質問:
私の電圧帰還型完全差動アンプの安定性は帰還抵抗の値によって大きく影響を受けているようです。 RF/RG 比は常に正しいのですが、何が起きているのでしょうか?

回答:
信号にゲインが必要な時、まずはアンプを選びます。電圧帰還型の場合、フィードバックとゲインの抵抗比(RF / RG)、それに完全差動アンプによってゲインが決まります。抵抗比を設定したら、次のステップは RF または RG の値を選択します。RF の選択はアンプの安定性に影響を与えることがあります。
アンプの内部入力容量(データシートの仕様表に記載)は RF と相互作用して、伝達関数に極を形成します。RF が非常に大きいと、この極は安定性に影響を与えます。極がクロスオーバー周波数よりもはるかに高い周波数に位置する場合、安定性に影響を与えることはありません。ただし、f = 1/(2πRF Cin,amp)で決まる極の位置がクロスオーバー周波数付近にある場合は、位相マージンが減少して不安定になります。
図1 の例は、小信号クローズドループ・ゲインの周波数応答特性のテスト結果を示しています。ここでは、ADA4807-1電圧帰還型アンプを使用し、帰還抵抗が 499 Ω、1 kΩ、10 kΩ で、非反転ゲインが 2の構成としています。データシートの RF の推奨値は499 Ω です。
小信号周波数応答のピークの度合は不安定性を示します。RF を499 Ω から 1 kΩ に増やしてもピークはわずかしか大きくなりません。つまり、RF が 1 kΩ でも、アンプは十分な位相マージンがあり、安定していることを示しています。しかし、RF が 10 kΩ になると、これは当てはまりません。高いレベルのピークの存在は不安定(発振)を意味するので、お勧めできません。

VS = ±5 V、VOUT = 40 mV p-p、RLOAD = 1 kΩ RF が 499 Ω、1 kΩ、10 kΩ の場合

VS = ±5 V、G = 2、RLOAD = 1 kΩ RF が 499 Ω、1 kΩ、10 kΩ の場合
潜在的に不安定かどうかを検証するのに、ラボで回路を確認することは必ずしも必要ありません。499 Ω、1 kΩ、10 kΩ の同じ RF の値で SPICE モデルを用いたシミュレーション結果を図 3 に示します。この結果は図 1 と一致しています。図 3 は、時間領域における不安定性を示しています。図 4 に示すように、RF 端子間に帰還コンデンサを接続して伝達関数にゼロを追加すると動作が安定します。

パルス応答のシミュレーション結果
VS = ±5 V、G = 2、RLOAD = 1 kΩ RF が 499 Ω、1 kΩ、10 kΩ の場合

VS = ±5 V、G = 2、RF = 1 kΩ、RLOAD = 1 kΩ
RF を選択する際、消費電力、帯域幅、および安定性の間でトレードオフがあります。消費電力が重要で、データシートの推奨帰還値を使用できないか、あるいはより大きな RF 値が必要な場合、RF と並列に帰還コンデンサを追加することができます。このようにすると、帯域幅は減少します。
電圧帰還型完全差動アンプの RF を選択する際、システム要件を考慮する必要があります。速度が重要でない場合は、大きな RF 値で安定させるのに帰還コンデンサが役立ちます。速度が重要な場合は、データシートの推奨 RF 値を推奨します。安定性、帯域幅、消費電力と RF との関係を無視すると、システムが影響を受けることがあり、さらに悪いことには性能がフルに発揮できなくなることさえあります。