概要
設計リソース
設計/統合ファイル
• Schematic• Bill of Materials
• Gerber Files
• Layout Files (Allegro)
• Assembly Drawing 設計ファイルのダウンロード 328.1 K
評価用ボード
型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。
- EVAL-CN0342-EB1Z ($92.98) Flyback Power Supply Using a High Stability Isolated Error Amplifier
機能と利点
- 絶縁型フライバック電源
- 絶縁型リニア・エラー・アンプ
- ADUM4190 と同等な機能を持つ ADUM3190 を使用
マーケット & テクノロジー
使用されている製品
参考資料
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CN0342: 高安定性の絶縁型エラーアンプを使用したフライバック電源2017/03/06PDF302 K
回路機能とその特長
図1に示す回路は、2次側から1次側へ帰還信号を供給するための絶縁型リニア・エラー・アンプを用いた絶縁型フライバック電源です。伝達関数が時間と温度に対して変化する非線形なフォトカプラ・ベースのソリューションとは異なり、伝達関数が線形の絶縁型アンプは安定しており、絶縁バリアをまたいで帰還信号を転送する際のオフセットとゲイン誤差を最小限に抑えます。
全ての回路が5V~24Vで動作するので、標準的な産業用電源や自動車用電源で使用することができます。回路の電流出力能力は、5V入力と5V出力の構成で最大1Aです。
このソリューションは、高いDC入力電圧を使って最適な効率と小さなフォーム・ファクタの低電圧絶縁型電源を実現するアプリケーションに使用することができます。これらの例には、電力効率とプリント回路ボード(PCB)の密度が重要で−48V電源が一般的な、10W~20Wの通信用電源やサーバー用電源などがあります。

回路説明
アイソレーション・アンプはADuM3190で、1.225Vの電圧リファレンスとユニティ・ゲイン帯域幅積が10MHzのエラーアンプを内蔵しています。外付け抵抗分割器(R1、R2、R3、およびR4)と補償ネットワーク(R9、C9、およびC10)でアナログ帰還ループを形成します。
ADuM3190の入力電源範囲は両側とも3.0V~20Vで、内部の低ドロップアウト・レギュレータは、電圧リファレンス、エラーアンプ、およびアナログ・アイソレータに安定した電源を供給します。ADuM3190は、DOSA(Distributed-power Open Standards Alliance)の出力電圧調整方法と互換性があります。
ADP1621は、フライバック電源のパルス幅変調(PWM)制御を行います。5.5Vの内部シャント・レギュレータは、外付けNPNトランジスタ(Q2)を追加することにより、高い電源入力電圧を供給できます。また、ADP1621は電流モード動作で損失のない電流検出も行うため、ラインおよび負荷の過渡応答が優れています。
出力電圧の設定
出力電圧は、VOUTからADuM3190の−INピンに接続された分圧器によって設定します。帰還抵抗の比によってシステムの出力電圧を設定します。ADuM3190の内部電圧リファレンスを使用すると、−INピンのレギュレーション電圧は1.225Vになります。
5V出力の構成では、抵抗分割器の値はR1 = 2kΩ、R2 = 47kΩ、R3 = 51kΩ、およびR4 = 100kΩです。
電圧リファレンス
ADuM3190は、−40℃~+125℃の温度範囲で精度が±1%に規定された1.225Vの電圧リファレンスを内蔵しています。リファレンス電圧出力ピン(REFOUT)をエラーアンプの+INピンに接続して出力電圧を設定することができます。高精度な出力電圧や特殊な出力電圧が必要な場合、および別のリファレンス電圧を使用する必要がある場合には、+INピンを外部リファレンスに接続することもできます。
トランスの選択
トランスによって1次側インダクタの電流リップルが決まるため、トランスの選択は重要です。
この設計例では以下のパラメータを使用しました。
- VIN = 5 V
- VOUT = 5 V
- IOUTMAX = 1 A
- fSW = 200 kHz
- トランスの巻数比= 1:1
トランスの1次側の平均電流ILAVGは次式で求められます。
ここで、
ILOADは負荷電流、
Dは最大負荷電流時のデューティ・サイクル、
NS/NPはトランスの巻数比です。
出力電圧は次のようになります。
出力と入力がどちらも5Vであり、トランスの巻数比が1:1なので、デューティ・サイクル(D)は50%になります。
1次側インダクタのピークtoピーク・リップル電流はインダクタ値に反比例します。
ここで、
fSWはスイッチング周波数、
Lは1次側のインダクタ値です。
連続導通モード(CCM)で動作すると仮定した場合、1次側インダクタ電流は次式で求められます。
1次側リップル電流がトランスの1次側平均電流の50%と仮定した場合、インダクタの妥当な選択値は次のようになります。
この設計には、1次側インダクタンスが16µHで巻数比が1:1のトランスを使用しました(Halo Electronics社のTGB01-P099EP13LF)。
補償ネットワーク
フライバック方式の電源では、出力負荷抵抗、出力コンデンサ、およびコンデンサの等価直列抵抗(ESR)により、部品の種類と値に応じた周波数にゼロ点と極が追加されます。また、制御から出力までの伝達関数に右半平面(RHP)ゼロ点が生じます。RHPゼロ点では位相が90°遅れるため、ゲインが0dBの周波数(クロスオーバー周波数)はRHPゼロ点より低くなります。
エラーアンプを備えたADuM3190を使用し、−INピンからCOMPピンにタイプII補償ネットワークを構成することで制御ループを安定させるための補償を行うことができます。補償ネットワーク値は選択する部品に依存します。
タイプII補償ネットワークのゼロ点と極は以下のように求められます。
この特定の設計では、補償ネットワークを、R9 = 15kΩ、C9 = 2.2nF、およびC10 = 1nFを使って設定します。
この補償ネットワークが形成するゼロ点と極はそれぞれ、fZERO = 4.8kHzとfPOLE = 15.4kHzです。ゼロ点と極の周波数を上げると負荷過渡応答が向上しますが、帰還ループの位相マージンが小さくなって電源
スナバ回路ネットワーク
パワーMOSFET(Q3)がオフすると、トランスのリーク・インダクタンスによってドレインに高電圧のスパイクが発生します。この過大な電圧がパワーMOSFETに過度のストレスを与えて、信頼性の問題や損傷を生じる可能性があります。このため、電圧をクランプするためのネットワークを追加する必要があります。
MOSFETのドレイン電圧がD2のカソード電圧を超えると、抵抗、コンデンサ、およびダイオード(R19、C21、およびD2)によるスナバ回路ネットワークがスナバ・ダイオードをオンすることによってリーク・インダクタンスの電流を吸収します。
ADP1621は、パワーMOSFETのドレインをCSピンに接続した無損失モードで動作します。実際の設計では、CSピンの電圧を33Vの絶対最大値に、また、精度を維持するには30Vの実質的な最大値に制限します。ピーク電圧の測定値が30Vを超えるか、またはより高精度な電流制限が必要な場合、CSピンをMOSFETのソースの外付け電流検出抵抗に接続します。
1次側電源
ADP1621の電源電圧範囲は2.9V~5.5V、ADuM3190の電源電圧範囲は3.0V~20Vです。5V~12Vの入力電源電圧で動作させるため、電圧レギュレータとして小信号NPNトランジスタ(Q2)を使用することができます。
ADP1621のINピンには5.5Vの内部電圧レギュレータがあり、これをNPNトランジスタQ2のベース・ノードに接続します。この接続により、エミッタ・ノードを5.5V − 0.7V = 4.8Vに安定化できるようにQ2をバイアスし、この電圧をADP1621の電源電圧(PIN)とADuM3190の電源電圧(VDD1)として使用することができます。
2次側電源
ADuM3190は、2次側の電源電圧(VDD2)の範囲が3.0V~20Vで、3.0Vの動作電圧を供給するレギュレータを内蔵しています。VOUTを20Vより高い電圧に設定する場合、電圧レギュレータを外付けして指定されたVDD2電圧を供給します。
絶縁と安全性
ADuM3190は、2.5kV rmsの絶縁電圧定格を実現するため、小型16ピンQSOPパッケージを採用しています。
ADuM3190の安全仕様を表1に示します。
Parameter | Value | Unit |
Rated Dielectric Insulation Voltage | 2500 | V rms |
Minimum External Air Gap (Clearance) | 3.8 min | mm |
Minimum External Tracking (Creepage) | 3.1 min | mm |
Minimum Internal Gap (Internal Clearance) | 0.017 min | mm |
Tracking Resistance (Comparative Tracking Index) | >400 | V |
Isolation Material Group | II |
バリエーション回路
入力電圧が高い場合、電流制御ループに電流検出抵抗を使用する必要があります。R20抵抗を0Ωからアプリケーションに必要な値に変更します。1A出力の設定では、50mΩの検出抵抗値を選択します。ADP1621の内部電流帰還ループにより、電流検出電圧が上昇したときにスイッチングの最大PWMデューティ・サイクルが減少します。検出抵抗値が大きすぎるとスイッチングのデューティ・サイクルが制限されるため、特定の出力電圧での最大出力電流も制限されます。ADP1621の補償ピン(COMP)の有効入力電圧範囲は0V~2Vです。十分なスイッチング・デューティ・サイクルを確保するため、CSピンの電圧を0.1V未満に制限することを推奨します。
5V未満の入力電圧で動作させる場合、コレクタとエミッタの間のジャンパを短絡することによって入力レギュレーション・トランジスタをバイパスします。
−48V入力を備えた通信用電源やサーバー用電源などのアプリケーションでは、1次側コントローラの電源電圧を+5Vに安定化します。NPNトランジスタQ2には高いVCEブレークダウン電圧を必要とし、パワーMOSFET Q3には高いVDS(100V、VDSMAX)を必要とします。さらに、RCDスナバ回路のダイオードD2を70Vの逆電圧定格のものに変更します。
ADP1621の内部レギュレータの電流を減らすため、R12を1.5kΩに増やします。
各種の入力電圧設定値に対して選択した代替部品を表2に示します。
Input Voltage | 5 V to 7 V | 7 V to 24 V | 24 V to 48 V |
Q2 | PMST2369 | PMST2369 | BC846 |
Q3 | NTD18N06L | NTD18N06L | NVD6824NL |
D2 | MBR0540T1 | MBR0540T1 | MMSD701T1 |
R12 | 390 Ω | 820 Ω | 1.5 kΩ |
回路図、レイアウト、部品表などが完備された設計サポート・パッケージについては、www.analog.com/CN0342-DesignSupportをご覧ください。
性能の測定結果
3つの異なる入力電圧(5V、12V、および24V)で測定した効率を図2に示します。

負荷電流 対 フライバック回路の出力効率
−40℃~+125℃の温度範囲での出力電圧を図3に示します。この範囲での総合出力電圧誤差は±20mV(±0.4%)未満です。

負荷電流を増やしたときと減らしたときの過渡応答をそれぞれ図4と図5に示します。過渡応答時間は、負荷電流の100mAから900mAへの上昇時に32µs、負荷電流の900mAから100mAへの減少時に45µsになります。
EVAL-CN0342-EB1Z評価ボードの写真を図 6に示します。



回路の評価とテスト
DC電源と信号源/測定ユニットを使って、この回路の効率と負荷レギュレーションをテストします。負荷過渡応答と出力リップルはオシロスコープと電流プローブで測定します。
必要な装置
以下の装置が必要です。
- 3Aの電流出力能力と電流測定機能を備えた30V電源
- 1Aの負荷電流能力を備えた信号源/測定ユニット
- 帯域幅が300MHz以上のオシロスコープと入力範囲が1A以上の電流プローブ
評価開始にあたって
この回路を評価するのにソフトウェアのサポートは不要です。電源を接続すると、出力が設定に基づいて安定化されます。
セットアップとテスト
5V電源を1次側入力コネクタ(J4)に接続し、グラウンドをJ5に接続します。
J1が5V出力でJ3が出力グラウンドの2次側に電源メーターを接続します。
J15のジャンパを接続し、ADuM3190の1.225Vの内部電圧リファレンスを使用します。