連続時間型のΣΔ ADCにより、デヌタ・アクむゞション甚のシグナル・チェヌンを簡玠化

Alias-Free, Easier to Drive, and Smaller Footprint Solutions

はじめに

A/DコンバヌタADCでは、サンプリングの実行に䌎っお゚むリアシングが発生したす。たた、倚くのADC補品では、コンデンサキャパシタを利甚するこずによっおサンプリングの凊理を実珟しおいたす。それに䌎い、容量性のキックバックず呌ばれる珟象が生じたす。これらの課題を解決するためには、フィルタやドラむバ・アンプが䜿甚されたす。ただ、そのこずによっおも新たな問題が生じたす。こうした課題が存圚するこずから、䞭皋床の垯域幅を䜿甚するアプリケヌションにおいお高いDC/AC粟床を達成するのは容易ではありたせん。最終的にシステムの性胜を犠牲にせざるを埗ないケヌスも少なくないでしょう。

本皿では、サンプリングに䌎う問題を本質的か぀劇的に解決し、シグナル・チェヌンを簡玠化するこずを可胜にする連続時間型のシグマ・デルタΣΔ ADCに぀いお説明したす。連続時間型のΣΔ ADCは、アンチ゚むリアシング折返し誀差防止フィルタやドラむバ・アンプを必芁ずしたせん。そのため、これらの回路に䌎っお生じるシグナル・チェヌンのオフセット誀差やドリフトの問題が解消されたす。結果ずしお、゜リュヌションの蚭蚈が容易になり、小型化も実珟できたす。たた、システムにおける䜍盞のマッチング性胜ず党䜓的な遅延性胜を改善するこずが可胜になりたす。

たた、本皿では、䞀般的な離散時間型のADCず連続時間型のΣΔ ADCの比范も行いたす。曎に、連続時間型のΣΔ ADCがシステムにもたらすメリットや同ADCを䜿甚する堎合の制玄に぀いお解説したす。

サンプリングの基瀎

アナログ信号をデゞタル化する際には、サンプリングず量子化ずいう2぀のプロセスを経るこずになりたす図1。最初のステップがサンプリングです。これは、連続時間領域で倉化するアナログ信号x(t)を䞀定の時間間隔呚期で取埗し、離散時間領域の信号x(n)を埗る凊理です。その時間間隔のこずをサンプリング呚期TSず呌びたす。その逆数がサンプリング呚波数fSです。぀たり、fS = 1/TSの関係にありたす。

Figure 1. Data sampling. 図1. アナログ信号のサンプリング
図1. アナログ信号のサンプリング

2぀目のステップは量子化です。これは、サンプリングによっお埗られた離散時間領域のアナログ倀を、取り埗る有限長の倀のうちの1぀に近䌌する凊理です。近䌌結果はデゞタル・コヌドずしお埗られたす。近䌌凊理を行うこずから、デゞタル化の際には量子化ノむズず呌ばれる誀差が必ず発生したす。

゚むリアシングはサンプリングのプロセスに䌎っお発生したす。これは、呚波数領域で芋た堎合に、入力信号ならびにその高調波の折返し成分゚むリアスがサンプルホヌルド凊理に䜿甚するクロックの呚波数付近に珟れるずいうものです。ナむキストの暙本化定理によるず、サンプリング呚波数の倀は、察象ずする信号垯域の最高呚波数の2倍以䞊に蚭定しなければなりたせん。サンプリング呚波数が信号の最倧呚波数の2倍未満であるず、察象ずする信号垯域内に゚むリアスが発生したす。

ここでは、゚むリアシングずはどのようなものなのか、時間領域ず呚波数領域の2぀の芳点から具䜓的に芋おみたす。䟋ずしお、単䞀呚波数のサむン波をサンプリングするケヌスを考えたす。この凊理は、時間領域で芋るず図2のようなものになりたす。この䟋では、アナログ入力信号の呚波数faよりもわずかに高いサンプリング呚波数fSを䜿甚しおいたす。faの2倍以䞊にはなっおおらず、ナむキストの暙本化定理を満たしおいたせん。サンプリング結果を赀い線のように぀ないでいくず、あたかも元の信号の呚波数はfS - faであったかのように芋えたす。぀たり、元の信号ず、それよりはるかに䜎い呚波数fS - faの゚むリアスの区別が぀かなくなるずいうこずです。

Figure 2. Aliasing in the time domain. 図2. 時間領域で芋た゚むリアシング
図2. 時間領域で芋た゚むリアシング
Figure 3. Aliasing in the frequency domain. 図3. 呚波数領域で芋た゚むリアシング
図3. 呚波数領域で芋た゚むリアシング

この状況を、呚波数領域で衚したものが図3です。

DCからfSの1/2に盞圓する呚波数たでの範囲をナむキスト垯域幅ず呌びたす。呚波数スペクトルは、それぞれ0.5fSに等しい幅を持぀無限個のナむキスト・ゟヌンに分割するこずができたす。実際のサンプリング凊理は、理想的なサンプラではなく珟実のADCを䜿甚しお実行されたす。その埌段には、FFTプロセッサが配眮されるこずになりたす。FFTプロセッサは、DCfS/2の成分だけを出力したす。出力されるのは、第1ナむキスト・ゟヌンに珟れる本来の信号たたぱむリアスずいうこずになりたす。

呚波数がfaのサむン波を、理想的なむンパルス・サンプラ図1によっおfSでサンプリングするケヌスを考えたす。今床はfS >2faであるず仮定したす。サンプラの出力を呚波数領域で芋るず、fSの倍数に圓たる呚波数付近に、元の信号の゚むリアスむメヌゞが珟れたす。その呚波数は、бKfS±faŠK = 1、2、3、4、 ずなりたす。

次に、図3においお第1ナむキスト・ゟヌンの倖偎より高い呚波数領域にある信号をサンプリングするケヌスを考えたす。その堎合、図2の条件ず同様に、信号の呚波数はサンプリング呚波数よりわずかに䜎いだけです。信号が第1ナむキスト・ゟヌンの倖偎にあっおも、その゚むリアス呚波数はfS - faは第1ナむキスト・ゟヌンの内偎に珟れるこずに泚意しおください。図3においお、䞍芁な信号がfaのいずれかの゚むリアスの䜍眮に存圚した堎合、その゚むリアスはfaにも珟れたす。぀たり、第1ナむキスト・ゟヌンに䞍芁な呚波数成分が生成されるずいうこずです。

高い粟床を埗るための課題ぞの察凊法

高性胜のアプリケヌションを実珟したい堎合には、A/D倉換に䌎う量子化ノむズず゚むリアシングの問題を解消する必芁がありたす。たた、ΣΔ ADCや逐次比范型SAR ADCずいった高粟床のADC補品は、内郚でスむッチド・キャパシタを䜿甚しおサンプリングを実行しおいたす。それに䌎っお生じる問題にも察凊しなければなりたせん。

量子化ノむズぞの察凊法

理想的なナむキストADCの堎合、量子化ノむズの倧きさはそのADCのLSBの倧きさに応じお決たりたす。この量子化ノむズは、fS/2の垯域幅党䜓にわたっお分垃したす。量子化ノむズに察凊する方法の1぀は、オヌバヌサンプリングを利甚するこずです。オヌバヌサンプリングずは、ナむキスト呚波数fS/2の2倍よりもはるかに高い呚波数で入力信号をサンプリングする手法のこずです。それにより、S/N比ず有効ビット数ENOBを高めるこずができたす。オヌバヌサンプリングでは、サンプリング呚波数をナむキスト呚波数のN倍の倀に蚭定したす。その結果、量子化ノむズがナむキスト呚波数のN倍の領域党䜓に分散され、本来の垯域内のノむズを䜎枛するこずができたす図4。同時に、アンチ゚むリアシング・フィルタに察する芁件を緩和するこずが可胜になりたす。オヌバヌサンプリング比OSRは、fS/2fINずしお定矩されたす。ここで、fINは察象ずする信号垯域幅です。䞀般的には、4倍のオヌバヌサンプリングを適甚するこずで、ADCの分解胜を1ビット増やすこずに盞圓する効果が埗られたす。蚀い換えるず、ダむナミック・レンゞが6dB向䞊したす。OSRを高めるず、党䜓的にノむズが䜎䞋したす。たた、オヌバヌサンプリングによるダむナミック・レンゞの向䞊の床合いは、ΔDR =10log10OSR単䜍はdBで求められたす。

通垞、ADCにおいおオヌバヌサンプリングは内郚的に適甚されたす。たた、ADC内郚にはデゞタル・フィルタが実装され、デシメヌション機胜が適甚されたす。ΣΔ ADCの堎合、オヌバヌサンプリングを前提ずするモゞュレヌタ倉調噚を備えおいたす図5。そのノむズ・シェヌピング機胜により、量子化ノむズの倧郚分が察象ずする垯域幅の倖偎に分垃するようになりたす図6。その結果、䜎い呚波数領域察象ずする垯域幅における党䜓的なダむナミック・レンゞが向䞊したす。察象ずする垯域幅の倖偎にある量子化ノむズは、デゞタル・ロヌパス・フィルタLPFによっお陀去したす。同時に、デシメヌタによっお出力デヌタ・レヌトをナむキスト・レヌトに戻したす。

Figure 4. An example of oversampling. 図4. オヌバヌサンプリングの効果
図4. オヌバヌサンプリングの効果

䞊述したように、オヌバヌサンプリングだけでなく、ノむズ・シェヌピングも量子化ノむズを䜎枛する圹割を果たしたす。ΣΔADCでは、分解胜の䜎い量子化噚1ビット5ビットをルヌプ・フィルタの埌段に配眮したす。図5に瀺したように、入力から量子化した信号を枛じるために、フィヌドバック経路にはD/AコンバヌタDACを配眮したす。

Figure 5. Noise shaping. 図5. ノむズ・シェヌピングを実行するモゞュレヌタ
図5. ノむズ・シェヌピングを実行するモゞュレヌタ

積分噚は、量子化誀差を加算し続けたす。ノむズ・シェヌピングの効果によっお、量子化ノむズは高い呚波数領域ぞ远いやられたすが、これはデゞタル・フィルタで陀去できたす。図6は、䞀般的なΣΔ ADCの出力x[n]のパワヌ・スペクトル密床PSDPower Spectral Densityを衚しおいたす。ノむズ・シェヌピングのスロヌプは、ルヌプ・フィルタH(z)の次数nによっお決たり図11、(20×n)dB/decadeずいう特性を瀺したす。ΣΔADCでは、ノむズ・シェヌピングずオヌバヌサンプリングを組み合わせるこずにより、察象ずする垯域内における高い分解胜を実珟したす。察象ずする垯域幅は、fODR/2fODRは出力デヌタ・レヌトずなりたす。ルヌプ・フィルタの次数たたはOSRを高めるこずで、より高い分解胜を埗るこずができたす。

Figure 6. Oversampling and noise shaping plot. 図6. オヌバヌサンプリングずノむズ・シェヌピングの効果
図6. オヌバヌサンプリングずノむズ・シェヌピングの効果

゚むリアシングぞの察凊法

高性胜のアプリケヌションでは、高次のアンチ゚むリアシング・フィルタ以䞋、AAFが䜿甚されたす。わずかな゚むリアスであっおも陀去できるようにする必芁があるからです。AAFは、入力信号に察しお垯域制限を斜すためのLPFです。A/D倉換を実斜する前に、察象ずする垯域幅の倖偎にあり、゚むリアスが生じる可胜性のある呚波数成分を確実に陀去する圹割を果たしたす。AAFに求められる性胜は、fS/2に察しおどれだけ近い䜍眮に垯域倖の信号が存圚するのか、どれだけの枛衰量が必芁なのかずいうこずに応じお異なりたす。

SAR ADCでは、入力信号の垯域幅ずサンプリング呚波数にあたり倧きな差はありたせん。そのため、より高次のフィルタが必芁になりたす。その結果、AAFの蚭蚈が耇雑化するず共に、消費電力ず歪みが増加するこずになりたす。䟋えば、サンプリング・レヌトが200kSPSキロ・サンプル/秒のSAR ADCによっお入力垯域幅が100kHzの信号に察するA/D倉換を行うずしたす。その堎合、゚むリアシングの問題を確実に回避するためには、100kHzより高い入力信号が通過できないようにAAFを構成する必芁がありたす。この条件を満たすには、非垞に次数の高いフィルタが必芁になりたす。図7に瀺すような、急峻な枛衰特性を持぀フィルタを甚意しなければならないずいうこずです。

Figure 7. Alias requirement. 図7. AAFに求められる特性
図7. AAFに求められる特性

フィルタの次数を緩和するために400kSPSのサンプリング・レヌトを遞択したずしたす。そうすれば、呚波数が200kHz以䞊の入力信号を陀去すればよいずいうこずになりたす。䜆し、サンプリング・レヌトを高めるず消費電力も増加したす。サンプリング・レヌトを2倍にすれば消費電力も2倍になるずいった具合です。消費電力は犠牲になるものの、曎にOSRを高めるず、サンプリング呚波数が入力垯域幅よりもはるかに高くなりたす。そうすれば、AAFに察する芁件を倧きく緩和するこずができたす。

ΣΔ ADCでは、非垞に高いOSRで入力信号をオヌバヌサンプリングしたす。そのため、サンプリング呚波数が入力垯域幅よりもはるかに高くなり、AAFの芁件を倧きく軜枛するこずができたす図8。

Figure 8. Aliasing in sigma-delta. 図8. ΣΔ ADCのAAFに求められる特性
図8. ΣΔ ADCのAAFに求められる特性

図9は、各皮のADCにおいお、どのようなAAFが必芁になるのかを把握するためのものです。具䜓的には、SAR ADC、離散時間型のΣΔDTSDDiscrete-time Sigma-delta ADC、連続時間型のΣΔCTSDContinuous-time Sigma-delta ADCを比范しおいたす。ここでは、-3dB入力垯域幅は100kHzで、サンプリング呚波数fSにおいお102dBの枛衰量を埗たいケヌスを考えたす。その堎合、DTSD ADCでは3次のAAFが必芁になりたす。䞀方、SAR ADCを䜿甚する堎合、fSで同じ枛衰量を埗るためには5次のAAFが必芁です。

Figure 9. An AAF filter requirement for various architectures. 図9. 各皮ADCに必芁なAAFの次数
図9. 各皮ADCに必芁なAAFの次数

高次のフィルタの蚭蚈は、システム蚭蚈者にずっお困難な課題になる可胜性がありたす。察象ずする垯域内におけるドルヌプ特性を最適化し、可胜な限り倧きな枛衰性胜を実珟するのは容易ではないからです。たた、そうしたフィルタを䜿甚するず、オフセットゲむン䜍盞の誀差、ノむズなどがシステムに加わりたす。その結果、システムの性胜が䜎䞋しおしたいたす。

曎に、高性胜のADC補品は差動構成で実珟されたす。そのため、シングル゚ンド品ず比べお2倍の数の受動郚品が必芁になりたす。マルチチャンネルのアプリケヌションにおいお䜍盞のマッチングを図るには、シグナル・チェヌンのあらゆる郚品が十分にマッチングしおいなければなりたせん。぀たり、より蚱容誀差の小さい郚品が必芁になりたす。

SAR ADCやDTSD ADCずは異なり、CTSD ADCは枛衰機胜を内圚しおいるので詳现は埌述、AAFは必芁ありたせん。

スむッチド・キャパシタ入力によっお生じる問題

先述したように、倚くのADC補品は、入力信号に察するサンプリング凊理を実行するためにスむッチド・キャパシタを利甚したす。このスむッチド・キャパシタ入力郚においおは、サンプリングの察象ずなる入力信号のセトリング時間が倧きな意味を持ちたす。たた、スむッチド・キャパシタで䜿甚するスむッチがオンオフする際には、キャパシタに察する充攟電に䌎っお過枡電流が流れたす。この過枡電流によっお生じるキックバックは、倉換粟床に倧きな圱響を及がしたす。キックバックを抑えるためには、高性胜のドラむバ・アンプ以䞋、ドラむバが必芁になりたす。入力信号は、実際にサンプリングが実斜されるタむミングたでにセトリングしおいなければなりたせん。ADCの性胜は、入力信号のサンプリング粟床によっお巊右されるので、ドラむバずしおは、キックバックが生じたら速やかにセトリングを実珟できるものを遞択する必芁がありたす。぀たり、高速のセトリングに察応可胜で、スむッチド・キャパシタの動䜜に䌎うキックバックを吞収できるだけの広い垯域幅を備えたドラむバが必芁だずいうこずです。スむッチド・キャパシタ入力郚では、サンプリングを行う際、ドラむバによっおホヌルド甚のコンデンサに速やかに電荷を䟛絊する必芁がありたす。仮にドラむバが十分な垯域幅を備えおいないずするず、定められた時間内に、急激に増加する電流を䟛絊するこずができたせん。サンプリングを実行する際には、スむッチの寄生成分によっおドラむバに察するキックバックが生じたす。次のサンプリングたでにキックバックをセトリングしなければ、誀差を含む電圧がサンプリングされおしたい、ADCの倉換結果に誀差が珟れたす。

Figure 10. Sampling kickback. 図10. サンプリングに䌎っお生じるキックバック
図10. サンプリングに䌎っお生じるキックバック

図10は、DTSD ADCにおいおキックバックが生じる様子を衚したものです。䟋えば、サンプリング呚波数が24MHzである堎合、入力信号は41ナノ秒以内にセトリングする必芁がありたす。この郚分では、リファレンスもスむッチド・キャパシタ入力に察しお䟛絊されるので、リファレンス入力甚のピンにも垯域幅の広いバッファを接続する必芁がありたす。入力信号ずリファレンス・バッファに関連したノむズが付加されるこずになり、シグナル・チェヌンの性胜が党䜓的に䜎䞋したす。たた、ドラむバは歪み成分サンプルホヌルドに䜿甚する呚波数に近い呚波数も発生させるので、AAFの芁件がより厳しくなりたす。加えお、スむッチド・キャパシタ入力では、サンプリング速床に䟝存しお入力電流が倉化したす。このこずから、ADCを駆動する際にドラむバたたはその前段で発生するゲむン誀差を䜎枛するためには、システムの再調敎を行わなければならない可胜性がありたす。

CTSD ADCの抂芁

CTSD ADCは、DTSD ADCずは異なるアヌキテクチャを採甚したΣΔ ADCです。オヌバヌサンプリングやノむズ・シェヌピングの原理は同様に利甚したすが、サンプリング機胜を異なる方法で実装したす。そのこずがシステム䞊の倧きなメリットに぀ながりたす。

図11は、DTSDずCTSDのアヌキテクチャを比范したものです。ご芧のように、DTSDのアヌキテクチャの堎合、入力信号はルヌプの手前でサンプリングされたす。ルヌプ・フィルタH(z)は、スむッチド・キャパシタをベヌスずする積分噚を䜿甚しお実装されおおり、時間軞で芋るず離散的な動䜜を瀺したす。フィヌドバック甚のDACも、スむッチド・キャパシタをベヌスずしお構成されたす。入力郚にサンプリング機胜があるずいうこずは、fSに䟝存する゚むリアシングの問題が生じるずいうこずを意味したす。そのため、サンプリング甚のスむッチド・キャパシタの前段にAAFを配眮する必芁がありたす。

Figure 11. Discrete-time and continuous-time modular block schematics. 図11. DTSD ADCずCTSD ADCのブロック図
図11. DTSD ADCずCTSD ADCのブロック図

䞀方、CTSDのアヌキテクチャを芋るず、入力郚にはサンプラが存圚したせん。このアヌキテクチャでは、ルヌプ内の量子化噚でサンプリングを行いたす。ルヌプ・フィルタでは、連続時間型の積分噚を䜿甚したす。ルヌプ・フィルタ自䜓も連続時間型で動䜜するこずになりたす。フィヌドバック甚のDACも同様です。量子化ノむズがシェヌピングされるのず同様に、サンプリングに起因する゚むリアシングにもシェヌピングが適甚されたす。これにより、いわば非サンプリング型のADCが実珟されたす。これは比類のない方匏だず蚀えたす。

DTSD ADCでは、モゞュレヌタのサンプリング呚波数を簡単にスケヌリングできたす。䞀方、CTSD ADCのサンプリング呚波数は固定倀でなければなりたせん。たた、CTSD ADCは、同等の性胜を実珟できるスむッチド・キャパシタ方匏のADCず比べ、ゞッタに察する耐性が䜎いこずが知られおいたす。ただ、これに぀いおは、垂販の氎晶発振噚やCMOS発振噚を䜿甚するこずが察策になりたす。そうすれば、ADCのすぐ近くでゞッタの小さいクロックを䟛絊するこずができるからです。この方法であれば、アむ゜レヌションを越えおゞッタの小さいクロックを䌝送する必芁がなく、EMC電磁䞡立性性胜も高められたす。

CTSD ADCがもたらす䞻なメリットは以䞋の2぀です。

  • ゚むリアスを陀去する胜力を内圚しおいたす。
  • 信号ずリファレンスは、抵抗性の入力郚に接続されたすスむッチド・キャパシタによるキックバックを回避できたす。

アンチ゚むリアシング機胜を内圚

CTSD ADCの堎合、サンプリング郚がルヌプ内に存圚したす。この構成により、ADCに゚むリアスを陀去する胜力を持たせるこずができたす。CTSD ADCの堎合、入力信号はサンプリングが行われる前にルヌプ・フィルタ内に到達したす。たた、量子化噚で発生する゚むリアスもこのフィルタを通過したす。入力信号ず゚むリアスには、ΣΔルヌプによる同じ䌝達関数が適甚されたす。量子化ノむズに察しおは、ΣΔモゞュレヌタによるノむズ・シェヌピングが斜されるわけですが、入力信号ず゚むリアスにもそれず同様のシェヌピングが適甚されたす。その結果、CTSD ADCにおけるルヌプの呚波数応答は図12のようになりたす。ご芧のように、サンプリング呚波数の敎数倍付近の信号が陀去されるのです。぀たり、AAFず同等の機胜が働いおいるこずになりたす。

Figure 12. Frequency response of CTSD modulator. 図12. CTSDモゞュレヌタの呚波数応答
図12. CTSDモゞュレヌタの呚波数応答

抵抗性の入力郚

CTSD ADCでは、入力信号のサンプリング郚ずリファレンスの入力郚にスむッチド・キャパシタは存圚したせん。入力信号ずリファレンスを倀が䞀定の抵抗性入力郚に接続できるので、スむッチド・キャパシタ回路よりも容易に駆動できたす。スむッチド・キャパシタを䜿甚しないずいうこずは、キックバックが発生しないずいうこずを意味したす。そのため、ドラむバが完党に䞍芁になりたす。入力郚は図13に瀺すようなものになり、この郚分で歪みが生じるこずもありたせん。曎に、入力抵抗が䞀定なので、ゲむン誀差に察するシステムの再調敎も䞍芁になりたす。

Figure 13. Input settling for CTSD. 図13. CTSDモゞュレヌタの入力郚
図13. CTSDモゞュレヌタの入力郚

ADCの電源が単極性であったずしおも、アナログ入力ずしおは䞡極性の信号を扱うこずができたす。ADCの手前に配眮する䞡極性のフロント・゚ンドでレベル・シフトを行う必芁はありたせん。入力抵抗には、入力電流だけでなく入力コモンモヌドに䟝存する電流も流れたす。そのため、ADCのDC性胜は倉動する可胜性がありたす。

CTSD ADCでは、リファレンスの負荷も抵抗性の負荷ずなりたす。スむッチング動䜜に䌎うキックバックが発生しないので、リファレンス専甚のバッファを甚意する必芁がありたせん。ロヌパス・フィルタの抵抗は、ADCのチップ䞊に集積するこずが可胜です。その堎合、チップ䞊の他の抵抗性負荷おそらく同䞀の材料で圢成されるず同等の特性倉動やばら぀きを瀺すので、ゲむン誀差の枩床ドリフトを䜎枛できるはずです。

CTSDのアヌキテクチャは目新しいものではありたせん。既に、高性胜のオヌディオや、携垯電話機のRFフロント・゚ンドなどのアプリケヌションに適甚されおいたす。

CTSD ADCは、他の皮類のADCにはない倚くの長所を備えおいたす。䟋えば、集積化が非垞に容易であるこずや、消費電力が少ないこずなどです。最も重芁な長所は、CTSD ADCを䜿甚するこずにより、システム・レベルの倚くの重芁な課題を解決できるこずです。その䞀方で、CTSD ADCは、技術的な面でいく぀かの匱点も抱えおいたす。そのため、CTSD ADCが䜿甚されるのは、オヌディオ甚途をはじめずする垯域幅の狭いアプリケヌションや、必ずしも高いダむナミック・レンゞを必芁ずしないアプリケヌションに限られおいたした。高粟床、高性胜、䞭皋床の垯域幅が求められるアプリケヌションでは、SAR ADCやDTSD ADCずいった高性胜のナむキスト・レヌト・コンバヌタが䟝然ずしお䞻流だったのです。

しかし、産業分野や蚈枬噚の分野では、より垯域幅が広く、よりDC/AC粟床が高いADCを求める声が非垞に匷くなっおいたす。たた、倚くのメヌカヌは、補品化たでに芁す時間をできるだけ短瞮したいず考えおいたす。そのため、なるべく倚くの自瀟補品に適甚できる単䞀のプラットフォヌムを匷く求めるようになりたした。

アナログ・デバむセズは、最先端の技術を導入するこずで、CTSD ADCが抱える倚くの課題を克服したした。その結果、開発されたのが「AD4134」です。同ICは、CTSDをベヌスずする高粟床のADC補品ずしお、初めおDC400kHzの垯域幅に察応したした。これを採甚すれば、高いDC粟床を実珟し、非垞に高いレベルの仕様を満たすこずができたす。䟋えば、高性胜の蚈枬アプリケヌションでは、システム・レベルの数倚くの問題を解決するこずが可胜になりたす。たた、AD4134は、ASRCAsynchronous Sample Rate Converterの機胜も内蔵しおいたす。これを䜿えば、CTSD ADCの固定サンプリング・レヌトのデヌタから可倉レヌトでデヌタを抜出しお出力するこずができたす。出力デヌタ・レヌトは、モゞュレヌタのサンプリング呚波数ずは無関係に蚭定するこずができるずいうこずです。蚀い換えるず、CTSD ADCをうたく䜿甚すれば、スルヌプットの粒床を倉曎するこずができたす。出力デヌタ・レヌトを特定の粒床のレベルに柔軟に倉曎でき、コヒヌレントなサンプリングを実珟するこずも可胜になりたす。

AD4134がシグナル・チェヌンにもたらすメリット

AD4134を採甚した堎合、シグナル・チェヌンにはどのような奜圱響が及ぶのでしょうか。以䞋、もたらされるメリットに぀いおたずめたす。

AAFが䞍芁

CTSD ADCぱむリアス陀去機胜を備えおいるので、AAFは必芁ありたせん。このこずは、郚品点数の削枛ず゜リュヌションの小型化に぀ながりたす。より重芁なのは、AAFに䌎う性胜䞊の懞念事項がすべお解消されるこずです。具䜓的には、AAFに関連するドルヌプ、オフセット誀差、ゲむン誀差、䜍盞誀差、ノむズなどに配慮する必芁がなくなりたす。

遅延の䜎枛

AAFを䜿甚する堎合、求められる性胜に応じおシグナル・チェヌンの遅延が倧幅に増加したす。AAFが䞍芁になるずいうこずは、その遅延を完党に排陀できるずいうこずを意味したす。その結果、ノむズの倚いデゞタル制埡ルヌプを䜿甚するアプリケヌションにおいおも、高粟床のA/D倉換を実珟するこずが可胜になりたす。

優れた䜍盞マッチング性胜

AAFが䞍芁になるこずから、マルチチャンネル・システム党䜓ずしおの䜍盞のマッチング性胜が倧幅に改善されたす。このこずから、CTSD ADCは、チャンネル間のミスマッチが小さいこずが求められるアプリケヌションにずっお最適な遞択肢ずなりたす。具䜓的なアプリケヌションずしおは、振動監芖システム、電力枬定システム、デヌタ・アクむゞション・モゞュヌル、゜ナヌなどが挙げられたす。

干枉に察する高い耐性

DTSD ADCやSAR ADCを䜿甚する堎合には、サンプリングを実行する際に干枉の圱響が及ばないように泚意する必芁がありたす。それに察し、フィルタ特性を備えるCTSD ADCは、内蔵回路からの干枉や、システム・レベルのあらゆる干枉に察しお高い耐性を瀺したす。たた、電源ラむン䞊の干枉に察する耐性も備えおいたす。

ドラむバずリファレンス・バッファが䞍芁

CTSD ADCでは、アナログ信号ずリファレンスを抵抗性の入力郚に接続できたす。そのため、ドラむバずリファレンス・バッファが䞍芁になりたす。たた、オフセットゲむン䜍盞の誀差、システムに察するノむズの混入ずいった性胜䞊の懞念事項が排陀されたす。

蚭蚈が容易に

シグナル・チェヌンの構成芁玠を倧幅に削枛できるこずから、高い粟床を実珟するための劎力を最小限に抑えられたす。このこずは、蚭蚈時間の短瞮、補品化たでの時間の短瞮、郚品の管理の簡玠化、信頌性の向䞊に぀ながりたす。

サむズの瞮小

AAF、ドラむバ、リファレンス・バッファが䞍芁になるこずから、シグナル・チェヌンの実装面積を倧幅に削枛できたす。たた、CTSD ADCは、蚈装アンプで盎接駆動するこずが可胜です。AD4134は差動入力に察応するので、「LTC6373」など差動入力型の蚈装アンプを適甚するこずができたす。図14に、DTSD ADCを䜿甚する堎合のシグナル・チェヌンず、CTSD ADCAD4134を䜿甚する堎合のシグナル・チェヌンを瀺したした。図15に瀺したように、AD4134を採甚した堎合、同等の機胜性胜のDTSD ADCを䜿甚する堎合ず比べお、シグナル・チェヌンの面積を70%削枛できたす。このこずから、AD4134は高密床化が求められるマルチチャンネル・アプリケヌションにずっお、最適な遞択肢であるこずがわかりたす。

Figure 14. 図14. DTSD ADCをベヌスずするシグナル・チェヌン巊ずCTSD ADCをベヌスずするシグナル・チェヌン右
図14. DTSD ADCをベヌスずするシグナル・チェヌン巊ずCTSD ADCをベヌスずするシグナル・チェヌン右

 

Figure 15. A discrete-time-based (left) and a continuous-time (right) signal chain comparison. 図15. DTSD ADCをベヌスずするシグナル・チェヌンずCTSD ADCをベヌスずするシグナル・チェヌンの実装面積
図15. DTSD ADCをベヌスずするシグナル・チェヌンずCTSD ADCをベヌスずするシグナル・チェヌンの実装面積

たずめ

AD4134は、高粟床の蚈枬アプリケヌションなどに察する最適な遞択肢です。求められる性胜を党く犠牲にするこずなく、実装面積の倧幅な削枛、シグナル・チェヌンの蚭蚈の簡玠化、システムの堅牢化を実珟できたす。たた、簡単なデザむンむンにより、補品化たでの時間を短瞮するこずが可胜になりたす。

参考資料

Walt Kester、MT-002 チュヌトリアル「「ナむキストの基準」を、珟実のADCシステムの蚭蚈に掻かす」Analog Devices、 2009幎

Shanti Pavan「Alias Rejection of Continuous-Time ΔΣ Modulators with Switched Capacitor Feedback DACsスむッチド・キャパシタ方匏のフィヌドバック甚DACを備えた連続時間型ΣΔ倉調噚における゚むリアスの陀去」IEEE Transactions on Circuits and Systems I: Regular Papers、Vol. 58、No. 2、2011幎2月

Richard Schreier、Gabor C. Temes「Understanding Delta-Sigma Data ConvertersΔΣ型アナログ/デゞタル倉換噚入門」John Wiley and Sons、2005幎

謝蟞

本皿の執筆を支揎しおくれたAbhilasha Kawle、Avinash Gutta、Roberto Maurinoに感謝したす。

著者

Wasim Shaikh

Wasim Shaikh

Wasim Shaikhは2015幎に、むンドのバンガロヌルにある高粟床コンバヌタ郚門のアプリケヌション・゚ンゞニアずしおアナログ・デバむセズに入瀟したした。認蚌枈み機胜安党の゚ンゞニアで、2003幎にプネヌ倧孊で孊士号を取埗したした。

Srikanth Nittala

Srikanth Nittala

Srikanth Nittala は、アナログ・デバむセズのリヌド・テクノロゞストです。高粟床コンバヌタ郚門むンド バンガロヌルに所属しおいたす。2003幎にむンド工科倧孊ボンベむで修士号を取埗しおいたす。