Chasing the Ghost Particle
太陽に手をかざすと、10億個のニュートリノがその手を通過します。 しかし、これまでその粒子を単独で見たり観測したりした人はいません。
発見を促進
地球上で最も過酷な条件下において、アナログ・デバイセズの製品は、これまで誰も見たことのないもの、つまり宇宙ニュートリノを発見しようとする宇宙物理学者を支援しています。南極の氷の下1.5マイルの場所に埋め込まれたIceCubeと名付けられた世界最大の粒子検出装置。検出困難なことで知られるニュートリノを発見するためのこの装置をアナログ・デバイセズのデータ・コンバータとアンプが支えています。
ウィスコンシン大学マジソン校のIceCube計測マネージャ、Michael DuVernoisは次のように述べています。「アナログ・デバイセズの部品はニュートリノ衝突検出の中核部分に使われており、氷の中の情報を外に転送してくれます。私たちは最初から、アナログ・デバイセズの部品なら華氏マイナス40度以下の環境でも大丈夫と信じていました」
1年間に30フィート移動する氷河に部品を設置してしまえば交換が不可能になるため、長期的な信頼性の保証は不可欠でした。「設置した部品は、今後20年間動くはずです。次世代のIceCubeでもアナログ・デバイセズの製品を使用しますよ」とDuVernoisは言います。
測定できないものを測定する
目に見えず、電荷をもたず、重量もほぼゼロに等しいニュートリノは空間を光速で移動し、氷の壁や層も簡単に通過します。これらの粒子を観測するための設備を建設するには、6年の歳月と2億7,900万ドルの費用がかかりました。極度の低温、過酷な環境、巨大な検出装置の規模は、この試みを特に困難なものにしました。しかし、十数か国から集まった科学者と技術者が南極の氷床に深い穴を掘る方法を発見しました。特殊なドリルを使用し、華氏190度の水を1,000psiの圧力により毎分200ガロンの勢いで噴出させて氷を溶かし、深さ1~2kmの穴を86か所に開けました。
チームはさらに、バスケットボール大の球状の集光装置5,000個以上をこれらの穴に設置しました。デジタル光学モジュール(DOM: Digital Optical Modules)と呼ばれるこれらの球状検出装置には、ニュートリノが氷の中の水分子に衝突したときに発生する光を測定するセンサーなど、高性能のエレクトロニクスが組み込まれています。これらの信号を氷の上まで1マイルあまりの距離を転送するため、DOMに搭載された通信システムはアナログ・デバイセズのコンバータとアンプを使用して信号をデジタル化し、保護します。
新たな時代へと導く
ニュートリノの検出は難しいものであるため、IceCubeが検出した粒子シャワーの数(現在28以上)には、この観測所の主任研究員を務めるウィスコンシン大学マジソン校の物理学教授Francis Halzenも驚いています。「私たちはついに大気圏外からのニュートリノの流れを発見しました。これは天文学の新しい時代の幕開けを告げるものです」と、Halzenは語っています。この発見は英誌フィジックス・ワールド主催の「2013年ブレークスルー」賞を獲得しました。
宇宙ニュートリノは、暗黒物質(宇宙の大部分を構成する目に見えない物質)について解明し、宇宙線、超新星爆発、その他これらの粒子を発生させた大きな異変の謎を解く鍵になるものと期待されています。
その一方で、IceCubeは設計仕様を上回る働きを続けており、今後も20年以上、粒子衝突に関する実験データを収集する予定です。
Halzenは次のように述べています。「このプロジェクトにはユニークな側面が数多くあり、いくら教育があっても対応できるものではありませんでした。いくつも問題が持ち上がり、解決しなければなりませんでした。しかし、問題を解決する助けとなること自体が喜びでもありました。」