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評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • EVAL-SDP-CB1Z ($116.52) Eval Control Board
在庫確認と購入

機能と利点

  • 20ビット リニア電圧
  • +10V アウトプット
  • 低ノイズ
  • バッファ付きリファレンス入力

回路機能とその特長

図1に示す回路は外付け部品数が最少の20ビット、リニア、低ノイズ、高精度ユニポーラ(+10 V)電圧源です。 AD5790 DACはバッファなしの20ビット電圧出力DACで、33 Vまでの両電源で動作します。AD5790の正リファレンスの入力範囲は5 V~VDD − 2.5 Vで、負リファレンスの入力範囲はVSS + 2.5 V~0 Vです。両方のリファレンス入力は内部でバッファされているので、外部バッファは不要です。AD5790の相対精度仕様は最大±2 LSBで、最大−1~+2 LSBのDNL仕様でモノトニシティ(単調増加性)動作が保証されています。

高精度オプアンプ AD8675 はオフセット電圧が低く(最大75 μV)、低ノイズ(標準2.8 nV/√Hz)でAD5790の出力バッファとして最適です。AD5790は整合した6.8 kΩのフィードフォワード抵抗とフィードバック抵抗を内蔵していますが、これらの抵抗をオペアンプAD8675に接続して±10 Vの出力振幅のための10 Vのオフセット電圧を供給します。あるいは並列接続してバイアス電流をキャンセルすることもできます。この例では、ユニポーラ+10 V出力の実装例を示しており、抵抗はバイアス電流のキャンセルに使用されています。内部抵抗の接続は、AD5790の制御レジスタ内の1ビットを設定することにより制御されます(AD5790のデータシート参照)。

この回路へのデジタル入力はシリアルで、標準SPI、QSPI、MICROWIRE®、DSPの各インターフェース規格と互換性があります。コンパクトなこの回路は、高精度アプリケーション向けに高精度と低ノイズの両方を実現します。これは、AD5790とAD8675の高精度部品の組み合わせによって可能になります。

20-Bit Accurate, 0 V to +10 V Voltage Source
図 1.20 ビット精度の 0 V~+10 V 電圧源(簡略回路図:全接続の一部およびデカップリングは省略されています)

回路説明

図1に示すD/Aコンバータ(DAC)は、AD5790(SPIインターフェースを備えた高電圧20ビットコンバータ)で、INLは±2 LSB、DNLは−1~+2 LSB、ノイズ・スペクトル密度は8 nV/√Hzです。また、AD5790 は直線性誤差の長期安定性が0.1 LSBと非常に優れています。

バッファ付きユニポーラ構成のAD5790を図1に示します。出力バッファには低ノイズ、低ドリフトのAD8675が使用されています。このアンプは、低ノイズの高精度リファレンス(この場合はKrohn Hite Model 523高精度リファレンス)の+5 Vリファレンス電圧を増幅するのにも使われています(A1)。この利得回路の抵抗R2とR3は許容誤差が0.01%、温度係数が0.6 ppm/°Cの高精度金属皮膜抵抗です。全温度範囲で最適性能を得るために、R2とR3はVishay 300144やVSR144シリーズのように単一パッケージに収納されている必要があります。システム内のノイズを低く抑えるため、R2とR3を1 kΩにします。R1とC1はカットオフ周波数が約10 Hzのローパス・フィルタを形成します。このフィルタは電圧リファレンスのノイズを減衰させるためのものです。


直線性の測定

図1に示す回路の精度に関する性能は、Agilent 3458Aマルチメータを使用した評価用ボードEVAL-AD5790SDZで実証されています。図2は、DACコードの関数としての積分非直線性が、0°C~105°Cで± 2 LSBの仕様内に十分収まることを示しています。

図3は、DACコードの関数としての微分非直線性が、−1 LSB~+2 LSBの仕様内であることを示しています。

Integral Nonlinearity vs. DAC Code
図2.DACコード対 積分非直線性

 

Differential Nonlinearity vs. DAC Code
図3.DACコード対 微分非直線性

 

ノイズ・ドリフトの測定

高精度を実現するには、回路出力でのピークtoピーク・ノイズを1 LSB未満に抑える必要があります。1 LSBは20ビットの分解能で+10 Vのユニポーラ電圧範囲の場合9.5 μV未満に相当します。

リアルタイム・ノイズのアプリケーションには、周波数が0.1 Hz以下の1/fノイズ成分を減衰させるための、カットオフ周波数が0.1 Hz(DCまでの周波数を含む)のハイパス・フィルタ特性がありません。これを考慮に入れて、測定されたピークtoピーク・ノイズを図4に示します。この場合、回路の出力でノイズを100秒間測定しているので、実効的に0.01 Hzまでの低い周波数が測定に含まれています。

ノイズ性能が大きく影響されないように、温度制御された超低ノイズ・リファレンスがこの測定には必要でした。

ノイズはゼロスケールの出力電圧で最小となっています。これはDACのコアからのノイズのみを表しているからです。ゼロスケールのコードを選択したとき、各電圧リファレンス経路から生じるノイズはDACによって減衰されます。

DAC Output Voltage Noise Measured Over 100 Second Period
図4.フルスケール(緑)、ハーフスケール(赤)ゼロスケール(青)で高精度リファレンスを使って100秒間測定した DAC出力電圧ノイズ

 

測定時間を長くすると低い周波数が含まれ、ピークtoピーク値が大きくなります。低周波数では、温度ドリフトと熱電対効果がノイズに影響するようになります。これらの影響は熱係数の低い部品を選択することによって減らすことができます。

プリント回路基板の全回路図とレイアウトは、CN-0257デザイン・サポート・パッケージ(www.analog.com/CN0257-DesignSupport)に含まれています。

バリエーション回路

AD5790は0 V~+5 Vから±10 Vまでの広い出力範囲をサポートします。バイポーラ構成が必要な場合、反転させた高精度リファレンス電圧をVREFNピンに印加する必要があります。この場合も、高精度アンプ技術と温度に対して安定した高精度抵抗が必要です。

AD8676 はAD8675オペアンプのデュアル・バージョンで、必要に応じてこの回路に使用することができます。

回路の評価とテスト


必要な装置

  • システム・デモ用プラットフォーム(EVAL-SDP-CB1Z)
  • EVAL-AD5790SDZ評価ボードとソフトウェア
  • Krohn-Hite Model 523高精度リファレンス
  • Agilent 3458Aマルチメータ
  • PC (Windows 32ビットまたは64ビットOS)
  • National Instruments GPIB-USB-Bインターフェース・ケーブル
  • SMBケーブル(2)


ソフトウェアのインストール

AD5790評価用キットのCDには自己インストール型ソフトウェアが含まれています。このソフトウェアはWindows XP (SP2)とVista (32ビットと64ビット)で使用できます。セットアップ・ファイルが自動的に起動しない場合は、CDからsetup.exeファイルを実行することができます。

PCに接続したときに評価システムが正しく認識されるように、評価ボードとSDPボードをPCのUSBポートに接続する前に評価用ソフトウェアをインストールしてください。

  1. CDからのインストールが完了した後、「電源」のセクションで説明されているように、AD5790評価用ボードの電源を投入します。SDPボードを(コネクタAまたはコネクタB経由で)AD5790評価用ボードに接続してから、付属のケーブルを使ってPCのUSBポートに接続します。
  2. 評価用システムが検出されたら、順次表示されるダイアログボックスに従って最後まで進みます。これでインストールが完了します。


機能図

図6にテスト・セットアップの機能図を示します。


電源

以下の外部電源を接続する必要があります。

  • AD5790のデジタル電源用にコネクタJ1のVCCとDGND間に3.3 V。あるいは、Link 1をポジションAに配置して、SDPボード経由でUSBポートからデジタル回路に給電する(デフォルト設定)。
  • AD5790の正アナログ電源用にJ2のVDD入力とAGND入力の間に+12 V~+16.5 V。
  • AD5790 の負アナログ電源用に J2 の VSS 入力とAGND 入力の間に−12 V~−16.5 V。
  • VREF と表示された SMB コネクタに接続された+5 V 高精度リファレンス。

Evaluation Software Main Window
図5.評価用ソフトウェアのメイン・ウィンドウ

 

Functional Block Diagram of Test Setup
図6.テスト・セットアップの機能ブロック図

 

デフォルトのリンク・オプションのセットアップ

デフォルトのリンク・オプションを表1に示します。デフォルトでは、ボードは±10 Vの出力範囲の場合VREFP = +10 VおよびVREFN = −10 Vに設定されています。

表 1.デフォルト・リンク・オプション
リンク No. オプション
LK1 A
LK2 B
LK3 A
LK4 Removed
LK5 Removed
LK6 Removed
LK7 Removed
LK8 C
LK9 Inserted
LK11 Inserted

 

図1に示す回路のようにボードを設定するには、表1のデフォルトのリンク設定に以下の変更を行う必要があります。

  1. LK3をポジションAに配置します。
  2. LK4を外します。
  3. LK8をポジションBに配置します。
  4. LK9を外します。

これらの変更により、出力バッファ・アンプは利得が1に設定され、AD5790のVREFNピンはグラウンドに接続されます。さらに、ボードはVREFと表示されたSMBコネクタの高精度+5 Vリファレンスを受け入れるように設定されます。

EVAL-AD5790SDZのテスト・セットアップの詳細に関しては、ユーザーガイド UG-342 を参照してください。


テスト

VOUT_BUF SMBコネクタはAgilent 3458Aマルチメータに接続されています。AD5790 GUIのMeasure DAC Output(DAC出力の測定)タブを使って直線性を測定します。

ノイズ・ドリフトもVOUT_BUF SMBコネクタを使って測定します。出力電圧はAD5790 GUIのProgram Voltage(電圧設定)タブを使って設定します。ピークtoピーク・ノイズ・ドリフトは100秒間測定します。

INL、DNL、およびノイズの定義および測定値を使った計算方法に関しては、AD5790データシートの"TERMINOLOGY"のセクションおよび Data Conversion Handbook, "TestingData Converters," Chapter 5, Analog Devicesを参照してください。