DAC vs. ディジタルポテンショメータ:どちらが適切か?

2007年07月26日
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要約

このアプリケーションノートは、ディジタル-アナログコンバータ(DAC)とディジタルポテンショメータを比較検討します。従来ディジタルポテンショメータはシンプルなメカニカルポテンショメータを置き換えるだけのものでしたが、近年の分解能の向上と機能付加の増大によって、従来DACが使われた部分にも一部使用可能となってきています。また、従来のDACは、パッケージが大きく、コストも高いため、ディジタルポテンショメータに対して競争力がありませんでしたが、DACも価格が下がり、パッケージサイズが大幅に小さくなったことで、DACもしくはディジタルポテンショメータのいずれかが使用可能なソケットも出てきています。

はじめに

設計や開発購買のエンジニアで、ディジタル入力制御の微調整されたアナログ出力を必要とするアプリケーションに携わっている人には、ディジタルポテンショメータ(ポット)とディジタル-アナログコンバータ(DAC)の2つの選択肢があります。どちらのデバイスもディジタル入力信号を使用してアナログ出力を設定します。ディジタルポテンショメータは、アナログ電圧を調整可能で、DACは電流、電圧、またはその両方を調整します。ポテンショメータには、ハイ端子、ワイパ(またはアナログ出力)、およびロー端子の3つのアナログ端子があります(図1a)。DACもほぼ同様の動作をしますが、まったく同じというわけではありません。DACでは、ハイ端子は正のリファレンス、ワイパはDAC出力と呼ばれ、ロー端子はグランドに接続されるか、負のリファレンス接続としてボンドアウトされます(図1b)。

図1. DACは従来から出力バッファを内蔵していましたが、ポテンショメータはしていませんでした。

図1. DACは従来から出力バッファを内蔵していましたが、ポテンショメータはしていませんでした。

これまで、ディジタルポテンショメータというと、シンプルなメカニカルポットの置き換えという位置づけでした。(詳細については、アプリケーションノート3417、「Digital Potentiometers Replace Mechanical Pots」を参照してください。) しかし、近年、分解能と付加機能が向上したことによって、ディジタルポテンショメータは、これまでDACが使われていた部分に一部使うことができるようになりました。DACとディジタルポテンショメータにはいくつかの顕著な違いがあり、最も重要な相違点は、DACは通常出力アンプ/バッファを内蔵していますが、ディジタルポテンショメータは内蔵していない点です。ほとんどのディジタルポテンショメータは、外付けバッファなしでローインピーダンスの負荷を駆動することができません。アプリケーションによっては、DACとディジタルポテンショメータの選択は明白なものもあります。しかし、DACとポテンショメータのどちらを選択しても所望する結果が得られるアプリケーションも数多くあります。

このアプリケーションノートでは、DACとディジタルポテンショメータを対比させ、各アプリケーションにどちらが適切かを判断する一助とします。

DACの基本特性と優位点

DACは、一般的に抵抗ネットワークアーキテクチャまたはR-2Rラダー型アーキテクチャを組み込んでいます。抵抗ネットワークが使用される場合、DACの入力は正しい値の直列抵抗を通じて基準電圧になるように分割する一組のスイッチを制御します。DACのR-2Rラダーは、正の基準電圧と、この基準電圧の負側(通常グランド)の間の個々の抵抗をスイッチすることによって正の基準電圧を分割し、電流を生成します。電圧出力DACは、この電流を出力アンプによって出力電圧に再度変換します。電流出力DACは、R-2Rラダー電流を直接出力するか、またはアンプを使って出力をバッファします。

DACを選ぶにはいくつもの選択が伴います。たとえば、シリアルまたはパラレルインタフェース、分解能/ビット数、入力チャネル数、電圧または電流出力、コスト、および相対精度などです。

DACはシリアルまたはパラレルインタフェースとディジタルで通信します。シリアルインタフェースは、データを単一の入力または出力ラインで1ビットずつ順次送信します。パラレルインタフェースは、すべてのデータビットを同時に送信し、ビット毎に個別のピン/接続が必要となります。シリアルインタフェースは、通常、3線式(SPI™、QSPI™、またはMICROWIRE™)または2線式(I²C)の2つに分けることができます。ディジタルデータ出力ラインを備えた3線式インタフェースのなかには、4線式インタフェースと呼ばれるものもあります。しかし、このアプリケーションノートでは、分かりやすくするためこれらのインタフェースを3線式と呼びます。

速度が重要となるアプリケーションでは、パラレルインタフェースの方が良い選択です。しかし、サイズとコストが重要な場合は、必要とする端子数がより少なく、通常はコストの安い、3線式または2線式シリアルインタフェースのほうが適しています。3線式インタフェースで26MHzまで動作するものもいくつかあり、2線式インタフェースは現在最大3.4MHzまで動作します。複数のDACを直列にデイジーチェイン接続する必要のあるアプリケーションでは、3線式シリアルインタフェース(SPI、QSPI、またはMICROWIRE対応)を選択してください。3線式および2線式インタフェースのいずれも、DACに書き込まれたデータを読み取ることができます。データを読み取る能力は、DACがディジタルポテンショメータに対して持つもう1つの利点です。

DACのもう1つの利点に分解能があります。最高の分解能を持つDACは16または18ビットの入力で設計されており、マイクロボルトのレンジの分解能を提供します。たとえば、2.5Vのリファレンスの18ビットDACは、9.54µVという最小有効ビット(LSB)を備えています。このレベルの分解能は、ロボットやモータなどの工業用設計で重要となります。それに対して最大の分解能のディジタルポテンショメータは、現在10ビット制御または1024タップとなっています。

DACは、多くのデータコンバータと共に1つのパッケージで提供されます。たとえば、MAX5733は、32個のDAC出力を備えており、各出力が16ビットの分解能を提供します。しかし、ディジタルポテンショメータは、現在、最大6チャネルで設計されています。DS3930は、現在、6個のディジタルポットを1つのパッケージで提供する数少ないポテンショメータの1つとなっています。

DACは電流または電圧出力を、R-2Rラダーまたは抵抗ストリング、出力アンプ、およびMOSFETの組み合わせで駆動します。大半のDACとディジタルポットの間で最も重要となる違いはDACの出力アンプです。出力アンプによって、DACはローインピーダンスの負荷を駆動することができます。しかし、最近では、ポテンショメータの中にも出力アンプを備えたものが見られるようになりました。

DAC出力が電流シンクまたはソースを可能とすることによって、設計はさらに柔軟を持つことができます。たとえば、MAX5550の10ビットDAC出力は内部でアンプ、pチャネルMOSFET、およびプルアップ抵抗を通じて、最大30mAまでソース可能な電流出力を提供します。反対に、10ビットのMAX5547は、アンプ、nチャネルMOSFETおよびプルダウン抵抗を備えており、最大3.6mAまでシンク可能な電流出力を提供します。電流出力に加えて、ボンドアウトされたアンプ端子を備えたDACもあり、追加の出力制御が可能です。これらのDACは、フォース/センスDACと呼ばれています。

DACは多くの場合、アンプを内蔵しているため、通常ディジタルポテンショメータより高価です。しかし、DACメーカーは、より小型パッケージのDACを生産しており、コストは下がる傾向にあります。

ディジタルポテンショメータの基本特性と優位点

前述の通り、ディジタルポテンショメータはディジタル入力を使用した抵抗の制御を可能にします。図1aに示されている3端子のディジタルポテンショメータは、実質的には、全抵抗が固定の可変抵抗分割器です。ディジタルポテンショメータは、ワイパをハイまたはロー側に接続することによって、または、ハイまたはロー側をフロートにすることによって、2端子の可変抵抗として設定することができます。DACとは違い、ディジタルポテンショメータは最高電圧をH端子、最低電圧をL端子として、またはその反対でも動作可能です。

ディジタルポテンショメータを選ぶにも多数の選択肢があります。リニアまたはログテーパおよび分解能/タップ数、不揮発性メモリ、コスト、およびインタフェースなどがそれであり、アップ/ダウン、プッシュボタン、SPI、およびI²Cのオプションがあります。

リニアポテンショメータは、ログテーパポテンショメータよりも一般的です。リニアポテンショメータの各抵抗はそれぞれ等しいため、ロー端子からハイ端子のステップがリニアな伝達関数となります。他方、ログテーパポテンショメータは、一般的に、広範囲のオーディオ信号に対応するよう設計されています。これは、ステップの増加に伴い、ステップ当りの減衰のデシベル数が増加し、人間の耳の応答をより忠実に再現するため、ログポテンショメータは、オーディオアプリケーションにより効果的となるためです。

ディジタルポテンショメータは、I2CおよびSPI、2線式アップ/ダウンインタフェース、SPIと多少異なる3線式インタフェース、またはプッシュボタンアップ/ダウンインタフェースなど、いくつかのタイプのインタフェースを通じて通信します。32タップログポテンショメータのMAX5456は、インタフェースの2つのディジタル接続がワイパを上下に、またはオーディオのバランスを左右に動かすことのできる、一種の2線式プッシュボタンインタフェースを組み込んでいます。

DAC/ポテンショメータの選択が難しいアプリケーション

明らかにDACが要求される多くのアプリケーションがある一方で、明らかにポテンショメータが要求されるようなアプリケーションもあります。高解像度モータ、センサ、またはロボット工学アプリケーションでは通常DACの分解能が要求されます。基地局および計測器製品では、DACの速度、分解能、およびパラレルインタフェースさえもが要求されます。

アンプフィードバックネットワークは、ディジタルポテンショメータの直線性が理由で、ポテンショメータのほうが使いやすいと言えるアプリケーションの一例です。オーディオ信号の減衰にはDACよりもログポテンショメータの方が適しています。

しかし、DACとディジタルポテンショメータの従来の区別は曖昧になりつつあります。図2は、LEDドライバMAX1553の輝度制御に、DACまたはディジタルポットのどちらも使用可能な例を示しています。この場合、MAX1553のBRT入力とDC電圧とFBとGNDの間の検出抵抗の値がLED電流レベルを決定します。

図2. MAX1553のBRT端子の電圧レベルは、ディジタルポテンショメータまたはDACで設定され、ディジタル入力を通してLED電流を微調整します。

図2. MAX1553のBRT端子の電圧レベルは、ディジタルポテンショメータまたはDACで設定され、ディジタル入力を通してLED電流を微調整します。

同様の記事がElectronic Productsの2006年4月オンライン版に掲載されています。



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