メカ式ポテンショメータに取って代わるディジタルポテンショメータ

2008年11月14日
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要約

ディジタルに調整可能なポテンショメータは、ディジタルポテンショメータまたはディジポットとも呼ばれ、なじみ深いオーディオアプリケーションだけでなく、あらゆる電子システムの旧式のメカ式バージョンに取って代わっています。より簡単で低コストバージョンのディジタル-アナログコンバータ(DAC)、ディジタルポットは、アナログ出力を可変抵抗の形で生成します。揮発性および不揮発性のタイプが提供され、ディジタル方式は多くの利点を備えています。ディジタルポットは、メカ式部品を損傷する恐れがある、ほこり、よごれ、および湿気に対して堅牢です。

はじめに

ディジタルポテンショメータは、メカ式ポテンショメータより格段に高い信頼性を備えています。ディジタルポットは5万回の書込みサイクルを容易に保証するのに対し、メカ式部品の定格はわずか数千で、時には、わずか数百です。ディジタルポットの分解能は32ステップ(5ビット)~256ステップ(8ビット)以上の範囲が可能です。ダイナミックレンジが重要でないLCDディスプレイのコントラストなどのアプリケーションの場合、低い分解能が有効です。最新の高分解能ディジタルポットは、一部のオーディオおよびHi-Fiアプリケーション向けの最大90dB標準ダイナミックレンジの実現に最適です。

不揮発性

アプリケーションによっては、ディジタルポットには不揮発性メモリ機能が必要です。いずれの部品タイプ(揮発性および不揮発性メモリ)も市場で定評があります。不揮発性ディジタルポットは、電源電圧の有無などの外部条件に関係なく、抵抗値を保持しているため、そのメカ式姉妹製品とほとんど類似しています。

不揮発性メモリ付きのディジタルポットはオーディオ機器に広く使用されています。これは、電源が完全にオフにされた場合でも、パワーアップすると常に、内部に保存された値が同じ抵抗設定を保証するためです。

ディジタルポットのMAX5427/MAX5428/MAX5429ファミリは、独自のプログラミング機能を提供します。各デバイスは、ワンタイムプログラマブル(OTP)機能を備え、ワイパのパワーオンリセット(POR)位置をユーザ定義の値に設定します(ワイパ位置は調整可能に維持されますが、パワーアップ時は、常にプログラムされた位置に戻ります)。別の方法として、OTP能力によって、インタフェースをディセーブルにし、ワイパを永続的に希望の位置に固定してそれ以上の調整を防ぐこともできます。その結果、デバイスはポテンショメータではなく、固定抵抗分配器となります。

オーディオについて

エレクトロニックポットは、対数およびリニア関数を提供します。対数ポテンショメータは、多くの場合、Hi-Fiオーディオのボリューム調整に使用されます。これは、対数ポットの各ステップがノンリニアの人間の耳に対しリニアな音量変化を作成するためです。今日の高集積化したディジタルポットは、シングルチップで最大6個の独立したポテンショメータを提供します。そのため、これらのポットは、ステレオやドルビーサラウンドシステムなど、数多くのオーディオアプリケーションもサポートしています。

オーディオの場合、特に、低減衰(32ステップ)ディジタルポットの場合、ステップごとのワイパ遷移に特別な注意を払う必要があります。ワイパが厳密に0Vで切り替わらない場合、オーディオに嫌なクリック/ポップ音が生じる可能性があります(図1)。幸いにも、一部の最新世代ディジタルポットは、ゼロクロス検出という機能を備え、ワイパ遷移時に生成された可聴ノイズを低減します。内蔵のゼロクロスおよびタイムアウト回路は、ワイパがゼロクロス(0V)または50ms遅延(いずれか早い方)を検出した後のみに、位置を変えることを保証します。

図1. 可聴クリック/ポップに対する0Vレベルスイッチングの効果

図1. 可聴クリック/ポップに対する0Vレベルスイッチングの効果

上述のアナログ領域の考慮項目に加えて、各ディジタルポットは、ディジタルインタフェースも備えています。大部分は、I2CまたはSPIなど、従来のシリアルインタフェースからプログラマブルで、一部は役に立つアップ/ダウンインタフェースを提供します。

より優れた性能

ディジタルポットは、メカ式ポテンショメータに対して別の性能利点も持っています。ディジタル調整可能なポットを回路ボードの信号経路にじかに実装することができるようになり、電子制御による複雑で高価なメカ式集積化が不要になっています。ディジタルポットは、電気的ノイズの除去を改善し、メカ式ポテンショメータのインタフェースに必要なケーブルによって拾われる妨害を排除します。

従来のディジタルポテンショメータは、従来のメカ式ポットにそのまま置き換わって、類似の方法で動作するため、長々とした説明を必要としません。しかし、低コストのステレオボリューム制御用に設計されたデバイスなど、特定用途向けデバイスは、何らかのコメントを必要とします。オーディオ用など、特定用途向けデバイスは、多くの場合、幅広いオーディオ信号範囲に対応するために、幅広い電圧範囲で動作します。これらは、多くの場合、対数テーパデバイスであるため、ステップ当りの減衰のdBの数値は、ステップ数の増加とともに増加し、人間の耳の応答をより良く再現します。しばしば、デバイスは、ミュート機能を備え、この機能を使って、信号をかなりの量(30dBなど)でさらに減衰します。

温度の問題

ディジタルポテンショメータの標準特性の1つは温度係数(TC)で、定格温度範囲で保証されます。大部分のポテンショメータには、2種類のTCを指定する必要があります。まず、絶対エンドツーエンドTCは、温度による絶対抵抗変化を示す大きい値で、次のように計算されます。

ΔR = RUNCOMP × TC × ΔT/106

ここで、各項目は以下を表します。
RUNCOMP:未補償の抵抗値
TC:温度係数
ΔT:温度変化

したがって、たとえば、20kΩ抵抗と35ppmの絶対TCを持つディジタルポテンショメータは全50℃の温度範囲で35Ω (0.2%)の変化を示します。また、20kΩエンドツーエンド抵抗の初期値は大幅に変動することができ、15kΩ~25kΩの範囲が可能です。その場合、32インクリメント(ステップ)の抵抗値は、470Ω~780Ωの範囲となります。この変化は、もちろん、絶対TC偏差よりも大幅に高くなります。

TCの2番目のタイプはレシオメトリックTCです。ポテンショメータは通常、特に、絶対抵抗値が絶対TCとステップ間の変化よりもあまり重要でないレシオメトリックアプリケーションにおいて、分圧器として使用されます。たとえば、わずか5ppmのレシオメトリックTCによって、温度で調整可能な利得の非常に安定した設定が可能です。

高分解能アプリケーション

プログラマブル利得アンプ(PGA)や計測アンプ(IA)に見られるディジタルポテンショメータは、標準の調整可能な回路よりも大幅に高い精度を必要とします(図2)。多くの場合、これらのアプリケーションには、-40℃~+85℃の範囲で最低0.025%の分配比率許容(精度)が必要とされます。

図2. オペアンプとディジタルポテンショメータ(低IC)が統合して高精度、プログラマブル利得アンプ(PGA)を実装

図2. オペアンプとディジタルポテンショメータ(低IC)が統合して高精度、プログラマブル利得アンプ(PGA)を実装

結論

ディジタルポテンショメータは、メカ式ポテンショメータよりも数多くの優れた利点を備えています。信頼性の向上に加えて、ディジタルポテンショメータは、寄生の低減とノイズに対する脆弱性の抑制によって、省スペースでより優れた電気的性能を備えています。ディジタルポットは、ほとんどすべてのアプリケーションにおけるメカ式タイプに取って代わったため、設計者と最終ユーザは、関連したさまざまな利点を享受することができます。



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