

Signals+ ニュースレター登録
Signals+はコネクティビティ、デジタルヘルス、モビリティ、スマートインダストリーに関する最新情報をお届けします。
ありがとうございます。ご登録のメールアドレスにお送りしたメールを確認し、ニュースレター登録を完了させてください。
世界中の人々の生活に影響を与える、画期的なテクノロジーに関する最新情報をタイムリーにお届けします。
閉じるスマートカーをスマート・デバイスに変貌させる - Toggを支えたアナログ・デバイセズの車載技術
消費者は、インフォテインメント、安全性、快適性などに関する先進的な機能を備えた自動車を求めるようになりました。ユーザ中心のエクスペリエンスが提供され、よりサステナブルで、更なる没入感が得られる自動車に対するニーズが高まっているということです1。トルコのEVメーカーであるToggは、このニーズを完全に満たす自動車を提供したいと考えていました。同社が目指していたのは、単なるモビリティ・デバイスではなく、より優れたスマート・デバイスとして新たな自動車を設計することです。
このビジョンを具現化するには、電気設計上のいくつかの大きな課題を克服しなければなりませんでした。その上で、E/E(Electrical and Electronics)アーキテクチャを簡素化し、堅牢性の高い車両のプラットフォームを実現する必要がありました。それにより、レジリエントなコネクティビティと確定的な処理を提供できるようにしなければなりません。併せて、先進的な半導体ソリューションを用いて、インテリジェンスにかかわる機能やソフトウェアを集中管理できるようにする必要もありました。このような課題を解決するために、Toggは信頼できるパートナー企業を探していました。その結果、選ばれたのがアナログ・デバイセズです。
Toggにとって、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)とインフォテインメント・システムは自社製品のブランド価値を高める主要な要素でした。アナログ・デバイセズとToggは初期のコラボレーションの成果として、ADAS用のカメラ/センサーに適用するコネクティビティやインフォテインメント・システムを対象とした堅牢性の高いソリューションを開発しました。それに向けて、アナログ・デバイセズはエコシステムに関する高度な知識を提供しました。また、Togg専用のサポート体制を整えたほか、トルコ/欧州を拠点とする人材も投入しました。それにより、Toggは製品を市場に投入するまでの時間に関するアグレッシブな目標を達成することができました。


「当社はグローバルな舞台での競争に加われるモビリティ技術企業を実現することを目指して設立されました。そして、過去6年間にわたり、消費者のニーズを満たすオープンでアクセスしやすいユーザ中心のエコシステムを構築すべく取り組みを進めてきました。アナログ・デバイセズとの戦略的なパートナーシップを通じた協業により、エコシステムを拡大すると共に、モビリティのあるべき姿を再定義することが可能になりました。当社が確立した新たなビジョンは、スマートカーをスマート・デバイスに変貌させるというものです。それに乗車するユーザは、アナログ・デバイセズのサポート、コネクティビティ技術、インフォテインメント技術によってもたらされたメリットを享受することになります。」M. Gürcan Karakaş
最高経営責任者(CEO) | Togg
本事例の概要
顧客企業の概要
Togg(Türkiye’s Automobile Joint Venture Group Inc.)はトルコの業界大手が共同で設立したEVメーカー。未来志向の技術企業として、AI、サイバー・セキュリティ、クリーン・エネルギー、環境に対するサステナブルな慣行を適用する形でモビリティを進化させることに重点を置いている。目標
未来に向けたモビリティ・プラットフォームを構築する。そのプラットフォームは、非常に高度なパーソナライズに対応可能で、没入感が高く、より安全で、よりスマートな機能を備えた「車を超えるもの」でなければならない。課題
Toggは、システム・レベルの設計に関する思考力と実績のある技術的リーダーシップを有するパートナー企業を必要としていた。そのパートナーは、没入感の高いオーディオ、信頼性の高いビデオ、データのコネクティビティ、確定的な処理、車両の電動化を実現するソリューションを提供できる企業でなければならない。それだけでなく、現地(トルコ)で技術サポートを行ってくれることも不可欠だった。そうしたパートナー企業の協力を得て、ソフトウェア定義型の車両の機能と拡張性を実現するためにプラットフォームのアーキテクチャを簡素化したいと考えていた。アナログ・デバイセズのソリューション
業界をリードするアナログ・デバイセズの車載向けポートフォリオを活用する。具体的には、第2世代のGMSL™(Gigabit Multimedia Serial Link)、A2B™(Automotive Audio Bus)、SHARC® DSP、バッテリ管理(バッテリ・マネージメント)システム(BMS:Battery Management System)などのソリューションを採用する。Toggの革新的な車両を支えるアナログ・デバイセズの技術
Toggが開発したかったのは、従来のスマートカーとは根本的に異なるスマート・モビリティ・デバイスです。その車両は、高度にパーソナライズすることが可能で、没入感が高く、電動化されていて、より安全で、よりスマートな機能を備えていなければなりません。これを実現するために、Toggは、帯域幅が広くレイテンシの小さいコネクティビティ、高精度のセンサー、確定的な処理機構、インテリジェントな集中型機能を必要としていました。更に、ToggはE/Eアーキテクチャを簡素化したいとも考えていました。アナログ・デバイセズの先進的な技術であれば、これらのニーズに完全に応えることが可能でした。
Toggは、まずアナログ・デバイセズのイスタンブール・デザイン・センターが開発した第2世代のGMSL(GMSL2)技術を活用することにしました。それにより、信頼性の高いADASとインフォテインメント・システムを実現しました。それらのシステムは、Toggが求める性能と堅牢性を達成していました。また、安全に関する基準も満たしていました。
更なるコラボレーションによって実現された多様な技術
Toggは、アナログ・デバイセズのGSML技術を5台の車載ディスプレイと8台のカメラに適用しました。カメラについては、サラウンド・ビューの4台、ドライバ・モニタの1台、車室内モニタの1台、電子ミラーの2台を対象としました。その結果、Toggは、厳格なNCAP(European New Car Assessment Programme)や、DMS(Driver Monitoring System)に関するEC(欧州委員会)の規格に効果的かつ独自の形で対処することができました。
Toggは初期の取り組みにおいて、アナログ・デバイセズの先進的な技術を目の当たりにすると共に、協力的なサポートを体感しました。その結果、Toggの経営陣は「他にも共同で取り組めることがあるのではないか」と考えました。そして、同社はアナログ・デバイセズのA2B、SHARC® DSP、BMSといったソリューションについての検討も進めました。その結果、これらの技術を組み合わせることにより、E/Eアーキテクチャを簡素化すると共にケーブル配線の複雑さを軽減することに成功しました。つまり、Toggが描いていたEV用の新たなプラットフォームが具現化されたのです。

Toggを支えるアナログ・デバイセズの主要な技術
技術 | 機能 | メリット |
GMSL2™(第2世代のGigabit Multimedia Serial Link) | 高度な構成が可能なシリアライザ/デシリアライザ技術です。帯域幅が6Gbps、レイテンシが小さい、1本のケーブルによって電力とデータの伝送を実現できるといった特徴を備えています。また、コンパクトな設計によってデータの完全性と安全性の向上を保証することが可能です。 | 自律システム向けのリアルタイムの認識と高度な分析が可能になります。また、ADASとインフォテインメント・システムで高解像度のカメラを使用することが可能になります。更に、配線の数と重量を削減でき、エネルギー効率の向上とEVの航続距離の延長につながります。 |
A2B™(Audio Bus for Automotive) | レイテンシが小さく、帯域幅が広く、双方向の通信に対応可能なデジタル・オーディオ・バス技術です。高品質のオーディオ信号、制御信号、クロック信号、電力を1本のケーブルで伝送できます。また、様々なマイク、コントローラ、加速度センサーなども接続できます。 | レイテンシが確定的かつ小さいことから、完全にデジタル化されたロード・ノイズ・キャンセリングを実現できます。また、アナログ信号用の従来のケーブルを使う場合と比べて配線が大幅に簡素化されます。そのため、ハーネスの重量を軽減することも可能になります。 |
アナログ・デバイセズのBMS(Battery Management System) | マルチセル・バッテリ・ストリングの充電状態(SOC:State of Charge)と健全性(SOH:State of Health)を厳密に監視/管理できます。高電圧に対応する大型のEV用バッテリ・パックに最適です。 | バッテリのセルを高い精度で監視することにより、最適な性能、高い安全性、長い寿命を実現できます。堅牢性の高いBMSを採用すれば、EVの航続距離の最大化、バッテリ寿命の延伸、所有コストの削減を図れます。 |
SHARC® DSP(Digital Signal Processing) | クラス最高レベルのMIPS/mW性能により、確定的かつ小さなレイテンシで処理を実行できます。コアとメモリの性能が極めて高く、卓越したI/Oスループットが得られます。 | ダイナミック・レンジが鍵になる多くのアプリケーションに対し、リアルタイムの浮動小数点演算の機能を提供します。 |
スマートカーの再定義

自動車を再設計(および再定義)するには、知性と勇気だけでは不十分です。従来とは根本的に異なるビジョンを確立するには、中心的な要素として、自動車業界で最高のレベルにある技術者とのパートナーシップが必要になるでしょう。そして、「ユーザに焦点を絞る」という1つのシンプルなルールに基づいてゼロからスタートする必要があります。
Toggのビジョンの中心にあるのは、ブランドの真の差別化を実現する重要な特徴です。具体的には、以下のような特徴が挙げられます。
- スマート:ユーザの声に耳を傾け、ユーザと一体化し、ユーザから学び、ユーザのニーズに適応します。充電ステーションやレストランの検索からぴったりな音楽選びまで、あらゆることに対応します。
- 共感性:ユーザの気持ちを理解し、周辺の環境に応じて照明や音楽を調整します。
- データ駆動型:ユーザには数えきれないほどのカスタマイズの選択肢が提示されます。ユーザのためのそれらの選択肢は、インターネットを利用したあらゆる活動と完全に調和しています。
- コネクテッド:Toggは先進的な技術により、ドライバと車両をシームレスに結び付けます。対象となるものは、ドライブトレインから安全機能、車室内の機能までに至ります。
- 共有性:Toggのドライバ仲間とつながることにより、駐車スペースやバッテリ電源、試合の結果/感想など、様々な物事にちなんだ共有体験が生み出されます。
コラボレーションの成功の秘訣は、強い絆と距離の近さ
Toggは、上述したような自動車を構想し始めた当初から、取り組みを成功させるためには地理的な面でも哲学的な面でも緊密な関係を築ける技術的なパートナーが必要であることを認識していました。アナログ・デバイセズも、既成概念にとらわれない革新的な考え方に基づいて設立された企業です。そうした企業としてアナログ・デバイセズが持つ野心と、前述したようなToggの考え方には相通じるところがありました。加えて、アナログ・デバイセズは既にトルコ全土の現場で働く技術者を擁していました。
両社のチームによるコラボレーションは、親密かつ互いに寄り添うような形で進められました。そのような関係性は、スマートカーを、高度なパーソナライズが可能なスマート・デバイスに変貌させるための取り組みを進める上で非常に重要なものでした。また、アナログ・デバイセズのチームは、現地語の熟練度を活かして技術的な専門知識の共有を図ることが可能でした。そのため、Toggが製品を市場に投入するまでの時間に対して持つアグレッシブな目標も達成することができました。

人々の暮らしとドライビングを変革するスマート・デバイス

Toggとアナログ・デバイセズによるコラボレーションは、人類と地球のためになる4つの独自の方向性でドライビング・エクスペリエンスに変革をもたらし、それを新たな高みへと導きます。
- サステナビリティ:ケーブル配線の削減、キャビンの軽量化、EVの航続距離の延長を実現します。
- 安全性:信頼性の高いADASの機能によって政府機関などが定める安全規格を満たします。
- BMS:バッテリのライフサイクルの管理を強化し、充電の高速化と航続距離の延長に貢献します。
- 没入型でパーソナライズされたエクスペリエンス:高品位なインフォテインメント・システムとキャビン・アンビエンス・システムにより、運転の楽しさを変革します。
現代の消費者は、ユーザ中心であることやスマートであることに加え、接続性や共感性までを求める傾向があり、個人的な好みや望ましい安全性をすべて満たした自動車を求めています。Toggのスマート・デバイスは、そのような目の利く消費者に無限の可能性をもたらしていくでしょう。
参考資料
1Acxiom 「2023 Automotive Customer Experience (CX) Study(自動車のカスタマ・エクスペリエンス(CX)に関する2023年の調査)」