Ardizzoni

John Ardizzoni

John Ardizzoniは、アナログ・デバイセズの高速リニア・グループの上級アプリケーション・エンジニアです。 マサチューセッツ州ノースアンドーバーのメリマック・カレッジでBSEE(電子工学士)を取得し、2002年にアナログ・デバイセズに入社しました。エレクトロニクス業界で30年以上のキャリアがあります。