質問:
すべて正しく行った(と思う)のに、信号が歪むのはなぜですか?

回答:
高速コンバータの性能は年々向上しており、特に直線性が良くなり、したがって歪みも改善されています。しかし、性能を実現するには、きれいな信号源が必要です。セットアップを完璧に行ったのに仕様の歪みを達成できなかったという問い合わせは時々あります。最近も、ある設計者が話してくれました。彼は、AD9680 を 1 GSPS で評価し、765 MHz で仕様規定されている歪みとの相関をとろうとしました。そこで、出力スペクトルのダイナミック・レンジが 80 dB 以上になるはずと期待していました。そのため、2 次高調波が基本波からたった 45 dB しか下がらなかったことに少なからず驚きました。私は試験のセットアップはどうだったか聞きました。彼は、高速コンバータ製品の正しい評価方法については、アナログ・デバイセズが実施しているプレゼンテーションに出席したことがあったので、セットアップを完璧に行っている自信がありました。 A/D コンバータのAD9680には異なるナイキスト領域で性能を最適化できるユーザー設定可能オプションがあります。そして彼はこの周波数帯域で SPI による書き込みを正しく行ったことを再確認しました。また、アナログ・デバイセズの評価用ツールを使用していたので、クリーンなオンボードの電源を使っていたということになります。当社が信号源の 1 つとしてローデ・シュワルツ社の SMA100を推奨していたことも、しっかり覚えていました;彼らのラボにこれらの機器があったので、そのうち 2 つをADC の評価のクロック源とアナログ信号源に使用しました。やるべきことはやったように思われますが、本当はどうだったのでしょうか?
私は、彼にアプリケーション・ノート AN-835 の図1を見て、問題を特定するように提案しました。

すぐにわかりました。アナログ入力をフィルタ処理していなかったのです。ローデ・シュワルツは優れた信号源を作っていますが、それでも高調波をフィルタで除去する必要があります。下に示すスペクトル図をご覧ください。私が短時間で提供することのできた比較図を見ればわかりますが、高調波をフィルタで除去しなければ、ADC ではなく信号源の歪みを測定することになってしまいます。彼は、なぜSNR の結果もフィルタによって若干改善されるのかと聞いてきました。そこで私は、高次の高調波が出力スペクトルに折り返されるように、信号源の広帯域ノイズもエイリアシングされることを指摘しました。この場合、発振器のノイズは非常に小さいので、影響はごくわずかです。幸いなことに彼の問題はこれだけでした。さっそく、彼は評価の作業に戻りました。

(1 GSPS、765 MHz@-1dBFS)
アナログ入力に対しフィルタ処理なし(左)とフィルタ処理あり(右)