小さなフォーム・ファクタで高い電力密度を

背景

GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)やFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)など、電力密度が高く先進的なICがより広く使われるようになっています。より低い電源電圧で動作するものの、高速かつ高度な処理を行うため、大量の電流を消費するデジタルICに対する需要が高まっているのです。具体的には、多くの機能が求められる以下のような分野で使用されるケースが増えています。

  • 自動車
  • 医療
  • テレコム
  • データコム
  • 産業
  • 通信
  • ゲーム
  • 民生用オーディオ/ビデオ

これだけ多様な市場に普及しているわけですから、低電圧/大電流のデジタルICに対する需要が世界中で爆発的に増加していることも意外ではないでしょう。実際、この種のICの市場規模は、現時点で18億米ドル(約1960億円)以上と見積もられています。また、2018年から2025年の間には、年間10.87%のペースで成長を遂げ、37億米ドル(約4035億円)の規模に達すると予想されています。この市場で大きなシェアを占める製品の1つがFPGAです。その市場規模は、2025年末までに15億3000万米ドル(約1670億円)に達すると見込まれています。FPGA以外に、デジタルIC市場の製品としては、GPU、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、PLD(プログラマブル・ロジック・デバイス)、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)、ASIC(特定用途向けIC)が挙げられます。

電力密度の高いデジタルICは、ほぼすべての組み込みシステムに浸透しています。特にFPGAは、上に挙げた分野における最先端のアプリケーションに使用される傾向があります。例えば、自動車の分野では、人的ミスによる大惨事を防止するためのADAS(先進運転支援システム)や衝突回避システムで使われています。同様に、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、横滑り防止システム、電子制御型のインディペンデント・サスペンション・システムなど、行政機関が搭載を義務付ける安全機能もFPGAを使って実現されています。

民生用エレクトロニクスの分野では、IoT(Internet of Things)、洗練されたグラフィックス・エンジン、M2M(Machine-to-Machine)などに対応する機能の必要性が高まっています。それらを実現するためにも高度なデジタルICが使用されます。また、大規模なデータ・ストレージ、クラウド・コンピューティング・センター、光ネットワーク・モジュールから成る広大なネットワークなども、FPGAなどに対するニーズを喚起しています。

上述したようなデジタルICは、システムを構築する上で強力な武器になります。その一方で、ある意味、予測が不可能な側面を持つので注意が必要です。その代表的な例が電力に関する要件です。従来、FPGAやASICの給電には、大電力に対応するMOSFETを駆動できる高効率のスイッチング・コントローラIC(スイッチング・レギュレータを構成するDC/DCコントローラ)が使われていました。しかし、そうしたコントローラをベースとする電源には、ノイズの問題が潜んでいます。また、過渡応答が比較的遅く、プリント回路基板のレイアウトに制約があるといった問題もあります。そこで、デジタルICの給電には、小型かつ低ノイズで、発熱を最小限に抑えられるLDO(低ドロップアウト)レギュレータが使用されるようになりました。ただ、LDOレギュレータにも固有の制約があります。このような背景から、電力変換のイノベーションとして新たなソリューションが採用されるようになりました。それが大電力に対応可能なモノリシック型のスイッチング・レギュレータICです。そうした製品であれば、低ノイズ、高効率であることに加え、最小限の実装面積でデジタルICに対して効率的に給電を実施することができます。

スイッチング・レギュレータ vs. チャージ・ポンプ vs. LDOレギュレータ

低電圧/高電流の降圧レギュレーションは、様々な方法で実現できます。ただ、それぞれに性能と設計の面でトレードオフが存在します。スイッチング・レギュレータ用のコントローラICを使えば、広い電圧範囲にわたり多くの負荷電流に対して高い効率を得ることができます。但し、インダクタ、コンデンサ、FETといった複数の外付け部品が必要になります。また、高い周波数のノイズ源、あるいは低い周波数のノイズ源になる可能性もあります。インダクタを必要としないチャージ・ポンプ(スイッチド・キャパシタ方式の電圧コンバータ)も、低電圧の生成に使用できます。但し、出力電流の面で制約があることに加え、過渡応答性能が低く、複数の外付け部品が必要になります。そのため、チャージ・ポンプはデジタルICの給電にはあまり使用されません。リニア・レギュレータ(特にLDOレギュレータ)は、2個の外部コンデンサを付加するだけで動作するという点でシンプルです。しかし、入出力間の電位差、負荷に流すべき電流量、パッケージの熱抵抗によって電力が制限されることがあります。その結果、デジタルICへの給電能力にも制約が生じることになります。

モノリシック型降圧コンバータが抱えていた課題

ムーアの法則の先見性と正当性は、1965年に提唱されて以来、実証され続けています。ICの製造プロセスは、より微細なゲート長や配線幅を実現する方向で進化を続けており、デジタルICの動作電圧も継続的に低下しています。プロセスの微細化が進むと、ICにはより多くの機能をより高い密度で集積できるようになります。その一方で、電力は大量に消費されるようになります。例えば、最新のコンピュータ・サーバや光通信ルーティング・システムでは、より多くのデータとトラフィックを処理するために、より広い帯域幅が必要になります。そうしたシステムは大量の熱を発生するので、非常に効率の良いレギュレータが必要になります。また、自動車には、エンターテインメント、ナビゲーション、自動運転、エンジンの制御などを目的として、より多くのエレクトロニクスが搭載されるようになりました。その結果、システムに必要な総電力とそれに伴う消費電流が増加します。したがって、レギュレータには、かつてないほどの電力を供給しつつ熱を効率良く発散するために、最先端のパッケージと内部回路の革新的な設計が求められます。

レギュレータに求められる重要な要素としては、電源電圧変動除去比(PSRR)と出力電圧ノイズが挙げられます。PSRRが高いレギュレータであれば、入力部でノイズを除去し、クリーンで安定した出力を生成することができます。また、広い帯域幅にわたり、出力電圧ノイズ(または出力リップル)が小さく抑えられていることも重要です。一般的なデジタル・システムでは、複数種の電源電圧が使用され、ノイズに対する感度が設計時の主要な検討項目になります。例えば、ハイエンドのFPGAに対する速度の要求が高まるなか、ビット・エラーを最小限に抑えるためには、電源ノイズをより小さく抑えなければなりません。高速なPLDにおいてノイズに起因する障害が発生すると、データの実質的なスループットが著しく低下します。多くの電流を流している際の入力電源ノイズは、電源に課せられる非常に厳しい仕様の1つです。

FPGAなどでは、トランシーバーの速度が高いほど、回路のスイッチングに伴う消費電力(電流)が多くなります。その種の高速ICの場合、数十ナノ秒から数百ナノ秒の間に負荷電流がほぼゼロから数Aまで増加することがあります。したがって、過渡応答が非常に高速なレギュレータが必要になります。

加えて、レギュレータに許される実装面積は、絶えず縮小しています。多くのシステム設計者は、電源に使用する部品のサイズとソリューション全体のサイズを縮小するために、高いスイッチング周波数で動作するモノリシック型のスイッチング・レギュレータを採用するようになりました。但し、その種のレギュレータは、周波数が高くなるとスイッチング損失によって効率が低下するという問題を抱えています。新世代のモノリシック型スイッチング・レギュレータでは、この問題が解消されています。そうした製品では、ハイサイドとローサイドの内蔵スイッチが同期動作を行うので、スイッチのゲート電圧を厳密に制御することが可能です。それにより、デッドタイムを大きく削減し、高いスイッチング周波数でも高い効率が得られるようになっています。

大電流に対応するモノリシック型のスイッチング・レギュレータは、いくつかの課題を抱えています。その1つは、ICの電力損失に伴う熱をどうやって発散するかということです。この課題は、次のような方法で解決できます。すなわち、複数の電源ピンとグラウンド・ピンに加えて、ICから基板に熱を容易に伝導できる銅ピラーを備え、熱特性が強化されたラミネート・パッケージを採用することです。それらの電源ピンに基板上の大きな銅プレーンを接続することにより、更に均等に熱を拡散することができます。

Silent Switcherを適用した新たな降圧コンバータ・ファミリ

高性能のデジタルICへの給電に使用する降圧コンバータは、以下のような特徴を備えている必要があります。

  • 外付け部品のサイズを最小限に抑えるための高いスイッチング周波数
  • 高い周波数における効率を最大化するためのゼロ・デッドタイム設計
  • ソリューションのサイズを縮小するためのモノリシック型パワー・デバイス(COB[Chip on Board]デバイス)
  • 多くの出力電流を供給しつつ、リップルを低減するための並列動作を可能にするマルチフェーズ機能
  • システムにおけるノイズの要件を満たすための高いEMI(電磁干渉)性能
  • 効率を高め、電力損失を最小限に抑えるための同期動作
  • 設計、品質評価、テストを容易化するための簡素な設計
  • 出力リップルが非常に小さい
  • 高速な過渡応答
  • 広い入出力電圧範囲
  • 大電流を供給できる
  • 優れた熱性能
  • 実装面積が小さい

上記の特徴を兼ね備えるモノリシック型降圧レギュレータとしては、アナログ・デバイセズのPower by Linear製品「LTC33xxファミリ」が挙げられます。同ファミリには、出力電流の異なる多くの製品が用意されています。最も多くの出力電流に対応できるのは「LTC3310S」です。5Vの入力、10Aの出力に対応する同期整流方式の製品であり、高い電力密度と優れたEMI性能を特徴とします。Silent Switcher® (サイレント・スイッチャ) 2技術が適用されており、9mm2のパッケージを採用しています(電力密度は1.11A/mm2)。固定周波数/ピーク電流モードのアーキテクチャを採用しており、高速過渡応答を必要とするアプリケーションに最適です。LTC3310Sには、ホット・ループ用のバイパス・コンデンサを内蔵するSilent Switcher 2技術が適用されているので、5MHzの最高スイッチング周波数でも優れたEMI性能を発揮することができます。この製品を使用すれば、効率が高く実装面積の小さいソリューションを実現可能です。また、同製品を最大4個並列に接続してマルチフェーズ動作させれば、最大40Aという大電流を供給できます。

LTC3310Sの入力電圧範囲は2.25V~5.5Vなので、ほとんどの中間バス電圧を含む広範なアプリケーションに対応できます。オン抵抗の小さい内蔵MOSFETは、最小限の熱ディレーティングで最大10Aの連続負荷電流に対応可能です。出力電圧範囲も0.5V~VIN(入力電圧)と広いため、低電圧で動作し、大電流を必要とするDSP/FPGA/GPU/ASIC向けのPOL(Point of Load)コンバータとして最適です。主なアプリケーションとしては、光ネットワーク、テレコム/データコム、車載システム、分散電源アーキテクチャのほか、電力密度が中~高程度の任意のシステムが挙げられます。図1に示したのは、同ICを使用した簡素かつ標準的な設計の例です。図2は、40A出力の4相回路を簡単に構成できることを示すものです。

図1. LTC3310Sの標準的なアプリケーション回路
図1. LTC3310Sの標準的なアプリケーション回路
図2. 40A出力の降圧レギュレータ。LTC3310Sを4個並列に接続して4相回路を構成しています。
図2. 40A出力の降圧レギュレータ。LTC3310Sを4個並列に接続して4相回路を構成しています。

LTC3310Sの最小オン時間はわずか35ナノ秒なので、高いスイッチング周波数、高い降圧比を実現できます。100%のデューティ・サイクルでも動作可能であり、入力電圧と出力電圧の値が近い低ドロップアウトの構成にも対応できます。また、動作クロックは外部クロックと同期をとることが可能です。リファレンス電圧のトータルの精度は、-40°C~125°Cの動作ジャンクション温度範囲で±1%未満です。その他の特徴としては、以下のようなものがあります。

  • 出力がレギュレートされていることを表すパワーグッド信号を出力
  • イネーブル用の閾値の精度が高い
  • 出力過電圧保護
  • サーマル・シャットダウン
  • ダイの温度監視
  • プログラマブルなソフトスタート機能
  • トラッキング機能
  • クロックの同期が可能
  • モードの選択が可能
  • 出力短絡保護

LTC3310Sは、熱特性が強化された3mm×3mm×0.94mmの18ピンLQFNパッケージで供給されています。Eグレード品とIグレード品は、-40°C~125°Cの動作ジャンクション温度範囲で仕様が規定されています。Jグレード品とHグレード品は、-40℃~150℃の動作ジャンクション温度範囲で仕様が規定されています。

高い効率、優れたEMI性能、高速な過渡応答

Silent Switcherを採用した降圧レギュレータは、高いスイッチング周波数(2MHz以上)における良好な効率と、非常に優れたEMI性能を実現します。そのため、コンパクトで低ノイズの降圧ソリューションとして活用できます。Silent Switcherファミリの製品には、特別な設計技術とパッケージング技術が適用されています。その結果、2MHzのスイッチング周波数で92%を超える効率を得ることができます。しかも、EMI性能としては、CISPR 25のクラス5で定められたピークの上限値を軽々とクリアします。第2世代の技術であるSilent Switcher 2では、パッケージ内部においてボンディング・ワイヤの代わりに銅ピラーを使用します。また、バイパス・コンデンサとグラウンド・プレーンも製品内部に追加されます。そのため、EMI性能がさらに改善されます。EMI性能がプリント基板のレイアウトに左右されないので、性能低下のリスクを抑えつつ、設計を簡素化することが可能です。

LTC3310Sの品番末尾の「S」は、Silent Switcher 2を採用していることを表しています。同製品はVINピン用のセラミック・コンデンサを内蔵しています。これには、すべての高速AC電流ループを小さく抑えて、EMI性能を高める効果があります。また、この技術は、高いスイッチング周波数で高い効率を実現するためのスイッチング・エッジの高速化を実現します。その結果として、図3、4、5に示すような高いEMI性能が得られます。加えて、高速かつクリーンでオーバーシュートの小さいスイッチング・エッジが得られるので、高いスイッチング周波数における効率が大幅に向上します(図6)。

図3. LTC3310SのEMI性能。CISPR 25のクラス5で定められた伝導性EMIの上限値(電圧方式)と試験結果を示しました。
図3. LTC3310SのEMI性能。CISPR 25のクラス5で定められた伝導性EMIの上限値(電圧方式)と試験結果を示しました。
図4. LTC3310Sの放射性EMI性能(水平偏波)
図4. LTC3310Sの放射性EMI性能(水平偏波)
図5. LTC3310Sの放射性EMI性能(垂直偏波)
図5. LTC3310Sの放射性EMI性能(垂直偏波)
図6. LTC3310Sの効率
図6. LTC3310Sの効率

LTC3310Sは、固定周波数/ピーク電流モードのアーキテクチャを採用しています。そのため、同ICの補償は容易で、過渡的なステップに素早く応答できます。補償用の外付け部品により、最大の帯域幅と最速の過渡応答が得られるよう制御ループを最適化することが可能です。

2mm×2mmで6A/4A/3A出力の降圧レギュレータ

電力密度の向上に対応するためには、第1世代のSilent Switcher製品も適切なソリューションとなります。Silent Switcherのトポロジは、Silent Switcher 2と似ています。ただ、Silent Switcher 2では、VINピン用のバイパス・コンデンサがカプセル化されたプラスチック製のフリップチップ型ラミネート・パッケージの中に収容されます。それに対し、Silent Switcher製品では、VINピン用のバイパス・コンデンサは外付けします。具体的には、EMIを低減するために外付けのバイパス・コンデンサを分割してパッケージ外部に対称的に配置します。それにより、実質的なホット・ループの面積が最小限に抑えられ、EMIの低減とパッケージ・サイズの縮小が同時に実現されます。

LTC3309A」、「LTC3308A」、「LTC3307A」は、高い電力密度に対応でき、優れたEMI性能が得られる5V入力のモノリシック型降圧レギュレータです。同期整流式を採用しており、それぞれ6A、4A、3Aの電流を出力できます。いずれも、スイッチング周波数は最高3MHzで、実装面積が4mm2のパッケージで提供されます。LTC3309Aの電力密度は1.5A/mm2です。

図7に示したのは、LTC3309Aの標準的なアプリケーション回路です。同製品は、高速過渡応答の実現に最適な固定周波数/ピーク電流モードのアーキテクチャを採用しています。図8に、Burst Mode® で動作している場合の過渡応答を示しました。Silent Switcherのアーキテクチャでは、ホット・ループを構成するバイパス・コンデンサを外付けします。この構成により、高いスイッチング周波数で優れたEMI性能を発揮する、高効率でコンパクトなソリューションを実現できます。

この製品ファミリの入力電圧範囲は2.25V~5.5Vです。そのため、ほとんどの中間バス電圧を含む広範なアプリケーションに対応できます。加えて、リチウムやニッケルをベースとするバッテリにも対応することが可能です。オン抵抗の小さい内蔵MOSFETは、最大6Aの連続負荷電流を供給することができます。出力電圧範囲が0.5V~VINと広いため、低電圧/大電流のDSP/FPGA/GPU/ASICを使用する場合のPOLレギュレータに最適です。主なアプリケーションとしては、テレコム/データコム、車載システム、分散電源アーキテクチャ、汎用パワー・システムなどが挙げられます。

LTC3309A/LTC3308A/LTC3307Aを強制連続モードまたはパルス・スキップ・モードで動作させると、ノイズを低減することができます。また、リップルが小さく自己消費電流IQが少ないBurst Modeで動作させれば、軽負荷時にも高い効率を達成できます。そのため、バッテリ駆動のシステムに最適です。最小オン時間はわずか22ナノ秒なので、高いスイッチング周波数、高い降圧比を実現することが可能です。加えて、100%のデューティ・サイクルにも対応するので、入力電圧と出力電圧が等しい低ドロップアウト動作も実現できます。動作クロックと外部クロックの同期をとることも可能です。リファレンス電圧のトータルの精度は、-55°C~150°Cの動作ジャンクション温度範囲で±1%未満です。更に、過負荷時にインダクタが飽和した場合でも、それを安全に許容することができます。その他にも以下のような特徴があります。

  • 出力がレギュレートされていることを表すパワーグッド信号を出力
  • 内部ソフトスタート
  • イネーブル用の閾値の精度が高い
  • 出力過電圧保護
  • 出力短絡保護
  • サーマル・シャットダウン
  • クロックの同期が可能

LTC3309A/LTC3308A/LTC3307Aには、ピン互換性があります。熱特性が強化された2mm×2mm×0.74mmの12ピンLQFNパッケージで供給されています。Eグレード品とIグレード品は-40°C~125°Cの動作ジャンクション温度範囲、Jグレード品とHグレード品は-40°C~150°Cの動作ジャンクション温度範囲、MPグレード品は-55°C~150°Cの動作ジャンクション温度範囲で仕様が規定されています。

図7. LTC3309Aの標準的なアプリケーション回路
図7. LTC3309Aの標準的なアプリケーション回路
図8. LTC3309Aの過渡応答。Burst Modeで動作させた場合の例です。
図8. LTC3309Aの過渡応答。Burst Modeで動作させた場合の例です。

表1に、Silent Switcher/Silent Switcher 2を採用したLTC33xx製品の主な仕様をまとめました。

表1. LTC33xx製品の主な仕様
メーカー アナログ・デバイセズ アナログ・デバイセズ アナログ・デバイセズ アナログ・デバイセズ
品番 LTC3307A LTC3308A LTC3309A LTC3310S
トポロジ シングル、同期整流、モノリシック、Silent Switcherr シングル、同期整流、モノリシック、Silent Switcher シングル、同期整流、モノリシック、Silent Switcher シングル、同期整流、モノリシック、Silent Switcher 2
VINの範囲 2.25V~5.5V 2.25V~5.5V 2.25V~5.5V 2.25V~5.5V
VOUTの範囲 0.5V~VIN 0.5V~VIN 0.5V~VIN 0.5V~VIN
出力電流 3 A 4 A 6 A 10 A
効率 92%
(3.3 VIN/1.2 VOUT/2 A)
92%
(3.3 VIN/1.2 VOUT/2 A)
92%
(3.3 VIN/1.2 VOUT/2 A)
92%
(3.3 VIN/1.2 VOUT/3 A)
スイッチング周波数 1MHz~3MHz 1MHz~3MHz 1MHz~3MHz 500kHz~5MHz
制御モード 固定周波数、ピーク電流モード 固定周波数、ピーク電流モード 固定周波数、ピーク電流モード 固定周波数、ピーク電流モード
VREFの精度、室温/全温度範囲 ±0.2%/±1% ±0.2%/±1% ±0.2%/±1% ±1%
電流制限の精度 ±15% ±15% ±15% ±9%
最小オン時間 22ナノ秒 22ナノ秒 22ナノ秒 35ナノ秒
並列接続の可否と相数 不可 不可 不可 可能、4相
自己消費電流(Burst Mode/それ以外) 40μA/1.3mA 40μA/1.3mA 40μA/1.3mA 1.3mA
パッケージの熱抵抗θJA 51°C/W 51°C/W 51°C/W 40°C/W
ソリューションのサイズ ~20 mm2 ~20 mm2 ~20 mm2 47 mm2
パッケージ 2mm×2mm×0.74mmの12ピンLQFN 2mm×2mm×0.74mmの12ピンLQFN 2mm×2mm×0.74mmの12ピンLQFN 3mm×3mm×0.94mmの18ピンLQFN

まとめ

GPUやFPGA、マイクロプロセッサなど高性能のデジタルICでは、プロセス技術の微細化に伴い、より低い電圧で動作しつつ、より多くの電流が消費されるようになっています。ただ、そうした電流と電圧に関する傾向は、それらのICに電力を供給する電源に求められる要素の一面にすぎません。デジタルICが進化するにつれ、電源には、高速な過渡応答、高いEMI性能、小さなノイズ/リップル、熱を抑えるための効率的な動作といった多くの要件が課せられていきます。

従来、デジタルICの給電には、LDOレギュレータや、インダクタを使用するスイッチング・レギュレータが使用されてきました。後者の場合、DC/DCコントローラICと外付けのパワー・デバイスを組み合わせてレギュレータを構成します。しかし、電源の性能と実装面積に対する要求が厳しくなるにつれ、そうした従来型のアプローチでは対応できないケースが増えています。アナログ・デバイセズが提供する新世代のモノリシック型レギュレータは、そうした問題を解決するものです。LTC3310S、LTC3309A、LTC3308A、LTC3307Aはそれぞれ10A、6A、4A、3Aの出力電流に対応します。これらの製品の特徴は、Silent Switcher/Silent Switcher 2のアーキテクチャを採用していることです。熱効率が高く小型のフリップチップ型ラミネート・パッケージに、デジタルICの多様な要件を満たす数多くの機能セットを内蔵しています。

著者

Steve Knoth

Steve Knoth

Steve Knothは、アナログ・デバイセズの 電源 グループに所属するシニア製品マーケティング・マネージャーです。すべての電源管理 IC(PMIC) 、LDO( 低ドロップアウト) レギュレータ、バッテリ・チャージャ、チャージ・ポンプ、チャージ・ポンプを用いた LED ドライバ、スーパーキャパシタ用のチャージャ、低電圧対応のモノリシック型スイッチング・レギュレータを担当しています。2004 年に アナログ・デバイセズに入社しました。1990 年からLinear Technologyに入社するまでの間には、Micro Power Systems、アナログ・デバイセズ、Micrel Semiconductor において、マーケティングや製品エンジニアリング関連のさまざまな職務を担当しました。サンノゼ州立大学において、1988 年に電気工学の学士号、1995 年に物理学の修士号を取得しました。2000 年にはフェニックス大学で技術管理分野の経営学修士号も取得しています。プライベートでは、子供たちとの時間を楽しむとともに、ピンボールやアーケード・ゲーム、マッスルカーなどにも興じています。もう 1 つの趣味は、ビンテージ・トイや映画/スポーツ/自動車に関する記念グッズの売買/収集を行うことです。