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閉じるTime of Flight(ToF)をベースとする3D機能の実現
「Microsoft Teams」や「Zoom」、「Google Meet」を使用し、日常的にリモート会議を行っているという方も多いでしょう。いずれも便利なツールであることに間違いはありません。ただ、どのツールにおいてもインタラクション(相互作用)は2D(2次元)のレベルにとどまっています。真の没入感を得られるようにするためには、リアルな3Dのインタラクションが必要です。
現在は、メタバースやAR(拡張現実)、VR(仮想現実)といった技術が盛んに取り上げられている状況にあります。それらに加えて、ホロポーテーションという技術にも注目が集まっています。これは、人を表現する質の高い3Dモデルのデータを世界中のあらゆる場所に転送し、その場でリアルタイムに再構成するというものです。いずれにせよ、現実の世界を究極的なレベルで再現できるヘッドセットが実現されるまでにはまだ時間がかかりそうです。
2Dのインタラクションから、没入感に優れる3Dのインタラクションへの移行を果たすのは容易なことではありません。実際、そのためには多くの技術を融合する必要があります。これまでにも、3Dディスプレイや空間オーディオに対応するコンテンツを単独で扱うアプリケーションは存在していました。しかし、そうした分野で使用されている技術は実際には静的なものにすぎませんでした。つまり、視聴する位置は固定されていなければならなかったのです。それに対し、3Dに対応するTime of Flight(ToF)技術を活用すれば、従来とは異なるレベルで物理的な世界とデジタルの世界を結び付けることができます。その結果、静的な3Dのインタラクションではなく、コンテキスト(事情、状況)に応じた没入型のインタラクションを実現することが可能になります。そのインタラクションは、ユーザやマシンのコンテキストに応じて動的に調整されます。また、遠く離れた場所にいる人と人、人とマシン、マシンとマシンといったあらゆる種類の環境に対応することが可能になります。
スマート・デバイスの進化は、“小学校のレベル”から“大学院のレベル”へ
「Amazon Alexa」や「Google Home」といったスマート・ホーム・デバイスは、生活の中に溶け込んだ当たり前の存在になりました。IDCのアナリストは、「スマート・ホーム・デバイスの世界出荷台数は2021年には12%近くに達し、2026年まで2桁の成長を継続する」との予測を示しています。消費者は、電球、家電、テレビ、自動車といったあらゆるものが大きく進化することを期待しています。そうした製品のスマート化やタッチレス化が実現されることを求めているのです。
ここ10年の間に、スマート・ホーム・デバイスは大きく進化しました。それに伴い、「スマート」という言葉の意味合いにも変化が現れています。基本的なスマート・デバイスは、今となっては単純なものとして扱われるようになりました。例えば、最近のロボット掃除機は、インターネットに対する接続機能を備え、それを介して制御や監視を実施できることが当たり前になっています。それに対し、より高度なスマート・デバイスはコンテキストを認識する機能も備えていなければなりません。例えば、スマート・デバイスにGPSを取り込んだとします。そうすると、ボタンやスクリーンに触らなくても、人が特定の範囲内に入ることで屋内の暖房スイッチをオンにする機能を実現できます。

更にスマートなデバイスであれば、人が話す声を聞き取り、その内容を理解することができます。それによって、パーソナライズなどが行えるようになっています。例えば、ハウス・マネージャとしての役割も担うスマート・スピーカといったものも実現できます。そのスマート・スピーカの機能により、ブラインドを下げ、照明を暗くし、温度を調整し、メロウな音楽を流して就寝の準備を整えるといったことが行えるのです。
スマート革命は現在も続いており、次なる変化が訪れつつあります。それは、人のもう1つの感覚である視覚をデバイスに追加するというものです。そうすれば、そのデバイスを使用している人の周りの状況を把握し、その分析結果に基づいて判断を下すといったことが行えるようになります。そうしたデバイスでは深度検出を利用します。その深度検出を実現するために用いられるのがTime of Flight(ToF)技術です。
Time of Flight(ToF)とは何か?
Time of Flight(ToF)技術を採用したカメラは次のように動作します。まず、同カメラから物体に向けて光を放射します。次に、物体で反射した光を同カメラのセンサーで取得します。その際、光を放射してから反射光をセンサーが受け取るまでの遅延時間を測定します。その時間を使用すれば、物体までの距離を算出できます。このプロセスは、超音波を使用して距離を測定するセンサーや電波を使用して距離を測定するレーダーの原理と似ています。Time of Flight(ToF)カメラを使用すれば、高い精度で深度を測定することができます。その結果として、(RGBカメラを使用する場合と同等の空間分解能の)解像度の高い深度マップを高速に生成することが可能になります。また、光の速度は音の速度を大きく上回るので、超音波を使用する場合よりも長い距離をカバーすることができます。レーダーはより長い距離に対応しますが、Time of Flight(ToF)カメラを使えば、より正確な測定、より高い解像度を実現できます。
間接ToFと直接ToF
Time of Flight(ToF)技術によって遅延時間を測定する方法は大きく2つに分けられます。間接ToF(iToF:Indirect ToF)と直接ToF(dToF:Direct ToF)です。
- iToF:この方法では、連続波(CW:Continuous Wave)を使用します。送信光のパルスと受信光のパルスの間の位相シフトを測定することによって距離を算出します。
- dToF:この方法はパルスをベースとしています。光のパルスを放射してから受け取るまでの時間を測定します。
CWをベースとするiToF方式のイメージ・センサーは、既存の半導体設備を使用して大量生産することができます。このことはiToFのメリットの1つです。手ごろな価格の短距離向けイメージ・センサーによって、高密度のピクセルを実現できるということです。

では、iToFとdToFによる深度イメージング・システムはどのように使い分ければよいのでしょうか。それについては、アプリケーションにおけるニーズやユース・ケースのコンテキストに応じて異なる選択を行うことになります。一般的に言えば、iToFは、短距離(0.5m、5m、10mなど)を対象とし、高い空間分解能を必要とするユース・ケースに適しています。一方のdToFは、空間分解能はそこまで高くなくても構わないので、長距離に対応しなければならないアプリケーションに適しています。ただ、AIと光学系の設計が進化した結果、iToFとdToFの選択に関する境界はあいまいになっています。例えば、コンテキストの認識が可能なインテリジェントなエッジ・システムの中には、iToFとdToFの両方のセンサーを採用しているものがあります。それだけでなく、RGBベースのイメージ・センサーや慣性センサーも併用しつつ、AIも活用することによって、性能を高めつつ、アーティファクトを除去するといったことが行われています。
コンピュータとのインタラクションに大きな変革をもたらしたものとしてはマウスが挙げられます。また、タッチ・スクリーン技術はスマートフォンやタブレット端末の普及を促進しました。それらと同様に、Time of Flight(ToF)技術は非接触かつ3Dのインタラクションを実現するものとして大きな期待を集めています。例えば、Time of Flight(ToF)技術は、インダストリ4.0を推進する上でも重要な役割を果たしています。品質検査用の産業用マシン・ビジョンや、設備資産を管理するための容積の測定、自律的な製造を実現するためのナビゲーションなど、その用途は多岐にわたります。製造業の分野では、こうしたセンシング技術を活用することにより、過酷な産業環境に対応できるように設計された高解像度のシステムが採用されるようになっています。
では、Time of Flight(ToF)技術は私たちの日常生活のどの部分に変革をもたらしているのでしょう。今日、同技術によって、カラーテレビやPCに匹敵するようなブレークスルーはもたらされているのでしょうか。
Time of Flight(ToF)を活用したヒューマン・マシン・インターフェース
Time of Flight(ToF)技術を利用したアプリケーションは続々と誕生しています。例えば、同技術は自動車において車室内の安全を確保する機能を実現するために使用されています。また、家庭用のエクササイズ機器や、ゲーム、3Dのリアルなリモート・コラボレーションなど、様々な用途において活用が進んでいます。なかでも、将来の有力な応用分野として想定されているのが自動運転車です。その場合、Time of Flight(ToF)技術は、レーダーやLIDARなどの深度センサーを補完するものとして利用されるはずです。
実際、Time of Flight(ToF)技術を活用すれば、より豊かで、より安全で、より楽しい生活を実現することができます。以下、非常にスマートな活用事例をいくつか紹介します。

3Dのリモート・コラボレーション
Time of Flight(ToF)技術は、先進的なハードウェアとソフトウェアを組み合わせることによって実現されます。この技術を活用すれば、遠く離れた場所にいる友人や、家族、同僚が、あたかも同じ場所にいるかのように感じられる機能を実現可能です。従来の2Dの技術を利用する場合とは異なり、3Dのリモート環境であれば、平面的な画像をベースとするという制約から解放されます。3Dの等身大の人が同じ部屋にいるかのように感じられ、これまでにない没入感を得ることができます。

車室向けの運転支援技術
Time of Flight(ToF)技術は、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)にも応用できます。例えば、運転者の顔や動きを監視して眠気を催していることを検知したり、車線から逸脱しているときに警告を発したりすることが可能です。また、Time of Flight(ToF)技術を利用することにより、ジェスチャをベースとする制御技術を実現することもできます。道路から目を離すことなく、電話に出たり、オーディオの設定を変更したり、エアコンを調整したりといったことが行えるようになります。

家庭用のエクササイズ機器
家庭内をターゲットとするフィットネス業界では、従来から、エアロ・バイクやヨガのエクササイズについてオンラインで指導するということが行われています。現在では、そのレベルを超えてスマート・フィットネス・ミラーなども提供されるようになりました。例えば、同ミラーが内蔵するバーチャル・トレーナーにより、スクワットのフォームについての助言が提供されるといった具合です。そのトレーナーの頭脳を強化するために、Time of Flight(ToF)技術が使われているのです。

ホーム・シアター
Time of Flight(ToF)技術を活用すれば、よりスマートなホーム・シアター・システムを実現できます。例えば、音のイコライゼーションを動的に調整し、視聴者の位置の変化や新しい家具の導入といった物理的な変化に対応して補正を行えるようになります。

ショッピング
オンライン・ショッピングは、非常に容易かつ迅速に行えるようになりました。結果として、多くの人は、商品を見定めるために実際に店に出向くことを億劫に感じるようになりました。Time of Flight(ToF)技術を使えば、服を購入する際、自分のアバターを使って試着を行うことができます。あるいは、スマートフォンを使用して空間の測定を実施し、自宅をリフォームするといったことも可能です。

ゲームとメタバース
多くの場合、AR/VRに対応するヘッドセットでは、深度情報を取得するための手段としてTime of Flight(ToF)技術が使われます。それにより、ハンド・トラッキングを使って実世界に配置された仮想的な物体との間のインタラクションを実現することができます。物理的な世界とデジタルの世界をより高い精度で融合することで、没入感に優れる体験が得られるようになります。

スマート・ファクトリ
Time of Flight(ToF)技術を利用すれば、マシン・ビジョンの強化を図ることができます。マシン・ビジョンの強化は、柔軟性が高く適応性に富んだ製造ラインを実現する上での鍵になります。それにより、人間は機械と協調しつつ安全に作業を実施できるようになるからです。結果として、生産性、品質、工場の稼働率を高めることが可能になります。
アナログ・デバイセズのTime of Flight(ToF)技術により、アイデアを具現化する

現在のペースでイノベーションが加速し続ければ、今後10年から20年の間に人々の生活を一変させるイノベーションが成し遂げられるかもしれません。実際、深度センサーとイメージング技術が広く普及すれば、現時点では想像もつかないスマート・デバイスが誕生する可能性があります。あるいは、全く新たな技術が登場し、スマート・ミラーやAR対応のヘッドセットがロボット掃除機と同じくらい身近なものになるかもしれません。
アナログ・デバイセズは、Time of Flight(ToF)技術を利用するシステム・ソリューションを提供することによってお客様を支援しています。それらを利用すれば、インテリジェントなエッジから知見を取得して活用することが可能になります。当社が提供するTime of Flight(ToF)対応のイメージング・センサーは、業界を牽引する役割を果たしています。また当社は、その種のセンサーをベースとし、あらゆる機能を網羅したシステム・ソリューションも開発しています。データ処理機能、レーザー用のドライバ、パワー・マネージメント機能、ソフトウェア/ファームウェアを1つのユニットに統合することにより、インテリジェントな次世代のエッジ・ソリューションを実現しています。