アンプのヘッドルームで本領を発揮できない?

質問:

単電源動作時に、 オペアンプの出力が かなり歪みます。これは、 何かヘッドルームに関係した 問題でしょうか?

RAQ:  Issue 62

回答:

出力歪みの原因はたくさんありますが、ヘッドルームは確かにその原因の一つです。 この用語に詳しくない方にわかりやすく説明すると、ヘッドルームとは、アンプの入力と出力が電源電圧のレールにどれだけ近づくことができるのかを意味します。

フットルームという用語を耳にされた方もあると思いますが、これは負側の電源電圧までの隔たりを表します。ただし、ヘッドルームという言葉は一般に負側電源レールと正側電源レールの両方を指すものであり、したがって、ヘッドルーム±0.8Vを備えたアンプでは、信号は電源電圧の0.8V内側の間をスイングすることができます。

幸い、アンプのヘッドルーム要件はデータシートの仕様や性能のプロット図から簡単に求めることができます。入力ヘッドルームは電源電圧と入力同相電圧範囲(ICMVR)との差であり、出力ヘッドルームは電源電圧と出力電圧振幅(スイング)との差です。入力がICMVRを越える場合や、仕様規定出力振幅より大きな信号を出力するようなアンプ設計をすると、出力信号は確実に歪みます。単電源で実行する場合、問題はさらに複雑になります。ほぼすべてのアンプは単電源で動作することができます。アンプにとっては、使用電源が10Vの単電源であろうと±5Vの両電源であろうと関係はなく、どちらも電源ピン間にかかる電圧は10Vです。しかし、入力には違いがあります。対称的なバイポーラ電源を使う場合、中間電圧はゼロ・ボルトとなりますが、単電源の場合は電源電圧の1/2ボルトとなります。

グラウンド基準の信号にとって好ましいのはバイポーラ電源です。これは、双方がグラウンド(中間電位)を基準とするからです。単電源アプリケーションの場合は、アンプのヘッドルームを最大化して消費電力を最小限に抑えるために、入力信号と中間電圧がマッチングするように信号をオフセットする必要があります。これは信号源で行うか、もしくはアンプ入力で行います。アンプ入力で行う場合は、AC結合が必要となる場合があり、新たな中間電源バイアス電圧を作り出さねばならないため、回路が複雑になります。

この問題の対処法として、3つの代替案があります。その一つは、真の単電源のアンプを使用するという方法です。これらのアンプのICMVRには負のレールの分が含まれるので、ICMVRに起因する問題を軽減できます。二つ目は、入力/出力信号が電源レールのわずか数ミリボルト小さい電圧までの振幅で動作できるレールtoレール・アンプを使用する方法です。そして、三つ目は、負のレール電圧を内部で生成するチャージ・ポンプを備えたアンプを使用する方法です。

アンプを設計していて、少し窮屈な感じがする場合は、靴を脱いでリラックスしてみてはいかがでしょうか。もう少し余裕(ヘッドルーム/フットルーム)を持つための方法は何通りも存在するのですから。



著者

John Ardizzoni

John Ardizzoni

John Ardizzoniは、アナログ・デバイセズの高速リニア・グループの上級アプリケーション・エンジニアです。 マサチューセッツ州ノースアンドーバーのメリマック・カレッジでBSEE(電子工学士)を取得し、2002年にアナログ・デバイセズに入社しました。エレクトロニクス業界で30年以上のキャリアがあります。