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An image of a factory car assembly line with factory workers reviewing documents
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Brian Condell
Brian Condell,

Digital Marketing Engineer, Industrial Automation

著者について
Brian Condell
Brian Condellは、アナログ・デバイセズ(アイルランド リムリック)のデジタル・マーケティング・エンジニアです。半導体業界で25年以上にわたり様々な職務を経験してきました。IEC 61508規格に即したハードウェア/ソフトウェア設計について機能安全技術者の資格を取得(TÜV Rheinlandが認定)。2003年にリムリック大学で電気工学の優等学士号を取得しました。
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インテリジェントなエッジ向けのソリューションにより、柔軟性の高い工業生産を実現する


人類は工業生産に支えられ、驚異的な進化を遂げてきました。一方で、工業生産分野におけるエネルギーの消費量は、世界のエネルギー消費量の1/3以上を占めています。そのため、エネルギー効率の面で大きな課題を抱えていると言えます1。そこで求められるようになったのが、フレキシブル生産システム(FMS:Flexible Manufacturing System)です。フレキシブル生産システムには、オートメーション用の先進的な機能が盛り込まれます。また、インテリジェントなエッジを利用し、データを基にして洞察を生成する機能も統合されます。そのため、フレキシブル生産システムはエネルギー効率と生産性の向上を実現可能なソリューションとして位置づけられています。

しかし、フレキシブル生産システムの潜在能力を最大限に引き出すには1つの条件を満たす必要があります。それは、製造現場から膨大な量のデータを取得した上で、それらを存分に活用しなければならないというものです。ところが、現時点ではそれらのデータのうちごく一部しか利用されていません。そのため、効率化と最適化の機会を逃しているというのが実態です2

データの取得量を増やすには、より多くのセンサー技術が必要になります。また、スマートなエッジにおけるセンシングのためには、柔軟性が高くダイナミックなコネクティビティ(ネットワークに対する接続性)を導入しなければなりません。その上で、インテリジェンスの統合も果たす必要があります。

様々なセンサー、柔軟性の高いIOモジュール、リアルタイムの認識に対応可能なロボットの導入を進めれば、工場は様々な事柄に柔軟に適応できるようになります。それだけでなく、あらゆる需要に対応しつつエネルギーの消費量を最小限に抑えることも可能になります。また、サイバーセキュリティに関する対応策を適用することにより、高度なシステムを保護することができ、結果として安全性と信頼性に優れた状態での運用が保証されます。

Fiona Treacy
「柔軟性の高い工業生産を実現すれば、現代の産業に革新がもたらされます。具体的には、セットアップにかかる時間の短縮といった形で効率と生産性が向上するほか、高度な品質管理とリソースの最適化を通じたコスト削減が可能となります。その結果、市場の変化に迅速に適応したり、カスタマイズされた製品を提供したりできるようになる上に、ダイナミックな環境における競争力の確保も可能になります。」

Fiona Treacy

産業用オートメーション部門 シニア・ディレクタ | アナログ・デバイセズ

ロボットの台頭:労働力不足を解消する

フレキシブル生産システムの導入について議論する際には、必ず考慮しなければならないことがあります。それは、フレキシブル生産システムの運用における労働者の役割についてです。製造分野では2030年までに約210万人の熟練労働者が不足すると予想されています3。この課題に対する1つの解決策は、より小型で、プログラミングが容易で、再構成が可能なロボットを導入することです。そうすれば柔軟性が高まり、リベット加工用のツールから切断用のツールへの切り替えを迅速に行うといったことが可能になります。ロボットは、高度なAIや高度な制御を適用することで、より安全性と柔軟性に優れるものになります。典型的な例としては、人間と協調して作業を実施するコボットが挙げられます。

210万人

2030年までに製造分野で不足すると予想される熟練労働者の数3

移動型/固定型のロボットは、労働力の不足を補い、コストを削減し、効率を高めることに役立ちます。但し、製造企業は工場にロボットを導入する計画を立案する際、モーター・ドライブ、ビジョン・センサー、コネクティビティ、電源などを慎重に選択しなければなりません。

世界に押し寄せるデジタル化の波

世界中の工場では、フレキシブル生産システムの導入を含むデジタル・トランスフォーメーションが急速に進んでいます。実際、産業分野の企業のうち92%はデジタル・トランスフォーメーションへの道を歩んでいます4。そして製造の現場では、高度なセンサー技術を利用し、リアルタイムの洞察にアクセスできるようにする動きが加速しています。そのようにすれば、機器のダウンタイムを30%~50%削減し、スループットを10%~30%高められる可能性があるからです5

現実の世界の(アナログ)信号を取得してデジタル・データに変換する仕組みを広く導入すれば、製造企業はデジタル・トランスフォーメーションの波に乗りやすくなります。但し、成功に向けた重要な要素は他にもあります。それは、製造企業がリアルタイム対応のコネクティビティを容易に活用できるようにすることです。そのためには、産業分野におけるイーサネットとマルチプロトコルの普及を後押しする必要があります。

リアルタイム対応のコネクティビティがもたらす真のメリット

コネクテッド・ファクトリでは、エッジで稼働するセンサー機能と分析機能によって柔軟性を高めます。それらに加え、イーサネットやワイヤレス・センサー・ネットワーク、5G対応のコネクティビティを活用することも重要です。そうすれば、製造企業は非常に遠くに配備された機器に関する洞察を得ることができます。例えば、海上の石油精製所、砂漠に設置された風力タービン、広さが数十万m2にも及ぶ倉庫、数kmの深さにある炭鉱などからリモートで情報を取得することが可能になるのです。

A robotic arm with a security icon over it

上記のような取り組みを行えば、配線が不可能であるか、または現実的ではない遠隔地から、実用的な洞察をコマンド・センターに送信して共有することができます。その上で、インテリジェントな分析を実施できるようにすることが重要です。各種の製造企業は、必ずしも製造現場のネットワークに縛られているわけではありません。遠隔地の機器に対するネットワーク接続が必要な場合、より柔軟性の高いコネクティビティ技術を導入することで物理的な障壁を排除できます。

スマート・ファクトリに必要なのは、スマートなデータ・セキュリティ

2023年に産業分野に対して行われたすべてのサイバー攻撃のうち、約25%は製造業をターゲットとしたものでした6。つまり、最も大きな標的になったのが製造業界だったということです。一方で、製造企業は、スマート・ファクトリ技術を活用してフレキシブル生産システムを強化したいと考えています。結果として、製造企業はITとOTのレジリエンスを重視しなければならなくなりました。つまり、変化に適応しつつ、侵害された状態から正常な状態に復旧できるようにし、混乱に対処できる体制を整えなければならないということです。

An image of a water rig in the middle of the ocean surrounded by connectivity symbols

未来の工場を構築するには、攻撃を受けた状態から迅速に回復することが可能なセキュアなエッジ・デバイスが必要になります。また、データが最初に取得/処理されるインテリジェントなエッジにはサイバーセキュリティに関する機能を実装しなければなりません。

サイバー犯罪の増加を受け、欧州ではサイバー・レジリエンス法が制定されました7。同法は、デジタル製品/サービスについては設計の段階からセキュリティを考慮し、サイバーセキュリティの規格に準拠することを義務づけています。データの暗号化、セキュアなストレージ、鍵交換は、いずれも通信におけるセキュリティを確保し、運用上の完全性を維持するための重要な要素です。

約25%

2023年に行われたすべてのサイバー攻撃のうち、製造業を標的としたものの割合6

個々のニーズに応じてパーソナライズされた未来

An image simulating the transition of traditional factories to connected factories via digitalization

製造企業が柔軟性の高い環境を構築するに当たっては1つの重要な目標を達成する必要があります。それは、パーソナライゼーションへの対応を強化することです。それにより、数多くのメリットが得られます。代表的なものとしては、以下のような例が挙げられます。

  • セットアップと製造にかかる時間が短くなることから、製品を市場に投入するまでの時間が短縮されます。つまり、パーソナライズされた製品をより早く顧客に届けることができます。
  • 自動化されたシステムにより、品質と精度に優れる製造を実現できます。高度にカスタマイズされた製品についても一貫した品質が維持されるため、顧客の満足度が高まります。
  • フレキシブル生産システムによりオンデマンドの製造が可能になります。必要以上の数の製品が製造されることがなくなり、材料などの無駄が解消されます。
  • 顧客中心の概念に基づいて製造を実施することにより、消費者のニーズを効果的に満たすことができます。様々な嗜好に迅速に対応できることから、顧客との関係性が良化し、顧客のロイヤリティが向上します。

実際、パーソナライゼーションはビジネスを成功に導く上で非常に重要な役割を果たします。McKinsey & Companyの調査によって、「成長が速い組織は、成長が遅い組織と比べてパーソナライゼーションによる収益が40%も多い」ことが確認されています8

上記の内容を実現するためには、大きな課題を解決しなければなりません。つまり、小規模なバッチに応じて製造ラインを効率的に再構成できるようにする必要があります。カスタマイズに対する需要の増加に対応するために、製造企業は、新たなニーズに応じて製造ラインを簡単に再構成できるアジャイルで柔軟性の高い製造オペレーションを採用しなければなりません。そのような再構成を可能にするための中心的な要素はいくつかあります。そのうちの1つが、ソフトウェアによる構成が可能なI/O(SWIO:Software-configurable Input/Output)です。

ソフトウェアによる構成が可能なシステムがもたらす大きな力

小規模なバッチ製造を実現するためには、柔軟性の高いソリューションが必要です。その一方で、製造上の課題が増えてフィル・レート(fill rate)が低下する可能性があります。旧来の方法で、特定のバッチのニーズに合わせて部品を交換するためには、製造ラインを断続的に停止する必要があります。そうすると、効率と生産性が低下し、ターンアラウンド・タイムが長くなり、コストが増大する可能性があります。

Image of 4 configured network system

ソフトウェアによる構成が可能なシステムでは、各種の変更に関する効率を高めることができます。また、その種のシステムは、生産性を向上させることが可能な実証済みのソリューションとして機能します。その結果、産業分野の製造企業に対しては比類のないレベルの柔軟性とシンプルさがもたらされます。SWIOの新たな能力を活用すれば、産業分野で使用されるあらゆるI/O機能に任意のピンからアクセスできるようになります。しかも、配備の際、その場でカスタマイズを施すことが可能です。その結果、製品を市場に投入するまでの時間が短縮されます。また、設計リソースを削減することも可能です。つまり、様々なプロジェクトやお客様に向けた汎用性の高い製品展開が可能になるということです。

フレキシブル生産システムが未来のレジリエントな工場を築く

今日の製造業界は急速に進化しています。そうした中で製造企業が成功を収めるためには、より柔軟性が高くアジャイルな製造環境を採用しなければなりません。インテリジェントなエッジに向けた技術を活用すれば、オートメーション、ロボット/コボット、高度なAIソリューションを導入することができます。それにより、将来に向けてレジリエンスに優れる工場を構築することが可能になります。

A modern factory with multiple robots moving around, while factory workers have a discussion looking at documents
参考資料

1 「World Energy Outlook 2023(世界のエネルギー展望 2023)」国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)、2023年 
2 「How Big Data Can Improve Manufacturing(ビッグ・データは製造業をどのように改善するのか?)」McKinsey & Company、2014年7月
3 「Creating Pathways for Tomorrow’s Workforce Today: Beyond Reskilling in Manufacturing(明日の労働力のための道を今日作る - 製造業におけるリスキリングを超えて)」Deloitte Insights、Manufacturing Institute、2021年5月
4 「The State of Industrial Digital Transformation(産業分野におけるデジタル・トランスフォーメーションの現状)」PTC、2021年
5 「Capturing the True Value of Industry 4.0(インダストリ4.0の真の価値を理解する)」McKinsey & Company、2022年4月
6 「Distribution of Cyberattacks Across Worldwide Industries in 2023(世界の産業分野における2023年のサイバー攻撃の分布)」Statista、2023年
7 The European Cyber Resilience Act(欧州サイバー・レジリエンス法)
8 「The Value of Getting Personalization Right or Wrong Is Multiplying(適切なパーソナライゼーションを実現すれば、その価値は倍増)」McKinsey & Company,、2021年11月