アンプのRF(帰還抵抗): 選ぶ前に考えよう!

質問:

私のシステムにはゲインの大きなアンプが必要ですが、これには大きなフィードバック抵抗を使えば良いのでし ょうか?

RAQ: Issue 135

回答:

シングル・エンド電圧帰還で完全差動のアンプ用に帰還抵抗(RF)を選ぶ時は、システム要件を考慮する必要があります。RFの選択には、消費電力、帯域幅、安定性を含めたトレードオフが求められます。スピードが重視される場合は、RAQ122「電圧帰還抵抗についての真相」で示したように、データシートの推奨RF値を使うことをお勧めします。消費電力が重要で、システムのゲインを高くすることが求められる場合、より大きなRFを選ぶのが正しい選択です。

選択すべきRFの値は、ゲインが大きいほど大きくなります。そしてゲインが大きいほど、アンプの内部容量と帰還抵抗の間の不安定さの影響は軽減されます。すなわち、ゲインが大きいほど、ゲイン・ピーキングに対してアンプは影響を受けにくくなります。

図1の例は、低ノイズ、レールtoレール入出力の電圧帰還アンプADA4807-1に関する正規化された周波数応答の実験結果を示しています。RF =10 kΩ の非反転構成とし、ゲインは11 V/V、21 V/V、および31 V/Vです。

小信号周波数応答のピーキングの大きさは、不安定さを表しています。ゲインを11 V/Vから31 V/Vに上げると、ピーキングは 1 dB未満になります。これはRFを10 kΩとした場合、アンプには十分な位相マージンがあり、高いゲインで安定することを示唆しています。

Figure 1
図1 . RF = 10kΩ時のゲインごとの実験結果
VS= ± 5V、RLOAD = 1kΩで、
ゲインは11V/V、21V/V、31V/V

Figure 2
図2 . ADA4807のSPICEモデルを使用したシミュレーション結果
RF = 10kΩ、VS= ±5V、RLOAD = 1kΩで、
ゲイン=2 V/V および 31V/V

潜在的な不安定さを確認するに際して、必ずしも実験室での回路検証が必要な訳ではありません。ゲイン2 V/Vと31 V/VでSPICEモデルを使用した場合のシミュレーション結果を図2に示します。これは、ゲイン2 V/Vで 10kΩと言った大きいゲイン抵抗を使用した場合の不安定さを、同じ抵抗でゲインを31 V/Vとした場合と比較した図です。11 V/V、21 V/V、31 V/Vのゲインの場合の時間領域の結果を図3に示します。

Figure 3
図3. ADA4807のSPICEモデルを使用したパルス応答シミュレーションの結果
VS=±5 V、RF=10 kΩで、G=11 V/V、21 V/V、31 V/V、RLOAD=1kΩ

RFの選択にはシステムとしてのトレードオフが伴います。システムの性能を最大限に引き出す適切なRFの選択は、安定性、帯域幅、および電力に関するシステム要件に依存します。


著者

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Tina Collins

Tina Collinsは、ウィルミントン、マサチューセッツ州にあるリニア製品技術グループのアプリケーション・エンジニアです。彼女の主な担当分野は、高速アンプ用のアナログおよびミックスド・シグナルのデザインです。彼女は 2001 年にアナログ・デバイセズに入社しました。2013 年にアプリケーション・エンジニアになる以前は、高速アンプの開発およびテストに取り組んでいました。2001 年にフロリダ大学で電気工学理学士号を、2010 年にノースイースタン大学で電気工学修士号を取得しています。