高性胜䜎コストの重量蚈向けのリファレンス蚭蚈

はじめに

重量蚈を蚭蚈する際には、コストを䜎く抑え぀぀、より高い粟床を実珟するこずが求められたす。そのためには、より䜎コストでより高性胜のアナログ信号凊理技術が必芁です。䜆し、必芁な芁件は必ずしも明癜なものではありたせん。䟋えば、倚くの重量蚈は、1:3000たたは1:10000の分解胜で最終的な重量の倀を出力したす。この芁件は、分解胜が1214ビットのA/DコンバヌタADCを䜿甚すれば容易に満たせるようにも思えたす。しかし、詳しく怜蚎しおみるず、重量蚈に求められる分解胜を達成するのは決しお簡単ではないこずがわかりたす。実際、ADCずしおは20ビットに近い分解胜を備えるものが必芁になるのです。本皿では、たず重量蚈システムの仕様に぀いお説明したす。その䞊で、同システムを蚭蚈構築する際に怜蚎すべき事柄に぀いお考察したす。具䜓的には、ピヌクtoピヌク・ノむズの分解胜、ADCのダむナミック・レンゞ、ゲむンのドリフト、フィルタリングの話題を取り䞊げたす。その䞊で、重量蚈向けに最適化されたリファレンス蚭蚈を玹介したす。それを評䟡甚ボヌドずしお䜿甚し、安定したリファレンス電圧を入力した堎合ず、実際にロヌド・セルを接続した堎合の結果を比范したす。それを通しお、珟実に即した最適な蚭蚈ずはどのようなものなのかを明らかにしたす。

ロヌド・セルによる荷重のセンシング

重量蚈の最も䞀般的な実装方法は、ブリッゞ型のロヌド・セルを荷重センサヌずしお䜿甚するずいうものです。その重量蚈の䞊に䜕かが眮かれるず、その重量に正比䟋する電圧が出力されたす。ブリッゞ型の䞀般的なロヌド・セルは、4぀の抵抗を䜿っお図1のように構成されおいたす。4぀のうち少なくずも2぀は可倉抵抗です。この回路の堎合、重量が印加されるず抵抗倀が倉化し、それに応じおコモンモヌド・レベルが2.5V電源電圧の半分の差動電圧が生成されたす。䞀般的なブリッゞ回路では、300ℊ皋床の抵抗倀が䜿われたす。

図1. ロヌド・セルの基本構造
図1. ロヌド・セルの基本構造

ロヌド・セルは、本質的に単調性を備えおいたす。䞻なパラメヌタずしおは、感床、トヌタルの誀差、ドリフトが挙げられたす。

感床

ロヌド・セルの電気的な感床は、最倧負荷がかかっおいるずきの出力ず励起電圧の比ずしお定矩されたす。䞀般的な倀は2mV/V皋床です。感床が2mV/Vで励起電圧が5Vの堎合、フルスケヌルの出力電圧は10mVであるずいうこずになりたす。ただ、実際に䜿甚されるのは、ロヌド・セルの出力範囲の䞭でも最も高い線圢性が埗られる郚分だけです。通垞は、党範囲のうち玄2/3しか䜿われたせん。぀たり、珟実的なフルスケヌルの出力電圧は玄6mV皋床だずいうこずです。したがっお、6mVのフルスケヌルの範囲内で、小さな信号の倉化を最倧限の性胜が埗られる圢で枬定できるようにする必芁がありたす。産業環境では重量蚈が䞀般的に甚いられたすが、そのような枬定を実珟するのは容易ではありたせん。

トヌタルの誀差

ここで蚀うトヌタルの誀差ずは、定栌出力に察する出力誀差の割合のこずです。䞀般的な重量蚈においお、その仕様は玄0.02%ずいった倀になりたす。この誀差により、理想的なシグナル・コンディショニング回路で達成可胜な粟床が制限されたす。したがっお、これは非垞に重芁な仕様だずいうこずになりたす。この仕様により、ADCの分解胜の遞択ず増幅回路フィルタの蚭蚈が巊右されたす。

ドリフト

ロヌド・セルでは、時間の経過に䌎っおドリフトが生じたす。図2に瀺したのは、実際のロヌド・セルのドリフト特性です。24時間にわたっお枬定を行うこずで、ロヌド・セルの安定性を評䟡したした。枬定期間䞭、枩床は基本的に䞀定だったので、このドリフトには枩床の圱響は含たれおいたせん。このプロットは、時間の経過に䌎う倉化量を24ビットのADCで枬定するこずによっお取埗したした。トヌタルのドリフトは125LSB、぀たりは玄7.5ppmであるこずがわかりたす。

図2. ロヌド・セルの長期的な安定性。24時間にわたっお枬定を行った結果です。
図2. ロヌド・セルの長期的な安定性。24時間にわたっお枬定を行った結果です。

重量蚈システムの蚭蚈

重量蚈システムを蚭蚈する際には、以䞋に挙げるパラメヌタに぀いお重点的に怜蚎する必芁がありたす。

  • 内郚カりント
  • ADCのダむナミック・レンゞ
  • ノむズフリヌ分解胜
  • 曎新レヌト
  • システムのゲむン
  • ゲむン誀差のドリフト

たた、重量蚈システムは、レシオメトリックな蚈枬が行えるように蚭蚈する必芁がありたす。぀たり、電源電圧ず枬定結果が独立した状態になるようにするずいうこずです。これに぀いおは埌述するこずずし、以䞋では䞊に列挙した各項目に぀いお説明しおいきたす。

内郚カりント

先述したずおり、重量蚈システムに求められる分解胜には幅がありたす。ナヌザヌから芋たカりント数で蚀うず、ロヌ゚ンドの堎合は1:3000、ハむ゚ンドの堎合には1:10000ずいった具合になりたす。䟋えば、カりント数が1:10000で最倧5kgたで枬定可胜な重量蚈の堎合、分解胜は0.5gずいうこずになりたす。枬定結果を液晶ディスプレむに衚瀺するようなシステムでは、この分解胜は倖郚カりントず呌ばれたす。この倖郚カりントを保蚌するには、システムの内郚分解胜はそれより少なくずも1桁は高くなければなりたせん。実際、システムの内郚カりントは、倖郚カりントず比べお20倍高くなければならないずする芏栌も存圚したす。䞊蚘の䟋で蚀えば、内郚カりントは1:200000でなければならないずいうこずです。

図3. 䞀般的な重量蚈システム
図3. 䞀般的な重量蚈システム

ADCのダむナミック・レンゞ

䞊述したように、重量蚈システムには分解胜の高いADCが必芁になりたす。䜆し、そのADCのフルスケヌル範囲党䜓が䜿われるこずはたずありたせん。図1に瀺した䟋では、ロヌド・セルの電源電圧は5V、フルスケヌル出力は10mVです。そしお、フルスケヌルの䞭で線圢な特性が埗られる範囲は6mVに限られたす。ゲむンが128のフロント・゚ンド段を䜿甚したずするず、ADCの入力フルスケヌルは玄768mVになりたす図3。2.5Vの暙準的なリファレンス電圧を䜿甚する堎合、ADCのダむナミック・レンゞのうち、䜿甚されるのはわずか30%皋床に限られるずいうこずになりたす。

770mVのフルスケヌル範囲に察しお、1:200000の内郚カりントが必芁であるずしたす。この堎合、性胜面での芁件を満たすためには、ADCはその34倍の粟床を備えおいる必芁がありたす。぀たり、1:800000のカりントを達成するために、1920ビット粟床のADCを䜿甚しなければならないずいうこずです。このこずから、信号凊理の芁件によっお生じる実甚レベルの課題に぀いおご理解いただけたでしょう。

ゲむンずオフセットのドリフト

䞀般に、産業分野で䜿甚される重量蚈システムは50°Cほどの枩床範囲に察応しお動䜜する必芁がありたす。したがっお、システムの蚭蚈者は、宀枩を超える条件䞋でのシステムの粟床に぀いお怜蚎しなければなりたせん。枩床に䟝存したゲむンのドリフトが、支配的な誀差源になり埗るからです。䟋えば、分解胜が20ビットでゲむン誀差のドリフトが1ppm/°Cの安定したシステムがあったずしたす。そのシステムでは、50°Cの範囲で50LSBの誀差が生じるこずになりたす。぀たり、25°Cでは1LSBの粟床が安定しお埗られるシステムであっおも、枩床範囲党䜓では実質的に50LSBの粟床しか達成できないずいうこずです。したがっお、重量蚈システムを蚭蚈する際には、ゲむン・ドリフトが小さいADCを遞択するこずが非垞に重芁です。

䞀方、オフセットのドリフトはそれほど倧きな懞念事項にはなりたせん。シグマ・デルタΣΔ型ADCの倚くは、チョッピング・モヌドの手法を組み蟌む圢で蚭蚈されおいたす。そのため、ドリフトが小さく1/fノむズ性胜が高いずいう特城が埗られたす。぀たり、重量蚈システムの蚭蚈に適しおいるずいうこずです。䟋えば、「AD7799」1の堎合、オフセット・ドリフトの仕様は10nV/°Cです。20ビットのシステムを50°Cの範囲にわたっお䜿甚する堎合でも、このドリフトによっお生じる誀差はトヌタルでわずか1/4LSB皋床に収たりたす。

ノむズフリヌ分解胜

デヌタシヌトを参照する際には、泚意しなければならないこずがありたす。それは、ノむズの仕様が二乗平均平方根rms倀で芏定されおいるのか、それずもピヌクtoピヌクp-p倀で芏定されおいるのかずいうこずです。重量蚈システムの堎合、最も重芁な仕様は、ノむズフリヌ・コヌド分解胜を巊右するp-pノむズです。ノむズフリヌ・コヌド分解胜ずは、すべおのADCに䌎う実効入力ノむズが原因ずなっお、それ以䞊は個々のコヌドを明確に刀別するこずができなくなる分解胜ビット数のこずです。このノむズはrms量ずしお衚珟するこずができたすが、通垞はLSB単䜍の数倀カりント、フルスケヌルの2-nずしお衚されたす。その倀に6.6を乗じるずそれにより、暙準分垃内のすべおの倀のうち99.9%を網矅するこずができたす、合理的に等䟡なピヌクtoピヌク倀単䜍はLSBに倉換するこずが可胜です。図4ずしお瀺した衚は、AD7799のデヌタシヌトから抜粋したものです。このように、アナログ・デバむセズが提䟛するほずんどのΣΔ ADCの堎合、デヌタシヌトにはrms倀ずp-p倀ノむズフリヌ・コヌドの䞡方が蚘茉されおいたす。

曎新レヌト

図4を芋るず、システムのノむズフリヌ分解胜はADCの曎新レヌトに䟝存するこずがわかりたす。䟋えば、リファレンス電圧が2.5Vで曎新レヌトが4.17Hzである堎合ゲむンは128、分解胜は20.5ビットp-pです。しかし、曎新レヌトを500Hzに高めるず、分解胜は16.5ビットたで䜎䞋したす。重量蚈システムでは、ADCがサンプリングできる最小曎新レヌトず、液晶ディスプレむの曎新に必芁な出力デヌタ・レヌトのバランスをずる必芁がありたす。ハむ゚ンドの重量蚈の堎合、䞀般的にはADCの曎新レヌトずしお10Hz皋床の倀が䜿甚されたす。

衚I. AD7799のゲむンず出力曎新レヌトに察する出力RMSノむズ単䜍はµV、リファレンス電圧は2.5V

曎新レヌト ゲむン1 ゲむン2 ゲむン4 ゲむン8
ゲむン16
ゲむン32
ゲむン64
ゲむン128
4.17 Hz 0.64 0.6 0.185 0.097 0.075 0.035 0.027 0.027
8.33 Hz 1.04 0.96 0.269
0.165 0.108 0.048 0.037 0.040
16.7 Hz 1.55 1.45 0.433 0.258 0.176 0.085 0.065 0.065
33.3 Hz 2.3 2.13 0.647 0.364 0.24 0.118 0.097 0.094
62.5 Hz 2.95 2.85 0.952 0.586 0.361 0.178 0.133 0.134
125 Hz 4.89 4.74 1.356 0.785 0.521 0.265 0.192 0.192
250 Hz 11.76 9.5 3.797 2.054 1.027 0.476 0.326 0.308
500 Hz 11.33 9.44 3.132 1.773 1.107 0.5 0.413 0.374

衚II. AD7799のゲむンず出力曎新レヌトに察する暙準分解胜単䜍はビット、リファレンス電圧は2.5V

曎新レヌト ゲむン1 ゲむン2 ゲむン4 ゲむン8
ゲむン16
ゲむン32
ゲむン64
ゲむン128
4.17 Hz 23 (20.5) 22 (19.5) 22.5 (20) 22.5 (20) 22 (19.5) 22 (19.5) 21.5 (19) 20.5 (18)
8.33 Hz 22 (19.5) 21.5 (19) 22 (19.5)
22 (19.5) 21.5 (19) 21.5 (19) 21 (18.5) 20 (17.5)
16.7 Hz 21.5 (19) 20.5 (18) 21.5 (19) 21 (18.5) 21 (18.5) 21 (18.5) 20 (17.5) 19 (16.5)
33.3 Hz 21 (18.5) 20 (17.5) 21 (18.5) 20.5 (18) 20.5 (18) 20.5 (18) 19.5 (17) 18.5 (16)
62.5 Hz 20.5 (18) 19.5 (17) 20.5 (18) 20 (17.5)
19.5 (17) 19.5 (17) 19 (16.5) 18 (15.5)
125 Hz 20 (17.5) 19 (16.5) 20 (17.5) 19.5 (17) 19 (16.5) 19 (16.5) 18.5 (16) 17.5 (15)
250 Hz 18.5 (16) 18 (15.5) 18.5 (16) 18 (15.5) 18 (15.5) 18.5 (16) 18 (15.5) 17 (14.5)
500 Hz 18.5 (16) 18 (15.5) 18.5 (16) 18.5 (16) 18 (15.5) 18.5 (16) 17.5 (15) 16.5 (14)

図4. 代衚的なADC補品である「AD7799」の入力換算ノむズず分解胜

重量蚈システムのリファレンス蚭蚈

ここでは、重量蚈システム向けに最適化されたリファレンス蚭蚈を玹介したす。䞊述した事柄に぀いお怜蚎を重ね、数々の課題を解消した優れた実装䟋ずなっおいたす。

最適なADCの遞択

ADCのアヌキテクチャの䞭で重量蚈システムに最も適しおいるのはΣΔ型です。曎新レヌトが䜎い堎合に、ノむズを小さく抑え぀぀、高い盎線性が埗られるからです。たた、ΣΔ ADCはノむズ・シェヌピングずデゞタル・フィルタの機胜を内蔵しおいるこずもメリットになりたす。ノむズ・シェヌピングの機胜では、高い呚波数で動䜜する倉調噚によっお量子化ノむズがその倉調呚波数の1/2より高い領域に抌しやられたす。たた、デゞタル・フィルタの機胜では、かなり䜎い呚波数領域たでの垯域制限が行われたす。これらの機胜により、ADCの出力デヌタに察しお適甚しなければならない耇雑な埌凊理が倧幅に緩和されたす。

ADCずしおは、䜎ノむズのプログラマブル・ゲむン・アンプPGAも内蔵するものを遞択すべきです。なぜなら、ロヌド・セルの出力信号は小さく、それを増幅するための高いゲむンが必芁になるからです。ADCに集積されるPGAは、ゲむンを蚭定するために倖付けの抵抗を䜿甚するディスクリヌト構成のPGAず比べお枩床ドリフトが小さくなるよう最適化しお実装するこずができたす。ディスクリヌト構成の堎合、枩床ドリフトに䌎う任意の誀差がゲむン段によっお増幅されたす。それに察し、重量蚈のアプリケヌションをタヌゲットずしお蚭蚈されたAD7799は、フロント・゚ンド郚に、優れたノむズ性胜27nV/√Hzず128mV/mVの最倧ゲむンを備えるゲむン段を内蔵しおいたす。このADCには、ロヌド・セルを盎接接続するこずが可胜です。

ここで玹介するリファレンス蚭蚈は、アナログ・デバむセズが重量蚈システム向けの評䟡甚ボヌドずしお提䟛しおいるものです。そのブロック図を図5に瀺したした。䞻芁な構成芁玠は、ADCであるAD7799ずそれを制埡するマむクロコントロヌラ「ADuC847」2です。ADuC847は、AD7799に察しおデゞタル・むンタヌフェヌスを提䟛するず共に埌凊理を担いたす。たた、AD7799ずは別に、24ビットの高性胜なΣΔ ADCを内蔵しおいたす。そのため、このリファレンス蚭蚈を䜿えば、AD7799を䜿甚したシステムず、ADuC847のADCを䜿甚する完党に自己完結型のシステムを比范するこずができたす。぀たり、同じハヌドりェア接続を䜿甚した評䟡結果を比范し、芁件に最も適した蚭蚈を遞択するこずが可胜です。

図5. リファレンス蚭蚈のブロック図
図5. リファレンス蚭蚈のブロック図

評䟡結果

ここでは、䞊述したリファレンス蚭蚈の評䟡結果を瀺したす。いずれも、ADCから出力されたコヌドの暙準偏差実質的にrmsノむズに基づいおいたす。たた、ノむズフリヌ分解胜コヌドぞの倉換には、以䞋の蚈算匏を䜿甚したした。

暙準偏差 = rmsノむズ〔LSB〕

ピヌクtoピヌク・ノむズ = 6.6×rmsノむズ〔LSB〕

ノむズの分解胜ビット数 = log2p-pノむズ

ADCのノむズフリヌ分解胜〔ビット〕 = 24 - ノむズのビット数

= 24 - log2(6.6×rmsノむズ〔LSB〕)分解胜ビット数

 

図6に瀺したのは、電圧リファレンスをADCの入力ずしお䜿甚した堎合の枬定結果です。枬定倀の暙準分垃は3.25LSBずなっおいたす。これに6.6を乗じるこずで、21.65LSBずいうピヌクtoピヌク・ノむズの倀が求たりたす。その倀を分解胜ビット数に倉換するず、4.42ビットになりたす。24ビットのADCの堎合、これはノむズフリヌ分解胜が19.58ビットであるずいうこずを意味したす。図7に瀺したのは、䞀般的なロヌド・セルを䜿っお同じ評䟡を行った結果です。その堎合のノむズフリヌ分解胜は19.4ビットでした。これは、ロヌド・セルによっお最終的な結果に远加されるノむズはわずか0.2ビット盞圓であるずいうこずを意味したす。぀たり、このノむズに圱響を及がす䞻芁な芁因はADCであるこずがわかりたす。

図6. AD7799のノむズ性胜その1。ゲむンは64、曎新レヌトは4.17Hz、リファレンス電圧は5V、入力はリファレンスに短絡ずいう条件で取埗した結果です。rmsノむズは3.2526LSB、p-p分解胜は19.576ビットずなっおいたす。
図6. AD7799のノむズ性胜その1。ゲむンは64、曎新レヌトは4.17Hz、リファレンス電圧は5V、入力はリファレンスに短絡ずいう条件で取埗した結果です。rmsノむズは3.2526LSB、p-p分解胜は19.576ビットずなっおいたす。
図7. AD7799のノむズ性胜その2。ゲむンは64、曎新レヌトは4.17Hz、リファレンス電圧は5V、入力はロヌド・セルの出力ずいう条件で取埗した結果です。rmsノむズは3.6782LSB、p-p分解胜は19.399ビットずなっおいたす。
図7. AD7799のノむズ性胜その2。ゲむンは64、曎新レヌトは4.17Hz、リファレンス電圧は5V、入力はロヌド・セルの出力ずいう条件で取埗した結果です。rmsノむズは3.6782LSB、p-p分解胜は19.399ビットずなっおいたす。

ADCの出力結果の改善

AD7799は狭垯域ではあるものの、24ビットもの高い分解胜を誇る補品です。しかし、䞊で瀺したように、その有効ビット数ENOBは、䜿甚する出力ワヌド・レヌトずゲむンの蚭定に応じおノむズによる制限を受けたす。ノむズをできる限り陀去し、実効分解胜を高めるために、ADuC847のマむクロコントロヌラ郚は、平均化のアルゎリズムによっお性胜を高めるようプログラムしおありたす。図8は、ΣΔ ADCのアナログ入力をグラりンドに接続した状態で取埗される䞀般的な枬定結果をヒストグラムずしお瀺したものです。入力が固定DCのアナログ倀であるなら、出力のコヌドも䞀定倀になるこずが理想です。しかし、珟実にはノむズが存圚するこずから、出力コヌドはアナログ入力倀に察応する倀の呚囲に分垃する圢になりたす。通垞はガりス分垃を瀺すこずになるでしょう。なお、ノむズの䞻な原因ずしおは、ADC内で発生する熱ノむズず、A/D倉換凊理に必ず䌎う量子化ノむズが挙げられたす。

図8. ADCの出力コヌドのヒストグラム。アナログ入力が固定倀の堎合の䞀般的な結果です。
図8. ADCの出力コヌドのヒストグラム。アナログ入力が固定倀の堎合の䞀般的な結果です。

平均化を担うフィルタは、最倧限にシャヌプなステップ応答を維持し぀぀、ランダムなホワむト・ノむズを䜎枛するための有効な手段です。このリファレンス蚭蚈では、移動平均のアルゎリズムを゜フトりェアで実珟しおいたす。そのアルゎリズムの基本的な凊理フロヌは図9のようなものになりたす。

図9. 平均化のアルゎリズムで行われる凊理
図9. 平均化のアルゎリズムで行われる凊理

移動平均フィルタは、入力信号に察応する耇数のポむントのデヌタを平均化し、出力信号ずなる各デヌタを生成したす。フィルタぞの入力は、ADCから盎接取埗したす。盎近M個のデヌタ・ポむントのうち、最小最倧のデヌタ・ポむント倖れ倀はデヌタ・りィンドりから削陀されたす。その䞊で、残るM - 2個のデヌタ・ポむントの平均倀が蚈算されたす以䞋参照。

数匏 1

移動平均の手法を䜿甚するこずで、出力デヌタ・レヌトは入力デヌタ・レヌトず同じ倀に維持されたす。この手法は、1次平均化凊理の䞀皮です。䞀般に、曎新レヌトが高い堎合には、波圢の分散を抑えるために2次平均化が䜿甚されたす。その堎合、第1段の出力が第2段によっお平均化され、より改善された結果が埗られたす。

図10に瀺したのは、AD7799の出力デヌタに平均化を適甚した結果です。図7ず比べるず、平均化によっお最終的な結果が玄2.5ビット分改善されおいるこずがわかりたす実効分解胜が19.4ビットから21.9ビットに改善されおいたす。この手法を䜿えば、液晶ディスプレむの曎新レヌトに圱響を及がすこずなく、最終的な結果を飛躍的に改善するこずが可胜です。唯䞀の欠点は、平均化するためのパむプラむンの遅延によっおセトリング時間が長くなるこずです。

図10. AD7799にフィルタを適甚した堎合のノむズ性胜。ゲむンは64、曎新レヌトは4.17Hz、リファレンス電圧は5V、入力はロヌド・セルの出力ずいう条件で取埗した結果です。rmsノむズは0.611LSB、p-p分解胜は21.9ビットずなっおいたす。
図10. AD7799にフィルタを適甚した堎合のノむズ性胜。ゲむンは64、曎新レヌトは4.17Hz、リファレンス電圧は5V、入力はロヌド・セルの出力ずいう条件で取埗した結果です。rmsノむズは0.611LSB、p-p分解胜は21.9ビットずなっおいたす。

重量の倉化に察する応答時間の改善

䞊述した基本的なアルゎリズムを䜿甚すれば、ノむズ性胜を倧幅に改善するこずができたす。䜆し、重量が倉化したずきには問題が生じる可胜性がありたす。重量が倉化したら、ロヌド・セルの出力は、非垞に短い時間でバランスの取れた別の状態に移行するはずです。しかし、このアルゎリズムを採甚した堎合、フィルタがM回曎新されるたでは最も適切な結果を出力するこずができたせん。぀たり、平均化の察象ずするポむントの数によっお応答時間が制限されるこずになりたす。このような理由から、重量が倉化したか吊かを刀定し、それに応じた凊理を行うための特別なアルゎリズムが必芁になりたす。図11に、そのアルゎリズムの基本的な凊理フロヌを瀺したした。

図11. 重量の倉化を刀定しお適切な凊理を行うためのアルゎリズム
図11. 重量の倉化を刀定しお適切な凊理を行うためのアルゎリズム

このアルゎリズムでは、重量の倉化がグリッチだず芋なされるこずを防ぐために、刀定甚の条件を2぀䜿甚しおいたす。ADCからの2぀の連続するデヌタず、フィルタの出力ずの差がいずれも閟倀を超えおいる堎合に、重量が倉化したず芋なされたす。

2段目のM個の党デヌタを新たな同じデヌタで眮き換えるこずにより、重量が倉化した埌、盎ちにロヌド・セルの遷移期間の圱響を排陀したす。たた、ロヌド・セルそのものにもセトリング時間がありたす。これを補償するために、重量の倉化が怜出された埌、移動平均凊理甚のりィンドりに含たれる党デヌタを、次の連続する6぀の平均化サむクルの間、ADCからの最新のデヌタで曎新したす。それにより、回埩時間の経過を埅ちたす。6぀の曎新サむクルが完了したら、平均化の凊理を再開したす。

出力結果のフリッカぞの察応

重量蚈は、1:5000ず1:10000ずいった暙準的なレンゞに察応しお0.5gたたは1g単䜍で結果を衚瀺したす。重量が2぀の隣接する目盛りの間にある堎合、衚瀺ずしおは2぀の目盛りの間を行き来フリッカするこずになりたす。この衚瀺を安定させるためには、図12のアルゎリズムを䜿甚しおいたす。

図12. フリッカに察凊するための凊理のフロヌ・チャヌト
図12. フリッカに察凊するための凊理のフロヌ・チャヌト

各衚瀺サむクルにおいお、゜フトりェアはそのサむクルで衚瀺されおいる重量の倀が1぀前のサむクルの倀ず同じであるか吊かを確認したす。同じ倀である堎合には、液晶ディスプレむぞの出力は倉曎されず、次のサむクルぞず凊理が進みたす。異なる倀である堎合には、2぀のサむクルに察応する内郚コヌドの差が蚈算されたす。その差が閟倀よりも小さければ、倀が異なる原因はノむズの圱響だず芋なしお、叀い重量の倀がそのたた衚瀺されたす。䞀方、蚈算によっお埗られた差が閟倀よりも倧きかった堎合には衚瀺が曎新されたす。

AD7799ずADuC847のADCの比范

先述したように、ADuC847は24ビットのΣΔ ADCを内蔵しおいたす。そのADCをAD7799の代わりに䜿甚すれば、コストが重芖される重量蚈向けにシングルチップの゜リュヌションを構築するこずができたす。ADuC847はマむクロコントロヌラのコアずしお「8052」を採甚しおいたす。ADCだけでなく、差動アナログ入力ずリファレンス入力を備えたPGAゲむンは128も内蔵しおいたす。加えお、プログラム甚に62Kバむト、デヌタ甚に4Kバむトのフラッシュ・メモリを備えおいたす。ここでは、䜎ノむズスタンドアロン型のADCであるAD7799を䜿甚した堎合ず、ADuC847の内蔵ADCを䜿甚した堎合の性胜を比范しおみたす。図13、図14が、それぞれを䜿甚した堎合の評䟡結果です。どちらの枬定も同様の条件で実斜したした詳现に぀いおは図の説明文を参照。予想どおり、AD7799の方がノむズが小さく、ハむ゚ンドのアプリケヌションに適しおいるこずがわかりたす。ただ、芁件がさほど厳しくない堎合にはADuC847でも十分に察応できたす。

図13. AD7799のノむズ性胜その3。ゲむンは64、曎新レヌトは4.17Hz、リファレンス電圧は5V、入力はリファレンスに短絡ずいう条件で取埗した結果です。rmsノむズは3.2526LSB、p-p分解胜は19.576ビットずなっおいたす。
図13. AD7799のノむズ性胜その3。ゲむンは64、曎新レヌトは4.17Hz、リファレンス電圧は5V、入力はリファレンスに短絡ずいう条件で取埗した結果です。rmsノむズは3.2526LSB、p-p分解胜は19.576ビットずなっおいたす。
図14. ADuC847のADCを䜿甚した堎合のノむズ性胜。ゲむンは64、曎新レヌトは5.35Hz、リファレンス電圧は2.5V、入力はリファレンスに短絡ずいう条件で取埗した結果です。rmsノむズは74.65LSB、p-p分解胜は15ビットずなっおいたす。デヌタシヌトでは15ビットず芏定されおいたす。
図14. ADuC847のADCを䜿甚した堎合のノむズ性胜。ゲむンは64、曎新レヌトは5.35Hz、リファレンス電圧は2.5V、入力はリファレンスに短絡ずいう条件で取埗した結果です。rmsノむズは74.65LSB、p-p分解胜は15ビットずなっおいたす。デヌタシヌトでは15ビットず芏定されおいたす。

システム蚭蚈においお泚意すべき事柄

最埌に、重量蚈のシステム蚭蚈を行う際に泚意すべき事柄に぀いおたずめおおきたす。

レシオメトリックな枬定の実珟

本皿で玹介したリファレンス蚭蚈では、最倧限の性胜を達成するために図3に瀺したような構成を採甚したした。ポむントは、レシオメトリックな枬定を実珟できるようにしおいるこずです。それに向けお、ブリッゞ回路の励起ずADCのリファレンスには同䞀のリファレンス源を䜿甚するこずにしたした。ロヌド・セルの出力粟床は、ブリッゞ回路の励起電圧によっお決たりたす。ブリッゞ回路の出力は励起電圧に正比䟋し、励起電圧にドリフトが存圚したずするず、それに察応するドリフトが必ず出力電圧にも珟れたす。そこで、ブリッゞ回路の励起電圧に比䟋する電圧をADCのリファレンス源ずしお䜿甚したす。そうすれば、ブリッゞ回路の励起電圧が倉動したずしおも枬定粟床は損なわれたせん。このようなレシオメトリックな接続により、励起源のドリフトず超䜎呚波のノむズの圱響は排陀されたす。ロヌド・セルからのノむズは、ADCの入力郚にシンプルな1次のRCフィルタを適甚するだけで排陀できたす。

基板のレむアりト

高粟床のΣΔ ADCを䜿甚しお最倧限のノむズ性胜を達成するためには、プリント回路基板のレむアりトが非垞に重芁です3。レむアりトにおけるポむントは、グラりンドの接続ず電源のデカップリングをどのように行うのかずいうこずです。本皿で玹介したリファレンス蚭蚈では、グラりンド・プレヌンをアナログ領域ずデゞタル領域に分割しおいたす。AD7799は、それら2぀のグラりンド・プレヌンの境界線䞊に配眮しおいたす。グラりンド・プレヌンは、1぀のスタヌト・ポむントを䜿甚しおAD7799の真䞋で接続されおいたす。AD7799のGNDピンは、アナログ・グラりンドに接続する必芁がありたす。このリファレンス蚭蚈では、電源は1぀しか䜿甚しおいたせん。ただ、AVDD端子ずDVDD端子の間にはフェラむト・ビヌズを適甚しおいたす。フェラむト・ビヌズは、䜎い呚波数に察しおは䜎むンピヌダンス、高い呚波数に察しおは高むンピヌダンスになりたす。そのため、DVDDからの呚波数の高いノむズは遮断されたす。フェラむト・ビヌズを遞択する際には、そのむンピヌダンスの呚波数特性に぀いお確認する必芁がありたす。このリファレンス蚭蚈では、衚面実装型のパッケヌゞを採甚した600ℊのフェラむト・ビヌズを䜿甚しおいたす。たた、0.1µFず10µFのコンデンサを䜿甚しお、AVDDずDVDDのデカップリングを行っおいたす。デカップリング甚のコンデンサは、できるだけデバむスの近くに配眮しなければなりたせん。

ハヌドりェアず゜フトりェア

本皿で玹介したリファレンス蚭蚈は、RS-232のむンタヌフェヌスを介しお任意のPCに接続するこずが可胜です。そのため、システムの評䟡を行う際、デヌタの保存や凊理を容易に実斜できたす。このリファレンス蚭蚈で採甚しおいるハヌドりェア゜フトりェアの仕様は公開されおいたす。たた、関連する゜ヌス・コヌドや、回路図、プリント基板甚のガヌバ・ファむルなども無料で提䟛されおいたす。詳现に぀いおは、筆者らにお問い合わせください。

参考資料2005幎12月時点

1 AD7799の補品抂芁ずデヌタシヌト

2 ADuC847の補品抂芁ずデヌタシヌト

3 John Ardizzoni「高速プリント回路基板レむアりトの実務ガむド」Analog Dialogue、Vol. 39、No. 9、2005幎9月

著者

Colm Slattery

Colm Slattery

Colm Slatteryは、アナログ・デバむセズのストラテゞック・マヌケティング・マネヌゞャです。1998幎の入瀟以来、テスト、補品、システム・アプリケヌションの開発をはじめずする様々な職務を担圓。3幎間にわたる䞭囜での業務経隓も有しおいたす。珟圚は産業事業郚門で、新たなセンサヌ技術やビゞネス・モデルに関連する業務に取り組んでいたす。アむルランドのリムリック倧孊で電子工孊の孊士号を取埗したした。

Mariah-Nie

Mariah Nie

Mariah Nieは、アナログ・デバむセズの䞭囜アプリケヌション・サポヌト・チヌムに所属するマネヌゞャです。䞭囜党土を察象ずしおアナログ補品のサポヌトを担圓しおいたす。2003幎に北京理工倧孊で電気工孊の修士号を取埗したした。

本蚘事に関するご泚意

本蚘事は過去に䜜成されたものであり、本文内で取り䞊げられおいる補品や゜フトりェアの䞀郚に぀きたしおは、堎合により新芏蚭蚈には非掚奚、補造䞭止ずなっおいる堎合がございたす。
ご了承のほど、お願い申し䞊げたす。
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