質問:
携帯電話/歪みゲージ/医療用超音波機器システムには どんなアンプ/スイッチ/コンバータが最適でしょうか?

回答:
本来の設計対象が何であれ、最も効率的で経済的なデバイスこそが最高です。ICを選ぶ時は、ICの特長や、どのように動作するのかを検討し、あなたが作ろうとしているシステム向けに設計されたかどうかを考える必要はありません。
先週の肉屋でのこと。スパゲティ・ボロネーズ用に牛の挽き肉を買おうと思ったのですが、安いシチュー用の鹿肉を見つけました。そこで鹿肉をいくらか購入し、ミンチにして、おいしい「スパゲッティ・アラ・サルサ・ディ・セルヴォ」(鹿肉ソースのスパゲティ)を作りました。その後「チリ・コン・ヴェナド」(鹿肉とチリの煮込み)も作りましたが、これも成功でした。
エンジニアは、手に入る中で最上の材料を使ってシステムを設計しなければなりません。「エンジニア」(engineer)という言葉は、ラテン語のingeniumに由来します。これは、機略に優れていること、つまり創意工夫に富んでいることを意味します。ボロネーズとチリのレシピは牛肉を使用するように指示しています。しかし、鹿肉のほうが脂肪が少なく、風味も増します。
ICのデータシートの中にアプリケーションが記載されていないからといって、そのICを使わないのは賢明ではありません。最近行われた当社の調査から、携帯電話機用にアナログ・スイッチを多数購入した会社が、性能面でも価格面でも優れた他のタイプのスイッチを購入しなかった理由がわかりました。売れたスイッチのデータシートにはアプリケーションの中に「携帯電話機」の記載があったのですが、これよりもっと適したスイッチにはこのような記載がなかったため候補にならなかったのです。このようなやり方は優れたエンジニアリングとはいえません。
基本的な質問を考えてみることによって、たとえ該当するアプリケーション向けとされていなくても、実際には一番適切なコンポーネントを選ぶことができます。
たとえば、見逃されやすいのですが、大変役に立つコンポーネントにAD8210があります。「電流シャント・モニタ」としてこの製品を説明しているデータシートには、アプリケーションとして「電流検出」とその他6つの自動車用電流センシング・タスクが記載されています。これでは、AD8210は単なる自動車用電流センサだと考えられても仕方ありません。実際は、AD8210は+5V単電源動作でCMRが0~+65Vの計装アンプです。自動車のハイサイド電流測定用に開発されていますが、高い正の同相電圧でソース・インピーダンスがかなり低い小信号の測定が必要な場合に大変役に立ちます。AD8210は、工業用計測、アビオニクス、バッテリ・チャージャ、その他多くのアプリケーションで大活躍しています。これは、データシートの記述にとらわれずに判断できるエンジニアのみにできた仕事です。