AN-1562: ADE9153A を使用したシステムに電力量監視を付加する場合のレイアウト上の考慮事項

はじめに

システムに電力量計測を付加するには、一般に幅広いキャリブレーション・プロセスが必要です。ADE9153A(mSure®自動キャリブレーション機能を備えた電力量計IC)は、電力量計測システムのキャリブレーション・プロセスを簡素化します。ADE9153A は、街路照明、データ・センターの電力効率の計測、スマート配電、スマート・プラグ、装置の状態監視といったシステム向けの様々なアプリケーションに組み込み可能です。

図1 に、電流センシングに使用するシャント抵抗と電圧センシングに使用する電位分圧器を搭載して単相システムを構成するための、ADE9153A の基本的な接続を示します。絶縁バリアによって、コントローラがADE9153A デバイスから分離されています。ADE9153A のグラウンドが危険な電圧にあるため、この分離は多くのアプリケーションにおいて必要です。

このアプリケーション・ノートでは、ADE9153A の電力量監視回路を既存のシステムに付加する際のレイアウト上の考慮事項について説明します。

このアプリケーション・ノートと共に、ADE9153A のデータシート、ADE9153A Technical Reference Manual 、およびEV-ADE9153ASHIELDZ user guide を参照してください。

図1. 1 次側のシステムを対象としたADE9153A の接続(すべての接続が示されているわけではありません)

図1. 1 次側のシステムを対象としたADE9153A の接続(すべての接続が示されているわけではありません)

ADE9153A のレイアウト上の推奨事項

ADE9153A のmSure 機能では、シャント、カレント・トランス(CT)、およびプリント回路基板(PCB)レイアウトに関して設計上、特別な考慮が必要です。

相電流チャンネル

ADE9153A はセンサー用の付加端子とmSure 機能用のPCB を必要とするため、このデバイスの電流チャンネルは他の電力量計IC の電流チャンネル設計とは異なります。

ADE9153A のIAMS ピンにより、mSure を電流シャントに注入することができます。レイアウトは、電力量計測システムの性能にとって非常に重要です。

図2 に、EV-ADE9153ASHIELDZ に実装されているSMD の電流シャントを示します。PCB に1 つのフットプリントが付加されており、このフットプリントはmSure 機能を果たすADE9153AのIAMS ピンとグラウンド(GND)プレーンに接続されています。

図2. 表面実装デバイス(SMD)の電流シャント

図2. 表面実装デバイス(SMD)の電流シャント

図3 に、推奨するPCB のフットプリントとパターンを使用したSMD の電流シャントの上面図を示します。シャントのIAP 端子は電流チャンネルの正の差動端子で、また、シャントのIAN 端子は電流チャンネルの負の差動端子です。設計上の理由で、電流チャンネルの信号がIAN ピンを経由してより簡単に配線されるときは、バックグラウンド電流がシャントに対して必ず逆方向になります。このため、AI_PGAGAIN レジスタ内のAI_SWAP ビットを0x0 に設定する必要があります。

図3. SMD の電流シャント用に推奨するPCB のフットプリントとパターン

図3. SMD の電流シャント用に推奨するPCB のフットプリントとパターン

図3 は、IAMS ピン(6 番ピン)に直接接続されたmSure イン・パターンと、GND プレーンに接続されたmSure リターン・パターンも示しています。

mSure イン・パターンとmSure リターン・パターンは、A/D コンバータ(ADC)の入力パターン(IAP とIAN)から離して配置してください。mSure リターン信号は、DGND(1 番ピン)に接続されたグラウンド・プレーンに対して、可能な限り最短のリターン経路を通る必要があります。

自動キャリブレーションの間、ADE9153A のIAMS ピンはmSureイン・パターンを通してmSure 信号を出力し、この信号はシャントに注入されます。0.1μF~1μF の値のコンデンサを、IAMSピンとIAMS ピンに近いGND プレーンの間に配置する必要があります。このコンデンサは、電気的高速トランジェントから回路を保護します(図4 参照)。

図4. 電気的高速トランジェントに対して耐性を高めるためのIAMS コンデンサ

図4. 電気的高速トランジェントに対して耐性を高めるためのIAMS コンデンサ

IAMS ピンからの電流が効率的に流れるように、IAMS ピンから最も遠いパターンは約1.5mm の幅がなければなりません。このパターンは、ピン幅に合わせるため、IAMS ピンに近づくにつれて徐々に細くなり、約0.25mm の幅まで細くなっています。

図5 にIAMS(mSure イン)用のPCB パターンを示します。このパターンは、ビアを通して相互に接続されたPCB の最上層と最下層のGND プレーンで囲まれています。

図5. IAMS パターン

図5. IAMS パターン

中性電流チャンネル(オプション)

図6 に、IB 端子(IBMS、IBN、およびIBP)におけるカレント・トランス(CT)の推奨する使用法を示します。mSure 巻線は、中性巻線からガルバニック絶縁される必要があります。CTの負荷抵抗のIBMS 端子をチップのIBMS ピン(19 番ピン)に直接接続し、更にIBMS_BACK 端子をリターン・ワイヤまたはGND プレーンに接続されたmSure 巻線に接続します。

図6. mSure 注入端子を使用したCT の設計

図6. mSure 注入端子を使用したCT の設計

ADE9153A のIBMS ピンは、中性線CT の1 次側巻線に誘導されるmSure 信号を出力します。この信号は、DGND(20 番ピン)に接続されたGND プレーンに対して、可能な限り最短のリターン経路を通る必要があります。電気的高速トランジェントに対して耐性を高めるために、IBMS パターンとIBMS ピンに近いGND プレーンの間にコンデンサを配置します。IBMS 用に推奨する回路図とレイアウトは、図4 と図5 に示されているIAMS 用に推奨する回路図とレイアウトに類似しています。

電力量計測システムにおいて中性電流計測が不要な場合は、中性電流チャンネル入力IBN(11 番ピン)とIBP(12 番ピン)を短絡します。更に図7に示すように、IBMS(19番ピン)をGNDプレーンとDGND(20 番ピン)に接続して短絡します。

図7. 未使用のIBP ピン、IBN ピン、およびIBMS ピンに対して推奨するパターン接続

図7. 未使用のIBP ピン、IBN ピン、およびIBMS ピンに対して推奨するパターン接続

電圧チャンネル

図8 に、電源電圧を測定するためのインターフェース回路を示します。ADE9153A のVAMS ピンはmSure 信号を出力し、この信号は電位分圧器の最低部に注入されます。電圧チャンネルの減衰回路は、この回路のコーナ周波数(3dB)が電流チャンネル入力のアンチエイリアシング・フィルタのコーナ周波数にマッチするように設計されています。

図8. 電圧チャンネルの回路図

図8. 電圧チャンネルの回路図

図9 に示すように、VAN ピンをVAMS ピンに短絡して、VAP パターンの周りに完全なガードを作成します。幅が0.1mm のVAPパターンの周り全体を裸銅のVAMS パターンで囲んでガードを作成します。

図9. VAP パターン

図9. VAP パターン

ガード・パターンはADE9153A パッケージの下を通る必要があり、更にVAMS ピンをVAN ピンに接続する必要があります。図10 のラベル3 に示すように、このパターンは可能な限りVAPピンの近くに配置し、小さな裸銅の部分を設ける必要があります。

図10. ADE9153A とVAP ピン・ガードの側面図

図10. ADE9153A とVAP ピン・ガードの側面図

図10 に、VAP ピン・ガードのあるPCB レイアウトに実装されたADE9153A の側面図を示します。図中で番号が付けられたラベルは以下のとおりです。

  • ラベル1A とラベル1B は、VAP ピンの後側のガードを示しています。この裸銅パターンをADE9153A のフットプリントのVAMS(13 番ピン)とVAN(15 番ピン)の露出パッドに短絡しても、デバイスの性能に悪影響を及ぼすことはありません。このパターンがADE9153A のフットプリントの中央の露出パッドに短絡しないように、十分な間隔を確保してください。
  • ラベル2 は、裸銅パターンと、13 番ピンおよび15 番ピンの露出パッドの間にある被覆されたパターンを示しています。このパターンは、デバイスが容易にハンダ処理されるように必ず絶縁してください。
  • ラベル3 は完全な裸銅を示しており、この裸銅は電位分圧器に向かうパターンに続いています。ハンダ処理を容易にするために、この裸銅パターンは、ADE9153A のフットプリントの13 番ピンと15 番ピンの露出パッドまでは絶対に延ばさないでください。これらのピンに近いパターンは必ず完全に絶縁し、絶対にむきだしにしないでください。
図11. VAMS とVAN のガード

図11. VAMS とVAN のガード

ノイズ耐性を高めるために、ビアと最下層のパターンを通したVAMSとVANのガード接続を小さなパターンで囲みます(図12を参照)。

図12. ビアを通したVAMS とVAN の相互接続

図12. ビアを通したVAMS とVAN の相互接続

アンチエイリアシング・フィルタ

図13 と図14 は、電流チャンネルのアンチエイリアシング・フィルタの回路図です。これらのフィルタは電流シャント、またはCT(中性チャンネルがある場合)の端子の近くに配置する必要があります。レイアウトにおいて、2 つのアンチエイリアシング・コンデンサを対称的に、かつアナログ・フロント・エンドの近くに配置し、平行なパターンをピンに引き込むよう徹底してください。電圧チャンネル用のアンチエイリアシング・フィルタについては、電圧チャンネルのセクションで説明します。

図13. 相電流チャンネルでのアンチエイリアシング用の回路図

図13. 相電流チャンネルでのアンチエイリアシング用の回路図

図14. 中性電流チャンネルでのアンチエイリアシング用の回路図

図14. 中性電流チャンネルでのアンチエイリアシング用の回路図

水晶発振器とコンデンサ

mSure 自動キャリブレーションにおいて最高性能を得るには、水晶発振器のセクションとアンチエイリアシング・コンデンサのセクションで説明されている、水晶発振器の選択とアンチエイリアシング・コンデンサの選択でのパラメータを考慮する必要があります。

水晶発振器


以下の仕様に従って水晶発振器を選択します。

  • 動作温度:−40ºC~+85ºC
  • 周波数許容値:±50ppm 以下
  • 周波数安定性:±30ppm 以下

ノイズや妨害からCLKIN ピンおよびCLKOUT ピンを保護するため、負荷コンデンサと、CLKIN ピンおよびCLKOUT ピンから長距離の接続をしないでください。なぜなら、長距離の接続をすると、水晶発振器のレイアウト内に大きなループが発生する可能性があるためです。

CLKIN ピン用の負荷コンデンサは、可能な限りCLKIN ピンの近くに配置します。CLKOUT ピン用の負荷コンデンサは、CLKOUT ピンの近くに配置します。ただし、この間隔はCLKINの負荷コンデンサとCLKIN ピンの間隔よりも長くすることができます。

負荷コンデンサから長距離の接続をしないでください。長距離の接続をすると、水晶発振器のレイアウト内に大きなループが発生します。この構成によって、CLKIN ピンとCLKOUT ピンがノイズや妨害から保護されます。

高速クロック信号が信号パターンにカップリングしないように、水晶発振器のパターンの近くに信号パターンを配線しないでください。

負荷コンデンサ値の計算と水晶発振器の選択の詳細については、ADE9153A Technical Reference Manual を参照してください。

図15. 水晶発振器と負荷コンデンサの推奨レイアウト

図15. 水晶発振器と負荷コンデンサの推奨レイアウト

アンチエイリアシング・コンデンサ


相電流チャンネル、中性電流チャンネル、および電圧チャンネルの入力にアンチエイリアシング・コンデンサ(C0G(NP0)特性)を使用します。

デカップリング・コンデンサ


デカップリング・コンデンサの推奨する容量値は、4.7μF と0.1μF です。これらのコンデンサの位置決めを行うときは、0.1μF のコンデンサをこのチップの最も近くに配置し、コンデンサとデバイスのピン間の接続を可能な限り短くするよう徹底してください(図16 を参照)。

図16. ADE9153A におけるコンデンサのレイアウト

図16. ADE9153A におけるコンデンサのレイアウト

AGND ピンとDGND ピンをPCB の最上層のGND プレーンに接続します。これらのピンの近くにビアを配置して、これらのピンをPCB の最下層のGND プレーンに接続します。

図17 に示すように、REFIN とAVDDOUT 用のデカップリング・コンデンサは、GND を通してAGND ピン(17 番ピン)に接続します。ビアをAGND ピンに近いPCB の最下層のGND プレーンまで通すと、この範囲でのグラウンドの配線が改善されます。

図17. REFIN とAVDDOUT 用のグラウンド・デカップリング・コンデンサの接続

図17. REFIN とAVDDOUT 用のグラウンド・デカップリング・コンデンサの接続

電源

EV-ADE9153ASHIELDZ では、ADE9153A を起動するためにADuM6000 絶縁型DC/DC コンバータを使用しています。

この基板では絶縁型電源を使用しています。ただし、ADE9153A 用のシステム電源には絶縁型と非絶縁型のどちらも使用できます。使用すべき電源の選択は、アプリケーションの種類とシステムの設計によって決まります。

絶縁型電源を使用した接続


メータ用の電源入力は、ライブ・イン端子と中性端子の両方に接続する必要があります。絶縁型電源を使用するときは、トランス入力を電流シャントに接続されたライブ・イン端子に接地します。トランス入力は電流シャントを通してライブ・イン端子にのみ接続し、GND プレーンには接続しないでください。GND プレーンとトランス入力の唯一の接続点を必ずライブ・イン端子にしてください。

金属酸化物バリスタ(MOV)をライブ・イン端子と中性端子の間に近接して接続します。このMOVは、高電圧によって影響を受けるデバイスの唯一の部品である電源と電位分圧器を保護します。高電圧によって、相線と中性線に大電流が流れる可能性があります。中性端子からパターンを引くときは、このパターンによってIAMS パターンとIBMS パターンの真下のGND プレーンを分断しないでください。電源出力のグラウンドは、GNDプレーンに接続する必要があります。図18 に推奨する電源接続を示します。

図18. 絶縁型電源のグラウンド接続

図18. 絶縁型電源のグラウンド接続

非絶縁型電源を使用した接続


非絶縁型電源を使用するとき、ライブ・イン端子は電流シャントを通してMOV に接続します。MOV のもう一方の端子は中性端子と、電源に接続された正の温度係数(PTC)を持つサーミスタの両方に接続します。異常が発生した場合、MOV は電源電流の急激な増加からデバイスを保護します。図19 に非絶縁型電源の接続を示します。

図19. 非絶縁型電源の接続

図19. 非絶縁型電源の接続

接地と絶縁

ADE9153A のグラウンドとマイクロコントローラのグラウンドは、適切に絶縁する必要があります。1 次側のグラウンドにおけるレイアウトを構成するときは、デバイス、センサー、電源、およびその他の部品の位置を考慮してください。このセクションではEV-ADE9153ASHIELDZ のグラウンドのレイアウトを使用して、グラウンドを1 次側のグラウンドと2 次側のグラウンドに分割する方法について説明します(図20 を参照)。

図20. EV-ADE9153ASHIELDZ PCB

図20. EV-ADE9153ASHIELDZ PCB

グランド・プレーン


内部および外部のソースから侵入するノイズを最小限に抑えるため、グラウンドを適切に設計する必要があります。グラウンドを正しく設計しないと、ノイズがデバイスに侵入し、アナログ回路とmSure チャンネルの性能と機能に影響を及ぼします。PCB の最上層と最下層の両方にGND プレーンを設けることを推奨します。

図20 の左側に、最下層のGND プレーンのレイアウトを示します。

2 次側のグランド・プレーン(SGND)はコントローラが接地されている場所であり、ADE9153A のすべてのグラウンドとライブ・インから完全に絶縁されています。

アンチエイリアシング・フィルタ、電流シャント、および電位分圧器(高電圧側)によって、GND プレーンを分断しないでください。電源の詳細については、電源のセクションを参照してください。

1 次側のグランド・プレーン


1 次側のグランド・プレーンを作成するときは、以下のガイドラインに従ってください。

  • ADE9153A のAGND ピンとDGND ピンは、GND プレーンを通して、可能な限り最低のインピーダンスで接続します。
  • ライブ・インは、電流シャントを通して最上層のGND プレーンに接続します。
  • アナログ・グラウンドはGND プレーンに終端します。(GND プレーンは、また、ADE9153A のデジタル回路に対してグラウンド基準になります。)
  • DGND ピンを最上層のGND プレーンに接続します。ADE9153A 用のデカップリング・コンデンサ、水晶発振器、電源出力グラウンド、および、その他多くのサポート部品をGND プレーンに接地します。

図21 に、ADE9153A の代表的なグランド・プレーン接続を示します。ラベル2 はGND プレーンを示しています。REFIN とAVDDOUT のグラウンドはAGND ピンに直接配線し、プレーンは形成しないでください(水晶発振器とコンデンサのセクションを参照)。

図21. GND プレーン(最上層)

図21. GND プレーン(最上層)

ビアによって、PCB の最上層と最下層のグランド・プレーン同士を接続します(図22 を参照)。DGND ピンとAGND ピンは、これらのピンの近くにあるビアを通して最上層と最下層のGNDプレーンに接続する必要があります。

図22. ビアを配置したGND プレーン(最下層)

図22. ビアを配置したGND プレーン(最下層)

図23 に示すように、GND プレーンはVAN とVAMS のガードの下に位置しています。このGND プレーンは、電圧チャンネルの電位分圧器とアンチエイリアシング・フィルタの低抵抗をガードします。GND プレーンは、電位分圧器の高電圧側の下に配置しないでください。

図23. VAMS とVAN のガードの下に位置するGND プレーン

図23. VAMS とVAN のガードの下に位置するGND プレーン

絶縁


電力量計測をシステム・レベル・アプリケーションに付加するには、電力量計測回路の電圧と接地をコントローラから分離するために絶縁バリアが必要です。

ADE9153A は、電源電圧でフロート状態になっています。そのため、安全を考慮してアプリケーション内で絶縁する必要があります。絶縁を行う一般的な場所の1 つは、ADE9153A とマイクロコントローラ・ユニット(MCU)の間です。あるいは、MCU と通信部の間に絶縁を設けることもできます。

絶縁バリアにはアイソレータ、または電源絶縁およびデータ絶縁チャンネルを備えたIC を搭載し、電力量計測システムを含む高電圧側を、システムのコントローラまたはプロセッサを含む安全側から分離する必要があります(図24 を参照)。EVADE9153ASHIELDZでは、ADUM6000ARIZ が絶縁された電力を供給し、ADUM4152BRIZ SPIsolator®がシリアル・ペリフェラル・インターフェース(SPI)と低速デジタル・インターフェース信号を絶縁しています。

図24. EV-ADE9153ASHIELDZ における絶縁バリア

図24. EV-ADE9153ASHIELDZ における絶縁バリア

絶縁デバイスを選択するときは、データ・レート、スペース条件、および電圧条件といった重要な条件を考慮する必要があります。

アプリケーション例

スマート街路照明

スマート街路照明では、自動切替え制御、調光、および故障アラーム機能が備えられ、電力効率が高くなるように設計されたシステムに、収益等級の電力量計が内蔵されています。スマート街路照明が備える特殊機能は遠隔保守と拡張であり、この用途に対してADE9153A の自動キャリブレーション技術は適しています。

公共施設の電力量計では、メータの消費電力は顧客に請求されないため、メータ用の電源はシャント抵抗の前に取り付けられています。特定の街路照明のアプリケーションなど、一部のアプリケーションでは、計測モジュールを含んだ負荷全体の消費電力を測定することが望まれる構成があります。この場合、電源はシャント抵抗の後に接続されます。mSure に必要なシャント・センサーを通過する消費電力が変化すると、電源設計によって異なるmSure の結果に誤差が生じる可能性があります。こうした誤差は電源設計に特有のものであり、フル機能のシステムごとに測定する必要があります。こうした誤差は、0.2%~0.3%のオーダーになる可能性があります。標準的な推奨事項に従って、モジュール用の電源をシャント抵抗の前に接続してください。

複数出力における電力量計測

データ・センターの電力配分装置(PDU)には、電力を配分するために複数の単相レセプタクルが備えられています。ADE9153A を使用して、1 つのレセプタクルで消費される電力をモニタしてください。図26 に、PDU アプリケーションにおいて、複数のADE9153A デバイスで構成された基本的な図を示します。

図25. シャント抵抗の後の電源接続

図25. シャント抵抗の後の電源接続

図26. 複数出力における電力量計測

図26. 複数出力における電力量計測

まとめ


ADE9153A を電力量計測デバイスとしてシステムに付加するとき、このアプリケーション・ノートのガイドラインと推奨事項は非常に重要です。

これらの推奨事項の要約を以下に示します。

  • SMD の電流チャンネル用のレイアウトは、IAMS を注入するためにmSure インとmSure リターンで構成される必要があります。電気的高速トランジェントに対して耐性を高めるために、IAMS とグラウンドの間に必ずコンデンサを配置してください。
  • ほとんどのアプリケーションでは、中性電流計測は不要です。この場合は、IBP ピンとIPN ピンを互いに短絡する必要があり、更にIBMS ピンとDGND ピンを互いに短絡する必要があります。カレント・トランスを使用して中性電流チャンネルを測定するときは、IBMS を注入するための特別なワイヤが必要です。
  • 電位分圧器のVAP パターンは、VAMS とVAN のガードによって囲む必要があります。推奨するレイアウトと銅パターンの条件に従ってください。
  • アンチエイリアシング・フィルタは対称的に、かつセンサーの近くに配置し、平行なパターンをADE9153A のピンに引き込む必要があります。
  • 水晶発振器の周波数許容値は±50ppm 以下で、周波数安定性は±30ppm 以下でなければなりません。水晶発振器の負荷コンデンサをピンの近くに配置します。
  • このシステムは、コントローラ部品からの電源を使用することも、ADE9153A 用の分離された電源を使用することもできます。推奨するレイアウトに従ってください。
  • デバイスのすべてのグラウンドは、グランド・プレーンに接続されていなければなりません。システムの高電圧側と安全側の間を必ず絶縁してください。

著者

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Aaron Heredia

Aaron Herediaは、アナログ・デバイセズのアプリケーション・エンジニアです。電気工学の修士号を取得して大学を卒業しました。専門は制御システムです。アナログ・デバイセズ入社後の2年間はエネルギー・マネージメント製品のサポートを行い、最近、産業用イーサネット・グループに転属しました。